琵琶湖・田子の浦の戦い~二つの戦場に

    作者:幾夜緋琉

    ●琵琶湖・田子の浦の戦い~二つの戦場に
    「皆さん、お集まり戴けたようですね? それでは……早速ですが、依頼の説明を始めさせて頂きますね」
     と、野々宮・迷宵は、集まった灼滅者達に一礼すると、早速説明を始める。
    「先日の伏見城の戦い……皆様のおかげで、無事に勝利する事が出来ました、ありがとうございます」
    「この伏見城の戦いにおいて、スサノオ壬生組の被害が少なかった事もあり、天海大僧正は全軍、琵琶湖に向かわせ、安土城怪人との決戦に挑もうとしています。既に、琵琶湖大橋においては、両勢力のダークネスがにらみ合いを始めており、小競り合いも始まっています」
    「これについて、天海大僧正の勢力から、自分達が琵琶湖大橋で戦線を膠着させている間に、後方より安土城怪人の本拠地を攻撃して欲しい、という要請が入りました。この要請は、協定に沿ったものですから、問題は無いのですが……この戦いに応じて、想定していない事件が発生してしまったのです」
    「それは、第二新宿防衛戦直後から行方をくらませていた軍艦島。これが静岡県沖に出現し、田子の浦の海岸へと上陸しようと接近しているのです」
    「この軍艦等の出現は偶然という事ではないでしょう。恐らく……日本のご当地怪人幹部であるザ・グレート定礎が、安土城怪人勢力と連携し、作戦を行った物と想定出来ます」
    「もしかしたら、エクスブレインである私達の予知と別系統の予知能力を持つ、刺青羅刹のうずめ様による作戦かもしれません」
    「どちらにせよ……私達武蔵坂学園は、戦力を二分して対応する必要があります」
    「琵琶湖の戦いを優先するか、或いは軍艦等の戦いを優先するか……どちらが正しいかは解りません。作戦に参加する皆さんの意思で、どちらかを選ぶようお願いします」
     そして迷宵は、続けて詳細な説明を続ける。
    「琵琶湖の戦い……これに大勝利すれば、安土城怪人の勢力の壊滅が可能です。逆に敗北すれば、天海大僧正の軍勢が壊滅する事になります。壊滅すること自体は致命的な問題ではないのですが、武蔵坂学園側が協定を反故にし、見殺しにしたという事となりかねません。今後のダークネス勢力との交渉などに悪影響を与えかねません」
    「田子の浦の戦いに大勝利を収めることが出来れば、上陸しようとする軍艦等に逆侵攻し、軍艦等勢力を壊滅させる事が出来るかも知れません。逆に、敗北した場合、軍艦等勢力が白の王勢力に合流する可能性が高くなります」
    「軍艦等勢力は勢力の規模としては大きくありませんが、有力なダークネスが多いのが特徴です。この軍艦等勢力と、勢力は大きいが有力な将の少ない白の王勢力が合流するという事は、強力なダークネス組織の誕生を意味します。これも阻止出来るならば、阻止するべきです」
    「戦力を二分して戦えば、両方で勝利する可能性は高まりますが、両方で敗北する可能性が高まります。どちらにせよリスクはありますが、この戦いの結果が、今後の情勢に大きな影響を与えるのは間違い在りません」
    「今回、どちらの選択が正しいという訳でもありません。どちらも正しい選択肢と言える、難しい状況です」
    「どちらの戦場で戦うのかは、皆さんにお任せ致します。より良い未来に繋がる様、皆さんの力、お貸し下さい。宜しくお願い致します」
     と、ぺこりと頭を下げた。


    参加者
    黒洲・智慧(九十六種外道と織り成す般若・d00816)
    氷霄・あすか(高校生シャドウハンター・d02917)
    アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)
    如月・春香(クラッキングレッドムーン・d09535)
    三条院・榛(猿猴捉月・d14583)
    魅咲・狭霧(中学生神薙使い・d23911)
    真風・佳奈美(愛に踊る風・d26601)
    高原・清音(彼岸花と霞草を持つ娘・d31351)

    ■リプレイ

    ●二つの戦場
     琵琶湖における安土城怪人決戦。
     静岡県沖、田子の浦に現れた軍艦島。
     ……二つの戦場が同時に発生するという非常事態と、そのどちらかしか選択できないという状況。
     灼滅者達は、難しい選択肢を選ばなければならない所ではあるが……今、ここに居る灼滅者達は。
    「さて、ここからが本番ね……」
    「……ええ……緊張するわね……」
    「ええ……こんな大きな作戦、始めてです。ただでさえ、私弱いのに……こんな大きな作戦に参加しちゃって大丈夫なんでしょうか……?」
    「大丈夫大丈夫。そんなに気をやってたら本気を出せへんで?」
     と、氷霄・あすか(高校生シャドウハンター・d02917)、高原・清音(彼岸花と霞草を持つ娘・d31351)、真風・佳奈美(愛に踊る風・d26601)に三条院・榛(猿猴捉月・d14583)の会話。
     四人の会話の通り、琵琶湖にいた。
     灼滅者達が選んだのは、天海大僧正軍と共に、琵琶湖にて安土城怪人を討つ事。
     この琵琶湖には、安土城怪人勢力の主たる幹部が全員そろっているとともに、天海大僧正軍との約束もある。
    「天海大僧正さん達には……同盟のこともありますし、ラブリンスターさん救出の時にも御世話になりましたから……私達も、出来る限りの助力をして差し上げたいです……」
     と、アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)が小さく手を握ると、黒洲・智慧(九十六種外道と織り成す般若・d00816)と魅咲・狭霧(中学生神薙使い・d23911)も。
    「そうですね……恩義もありますし、それを反故にするのも好きません。今後の事も考えると、約束を破るのも後後面倒な事になりそうですしね」
    「ええ。天海さんは同盟相手です。その同盟を簡単に破棄すれば、その噂が広まる可能性すらあります。軍艦島も心配ではありますが……今は、こちらに集中するとしましょう」
     そんな仲間達の言葉に頷き、如月・春香(クラッキングレッドムーン・d09535)は。
    「……了解。みんな、インカムは聞こえてる?」
    「ええ……大丈夫です」
     インカムの通信状況、音声もクリア。
     他班との通信状況も問題無い事を確認。
     そして……。
    「そういえば、天海おじいちゃんって無事なのかな? 心配……」
     ふと、佳奈美が呟いた言葉。
     それにアリス、榛が。
    「うん……そうですね……」
    「せやな。まぁ……今は信じとくしかあらへん。と……そろそろの様や。皆、行くで」
     と呟き、そして灼滅者達は、安土城怪人の元へと向かうのであった。

    ●琵琶湖の命
     そして……灼滅者達は、一気阿世に安土城怪人の本陣へと仕掛ける。
     灼滅者達の襲撃に対し、安土城怪人を護る為に、ソロモンの大悪魔、サガンが召喚した配下と思しき、牛人型ソロモンの悪魔達が立ち向かってくる。
     多数のソロモンの悪魔達は、ここは決して通さんと言わんばかりに、大きな斧の様な物を構えて攻撃してくる。
     そんな大悪魔の攻撃を、鋭い動きで躱す智慧。
     幸い、その攻撃の動きが大きいため、しっかり敵の動きを見ていれば、躱す事自体はそこまで難しいものではない。
     しかしながら、ハイパワーの攻撃力をそのまま受けてしまえば、即重傷の可能性もある。
     だからこそ、しっかり動きを見極めつつ……その隙間を縫って、攻撃。
    「……行くわね」
    「ええ……」
     と、春香と佳奈美の二人が頷き合い、オルタナティブクラッシュをダブルで叩き込むと、更にディフェンダーの智慧、あすか、春香のビハインド、チアキがそれぞれ閃光百裂拳、レイザースラスト、霊撃と続けて行く。
     そんな前衛陣に対し、後衛陣にはスナイパーの榛、清音は抗雷撃とフリージングデスで攻撃。
     メディックのアリス、狭霧は、癒しの矢で狙アップを付与為つつ、攻撃を待ち構え、その攻撃を受けたらイエローサインで回復。
     ……前衛と後衛、それぞれの動きを行いながら、ソロモンの悪魔達を確実に一匹ずつ、集中攻撃で倒して行く様にする。
     一撃一撃が強力な牛人型ソロモンの悪魔の攻撃は、当たらなければそこまで脅威ではない。
     そして次のターン……クラッシャーの春香、佳奈美が今度はセイクリッドクロスと光刃放出で大きな傷を叩きつけると、あすかはラビリンスアーマーで仲間達の防御を片目、チアキが霊撃で攻撃……そして智慧がティアーズリッパー。
     そしてスナイパーの榛がクルセイドスラッシュ、清音のティアーズリッパー、更にアリスが影喰らいと立て続けて攻撃……そして狭霧も、レイザースラストで更に攻撃。
     ……二ターン目でも、なかなかの大ダメージを受けたソロモンの悪魔達。
     そして3ターン目……同様に悪魔の一匹を、半分以上削り、少しソロモンの悪魔達に危うさが出てきた、その時。
    「自分がここに残って敵を食い止める、全軍退避せよ!!」
     突如響いてきた言葉……それが、後ろの本陣にいた、安土城怪人の物であると気付く。
     そしてその撤退命令に従い、ソロモンの悪魔達は……灼滅者達に背を向け、一気に撤退していく。
    「……皆さん、一気に安土城怪人へ接近しましょう」
     とアリスの言葉に従い、撤退するソロモンの悪魔達に背後からの一撃を食らわせながら前へと進んでいく。
     そして、安土城怪人の所まで近づいた所で……。
    「まさか……ここで巨大化フードを使わされるとは思わなかったぞ」
     と言いながら、隠し持っていたチョコレートを口へ放り込む。
     ……すると、みるみる内に、安土城怪人の体は巨大化……まるで城の様な大きな体躯になる。
     その巨大化に、流石に圧倒され、一歩後ろへと下がる……他の仲間達も、攻撃しつつも、数歩距離を取る。
     ……そして、灼滅者達が周囲を取り囲むように対峙……そして。
    「武力で天下統一を成し、ゆくゆくは世界征服を行う我が野望、ここで潰えさせるわけにはいかぬ!」
     と安土城怪人は、周囲に『天下布武』と標された旗を大量に出現させ、そしてその旗から天下を部で統一する強力なビーム攻撃……安土桃山天下布武ビームを放つ。
     その強力なビーム攻撃は、前衛陣のエリアを一気に灼く……ディフェンダーの三人が、クラッシャーの二人をカバーリング。
     すぐにアリスと狭霧が、後衛から回復を施し、更にディフェンダー三人は、それぞれ集気法、ラビリンスアーマーにて体力回復し戦線を維持……そして春香、佳奈美は。
    「これは……中々危険な相手ね……」
    「そうですね……ですが、ここで負ける訳にはいきませんよね」
     と頷き合い、ジャッジメントレイと、DESアシッド。
     ……そして榛がクルセイドスラッシュ、清音が橙色の小さな手帳をひもとき、そしてマジックミサイルを放つ。
     周りの仲間達からも、同じく猛攻で攻撃していく。
     が……流石に安土城怪人がそれで堪えているようには見えない。
     そして次のターン。
    「全ての銃口がお前達を向いているぞ、怖かろう?」
     と、空中に三千丁の火縄銃の幻影が現れ、一斉掃射……長篠式三千丁銃撃ダイナミック。
     この攻撃が牙を剥くのは、後衛陣の榛、清音、アリスと狭霧。
     一斉掃射の攻撃、三千丁の銃に狙われるというのは、正しく恐怖。
     ……流石にこの攻撃を受けて、少し危険を感じる。
     が……こっちには多くの仲間が居る。仲間達を信じ、スナイパー、メディックはそれぞれ自分達を回復し、前衛陣は攻撃を継続。
     そして、次の刻。
    「巡れ我が体内のサイキックエナジーよ」
     と、安土城怪人は告げると、体中のサイキックの巡りを活性化し、自分を回復。
     回復するからこそ、そのタイミングで全員、全力攻撃を嗾ける。
     ……そんな灼滅者達の諦めない動きと、働きに……安土城怪人は次の刻。
    「灼滅者よ。お前達は何故、これほどの力を持ちながら……!」
     と声を上げながら、再度安土桃山天下布武ビームを放つ。
     そんな安土城怪人の言葉に対し、智慧とあすかが。
    「……答えは簡単ですよ。約束、です」
    「ええ……天海大僧正との約束……それを果たすだけです」
     ……しかしそんな二人の言葉に対し、何等答えを返すことは無い安土城怪人。
     と、そんな安土城怪人の危険を感じ取ったのか、加勢しようと接近してくるのはグレイズモンキー。
     しかし、グレイズモンキーに対し、安土城怪人は。
    「グレイズモンキーよ、救援は無用。お前は生き延び、そして伝えるのだ」
     と声を上げて、更に長篠式三千丁銃撃ダイナミックで射撃。
     ……前衛、後衛を交互に攻撃し、合間に自己回復を繰り返す安土城怪人は、仲間達を撤退させ、自分が殿を努める動きをしている。
     ……ある意味、その所作は素晴らしい物である。
     更に多くの灼滅者達を相手に、対等の戦いをしているのは……やはりご当地怪人の主格の一人であるからこそ、と言えるだろう。
    「まだだ、まだ倒れぬ。我が愛しき部下達が逃げ延びるまで、我は倒れるわけにはいかぬのだ!!」
     と、自己回復を行いながらも、仲間を思う言葉を叫ぶ。
    「……本当、その覚悟は素晴らしいですね……敵で無ければ、尊敬できる所なのですが……」
     と佳奈美の言葉に、仲間達も頷く。
     そして……ソロモンの悪魔達との戦いから、経る事12ターン目。
    「我が命の輝きを見よ、天下布武ビーーーームぅ!」
     と安土桃山天下布武ビームを仕掛けるが……彼自身の疲弊状況は明らかに大きくなっているのがみてとれる。
    「どうやら、かなり疲弊している様ですね……」
     と、アリスが呟きながら、影喰らい、清音はフリージングデス、榛が抗雷撃、挟撃が神薙刃で攻めれば、春香、佳奈美、智慧、あすか、千秋の前衛陣も連携。
     大きく体力が削れた安土城怪人……そして。
    「これが三段撃ち三段目。この銃撃を耐えられたのならば、お前達の勝ちだ」
     と言い放ち、長篠式三千丁銃撃ダイナミックを放火。
     その一撃は、後衛陣を集中砲火……しかし、その攻撃で、灼滅者達が倒れる事はない。
    「……負けない。絶対に……」
     と春香の覚悟の言葉と共に、佳奈美もDCPキャノンで攻撃。
     ……ガツガツと体力を削り……そして……仲間の撃ち出した氷の弾丸が……安土城怪人の身を貫き……安土城怪人は。
    「……灼滅……された様ですね」
     と、狭霧が呟き……安土城怪人は、灼滅者達の手により、灼滅されたのである。

    ●大勝の旗の下
     そして……安土城怪人が崩れ墜ち……周りの仲間達から、勝利の歓声があがる。
     ……倒したのだ、安土城怪人を。少し信じられないかもしれないが……確かに、倒したのである。
     その歓声が実感に変り、そして。
    「みんなお疲れ様……」
     と、清音の労いの言葉に、榛、智慧が。
    「そやね。ほんま皆、お疲れ様や」
    「ええ……無事に勝利を収める事が出来ましたね。軍艦島の方がどうなっているかは解りませんが……こちらの安土城怪人側は、大勝利を収められた、という事でしょうかね」
    「やろうな。まぁ……半数以上の戦力がこっちに裂かれてた様やし」
     そんな仲間達の言葉に頷きながら、清音は持ってきたカバンの方から。
    「……よかったらいる?」
     と、籠に入ったチョコチップクッキーと、水筒に入ったコーヒーを差し出す。
    「お、サンクスや」
     にこっと微笑む榛、そして仲間達も、崛起ーとコーヒーを飲んで、暖を取る。
     ……そして、暖を取りながら、ふとアリスが。
    「しかし……なぜ……どちらの側にも、ソロモンの大悪魔の配下さんが……気になります……」
     ……そのふとした疑問に対し、誰かが答えを知っている訳でも無い。
     何にしても、今の事実は、天海大僧正の約束を果たし、安土城怪人を倒したという事。
    「まぁこの後がどうなるかはわかりませんが……事態は大きく動くかもしれませんね……」
    「そうですね……」
     あすかに頷く狭霧。
     ……漫然から急転。
     軍艦島の結果も、まもなく判明することだろう……その時まで、灼滅者達は一時の勝利に勝ち鬨を上げるのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年2月16日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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