琵琶湖・田子の浦の戦い～君達が向かう先

■リプレイ

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　波の音。ここは田子の浦。
　灼滅者たちの視線の先には、出現した海上要塞軍艦島と空母スイミングコンドル号。
　二艦から、異形達が上陸していた。灼滅者八人には、軍服の羅刹一体が近づいている。
　羅刹の頭には軍帽。額には黒い角。手には刀。
　守安・結衣奈（叡智を求導せし紅巫・d01289）は、携帯を操りながら、インカムに告げる。
「戦闘を始めるよ。こっちは寡兵ではあるけれど、学園灼滅者の絆と底力で頑張ろうね」
　インカムの向こうから『幸運を祈るよ！』と崇田・來鯉（ニシキゴイキッド・d16213）の力強い返事。
　インカムへの声は、小野屋・小町（二面性の死神モドキ・d15372）にも届く。小町は、
「守安さんの言う通り、全力を尽くして頑張るのみやね。――さぁ断罪のお時間やでぇ！」
　と封印解除。鎌の柄を持ち、赤く染まった刃を円を描くように動かす。
　皆も封印を解く。無常・拓馬（カンパニュラ・d10401）は、
「軍服だの無駄に堅苦しいモノを着よって。全裸の前にひれ伏すがいい！」
　モザイクつけた股間を振り、臨戦態勢！
　富山・良太（復興型ご当地ヒーロー・d18057）は仲間の雄姿にも、冷静なまま。傍らのビハインド中君に、「中君、僕たちもいこう」
　そして一歩前へ。他の者も良太に続く。刀を構える羅刹と灼滅者との距離が、縮まる。

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　中島九十三式・銀都（シーヴァナタラージャ・d03248）は羅刹へ宣言。
「平和は乱すが正義は守るものっ！　中島九十三式・銀都参上！　てめぇらの悪だくみもここまでだぜ！」
「面白い。我が意志を折らんと言うか！」
　宣言した銀都に羅刹は笑う。次の瞬間、銀都の腹に激痛。出血。斬られたのだ。
　銀都は怯まない。縛霊手を嵌めた手を握る。強く握る。そして結界を発動！　羅刹の体を縛る。
　結界に羅刹が顔を顰めた隙に、リュシール・オーギュスト（お姉ちゃんだから・d04213）は体を捻る。金髪が揺れた。指に付けた鋼糸で羅刹の首を切る。
「止まってはいけないわっ。続けてっ！」
「了解しました」
　応えたのは、鳳仙・刀真（一振りの刀・d19247）。刀真は灰の瞳の目を細め、影を蠢かす。影を刃に変化させ、羅刹の腹を抉る。
　さらに、宮儀・陽坐（餃子を愛する宮っ子・d30203）が相手の背後をとった。
「この戦いはなりふり構えません。俺も畳みかけます！」
　敵を掴む。背をそらせ、投げる。敵頭部を地に叩きつける！

「止まれぬのは、なりふり構えぬのは、我も同じっ」
　倒れた羅刹は起き上がる。一分後には腕を巨大化させ、殴りかかる。
「させませんっ！」
　仲間を狙う一撃を、良太が己の身で止める。
　直撃。ふらつく良太。彼にベルトが巻き付き、体を支えた。
　結衣奈が、素早くラビリンスアーマーを行使したのだ。
「大丈夫？　後もあるから難しい戦いだけど、でも全力を注ごうね」
　結衣奈の言に、良太はしっかり頷く。中君に霊撃をさせ、良太は片足を上げた。羅刹の頭部へ渾身の蹴り！
「くっ……だがしかし」
　羅刹に歩み寄る小町。
「アンタが強いのはみてたらわかる。だから、あたいの全力をぶつける」
　普段と違う口調。
　小町は鎌を一閃。一瞬後、羅刹の軍服が切れ、血が噴出。ティアーズリッパー。
「おのれっ、この刀でっ」
　刀を再び振り上げる羅刹の前で、拓馬が、
「貴様が刀なら俺は槍。見よ、こんなに――太くて長いっ！」
　両太腿で槍の柄を挟み、股から出た槍で突く。敵を貫く。
「これも強烈な……が、まだまだっ」
　傷を作りつつも、闘志を浮かべる羅刹。
　戦闘は続く。羅刹の技は強力。が、灼滅者は果敢に攻め返す。
　今も拓馬が股間に挟んだ槍から白い――氷柱を出して、羅刹を凍らせた。
　だが羅刹は凍った腕を強引に動かし、刃を一閃。居合で良太の腹を裂く。
　羅刹はダブルの動きで雲耀剣を放つが――中君が良太を突き飛ばす。良太を庇い一撃を受けた。
　良太は体勢を立て直すと、爪先に炎を宿す。羅刹の顎を蹴る。砕けるような音。
「ふご？！」
　呻く羅刹。それを見、陽坐、刀真、リュシール、銀都は視線を合わせた。
　真っ先に動いたのは銀都。銀都は地面を蹴った。舞い散る砂。銀都は空中で体を捻り、羅刹の胸へ渾身の回し蹴り！
　たまらず後退する羅刹を、陽坐が追う。腕を伸ばす。胸ぐらと袖を掴んだ。背負い投げ風にご当地ダイナミック。
　リュシールと刀真は羅刹が倒れる地点を予測していた。
　リュシールは倒れた羅刹の横に立つ。腹めがけ、クロスグレイブを振り落す。
　刀真は矢尻を羅刹の顔へ向ける。弓の弦を限界まで引き、矢を放った。
　四人の連携は、羅刹を大きく消耗させる。
「まさかここまでとは。だが！」
　流血しつつなお立つ羅刹。渾身の雲耀剣を放ってきた。
　刀は小町の肩を激しく切る。血が散った。膝をつく小町。
　が「まけないで！」結衣奈がラビリンスアーマーを行使。ベルトを傷口に巻き止血。小町に力を与えた。
　小町は結衣奈の力で立ち上がる、鎌を杖代わりにし。その鎌を振り上げる。死の力を籠め羅刹を、両断。敵の命を消す。

●
　羅刹を倒した灼滅者は、治療等で態勢を整える。
　灼滅者の前方で、軍艦島に動きがあった。軍艦島が沈み、中にいたダークネスが上陸したのだ。新手の群れは、灼滅者に迫りつつある。
　銀都は双眼鏡で、敵陣営を確認。
「敵全軍が一斉に、上陸したみてぇだ。上陸阻止は難しいか。……けど、うずめ様も上陸して群れの奥にいる。チャンスかもしれねぇ」
　無線から、花守・ましろ (ましゅまろぱんだ・d01240)の声。
『了解！　花守班、８人と６体の大所帯でうずめ様に向かうよー』
　リュシールは視線を鋭くさせ、
「上陸している今なら、一気にうずめ様を討てる。討てれば混乱に乗じ離脱できる筈。私達もいきましょう」
　二人の言葉に一行は同意。敵群へ前進。
　敵との距離は詰まる。新たに上陸した羅刹どもは既に目前。
　リュシールは目前の敵と奥にいるうずめ様を睨む。
「ここもすぐに突破するわ。うずめ様、いつまでも無関係でいられると思わないで！」
　リュシールはベルトの両端を伸ばす。ベルトが一番近くにいた羅刹三体を囲む。
　銀都は縛霊手を左右に振る。気合いの声とともに、結界を羅刹たちへ展開。
　リュシールのベルトと銀都の縛霊手が、羅刹の動きを封じた。
　すかさず、小町が前に出る。敵側に腕を突き出し、黒い殺気を放つ。
「ぎゃあ」羅刹の一体が気を浴び、顔を手で覆う。
　その羅刹に刀真が突進。体当たりと螺旋の突きを食らわせ、羅刹を後退させた。
　刀真は告げる。
「敵は怯んでます。数の優位に油断していたのでしょう。今のうちに敵陣を突破し、うずめ様の下に行きましょう」
　敵群の中を灼滅者は突っ走る
　灼滅者たちの動きを阻止するべく、羅刹二体が殴りかかってくるが、
　良太と中君が仲間を庇い、拳を受け止める。良太は愛用の剣で反撃。クルセイドスラッシュで敵の姿勢を崩し、声を張る。
「進みましょう。うずめ様の所には、あの岩を利用し……」
　良太の声に応じ、さらに進む八人。

　他の班は離れた位置にいる。敵数が多いため、合流は難しい。
　が、前進は順調。リュシール、小町、刀真、陽坐、結衣奈、良太らが、足場や地形、障害物、波の様子などを予めよく観察していた。それが功を奏したのだ。
　通りやすい足場を選択、岩などを利用。結果、スムーズに敵を抜け、うずめ様へ近づいていく。
　が、一行の前に、羅刹二体が立ちはだかった。
「これ以上うずめ様には近づけん」「近づけんぞ！」
　二体は、灼滅者の進路を塞ごうと油断なく構える。
　陽坐は二体の羅刹をみる。二体を無視しては、うずめ様に近づけないだろう。
「どれだけ連戦が続いても、この地上に餃子のガイアパワーがある限り、俺は戦える！　餃子よ、俺に進む力を！」
　陽坐はハンマーを振る。畏れを込めた先端で、羅刹の顔を強かに殴る！
　陽坐の雄姿に奮い立ち、灼滅者は次々と攻撃。
　が、羅刹二体は倒れない。刃を召喚、灼滅者へ投げてくる。
　一つが、拓馬の腹に命中。
　ぐらつく拓馬に、結衣奈がすかさず駆け寄る。
　結衣奈は拓馬に手を伸ばす。ベルトの力で拓馬の傷を消した。
　結衣奈は羅刹を睨む。
「わたし達は簡単には負けないよ！」
　拓馬は結衣奈に頷き、前に出る。
「そうだ。俺たちは負けない。なぜなら――おっきくなっちゃった！」
　拓馬は剣を構える。軽やかに腰を振り――神霊剣！
　
　羅刹二体と灼滅者の戦闘は続いた。
　リュシールは目を閉じ、聖碑文を詠唱。そして、クロスグレイブの砲口より幾条もの光を乱射。
　銀都はすでに戦神降臨を行い、魂を燃焼させていた。逆朱雀の刃を炎で包み、銀都はそれを振り回す。羅刹を斬る！　燃やす！
　二種の攻撃に、羅刹一体が膝をつく。が、羅刹はその体勢のまま、腕を巨大化させる。
　その腕に、良太は胴を掴まれた。良太を潰そうと握力を加えてくる羅刹の手。
　良太は痛みを堪えつつ、体を捻り手から脱出。己を祭霊光で癒す。そして中君と結衣奈に目で合図。
　中君は良太に応え、羅刹を霊撃で牽制。
　結衣奈も良太の合図を受け取った。
　結衣奈は交通標識を両手で握り、羅刹の頭へフルスイング。羅刹の体が宙を舞い――消滅！

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　敵一体を倒し余裕ができた。結衣奈たちは前方のうずめ様へ目を向ける。
　前方では、すでにうずめ様に接近した灼滅者もいるようだ。
　野良・わんこ（d09625）が「うずめちゃん！　あーそびましょー！」うずめ様へ赤い光に包まれたごぼうで打撃を加えていた。
　あと少しで、目の前の羅刹を倒すことができる。わんこ達に合流もできるだろう。
　が、巨大な音。
　圧倒的な巨体のグレート定礎が見えた。うずめ様を守るため動き出したのだ。近くには、配下の定礎怪人の姿も見える。
　小町は仲間へ、
「グレート定礎に配下の怪人、うずめ様、目の前の羅刹。さっき撒いた羅刹もじきに追いつくやろ……無茶はあかんとおもう。帰ろ？」
　撤退条件には達していない。が、小町の言葉はもっとも。
　有力敵二体と羅刹どもを同時に相手にして、勝ち目は少ない。また敵に完全に囲まれれば撤退できなくなるだろう。
　灼滅者は彼女に同意。現段階での撤退を選択。
　刀真は緊張した声で、インカムに告げる。
「こちらは撤退します。皆さんもお気をつけて」

　灼滅者は敵群の中から脱出するべく、来た道を引き返す。
　が、先ほど追い抜いた羅刹達が灼滅者の退路を塞ごうとしている。
　刀真は道を拓くべく、腕の筋肉を盛り上げた。立ちはだかる羅刹の一体へ、槍を振る。相手の足を、槍の穂先で傷つける。研ぎ澄まされた刀真の技に、羅刹が「ぎゃあ」と声。
　小町は今、前衛にいた。刀真が傷つけた敵へ走る。大鎌「紅の三日月」を振り、羅刹の肌を裂く。ティアーズリッパー！
　小町の技は羅刹を流血させ、消滅させた。
　が――残る羅刹の数は決して少なくない。灼滅者へ二体の羅刹が殺到。彼らの前に小町は立つ。
　巨大な拳が、真空の刃が、小町を打ち、斬る。小町は仲間を守るため、立って構えたまま――意識を失った。
　小町の体を拓馬が肩に担ぐ。
「後は任せろ、全裸の俺に！」拓馬は激しく動く。露出した胸筋をぴくぴく動かし、巨大な白い塊を生み出し、敵にぶつける。
　他の者達も、拓馬に並び奮戦。が、さらに別の羅刹が戦列に加わり、灼滅者を囲む。灼滅者の傷が増えていく。
「灼滅者どもを倒せ、かかれぃ！」「おお！」
　羅刹らの声。
　今、彼らの猛攻を受ければ、倒れる者もでるだろう。
　インカムの無線から『クソッ、私達だけじゃ突破しきれねぇ！　すまねえが応援を頼む！！』
　切羽詰まった桐城・詠子（逆位置の正義・d08312）の声。
　他班も苦戦している。こちらへの助けは期待できない。このままでは全滅もありうる。
　しかし。
　羅刹らより早く陽坐が動く。
「俺は学園が好きです」
　拳を握りしめる。己と皆に迫った命の危険に、陽坐の体が変化し始めていた。
「皆の背と学園を守るために、俺はここに来た。仲間を救えるなら、俺は最後まで抗う！」
　ご当地怪人に変異した陽坐は走る。攻撃しかけていた羅刹の服を掴み、海に向かって投げ捨てる！
　周囲にいた他の羅刹らが、一様に陽坐を見た。羅刹らは一斉に陽坐に跳びかかっていく。
　銀都は目を見張る。
「敵の攻撃が陽坐に集中し始めて、俺たちへの包囲が解けた？　理由はわからねぇが……陽坐の決死の行動の結果、無駄にはできねぇ。皆、撤退だ！」
　銀都は叫ぶ。顔には、悔しさと、仲間の行動を無駄にしないという強い意志が、見えた。
　灼滅者は走り続ける。
　羅刹たちは追ってこない。
　他班は闇堕ちや戦闘不能者を出しつつも撤退に成功しつつあるようだ。森沢・心太（二代目天魁星・d10363）の班では発煙筒を煙幕に使用したようで、それも撤退に有利に働いた。
　こちらも敵群からの脱出は順調。しばらくすれば他班とも合流できるだろう。
　灼滅者は波と激戦の音を聞きつつ、生還への道をひた走る。
　リュシールは一度だけ背後を振り返る。
「必ず、助けるから……！」
　声が砂浜に響く。声は陽坐に届いただろうか。

作者：雪神あゆた	重傷：小野屋・小町（二面性の死神モドキ・d15372）  死亡：なし 闇堕ち：宮儀・陽坐（餃子を愛する宮っ子・d30203）
種類： 公開：2016年2月16日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
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