季節外れのカタツムリ!

    ●都内某所
     シェスティン・オーストレーム(小さなアスクレピオス・d28645)は、こんな噂を噂を耳にした。
     『大きいカタツムリが雨が降らせている』と……。
     このカタツムリは都市伝説で、自分の周囲に大量の雨を降らせる事が出来るようだ。
     そのため、都市伝説が確認された住宅街に住む一般人達は、いつになっても梅雨が明けないような感覚に陥っているらしい。
     しかも、都市伝説に近づけば近づくほど、滝のような勢いで雨が降るため、攻撃を仕掛ける事さえ困難になっている。
     その上、都市伝説の周囲は雨粒も大きいため、頭を鈍器で殴られたような痛みが走る事もあるほど。
     そう言った事も踏まえた上で、都市伝説を灼滅するのが今回の問題である。


    参加者
    皇・銀静(陰月・d03673)
    西場・無常(特級殲術実験音楽再生資格者・d05602)
    ミーシャ・カレンツカヤ(迷子の黒兎・d24351)
    天前・仁王(銀色不定系そしてショゴス・d25660)
    仮夢乃・蛍姫(小さな夢のお姫様・d27171)
    シェスティン・オーストレーム(小さなアスクレピオス・d28645)
    荒吹・千鳥(祝福ノ風ハ此処ニ在リ・d29636)
    篠宮・里桜(死宮の姫巫女・d36147)

    ■リプレイ

    ●都内某所
    「雨というのは静寂とも言えますが……、今回の場合は違うようですね」
     皇・銀静(陰月・d03673)は雨合羽を用意した上で、仲間達と共に都市伝説が確認された住宅街に向かっていた。
     都市伝説は巨大なカタツムリの姿をしており、自分の周囲に雨を降らせる事が出来るらしい。
     そのため、都市伝説が確認された地域に住む一般人達は、傘を常備しているようだ。
     幸い、都市伝説が定期的に移動しているため、雨水が溜まって周囲が水没するような事態に陥る事はないものの、それでも被害は甚大なようである。
    「……カタツムリさん、今の時期、寒くないんでしょう、か? 雨も、冷たいでしょうに……」
     シェスティン・オーストレーム(小さなアスクレピオス・d28645)が雨合羽姿で、仲間達にヘルメットを配っていく。
     都市伝説がまだ近くにいないためか、辺りはカラッと晴れており、雨が降りそうな気配もない。
     それでも、極一部分だけ雲行きが怪しい場所があるため、都市伝説がいる事は間違いないだろう。
    「大雨を自由自在に操るカタツムリか。何だか……凄いね。能力もそうだけど、カタツムリっていうのも……」
     仮夢乃・蛍姫(小さな夢のお姫様・d27171)も雨合羽を着込み、自分の顔より少し大きな木の板を盾代わりにして背負う。
     これさえあれば、例え土砂降りの雨が降ったとしても、何とか防ぐ事が出来るはず。
    「しかし、鈍器で殴られるような勢いの雨って凄いなぁ……。都市伝説がその場から動かなかったら、いまごろ大惨事やろうな」
     荒吹・千鳥(祝福ノ風ハ此処ニ在リ・d29636)も厚手の雨合羽を着込み、どこか遠くを見つめる。
     だんだん都市伝説が確認された場所が近づいてきたせいか、風に乗ってほんのりと雨の匂いが漂ってきた。
     おそらく、都市伝説がここに来て、それほど時間が経っていないのだろう。
     都市伝説が通ったと思しき場所の地面がぬかるみ、所々に水溜まりが出来ていた。
    「このカタツムリが、もし水不足の地域に出たのであれば、喜ばれたかもしれませんね」
     篠宮・里桜(死宮の姫巫女・d36147)が、複雑な気持ちになって肩を竦める。
     都市伝説がどのようなキッカケで生まれたのか分からないが、何らかの形で雨が降る事を望んでいた可能性が高そうだ。
    「皆、今回はただの豪雨じゃない。何たって都市伝説が起こす常軌を逸したものだ。生半可な雨具は無意味と思った方がいい」
     天前・仁王(銀色不定系そしてショゴス・d25660)が険しい表情を浮かべながら、ウェットスーツの上から雨合羽を着込み、警戒した様子で傘をさす。
     だが、あまりにも重装備過ぎるため、歩く事すら困難な状態。
     それでも、必死に歩いているが、ズシンズシンと音が聞こえてきそうなほど、まわりから見ても動きづらそうだった。
    「みんな、奴が近いぞ」
     そんな中、先程までビルの屋上で偵察をしていた西場・無常(特級殲術実験音楽再生資格者・d05602)が現れ、都市伝説が近くにいる事を仲間達に伝えた。
     都市伝説はゆっくりと移動をしているらしく、それに合わせて雨雲も動いているようである。
    「さぁて、いっちょやってやりますかッ!」
     そう言ってミーシャ・カレンツカヤ(迷子の黒兎・d24351)が自分自身に気合を入れ、都市伝説が確認された場所を目指して走り出した。

    ●都市伝説
    「痛い、痛い! 雨粒が痛いんだよ!」
     都市伝説が確認された場所にたどり着いた蛍姫は、涙目になりながら木の板で自らの身を守る。
     しかし、両手が塞がっているため、このままでは戦う事が不可能。
     それが分かっていても、木の板を手放す事が出来ないほど、雨の勢いが強かった。
    「まさか、雨粒で痛みとは……。まるで雹のようですね」
     里桜が薄目を開けて、都市伝説を探す。
     おそらく、都市伝説がいるのは、この先の何処か。
     それだけは分かっているのだが、どしゃぶりの雨が邪魔をして、都市伝説に近づく事さえ難しそうだ。
    「……雨粒にやられたら敵わんな」
     千鳥が険しい表情を浮かべ、ラビリンスアーマーを使う。
     それでも、完全に雨を防ぐ事が出来なかったため、全身ずぶぬれ。
     雨合羽もほとんど意味がないようだ。
    「この豪雨……、普通のやり方では、無意味だな」
     無常がクールな表情を浮かべ、WOKシールドを発動させる。
    「足元が何だかねばねばします、これはもしやカタツムリの……」
     その途端、里桜がヌルッとしたモノを踏み、気まずい様子で汗を流す。
     それは雨とは違う別の何か。
     可能性的に考えれば、都市伝説の体から分泌された粘液だろう。
    「くっ……、逆に考えるんだ。別に濡れてもいいんじゃないか、と……。見せてやろう【フルフロンタル(全裸)】の実力と言うものを!」
     そんな中、仁王が覚悟を決めた様子で、すぽぽぽーんと服を脱ぎ捨てた。
     これで何も怖いものはない。何ひとつとして、怖いものは……!
     だが、そう思っているのは、自分だけ。
    「……って、全裸!? だ、駄目だよ、仁王!? キミ、一応女だよね!? ダメだって!」
     これにはミーシャも驚き、仁王を羽交い絞めにする。
    「……あ! ミーシャ、止めるな!? わ、わかったから顔を上に向けるな、ガボガボガボ……」
     次の瞬間、仁王の顔が上を向き、口の中に大量の雨が降り注ぐ。
    「あ! 仁王! 仁王!?」
     それに気づいたミーシャが、驚いた様子で仁王の名前を呼ぶ。
     しかし、仁王は大量の水を飲み、溺死寸前。
     仁王のまわりには天使っぽいものがチラつき、ゴーイング・ヘヴン状態。
     そんな意味不明の単語が脳裏に過るほど、仁王は危険な状態だった。
    「……雨もまた自然の産物。強制的に現れたものとはいえ実在する事象でもある。ならば、それに触れるのも、また一興。雨は全てを洗い流す……。この胸に抱くわだかまりも……苦しみもこの雨が流してくれればいい。……そう願わずにはいられません」
     その間に銀静が深呼吸をして、雨の中で歌いだす。
     それに合わせて、都市伝説が降らせていた雨の勢いが、微妙に変化し始めた。
     おそらく、それは都市伝説の気まぐれ。
     だが、そのおかげで都市伝説の姿が、薄っすらと見えた。
    「うわわ……、カタツムリって大きいと、かなりグロテスクだね。……小さいのはまだ可愛いとも思えるけど、これは凄いよ……」
     それに気づいた蛍姫が驚いた様子で、すってんころりん。
     そのままツルッと滑って、都市伝説に激突した。
    「……えい」
     続いて、シェスティンが一気に間合いを詰め、都市伝説のつのを突く。
     雨の勢いが強い事もあり、ハッキリと確認する事が出来なかったものの、つのっぽい部分がうにょっと引っ込んだため、おそらく命中したのだろう。
     ついでに塩をかけようと思っていたのだが、雨のせいでまったく使い物にならなかったため、転がるようにして都市伝説から離れていった。
    「ミーシャ、初めての共同作業だ!」
     その間に仁王が何とか目を覚まし、ミーシャに向かって合図を送る。
    「……共同作業? いいよ、もう一人のミーシャ! 呪文はわかる? ボクに続くんだ!」
     それに応えるようにして、ミーシャが呪文を唱えていく。
    「塵芥の蔓延る穢れ、散る灰燼の不浄な流れ、澱み沈みを打ち払い、汝あるべき姿に回帰せよ! ダブルフォースブレイク!!」
     次の瞬間、ふたりが息を合わせ、都市伝説にフォースブレイクを放つ。
     その一撃を食らった都市伝説が悲鳴を響かせ、這うようにして逃げ出した。
    「梅雨の時期にはちょい早いけど、雨を降らすかたつむりっちゅうんは風情もあるし、うちんとこおいでな? 畑の水やりには便利そうや」
     千鳥が色々と察した様子で、都市伝説に語り掛けていく。
     それに気づいた都市伝説が、千鳥に擦り寄るようにして吸収された。
    「これでカタツムリさんも、安心です、ね」
     シェスティンが何となくホッとする。
    「ううっ、ビショビショで、ヌルヌルなんだよ」
     その横で蛍姫が魂の抜けた表情を浮かべ、その場にぺたんと座り込む。
     都市伝説が吸収された事によって、ビショビショもヌルヌルも無くなったはずだが、それでも気持ち悪さは消えなかった。
    「……虹が出ましたね」
     そう言って銀静が、ゆっくりと空を見上げる。
     都市伝説の力だったとはいえ、先程まで雨が降っていたせいか、空には奇麗な虹が出来ていた。
    「やまない雨はない、か……。実際、その通りになったな。しかし……冬の雨は寒い。なにか温かいものが……欲しい。それに、腹が……減った。ラーメンでも、食うか」
     無常も一緒になって空を見上げ、グウッと腹を鳴らす。
     ミーシャも温泉に浸かりたかったため、みんなで健康ランドに行くのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年2月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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