琵琶湖・田子の浦の戦い~極限の二択

    作者:陵かなめ

    ●状況連絡
     千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)から、教室に集まった灼滅者達にこのような説明があった。
    「伏見城の戦いは無事に勝利する事ができたんだよ」
     この戦いでスサノオ壬生狼組の被害が少なかった事もあり、天海大僧正は、全軍を琵琶湖に向かわせて、安土城怪人との決戦に挑もうとしているようだ。
    「すでに、琵琶湖大橋では両勢力のダークネスがにらみ合いを始めてて、小競り合いも始まっているようなんだよ」
     天海大僧正勢力からは、自分達が琵琶湖大橋で戦線を膠着させている間に、後方から安土城怪人の本拠地を攻撃して欲しいという要請が入っている。
     この要請は協定に沿ったもので、問題は無い。
    「けどね」
     太郎は表情を引き締め、続けた。
     この戦いに呼応して、想定していない事件が発生してしまったのだ。
    「第2次新宿防衛戦直後から行方をくらませていた軍艦島が、静岡県沖に出現して、田子の浦の海岸に上陸しようと近づいてきたんだよ」
     表情を曇らせる灼滅者達を見て、太郎も声のトーンを落とした。
    「軍艦島の出現は偶然という事はありえないよ」
     おそらく、日本のご当地幹部であるザ・グレート定礎が、安土城怪人勢力と連携して作戦を行ったと想定される。
     あるいは、エクスブレインの予知と別系統の予知能力を持つ、刺青羅刹・うずめ様による作戦かもしれない。どちらにせよ、武蔵坂学園は戦力を二分して対応する必要がでてしまったのだ。
    「琵琶湖の戦いを優先するか、軍艦島の戦いを優先するか……。どちらが正しいかは判らないんだ。この作戦に参加するみんなの意思で、どちらの戦いに参加するか決定してください」
     
     次に太郎は今回の作戦の目的について説明した。
     琵琶湖の戦いに大勝利すれば、安土城怪人の勢力を壊滅させる事も可能となる。
     逆に、琵琶湖の戦いに敗北すれば、天海大僧正の軍勢は壊滅してしまう。
    「天海大僧正勢力が壊滅する事は、致命的な問題ではないんだけど、武蔵坂が協定を反故にして見殺しにしたという事になってしまうのは、今後のダークネス勢力との交渉などに悪影響を与えるかもしれないよね」
     もう一つの戦場である田子の浦の戦いに大勝利すれば、上陸しようとする軍艦島に逆侵攻して、軍艦島勢力を壊滅させる事が出来るかもしれない。
     逆に、田子の浦の戦いに敗北した場合、軍艦島勢力が白の王勢力に合流してしまう可能性が高くなると言う。
     軍艦島勢力は、勢力規模としては大きくない。しかし、有力なダークネスが多く参加してる。この軍艦島勢力と、戦力は大きいが有力な将が少ない白の王勢力と合流する事は、強大なダークネス組織の誕生を意味するため、阻止できるならば阻止するべきだろう。
    「戦力を2分して戦えば、両方で勝利できる可能性があがるけど、両方で敗北する可能性も高まるから、大きなリスクを抱える事になるよ」
     どのような結果が出たとしても、それが今後の情勢に大きな影響を与えるのは間違いないだろう。
     太郎は表情を引き締めくまのぬいぐるみを抱きしめる。
    「今回は、どの選択が正しいという事はないよ。どちらの戦場で戦うかはみんなにお任せするね。より良い未来につながるように、みんなの力を貸して下さい」
     そう締めくくり、説明を終えた。


    参加者
    室崎・のぞみ(世間知らずな神薙使い・d03790)
    琴鳴・縁(雪花の繭・d10393)
    夢代・炬燵(こたつ部員・d13671)
    狩家・利戈(無領無民の王・d15666)
    三和・悠仁(残夢の渦・d17133)
    居木・久良(ロケットハート・d18214)
    アレックス・ダークチェリー(ヒットマン紳士・d19526)
    守部・在方(日陰で瞳を借りる者・d34871)

    ■リプレイ


     琵琶湖大橋に多数のダークネスが集結していた。集まった灼滅者達は、安土城怪人の軍勢の後方から、今まさに攻め入ろうとしていた。
     敵は強力だが、灼滅者達の力があれば十分に勝機はあるだろう。
    「大事な局面ですね……。折角の安土城を潰すチャンスです、気を引き締めていきましょう」
     琴鳴・縁(雪花の繭・d10393)が仲間達を見た。足元には霊犬の清助の姿もある。
    「ド派手にぱあっと勝利の二文字を齎してやろうか!」
     狩家・利戈(無領無民の王・d15666)が答えた。
     それが鬨の声となる。
     灼滅者達は敵の軍勢に向かって一斉に走り出した。
    「待てっ!」
    「ここから先は行かせない! 本陣は俺達が守る!」
     目の前に二体の羅刹が飛び出してきた。
    「紫黒と黒檀ですか、伏見城では白の羅刹と戦いましたが、今度は黒なんですね」
     夢代・炬燵(こたつ部員・d13671)は、現れた敵の姿を見る。頭に黒曜石の角を生やした、大柄の男の羅刹達だ。武器は巨大化したその腕。紫黒が右腕を、黒檀が左腕を大きく異形化させている。
     潰し合ってもしょうがない。憎み合うのは辛いこと。
     でも今戦わなきゃいけない。憎むためじゃなく、笑うために、と。居木・久良(ロケットハート・d18214)が最前列に躍り出る。
    「俺は居木・久良。行くよ!」
     同盟を結んでいるなら、相手が何であれ誠実に敬意を持っていかねばならない。今回も思い切り行くと、ロケットハンマー『モーニング・グロウ』を構えた。
    「そうですね。天海僧正との盟約もありますし」
     守部・在方(日陰で瞳を借りる者・d34871)が縛霊手を構え、黒檀に向かって走り出す。
    「ふむ、仕留めたいターゲットが多いのも困りものだな」
     前衛の仲間が敵に向かっていく様を見ながらアレックス・ダークチェリー(ヒットマン紳士・d19526)はどす黒い殺気を吐き出した。
    「とはいえ、まずは目の前の標的からか。ククク……」
     殺気は渦を巻いて敵に向かい襲い掛かっていく。
    「はい。できるだけ早く、決着をつけましょう」
     三和・悠仁(残夢の渦・d17133)は影の先端を刃に変え、黒檀の身体を切り刻んだ。
    「くそ、こっちも行くぞ!!」
    「おう!」
     膝を付いた黒檀の背から、紫黒が飛び出してきた。右腕を大きく振り上げ勢い良く振り下ろす。
     その一撃は悠仁を狙ったものだ。
     だが、咄嗟に利戈が庇う。
    「おっと……お前の相手は、この俺だ!」
    「ふん。それがいつまで続くかな」
     紫黒はうっすらと笑い、利戈の体を蹴り飛ばした。
     その間に黒檀が傷を癒す風を呼んだようだ。攻撃と回復のタイミングは、良くあっていると思う。
     こちらも、室崎・のぞみ(世間知らずな神薙使い・d03790)がすぐに小光輪を飛ばし利戈の盾とした。
    「誰も傷つけたり、死なせたりしません」
     天海大僧正との同盟の義理立て、いや、それ以上に天海大僧正の生き様や思想に感じる部分があり、のぞみは彼らの力になりたいと思っている。
     休まず、仲間が次々に攻撃を繰り出した。


    「主を裏切った、君たちがいけないのだよ。判断を誤ったな」
     アレックスが漆黒の弾丸で黒檀の身体を貫いた。
     よろめく敵に在方が走り込み、炎を纏ったエアシューズで蹴り上げる。
    「今現在、琵琶湖周辺はどうなっているんでしょうね?」
     問いかけてみるが、返事は無かった。だが、できるだけ早く殲滅してしまいたいので、気にせずその場を飛びのく。
     地面に身体を打ちつけた黒檀は、呻きながら転がって身を起こした。
     その瞬間を、炬燵がデッドブラスターで撃つ。
    「守りの堅いディフェンダーには、毒でじわじわと蝕みましょう」
    「くそ、毒か……」
     顔をしかめる黒檀の隣から、紫黒が腕を振り上げた。
    「お前は回復に努めろ!」
     そう言って、風の刃を呼び起こし炬燵にぶつけて来る。
    「清助、しっかり皆さんを守るんですよ?」
     縁が清助に呼びかけると、清助が飛び出し炬燵を庇った。互いに庇い庇われながら、灼滅者達は羅刹の攻撃に耐えている。
    「おらおら! お得意の連携はどうしたよ!」
     集中的に攻撃し、敵の攻撃の手数を奪い、連携を阻止する。
     灼滅者の狙い通り、羅刹達は連携して攻撃ができなくなっていた。それを知って、利戈がさらに畳み掛ける。影に絡め取られ、黒檀が悲鳴を上げた。
    「もう一息です」
     のぞみが皆を励まし、癒しの風を招いて傷を癒す。
    「了解だよ。そこっ!」
     ありったけの炎を武器に乗せ、久良が最後の一撃を叩き込む。虫の息だった黒檀がそれで沈んだ。
    「あと一体。続けて行きましょう」
     続けて、紫黒を狙う。
     逃げようとする敵に追いつき、悠仁が蒐執鋏を放った。紫黒が痛みに顔をゆがめる。しかし、さすがに簡単には倒れない。斬られた場所をかばいながら走り、巨大な腕を振るってきた。
    「く、そっ」
     強力な一撃が利戈に向かう。
     そこに久良が滑り込んできた。
    「やらせないよ!」
     もう何度目か、紫黒の攻撃から仲間を庇う。
    「助かったぜ。大丈夫か?」
     利戈が久良の傷を見た。かなり激しい一撃だ。久良は頷き、のぞみを見る。
    「すぐに回復します」
     のぞみが急いでシールドリングをかけた。それでも、癒すことのできない傷は残る。いや、まだ、大丈夫。久良は立ち上がり、羅刹に向けてスターゲイザーを放った。
     紫黒の身体が吹き飛び、距離ができる。
    「よし、攻撃を集中させろ」
     自身も敵の死角に回り込みティアーズリッパーを放ちながら、アレックスが声を上げた。それに応じるように、仲間達が一斉に集中砲火をかける。たまらず紫黒が地面を転がり逃げた。
    「チャンスです」
     緋色のオーラを武器に宿し、縁は紫黒に斬りかかる。
    「ぐ……」
     弱りきった羅刹が苦悶の声をあげた。だが、恨みは無くとも容赦はしない。縁は、最後まで武器を振るいしっかりと敵に深い傷を負わせた。
    「これで終わり、ですね」
     最後に在方が踏み込み、急所を狙って殲術執刀法を放つ。それが決定打となり、紫黒は崩れ落ちた。


    「皆さん、無事ですか?」
     悠仁が皆の顔を見回し、そして辺りの状況を確認するように視線を走らせた。
     他の敵を相手にしていた灼滅者達も、次々に敵を撃破し敵の本陣へと進んでいるようだ。
     自分達は、まだ戦闘不能に陥っている者はいない。とは言え、前衛の仲間の体力の減りは激しい。だが、心霊手術を行っている時間は無さそうだ。それでも、戦えないわけじゃない。
     皆は頷き合い、敵の本陣、安土城怪人の元へと走った。その間に縁がディフェンダーに上がり、利戈と久良がスナイパーへ交代する。
    「あそこに安土城怪人が」
     在方が指差す方に、確かに安土城怪人の姿があった。その風貌、存在感、そして重圧感。間違いなく敵のトップに君臨する者である。その周辺には多数のダークネスの姿が見えた。
     ――行こう。
     周囲に居る学園の仲間達と足並みを揃えながら、戦場を駆けた。
     灼滅者達の攻勢に、安土城怪人の取り巻き達が応戦するようだ。
    「こっちに来るのは武者アンデッドかよ」
     アレックスがすばやく反応し、殺気を敵に叩き付けた。仲間達も一旦立ち止まり、武者アンデッドと交戦する。
    「大丈夫ですか?!」
     斬り付けられそうになった在方の前に立ち、縁が代わりにダメージを請け負った。先の戦闘の傷が完全に回復していない状態では、前衛の仲間に無理はさせられない。
     それでも灼滅者達の勢いは凄まじく、向かってきた敵を押し返す勢いで戦うことができた。
     2分が経ち、3分目に突入した時、その声が戦場全体に響き渡ったのだ。
    「自分がここに残って敵を食い止めるので、全軍撤退せよ」
     安土城怪人の大きな声だった。あるいは、このままでは勝ち目がないと考えた命令だったのかもしれない。灼滅者と戦っていたダークネス達が一斉に引いていく。撤退する敵を追いかけるように走り、攻撃を飛ばしながら安土城怪人へと迫る。
     今こそ安土城怪人を討ち取るチャンスだ。学園の仲間達もそう判断したのか、次々に安土城怪人の元へ走っていく。
    「行きましょう」
    「これが最後の戦いでしょうね」
     のぞみと炬燵が頷きあった。万全の態勢ではないが、あと一息で安土城怪人に届きそうだ。


     戦場には灼滅者達と安土城怪人のみが残った。
     灼滅者を待ち受けていた安土城怪人が、口を開いた。
    「まさか、ここで巨大化フードを使わされるとは思わなかったぞ」
     不敵に笑い、手にしていたチョコレートを口に運ぶ。
    「な、あれは……」
     悠仁がその光景に思わず声を上げた。周辺からも驚愕の声が上がる。
     巨大化チョコを食べた安土城怪人は、まさに城のような大きさへと、ぐんぐん巨大化していったのだ。
     灼滅者達は巨大化に巻き込まれないよう後退しつつ、戦う足場を探す。
     学園の仲間達は、安土城怪人を取り囲むように走りながら、散らばっていった。
    「行きましょう。まだ、戦えます」
     在方が武器を構える。
     その時、巨大化した安土城怪人が決意の一言を発した。
    「武力で天下統一を成し、ゆくゆくは世界征服を行なう我が野望、ここで潰えさせるわけにはいかぬ」
     瞬間、怪人の周囲に『天下布武』と書かれた旗が大量に出現する。あっと思った時には、その旗から強力なビームが放たれた。戦場全体に轟き渡る攻撃だ。他のチームにも、勿論自分達にも、その攻撃が降り注ぐ。
    「清助!」
     縁が声を上げた。悠仁を庇った清助が消滅したのだ。
    「止まらないで! 走りましょう」
     炬燵が声をかけ、漆黒の弾丸を放った。ここは敵の本陣で、最大の戦場だ。どこから攻撃が飛んでくるかも分からない。仲間達もすぐに反応し、走り出した。
    「回復が間に合いません、手を貸してください!」
     傷を負った前衛の仲間を清めの風で癒しながらのぞみが言う。
    「強い! さすが、一組織のトップ張るだけのことはあるぜ! 楽しくなってきたなぁ! ひゃっはー!」
     これに頷き、利戈が祭霊光で回復を助けた。
    「他のチームとは離れたか。仕方ない、私達はここから仕掛けよう」
     アレックスは巨大化した安土城怪人に向かってひた走り、斬撃を加える。動ける仲間達も、次々に攻撃を繰り出した。
    「全ての銃口がお前達を向いているぞ。怖かろう?」
     灼滅者達の攻撃を受けながら、怪人が笑う。
    「何?」
    「空を――」
     アレックスが空を見上げると同時に、空中に現れた三千丁の火縄銃の幻影が火を噴いた。その攻撃は後列の仲間に向けられる。
    「いけませんっ」
     すぐに縁が久良を庇いに走る。回復の手を持つ仲間達が、傷を負った仲間に回復のサイキックを飛ばした。
    「巡れ我が体内のサイキックエナジーよ」
     その間に、安土城怪人も体力を回復させているようだ。
    「こちらの攻撃も効いているよ。まだ行ける。手を休めず、頑張ろうね」
     久良は仲間を鼓舞するよう声をかけ、一気に怪人との距離を詰めた。怪人の一撃は、受ければ大ダメージだ。だが、相手が回復の手を挟むという事は、こちらの攻撃も届いているということ。久良は振り上げたロケットハンマーを振り上げ、力の限り叩き付けた。
    「灼滅者よ、お前達は何故、これほどの力を持ちながら……!」
     安土城怪人が言う。と同時に、前衛の仲間を狙って安土桃山天下布武ビームが降り注いだ。
    「この、一撃を、叩き込むまでは……!」
     攻撃を受け、くらくらする頭を振り、在方が足に力を込める。まだ、最後の力が残っている。まだ、走ることができる。ローラーダッシュの摩擦で生まれた炎を纏い、在方は怪人に飛び蹴りを食らわせた。
     続けてアレックスと炬燵がデッドブラスターを撃ち込み、悠仁が黙示録砲を放つ。
     利戈と縁はのぞみを助け回復に回っていた。
    「グレイズモンキーよ、救援は無用。お前は生き延び、そして伝えるのだ」
     三千丁の火縄銃の幻影から攻撃を繰り出しながら、怪人が叫ぶ。
    「グレイズモンキーは撤退するのでしょうか、いや、今は」
     できることなら戦ってみたかったけれど、と悠仁が首を振る。撤退か、それとも他の仲間が仕留めるか。今は分かりようがないし、自分達もそれどころではない。
     後衛の仲間の体力があからさまに減っている。
     もはやあの攻撃を防ぐ手立てがほとんどない状態だ。
     悠仁は、それでもと、影の先端を刃に変え、怪人の身体を切り裂いた。
    「まだだ、まだ倒れぬ。我が愛しき部下達が逃げ延びるまで、我は倒れるわけにはいかぬのだ」
     同じ戦場で戦う学園の仲間達も攻撃を集中させている。怪人が再び自身を回復させた。攻撃は効いているのだ。
    「伏見城で分かれた壬生狼組のお二人はここに来ているのでしょうか? 分かりませんね。それよりも、目の前の怪人です」
     炬燵はそう言って、制約の弾丸を撃ち込んだ。仲間達も、後に続く。
    「我が命の輝きを見よ、天下布武ビーーームぅ!」
     次に安土桃山天下布武ビームが放たれると、在方の身体が吹き飛んだ。
    「あ、……後は、任せ……ました」
     身体を岩に打ち付けられ、意識が飛ぶ。
    「守部さん!」
     のぞみの悲痛な叫びが木霊した。だが、今はどうしようもない。まだ動ける仲間に託し、必死で回復のサイキックを繰り出す。
    「頑張りましょう。きっと、あと少し……!」
     縁もラビリンスアーマーで守りを固めながら、自身の傷を回復させた。
    「潰し、穿ち、ぶち壊す! 我が拳に砕けぬものなど何もない! テメエの野望も、ここで、打ち砕いてやらあ!」
     利戈が影を宿し、敵に殴りかかっていく。
     動ける者は、なお攻撃を繰り返した。
     幾度もの攻撃を受け、安土城怪人は満身創痍に見える。だが、怪人は声を張り上げた。
    「これが三段撃ち三段目。この銃撃を耐えられたならば、お前達の勝ちだ」
     三度空中に現れた三千丁の火縄銃が火を噴く。
    「くっ、ここまでなのか?!」
     攻撃をまともに食らい、アレックスが膝を付いた。足に力が入らない。仲間の声が聞こえてくるけれど――。彼の意識が、ここで暗転した。
     その恐ろしい破壊の力に、倒れこむ灼滅者達。
     だが。
    「ならば、私達の勝利だ……!」
     戦場のどこかで、勇ましい声が上がった。
     ふらつく足で、久良がロケットハンマーを構えた。
    「行くよ!」
     自分を奮い立たせるように声を上げ、勢い良く叩きつける。
    「あの銃撃に、耐えました、から」
     蒐執鋏で少しずつでも回復していた悠仁は、まだこの場に立っている。最後の力で怪人の足元に潜り込み、ティアーズリッパーを放った。
     よろめく怪人を、戦場の誰かがひっくり返したようだ。
     粉塵を巻き起こし、城が倒れていく。
     止めにと、片腕を巨大異形化した炬燵が、すっと手を引いた。
     それを察し、他の仲間も手を止める。
    「あ、灼滅……ですね」
     安土城怪人は地面に沈んだまま動かない。
     炬燵の言葉に、仲間達はただ言葉もなく倒れた城を見た。
     次第にそうなのだと気付く。
     安土城怪人灼滅。
     勝利の拳を突き上げ、灼滅者達はそれを確信した。

    作者:陵かなめ 重傷:アレックス・ダークチェリー(ヒットマン紳士・d19526) 守部・在方(日陰で瞳を借りる者・d34871) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年2月16日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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