琵琶湖・田子の浦の戦い~その進む道は

    作者:天木一

    「伏見城の戦いはお疲れ様。みんなの力で勝利を掴む事ができたみたいだね」
     能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が集まった灼滅者達に声をかける。
    「この戦いでスサノオ壬生狼組の被害が少なかったのを機に、天海大僧正が全軍を琵琶湖に向かわせて、安土城怪人との決戦に挑もうとしてるみたいなんだ」
     既に軍勢は動き、琵琶湖大橋では両勢力のダークネスがにらみ合いを始め、小競り合いも始まっているようだ。
    「その天海大僧正勢力から要請があって、琵琶湖大橋で戦線を膠着させている間に、後方から安土城怪人の本拠地を攻撃して欲しいってことなんだよ」
     この提案は協定に沿ったもので、作戦に乗って協力するのはやぶさかではない。
    「だけどこの戦いに呼応して、新たな事件が発生したんだよ。第2次新宿防衛戦直後から行方をくらませていた軍艦島が、静岡県沖に現われて、田子の浦の海岸に上陸しようと近づいるんだ」
     このタイミングで軍艦島の出現は偶然ではない。
    「おそらくだけど、日本のご当地幹部、ザ・グレート定礎が、安土城怪人勢力と連携して作戦を行っていると考えられるんだ」
     もう一つの可能性は、エクスブレインの予知と別系統の予知能力を持つ、刺青羅刹・うずめ様による作戦が考えられる。
    「どちらの作戦にせよ、武蔵坂学園は戦力を二分して対抗する必要が出てきたんだよ」
     琵琶湖の戦いか、軍艦島の戦いか、作戦に参加する者たちで相談し、どちらに向かうか決めなくてはならない。
    「琵琶湖の戦いで大勝できれば安土城怪人の勢力を壊滅させる事も可能だよ。でも逆に負けると天海大僧正の勢力が壊滅することになってしまうよ」
     天海大僧正勢力が壊滅してもダークネスの勢力が減るだけだが、武蔵坂が協定を結んでいる以上、見殺しにしたと悪評が立ってしまう。その結果今後ダークネス勢力との交渉に影響が出る可能性がある。
    「田子の浦の戦いで大勝できれば軍艦島に逆侵攻して、軍艦島勢力を壊滅させる事が出来るかもしれないよ。逆に負けてしまうと軍艦島勢力が白の王勢力に合流する可能性が高いね」
     軍艦島勢力は規模としては大きくはない、だが有力なダークネスが多く存在している。それが戦力は大きいが有力な将が少ない白の王勢力と合流すれば、強大なダークネス組織が誕生する事になる。
    「戦力を2分すれば、両方で勝利できる可能性もあるけど、どちらでも負ける可能性も上がるってことだよね。だからよく考えて行動を決めてほしい」
     戦力の配分次第で、今回の戦いは大きく結果を変えることになるだろう。
    「どちらが正解、なんて事はないからね。みんなの選択次第で今後の勢力図が大きく塗り変わることになるんだ。重要な任務になるけど、みんなならきっと良い未来へと進むと信じてるよ」
     誠一郎の言葉に灼滅者達は深く頷く。そしてどう行動するのか真剣な表情で相談を始めた。


    参加者
    巽・空(白き龍・d00219)
    歌枕・めろ(迦陵頻伽・d03254)
    神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)
    伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)
    黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)
    深草・水鳥(眠り鳥・d20122)
    鈴鹿・美琴(二刀流・d20948)
    鷹嶺・征(炎の盾・d22564)

    ■リプレイ

    ●ふな寿司怪人
     琵琶湖大橋では天海大僧正軍と安土城怪人軍が互いに激しくぶつかりあっていた。安土城怪人側には幹部が揃い、総力戦の様相を呈している。
     その後方から襲い掛かるは百を優に超える灼滅者達。鬨の声を上げて安土城怪人軍に突っ込んだ。
    「後ろから軍勢やって!? 天海の伏兵かいな? くっ何とか止めなあかん!」
     振り向いたふな寿司の頭をした怪人が迎撃に向かってきた。
    「さてと新年早々に、色々と動き出すがなんとかして行かねばな……。弱音など行っておれんな……」
     小学生とは思えぬ凛々しさで、鈴鹿・美琴(二刀流・d20948)は雷を纏った拳を怪人の脇腹に突き刺した。
    「2方面作戦とはまったく忙しいですね。まずはきっちり、ふな寿司怪人を倒すとしますか」
     黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)が帯を飛ばし、それを追うように駆け寄る。怪人が帯を弾き飛ばすと、りんごは懐に飛び込んで鬼の如き拳を腹に叩き込んだ。
    「……あの時の、約束を、果たす、時が、来た、ようです、ね。……受けた、恩は、しっかり、返し、ます」
     胸に手を置いた神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)は帯を射出した。矢のように飛翔して前屈みになった怪人の胸に突き刺さる。
    「さぁて、かねてより約定のあった大一番であるな」
     気合十分と伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267)は前に立ち、盾を拡大すると仲間を守るように障壁を作る。
    「大僧正様は……盟友だし、いろいろ……お世話に、なったから……、助けよう……」
     俯きがちに深草・水鳥(眠り鳥・d20122)は呟き、足元の影を伸ばして怪人の体を覆い尽くす。
    「セイメイたちが気にならないといえば嘘になりますが、同盟相手を見捨てるわけにも行きません」
     この場での戦いに集中しようと、鷹嶺・征(炎の盾・d22564)は影から抜け出そうとする敵に駆け寄り、巨大な十字架を体当たりするようにぶつけた。
    「後の事を考えて体力温存したいところですが、まずは最初の戦いに勝つ事に集中しないとですね……!」
     この後も続くだろう戦いの事を考えながらも、巽・空(白き龍・d00219)は勢いよく駆け、淡い青色の光を纏った拳を足の止まった怪人の顔に叩き込む。続けて反対側からはウイングキャットの式部が肉球で怪人の顔を殴った。
    「まずは目の前の戦いに集中なの!」
     歌枕・めろ(迦陵頻伽・d03254)が黄色い標識を立て、仲間達に耐性を与える。
    「ぐぅっ小癪なやっちゃ! ふな寿司の甘美な香りを楽しんでみぃ!」
     怪人が大きく口を開けると、もわっと白い息が周囲に漂う。それが届いた瞬間、刺激的な悪臭が鼻に直撃した。まるで魚やチーズを混ぜて腐らせたような臭いだった。守りを強化していてもその臭いに思わず動きが止まる。
    「うわ……くさい……、食べてみれば、美味しいかもしれないけど……これは、無理……」
     心底嫌そうな顔をしながらも、水鳥は清涼な風を起こして異臭を消し去った。
    「臭いとは失礼なやっちゃ! ふな寿司の旨さを知ったらこれが病みつきになるんやで!」
     凄まじい臭気を放ちながら怪人が近づいてパンチを放つ。
    「うっ……離れていても臭いがきついのっ!」
     涙目になりながらも、めろは帯を伸ばして編み込み敵の攻撃を弾いた。
    「ふな寿司の臭いは聞いた事はあったけどここまでなんて……近寄りたくないけど、我慢だ我慢! たぁーっ!」
     うっと顔をしかめた空が嫌々ながらも気合を入れ、リズムに乗るように間合いを詰め、突き上げるように拳で顎を打つ。
    「……風で、送り返し、ます」
     蒼が腕を振るい、吹き荒れる風の刃が臭いを薙ぎ払うように怪人を切りつけた。
    「出来るなら刀の怪人を相手取りたいが……そう贅沢も言ってられないか? まぁ、自分のやれる事をやり通すだけだがな」
     続いて美琴が長刀を抜き放ち、踏み込みながら怪人を袈裟斬りに裂く。
    「心地よい香りや。もっとご馳走したるで!」
     怪人がもわっとまたもや白い靄のように息を撒き散らす。
    「鼻が痛くなるな、なら無呼吸で殴り倒すことにしよう」
     すっと息を止めた蓮太郎が一気に踏み込み、拳の連打を怪人に浴びせて吹き飛ばした。
    「臭いで人が殺せそうですね」
     そこに待ち構えたりんごが魔力を込めたロッドで怪人の後頭部を殴りつける。
    「ぎぇっなんつー洒落にならん攻撃をするんや!」
     頭を押さえて転がる怪人が起き上がる。
    「ならこっちも洒落にならん攻撃をさせてもらおか」
     怪人が手にしたのは悪臭を放つ内臓。それを投げつけてくる。それを式部が空中で受けるともだえて落下した。
    「待ちなさい。鮒寿司というものは、メスの卵巣以外の内臓を取り除いて作るものです。何故内臓があるんです」
     すぐさま近づいた征が気を込めた手で式部に付いた臓物を払って浄化する。
    「捨てるのはもったいなかろう、だからこうやって再利用してるんや!」
     調子に乗ったように贓物を投げまくる。
    「投げ捨てているだけだろう。この後の戦いもあるんでな、さっさと片付けさせてもらおうか」
     蓮太郎が仲間を護るように臓物を盾で防ぎながら前進する。
    「近づくだけで涙が勝手に……くそーっ!」
     その後ろから近づき、目を充血させながら空は拳を叩き込んだ。
    「そう遠慮せんでええ、もってけ泥棒!」
     怪人がお返しにと贓物を空に浴びせる。
    「こっちにこないでほしいの!」
    「食べ物とは、思えない、臭い……」
     後ろに下がっためろが黄色い標識を振って仲間の傷を癒し応援する。水鳥もその背後からこそこそと符を飛ばして仲間の守りを固める。
    「何を言う! そんな偏見はあかん! いっぺん食ってみ! 俺のはなんと十年ものやで!」
     怪人は口から臭気を放ちながら、顔の切り身を一つ掴んで近づいてくる。
    「お断りします、十年は長すぎでしょう」
     征が影を伸ばして怪人の体に巻きつけた。
    「刀が臭くなりそうだが、仕方ない」
     そこへ美琴がすれ違うように刀を振るう。胴を深く斬りつけ怪人から魚汁が溢れ出た。
    「蒼さん、援護お願いします!」
    「……全てを薙ぐ、風の刃よ、道を拓け……」
     りんごの言葉に蒼は頷き、風の刃を放ち異臭を放つ空気を切り裂いた。
    「蒼さんがくれた瞬間、無駄にしません! これで決めます!」
     そこへ突っ込んだりんごが刀を抜き打ち、鞘走りした刃が怪人の顔を両断した。
    「こんな……アホな、この滋賀が誇るふな寿司怪人がやられるわけ……」
     よろめく怪人の残った顔を蓮太郎が縛霊手で掴み、地面に叩き付けて押し潰した。
    「このまま伏見城に続き、安土城も落としてくれよう」
     その視線は次の戦場へと向けられていた。

    ●刀剣怪人
    「あそこ、あそこにいるなの!」
     めろが指差す先を見れば、多くの配下に護られた安土城怪人の姿が映る。向かおうとする前を顔が刀の刀剣怪人が遮る。
    「殿の元へは行かせん! 山城伝が一人、粟田口国綱がお相手しよう!」
    「邪魔をするなら倒すだけです! 行くよっ!」
     ヒップホップダンスのように空が軽快に蹴りを見舞うと、怪人は頭の刀剣で受け止めた。
    「某には護るべきお方がいる。この剣は護国の剣なり!」
     怪人は足を弾き、バランスを崩した空に斬り掛かる。
    「その志は見事なものですが、こちらにも引けぬ理由があります」
     割り込んだ征がその凶刃を剣で受け止める。その隙に式部が魔力を放つが、怪人は太刀を振るい切り裂いた。
    「刀剣怪人が相手なら不足は無い」
     横から美琴が長刀で斬り掛かる。それを怪人が受けるともう一本の刀を抜き放ち胴を斬りつけた。
    「某に一太刀当てるとは、ここまで来た猛者だけのことはある、だが負けぬ!」
     怪人は頭を振るい、太刀が鋭い勢いで襲い掛かる。
    「ここを抜けば安土城攻めだ。足踏みする暇はない、行かせてもらおう」
     蓮太郎が縛霊手でその太刀を受け止める。だが怪人は力を込めて押し込み刃が蓮太郎の肩を裂く。
    「連戦でも……頑張らないと……」
     横から水鳥の影が怪人の足に伸びて縛り上げていく。
    「安土城怪人まで後少しです、頑張りましょう」
     動きが止まったところにりんごが鬼の拳を振り抜く。
    「なんとぉ!」
     咄嗟に怪人は手にした鞘で受け止める。
    「……押し通り、ます……」
     そこへ跳躍した蒼が巨大な杭を撃ち出す。高速回転する杭が怪人の肩を直撃して吹き飛ばした。
    「ぬぅっ……この程度の傷、傷のうちに入らぬわ!」
     受身を取った怪人は戦意を滾らせて刃を向ける。その時だった、戦場に声が響き渡る。
    『自分がここに残って敵を食い止めるので、全軍撤退せよ』
     それは総大将である安土城怪人の言葉。
    「殿……くっ、命とあらばっ!」
     無念そうに妖刀怪人は身を翻す。
    「あ、逃げるのっ」
     駆け出す怪人をめろが思わず追おうとしたが、それを蓮太郎が止める。
    「大将首を取り向かおう」
     灼滅者達は逃げる者を追わずに狙いを安土城怪人に変えた。他のチームの灼滅者も集まり、安土城怪人を追い詰める。

    ●安土城怪人
    「まさか、ここで巨大化フードを使わされるとは思わなかったぞ」
     安土城怪人は隠し持っていた巨大化チョコレートを口にする。するとその体がぐんぐんと大きくなり、踏み潰されないよう下がった灼滅者は城の如き巨体を見上げる。
    「武力で天下統一を成し、ゆくゆくは世界征服を行なう我が野望、ここで潰えさせるわけにはいかぬ」
     『天下布武』と書かれた旗が大量に現れると、旗から無数のビームが放たれ周囲の灼滅者達を薙ぎ払う。
    「本当の城攻めのようだな、だがここまできて引くわけにもいくまい」
     咄嗟に盾を展開して仲間を守っていた蓮太郎は、受けた傷に膝をつきながらも怯まぬ視線を向けた。
    「……とんでもない攻撃、でも……」
     集まった灼滅者達の半数ほどを襲った攻撃に、水鳥は脅えながらも仲間を信じて歌い、美しい音色が蓮太郎の傷を癒す。
    「大きいけど、負けないよ!」
     空が果敢に城に拳を叩き込む。壁が崩れるが、その巨大さからすればほんの僅かな傷だった。
    「ここを落とせば我々の勝利だ。ならば全力を出し切るのみ!」
     美琴が二刀の刃を操り縦横無尽に斬り刻む。
    「全ての銃口がお前達を向いているぞ。怖かろう?」
     空中に三千丁の火縄銃の幻影が現れ、雨のような弾丸が後方にいる灼滅者達に向けて放たれた。
    「これは拙いですね」
     征が巨大な十字架を盾にしながら仲間を庇う。自らを癒しながらもダメージが蓄積していく。その横では式部もその身を盾にして弾丸を受け止めていた。
    「どこにいても攻撃が飛んでくるのっ!?」
     めろは黄色い標識を立てて攻撃が止むのを待つ。三千の弾丸が過ぎ去った後には地面に無数の穴が開いていた。
    「……これ以上、攻撃を、受けるのは、危険、です」
    「では攻撃に専念しましょう」
     蒼が帯を撃ち込み、りんごがロッドをフルスイングでぶち込む。続けて空が蹴り、蓮太郎が拳を打つ。
    「巡れ我が体内のサイキックエナジーよ」
     城にエネルギーが滾り、傷ついた体が修復されていく。
    「修復能力まであるのか」
    「直るよりも早く壊せばいいんだよ!」
     城に向かって美琴が長刀を振り下ろし、刀を横に薙ぐ。空はステップを踏むように拳から蹴りのコンビネーションを打ち込んでいく。
    「灼滅者よ、お前達は何故、これほどの力を持ちながら……!」
     苦々しげな声と共に旗から全周囲にビームが撃ち出される。
    「くるぞ!」
    「こちらへっ」
     蓮太郎と征が仲間の前に立ち、攻撃を受け止める。2人の全身がずだぼろとなり血が流れ落ちる。
    「がんばってなの!」
     めろが帯を巻きつけ、水鳥が歌い続けてその傷を少しでも癒そうとする。
    「……流石に、強い、です」
    「でも負ける訳にはいきません!」
     蒼が鞭剣を振り回し、りんごが拳を打ち下ろす。目に見える部位をとにかく攻撃していく。
    「グレイズモンキーよ、救援は無用。お前は生き延び、そして伝えるのだ」
     助けに戻ろうとするグレイズモンキーを止めながら、空中に浮かんだ三千の火縄銃が火を噴く。もはや前衛も後衛もない、どこにでも攻撃が飛んできた。仲間を守ろうと身を挺した式部が消し飛ぶ。
     それでも空は駆けて蹴りを放ち、りんごは周辺を瓦礫のように叩き潰す。蒼が杭で巨大な穴を開けると、美琴が飛び込んで傷口を広げるように斬り裂いていく。
    「まだだ、まだ倒れぬ。我が愛しき部下達が逃げ延びるまで、我は倒れるわけにはいかぬのだ」
     強き意思を籠めた巨体が壊れそうな体を繋ぎとめる。
     敵が回復する間に、めろと水鳥も仲間の体勢を立て直すように治療を施していく。傷の深い蓮太郎と征もまだ戦えると気力を振り絞る。
     回復すれども周囲を囲む灼滅者達の集団攻撃に、どんどんと安土城怪人の体が削られていく。
    「我が命の輝きを見よ、天下布武ビーーームぅ!」
     まるで太陽のように眩き光が灼滅者を薙ぎ払い、衝撃に灼滅者達は地面を転がる。
    「まだ負けないの!」
    「最後まで……諦めない……」
     攻撃を受けた前衛に向かってめろが黄色い標識で力を与え、水鳥が風を送って傷を癒していく。
    「ここが勝負所ですね」
    「……全ての、力を、ぶつけ、ます」
     りんごは刀を抜いて横に一閃させ城壁を裂き、そこに蒼が巨大な杭を突き立てる。
    「どれだけ大きくても、必ず倒してみせる!」
    「大きさは関係ない、ただ斬り裂くのみだ」
     空が瓦を蹴り砕き、そこに美琴は刀を突き刺して走り出し一直線に傷をつける。
    「これが三段撃ち三段目。この銃撃を耐えられたならば、お前達の勝ちだ」
     火縄銃が一斉に撃ち出された。逃げ場の無い銃弾の雨が降り注ぐ。
    「そう言われれば耐えてみせねばなるまい」
    「時代はもう戦国ではありません。引退していただきます」
     傷だらけの蓮太郎と征が最後の力で仲間を庇う。銃弾に体中に穴が開き、血が地面を濡らす。それでも耐え凌ぎとうとう銃撃が止んだ。
    「まだまだ!」
     空が重い体で攻撃を仕掛けようとした時、安土城怪人の巨体がゆっくりと傾いていく。そして地面に衝突した瞬間、轟音と共に麦色の大爆発が巻き起こった。

    ●勝利
    「勝った……?」
     土煙が止むと空は地面に沈んだまま動かぬ安土城怪人を見やる。
    「めろたちの勝ちなの!」
     めろが嬉しそうに飛び跳ねた。安堵したのか蓮太郎と征は力尽きて満身創痍の体が崩れ落ちる。
    「大丈夫ですか……」
     慌てて水鳥とめろが治療に当たる。
    「うむ、少々血が流れすぎただけであるな」
    「ええ、暫くは戦えそうにありません」
     仰向けに倒れた2人は動かぬ体でも満足そうに空を見上げた。
    「お疲れさまでした」
    「……あ、ありがとう、ござい、ます」
     りんごが蒼の頭を撫でると、蒼はちょっと恥ずかしそうに俯いた。
    「貴方もします?」
     その様子を羨ましそうに眺めていた水鳥にりんごが顔を向ける。すると恐る恐る水鳥が近づき、頭を嬉しそうに撫でられた。
    「これで琵琶湖の戦いは決着か、田子の浦の方はどうなっているのか……」
     美琴はもう一つの遠い戦場へ視線を向けた。

    作者:天木一 重傷:伊庭・蓮太郎(修羅が如く・d05267) 鷹嶺・征(炎の盾・d22564) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年2月16日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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