プレスター・ジョンの国防衛戦~マシラの慟哭

    作者:三ノ木咲紀

     叩き込まれる攻撃に、マシラは膝をついた。
     マシラは元高位の六六六人衆だ。戌姫と呼ばれる少女たちの犠牲の元封印されていたが、長い年月で封印が解かれ、灼滅者達によって二度灼滅された。
     能力が減じたとはいえかなりの実力者だが、不意打ちを食らい行動を封じられてはひとたまりもなかった。
    「てめぇら……」
     憎々しげに睨みつけるマシラの視線を、男子高校生は嘲るように見返した。
    「元高位の六六六人衆って聞いてたけど、なんだ全然じゃね?」
    「これなら、プレスター・ジョンって奴の暗殺も楽勝っしょ」
     縛霊撃で捕縛したマシラを指差して、げらげらと下品に嗤う男子高校生ーー黄村と青山に、マシラは吠えた。
    「お前らが何しようが、関係ねぇ! だが、この先には進ませねぇ!」
    「なになに? この先に何があんの? ……ひょっとして、アンタがさっき言ってた『母さん』とか?」
     影業をちらつかせた女子高生・黒野が、女性の姿を造り出す。
     つぼ装束に袿をかづいた、武家や公家の女性の旅装束を纏った姿の女性が微笑んでいる。
     その首が、ふいに落ちる。
     倒れて消える姿に、マシラは猛然と黒野に掴みかかった。
    「てめぇ! よくも母さんを!」
    「キャハっ! なにアンタマザコン? きもーい!」
     女子高生・白川が、影縛りを更に強化しマシラを転ばせる。
     倒れたマシラは、それでもなお立ち上がる。
    「母さんには、指一本触れさせねぇ! ……やっとだ! やっと会えたんだ! 俺は今度こそ絶対に、母さんを守る! それが俺の……」
    「うるさい」
     冷徹な声と共に放たれた日本刀が、マシラの胸を貫く。
     リーダー格の赤城が放った一撃に、マシラはついに倒れ伏した。
     その様子を見下した赤城は、口元に薄笑いを浮かべた。
    「猿が日本語を喋るんじゃない」
    「畜……生、俺はまた、守れな……か……」
     嘆きの涙を流しながら消えるマシラを、五人の六六六人衆が嘲笑っていた。


    「集まってくれて、おおきに。まず悪い知らせや。優貴先生が高熱を出して倒れてしもうてん」
     硬い表情のまま、くるみは灼滅者達を見渡した。
     調査の結果、原因は歓喜のデスギガスがプレスター・ジョンの国へ攻め入ったことだと判明。
    「デスギガスの目的は、プレスター・ジョンを暗殺して、かの国の残留思念を奪いベヘリタスの秘宝で実体化させることみたいや。--もし残留思念が復活してデスギガスの勢力に加わってもうたら、えらいことになってまう」
     プレスター・ジョンの国に攻め込んでいるのは、シャドウによって、ソウルボードに招かれた六六六人衆。
     彼らは、最近闇堕ちした序列外の六六六人衆のようで、戦闘力は低い。
     だが、その分複数で行動している。
     六六六人衆の目的はプレスター・ジョンの暗殺であり、プレスター・ジョンを守ろうとする残留思念と戦闘になっているようだ。
     ただ、残留思念の中には、攻め込んできた六六六人衆に呼応してプレスター・ジョン殺害を目論む者もおり、戦況は混乱している。
    「うちが予知したんは、元六六六人衆のマシラ。暗殺を防ごういうよりも、誰かを守りたいだけみたいやけどな。皆はプレスター・ジョンの国に向かって、できたらマシラと共闘して六六六人衆を撃退したってや!」
     戦場は開けた場所で、障害物等はない。
     マシラのポジションはクラッシャー。
     以前と同じサイキックを使う。
     六六六人衆のポジションはクラッシャー一人、ディフェンダー二人、ジャマー二人。
     クラッシャーの赤城は殺人鬼に似たサイキックを使う。
     ディフェンダーの黄村と青山は、縛霊手に似たサイキックを使う。
     ジャマーの黒野と白川は、影業に似たサイキックを使う。
    「こんだけ大がかりなことしといて、出てくんのは六六六人衆ばかりやねん。他のシャドウが出て来ない理由は分からへん。何か協定があるのか、別の場所で戦っとるのか……。何はともあれ、皆は無事に帰ってきたってや!」
     くるみはにかっと笑うと、頭を下げた。


    参加者
    石弓・矧(狂刃・d00299)
    桜庭・理彩(闇の奥に・d03959)
    椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)
    黒鐵・徹(オールライト・d19056)
    高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)
    若桜・和弥(山桜花・d31076)
    平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)
    厳流・要(溶岩の心・d35040)

    ■リプレイ

     マシラを貫こうと迫る切っ先が、大きく弾かれた。
     赤城とマシラの間に割って入った平・和守(国防系メタルヒーロー・d31867)は、状況が把握できていない様子のマシラを振り返った。
    「……あんたの想い、確かに聞かせてもらった。たとえダークネスであろうと、守るために戦うあんたには共感できる」
    「てめぇ……何者だ?」
    「俺はキャプテンOD! 人々の……いや、全ての平和を守る者だっ!」
     和守の宣言に目を見開いたマシラの体が、白いベルトで包まれた。
     黒鐵・徹(オールライト・d19056)が放った強い癒しの力がマシラの傷を癒し、捕縛を解除する。
    「マシラ。……僕のこと、覚えていないでしょう?」
     確かめるように話しかけた徹の顔を、マシラはしばらく凝視する。
     やがて顔を上げたマシラは、徹の顔を見てにやりと笑った。
    「てめぇ、俺が逃げるのを邪魔しやがったクソア……女か」
     わざわざ言い直したマシラに、和守は振り返った。
    「『クソアマ』とは言わないのか?」
    「う、うるせぇ!」
     マシラの母親――雉子に何か言われたのだろう。ぶすっとしたように眉をひそめたマシラは、解けた捕縛を確認するように立ちあがった。
     腕を回すマシラに、高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)は駆け寄った。
    「マシラ! 戦いの場で会うのは久しぶり♪ 元気にしてた? 私達、あなたを助けに……」
     興奮した様子で言い募る一葉は、鋭い影に振り返った。
     マシラを再び捕縛しようと伸びる影の前に、一葉のライドキャリバー・キャリーカート君が躍り出た。
     黒い影を振り切りながらマシラを守ったキャリーカート君に、黒野は舌打ちをした。
    「ちょっとぉ、邪魔しないでくれる?」
    「のんびり話してる暇ないか」
     マシラを守るように立ち塞がった一葉に、マシラは不審そうな声を上げた。
    「てめぇら……。どうして俺を助ける? 灼滅者にとって俺達ダークネスは倒すべき敵だろうが!」
    「ダークネスになっても、変わらず大切な人を守りたいと思う気持ち。いたく感銘を受けました」
     石弓・矧(狂刃・d00299)が閃かせた解体ナイフから溢れる夜霧が、前衛を包み込む。
     ぼやけた視界に、矧はマシラを真正面から見た。
    「ここは、私たちと共闘しましょう。少なくとも彼らを先に進ませたくない、という思いは同じです」
    「共闘……」
     矧の言葉を噛みしめるように目を見開いたマシラには構わず、若桜・和弥(山桜花・d31076)は眼前で両拳を撃ち合わせた。
     暴力に伴う痛みを忘れない為の、いつものルーティーン。
    「やろうか。言葉で響かないなら、力で語ろう」
     拳に感じる痛みを胸に、和弥は滑るように躍り出た。
     殺気を帯びた手刀が、青山を切り裂く。咄嗟に防御した青山は、苛立ったように和弥を殴りつけた。
    「邪魔なんだよ、どけよ!」
    「お前がどけよ!」
     大きく吠えた椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)は、起動させたバーンブリンガーで青山のこめかみを蹴りつけた。
     流星のきらめきを乗せた蹴りを受けた青山は、脳震盪を起こしたようにふらりと一歩下がった。
     マシラの隣に立った武流は、不審そうな表情を崩さないマシラを見た。
    「お前とやりあうつもりは無い。俺達も奴らの手から『大切な人』を守りに来たんだ」
    「てめぇ達の……大切な人……」
    「そうだ!」
     敵を油断なく注視していた厳流・要(溶岩の心・d35040)は縛霊手を構えた。
     放たれる除霊結界が、敵前衛に広がる。攻撃に移ろうとしていた黄村は、その手を結界に阻まれた。
    「っくしょ! てめぇら、マザコン猿守って楽しいのかよ!」
    「……大事な人を守りたくて必死になるのは共感できるし、何よりそんな必死な奴を小馬鹿にする、連中の態度が気に入らねえ」
     要は黄村に突きつけた指を握り、マシラに握りこぶしを示した。
    「相応の報いをくれてやろうぜ!」
    「……」
     何も言えないマシラを、桜庭・理彩(闇の奥に・d03959)はチラリと見た。
    「初見だけど、お前に他者を頼ることが出来るかしら?」
    「何?」
     自分に防護符を使った理彩は、以前斬った雉子を思い出しながら素っ気なく言い放った。
    「なりふり構わぬ意志が、想いが、願いが、祈りが、信念が。……あの女は好かないけど、少なくともそれらは持っていたわ」
    「キャハっ! 邪魔なのよ、アンタ達!」
     白川が影業を構え、和弥に向けて放とうとする。
     その構えに、マシラが動いた。
     影縛りを相殺し、鋭い爪が白川を引っ掻く。
     自分の行動に驚いたように、マシラは自分の手を握り締めた。
    「……共闘とか、他者を頼るとか、知ったことか! だが、母さんを守るためならば何でもしてやる!」
     マシラは振り返ると、灼滅者達を見渡した。
    「俺は今度こそ絶対に、母さんを守る! てめぇら、その……!」
     マシラが振り上げた拳を、赤城はくつくつと嘲笑った。


    「いい茶番だね。……君達。そこをどいてくれないか? 僕達はプレスター・ジョンを殺せればいいんだよ」
    「断る! 俺達はそのプレスター・ジョンを守りに来た!」
     きっぱりと断る和守から視線を外した赤城は、マシラを見た。
    「この先にいる君の母親にも、手を出さない。約束しよう。これで、僕達が戦う理由がなくなった筈……」
    「うるせえ! 信用できるか!」
     マシラが言い放った時、黒野と白川が動いた。
     赤城が気を引いている間に、攻撃態勢を整えたのだろう。同時に放たれた影縛りが、ダメージを負った和弥に迫った。
    「危ない!」
     和守は黒野の影縛りとの間に割って入った。
     万能表示灯の柄に絡まった影に、力比べとなる。
    「アンタ達、本当に邪魔なのよ!」
    「赤城が気を引いている間に、お前達が行動力を奪う……連携が取れた良い作戦だ。だが!」
     和守は絡まった影業を、思い切り引っ張った。
    「俺達の連携も、甘く見ないでもらおう!」
     突然引かれた力にたたらを踏んだ黒野に、マシラの蹴りが腹に突き刺さった。
     鋭い足の爪で引っ掻くように蹴り飛ばされた黒野が、激しく咳き込みながら顔を上げた。
    「女の子を蹴るなんて……酷い猿ね!」
    「母さんの首を落とした、てめぇに言われたくねぇ!」
     中指を立てるマシラに、青山が自分に祭霊光を放った。
     目の前で癒される青山に、黒野は腹を立てたように立ち上がった。
    「ちょっと! ここは女の子の回復を優先させなさい!」
    「うるせえ! 俺の方が……」
    「そこだ!」
     火の玉のように飛び出した武流は、ヴァリアブルファングを振り抜いた。
     癒されたばかりの青山の傷が、炎と共に燃え広がる。
     マシラの隣に立った武流は、マシラを見てにっと笑った。
    「お前の『想い』、加勢させてもらうぜ。マシラ!」
    「邪魔すんじゃねぇぞ、ガキが!」
     口汚く言い放ったマシラは、口の端を少し歪めると敵に向き合った。
    「キャハっ! いっただき~♪」
     和弥に絡まった影を、白川は思い切り引っ張った。
     渾身の力で引っ張る白川に、和弥はバランスを崩す。
     人質にでもするつもりなのか。強引に引き寄せる影が、ふいに切れた。
     徹から放たれた白い帯は黒い影を追い払い、和弥の傷を癒した。
    「仲間もマシラも、この先にいる存在も。僕が護ります」
    「キャハっ! ガキが、生意気言ってるんじゃないわよ!」
    「ガキ呼ばわり、しないでください!」
     不快そうに眉をひそめた徹の耳に、凛とした声が響いた。
    「星よ、星よ、そのめぐりにて踏み込むものを惑わせん―結べ!」
     理彩の周囲に、五芒星の形に護符が放たれる。
     澄んだ声と共に一斉に発動した護符が、敵を薙ぎ払う。
     大きく下がった黒野を放置した理彩は、武流と何か話をしているマシラの背中を複雑そうに見た。
    「……奇縁とはこのことかしら」
     理彩はかつて、マシラを封じるために犠牲になった戌姫と、マシラが求めていた母親の雉子の灼滅に立ち会った。
     原因を作ったマシラ本人と会うのは、これが初めてのこと。
     何とも言えない表情の理彩に、徹はそっと話しかけた。
    「……ママと会えて、しあわせになれたんですね。それなら、良かった」
    「何であろうと人に害なす闇なら斬り捨てる。……だから、人を害さぬ闇の残骸は斬らない。それだけのことよ」
     感傷を斬り捨てるように言い放った理彩に、徹はくすりと微笑んだ。
     捕縛から解放された和弥は、捕らえようと近寄っていた青山に向けて拳を突き出した。
    「はぁぁぁぁっ!」
     踏み込み、一閃。
     雷を帯びた拳が青山を捉える寸前、黄村が動いた。
    「あぶねぇ!」
     青山を突き飛ばした黄村に、強烈なアッパーカットが顎にクリーンヒットし、弾き飛ばす。
     大きく宙を舞った黄村の体の陰から、日本刀が迫った。
    「殺す!」
    「させない!」
     赤城の強烈な一撃が和弥を切り裂こうと迫った時、エンジン音が響いた。
     キャリーカート君に騎乗した一葉が、日本刀に向けて突進をかける。
     咄嗟に閃いた日本刀が、車輪を切り裂く。
     キャリーカート君が消える直前、一葉は大きくジャンプした。
     軽やかにバク転した一葉は、敵の注意を引きつけるように和弥に祭霊光を放った。
    「和弥さん、大丈夫?」
    「ありがとう!」
     アイコンタクトで認め合った二人の脇を、要が駆け抜けた。
    「いくぜ!」
     ダメージの深い青山を狙い、要の拳が熱圏を帯びる。
     無数の拳が青山に突き刺さり、青山の体が宙に浮く。
     止めの拳が青山の鳩尾を捉えた時、青山は嘲笑いに口を歪めた。
    「……その程度かよ! 弱ぇなぁ、お前!」
    「なっ!」
     挑発を受けて顔を赤くした要の手首を掴んだ青山は、そのままギリと捩じ上げた。
    「女の代わりに、子猿を捕まえたぜ!」
    「離せ!」
    「要さん!」
     そのまま人質に取ろうとする青山を中心に、聖碑文の詠唱の声が響いた。
     矧のクロスグレイブの全砲門が開かれ、前衛を薙ぎ払う。
     中心に狙われた青山が一瞬動きを止めた隙に、矧は駆け出した。
     要の腕を取り、強引に引き寄せ戦列へと戻る。
    「大丈夫ですか?」
    「……はい。サーセン、先輩……!」
     拳を握り締めて唇を噛みしめる要の頭を、矧は軽く叩いた。
    「なら、良かった。頼りにしていますよ」
     頭上に感じる手の感触に、要は先輩方を見渡した。
     この中では、要は間違いなく一番の未熟者だ。
     経験の浅さは一朝一夕には埋められないが、それでも頼りにしてくれている。
     要は自分の両頬を大きく叩いた。痛みを戒めとして、前を向く。
    「先輩方、よろしくお願いします!」
     ビシッと頭を下げた要に、赤城の拍手が響いた。


    「いや、友情ごっこに涙が出るよ!」
    「黙りなさい」
     冷静に怒りを湛えた矧は、解体ナイフを閃かせると青山の懐へと飛び込んだ。
     死角からの一閃。
     かなりダメージが蓄積していた青山は、体を大きく引き裂かれるとそのまま消えた。
    「てめ……!」
    「させない!」
     黄村が縛霊手を構えたのと、一葉が縛霊手を構えたのは同時だった。
     展開される、結界。発動したのは一葉の除霊結界だった。
     黄村が受けていたパラライズが発動した瞬間、更なる攻撃が黄村の動きを止める。 
     そこへ、二人が同時に動いた。
     獣のように駆け出したマシラが、黄村の腕に噛みつき、肉を引き裂く。
     和弥の手刀が引き裂かれた傷口を更に広げるように放たれる。
     大きな叫び声を上げた黄村は、倒れて消えた。
    「……よく俺が動くのが分かったな、ク……女」
    「和弥だよ。……知った風な口を利く気は無いけど。今は、手を組める関係だと思って。多分ね」
    「ケッ!」
     複雑そうに目を逸らしたマシラに、一葉はかんざしを差し出した。
    「かんざし、持ってきたんだ」
    「てめ……!」
     思わず取り上げたマシラに、一葉は微笑んだ。
    「持ってて。……マシラにも力をくれるんじゃないかなって」
    「……」
     手の中のかんざしを見たマシラは、無造作に一葉に突き返した。
    「てめぇが持ってろ。……母さんがてめぇに渡したんだろ? なら、えめぇのだ」
    「……ありがと! お母さんの為にも、ここを守らないとだよねっ」
    「あぁ!」
     ぶっきらぼうに頷いたマシラは、じりじりと後退する赤城たちを睨みつけた。
    「赤城ぃ。どうすんの? あいつら強いよ?」
     不安そうに赤城に寄り添った黒野に、白川も勢いよく頷いた。
    「キャハっ! ちょおっと辛いかな」
    「……。黒野、白川。お前達、僕を守れ」
    「……え?」
     赤城の言葉の意味を捉えかねた黒野の腕を、赤城は握った。
    「いいから、行け!」
     二人を強引にポジションチェンジさせた赤城は、そのまま駆け出した。
    「ち、ちょっと!」
    「僕はジョンの暗殺に行く! 後は頼んだよ!」
    「させねぇ!」
     敵の動きをよく観察していた要は、いち早く動いた。
     赤城の退路を断つように前に出ると、武蔵坂学園応援旗を振り抜いた。
    「撤退禁止」と書かれた旗が、赤城の足を絡め取る。
    「でかした! 轟け、FH70ビームッ!」
     腕を大砲のように突き出した和守は、倒れた赤城に向けてビームを放った。
     腹を撃ち抜かれた赤城は、怒りの目を和守に向けた。
    「てめぇ……」
    「ジョン王の所へは行かせません。寝た子を起こす悪い人達は、追い払ってしまいましょう」
     徹が掲げた怪談蝋燭から、大輪の牡丹が溢れ出す。
     理彩は深く落とした姿勢から心壊を構え、武流は上段の構えからヴァリアブルファングに炎を宿した。
    「さようなら。―心壊!」
    「お前は、本当に許せねぇ!」
     美しい牡丹の炎に包まれた赤城に、剣戟が二撃響く。
     同時に放たれた攻撃が、赤城を消し去る。
     残された黒野と白川が灼滅されるのに、そう時間はかからなかった。


     白川が灼滅された時、女性の声が響いた。
    「真頼! 無事ですか!」
     息を切らせながら現れた女性に、マシラは振り返った。
    「母さん! 隠れてろって言っただろう!」
    「あなたの意見ばかり聞けますか!」
     マシラを叱りつけた雉子は、灼滅者達に向き合った。
    「皆さん、本当に、なんとお礼を言ったらいいか……」
     深々と頭を下げる雉子に、一葉は心から微笑んだ。
    「一緒に過ごしてるんだね。なら良かった!」
    「はい。皆さんのおかげです」
    「あんたは息子に会えると安堵しながら消えた。……斬った者の一人としては、せめてその位は守りたかっただけよ」
     ぶっきらぼうに言い放った理彩の隣で、徹は微笑んだ。
    「あなたがマシラを想う気持ちにはきっと及ばないけど、マシラを守れて良かった」
     灼滅者達の温かい気持ちに、マシラは眉間に皺を寄せると頬を掻いた。
    「あー、その。てめぇら、あ、りがとよ!」
     早口で言ったマシラは、雉子の手を引くと足早に立ち去った。
     何事か喧嘩する声に、灼滅者達はその場を立ち去る。
     矧はふと、マシラ達が立ち去った方を見た。
    (「あの時、人として狂っていたのなら。私は彼と同じになっていたのだろうか?」)
     去来する思いに、矧は首をひとつ振る。
    (「……いや、カタチは違えど今も同じか」)
     マシラ達に背を向けた矧は、先を行く仲間達を追いかけた。

    作者:三ノ木咲紀 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年2月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 0
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