出現、KKLB団

    作者:聖山葵

     KKLB団という謎の団体が存在するという噂がある。
     KKLB団とは、「勝手に唐揚げにレモンをかける奴を撲滅する団」の略称であり、日夜「周囲にことわりなく唐揚げにレモン汁をぶっかける」輩を撲滅する為人知れず戦っているのだとか。


    「そう言う訳で、あなたなんてKKLB団にやっつけられちゃえばいいのよ!」
    「は?」
     ビシッと隣を歩く青年を指さしたのは、OLっぽい女性だった。仕事帰りなのか青年の方もスーツ姿で、先程数人の同僚と別れたばかりだった。
    「何がそう言う訳っすか、そこにレモンがあるなら絞るのが当然じゃないっすか?」
    「何が当然よ、あのお店の唐揚げ、美味しいって評判だったから楽しみにしていたのに……」
     漂い始めた険悪なムードは、ここまでの流れからするにの青年の空気の読めない行動が発端なのだろう。
    「だいたい断わ」
    「待ていっ!」
     更に噛み付こうとした女性の声を遮ったのは、路地裏に響き渡る男の声。
    「そこの貴様!」
    「その悪行」
    「許し」
    「難し!」
     二人の行く手を遮るように現れたのが、右手にレモンを持った覆面姿の男達だった時点で、女性の方は思い至るものがあったのかもしれない。
    「我々は」
    「勝手に唐揚げにレモンをかける奴を撲滅する団!」
    「嘘っ、本当に居た?!」
     まさかと小声で洩らしていた女性は思わず口元に手をやり。
    「あ……」
     青年の方は覆面集団が醸し出す威圧感に思わず後ずさる。
    「ゆくぞっ!」
     だが、遅かったのだ。彼らが本当にKKLB団なら――
    「唐揚げに勝手にレモンをかけた人を見逃すはずは」
     ない。
    「うぎゃぁぁぁぁっ」
     羽交い締めにされた上、まぶたを押さえつけられた青年がレモンの皮の汁を目に飛ばされて悶絶する。
    「これはホンの挨拶代わりだ。貴様には己の犯した罪の愚かしさを心存分味わって貰うとしよう」
     数時間後、病院に担ぎ込まれた青年は一命を取り留めた。だが、以後唐揚げにレモンを搾ってかけることはなかったという。
     
     




    「と言う訳で、都市伝説が出現した。都市伝説の説明は必要か?」
     都市伝説とは一般人の恐怖や畏れなどのマイナスの思念の塊が、サイキックエナジーと融合して生じた暴走体であり、バベルの鎖を持つが故に灼滅者でなければ対応が出来ない。
    「今回出現したのは、覆面をかぶった数名の男という姿の都市伝説だ」
     その名も『勝手に唐揚げにレモンをかける奴を撲滅する団』。
    「やつらは『ことわりなく唐揚げにレモンを搾った者』へレモンを駆使した拷問を行うと言う性質を持つ」
     ぶっちゃけ、条件がピンポイントな為に被害も出づらく、命を奪うというレベルには至らないので危険度はそれ程高くはないのだが。
    「不幸なことに既に犠牲者が出ている。さすがにこれ以上の被害を出す訳にもいかんのでな」
     唐揚げに勝手にレモンを搾る奴には同情できんがとしつつも、エクスブレインの少年は腕を組んだまま集まった灼滅者達を見返してくる。おそらくは、退治に赴いてくれと言うことなのだろう。
    「すまんな」
     灼滅者達が頷くのを見届けると少年は軽く頭を下げて説明に移った。
     
    「件の都市伝説は四人」
     全員がロケットハンマーのサイキックに似た効果の技を持ち、唐揚げにレモンを搾った者を優先的に襲ってくる。
    「近くに唐揚げが評判のラーメン屋があるのでな、ここで唐揚げを頼んで誰にもことわりないまま誰かがレモン汁を唐揚げにかければKKLB団は人気のない場所まで行ったところで現れ襲いかかってくるだろう」
     距離的にこの店がベストなのだと補足しつつ、少年は蛇腹状に折りたたまれた紙を灼滅者達へ差し出す。
    「唐揚げとラーメンの100円割引クーポンだ。良かったら使ってくれ」
     どうやらこれはエクスブレインからの餞別らしい。
    「討伐時間は夜八時頃、戦闘場所は店の右手を回り込んだ奥にある路地裏を推奨する」
     ここは推奨の時間帯なら人が通りかかることもなく、街灯があって明かりの必要もないのだとか。
    「路地裏と言っても意外と広いのでな」
     無理すれば横に四人並べる地形をどう活用するかも鍵だろうか。
    「忘れていた、クーポンが余ったら後で金を払うからお持ち帰りの唐揚げを狩ってきてくれると嬉しい」
     少年は微妙に公私混同すると、一つ頷き。
    「その、なんだ。気をつけてな」
     視線をそらしつつ灼滅者達を送り出した。
     


    参加者
    矛盾・七誌(中学生似非神職初段・d00132)
    紫月・灯夜(煉獄の殺人鬼・d00666)
    日向・摘佳(撲殺魔法少女・d01056)
    留守・正嗣(四穂の呑底・d01992)
    狐目・涼(ネクロポリタンは嗤う・d02229)
    丹生・蓮二(高校生殺人鬼・d03879)
    野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)
    月原・煌介(白砂月炎・d07908)

    ■リプレイ

    ●ご注文はおきまりですか
    「「いらっしゃいませー」」
     のれんをくぐった瞬間、複数の声が灼滅者達を出迎えた。
    「何名様ですか?」
    「四人です」
    「四人っす」
    「かしこまりました。四名様二組ご案内でーす」
     奥からやってくる店員に日向・摘佳(撲殺魔法少女・d01056)と月原・煌介(白砂月炎・d07908)が応じ。
    「どうぞこちらのお席へ、では注文が決まりましたらお手元のボタンで及び下さい」
     二組に分かれた灼滅者達を案内すると店員はメニューをテーブルに残し、去って行く。
    「何も言われませんでしたね」
    「そうだね」 
     野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)と紫月・灯夜(煉獄の殺人鬼・d00666)、二人ほど小学生が混じっていたからこそ店員に何か言われるのではとアキラは事前に対策を考えたのだが、仲間達と入店したからか補導されるようなこともない。
    「オレんち、とーちゃんがイシャで、かーちゃんがカンゴフだから、時々大きい兄ちゃんに夕飯食わせてもらってるんだ!」
    「へぇ、立派ねぇ。うちの子もそれぐらい下の子の面倒見てくれると」
     むしろ店内にいた一般客との話題の種ぐらいにしかならなくて。
    「セットもあるのか。唐揚げとラーメンとか、最強のコンボじゃん」
    「あ、俺は醤油ラーメンね! で、こっちが――」
    「半ラーメンじゃなくて、大きいの食わせろよー。子供だからってバカにすんなよ。全部食えるもん!」
     戻ってきた店員に丹生・蓮二(高校生殺人鬼・d03879)達がわいわい騒ぎつつ注文をし――。
    「お待たせしましたー」
    (「問題はここからか」)
     そう、全ては一行の頼んだ料理が運ばれてきてから始まった。
    (「始まりね」)
     アイコンタクトもなければ何らかの声を上げることもない。手の中に一枚のティッシュを握ったままレモンに向けて手を伸ばした摘佳は、レモンの側の唐揚げをティッシュ越しに確保すると確保に使っていない人差し指と親指でくし切りにされたレモンをつまみ上げ、一つのカタストロフを演出する。
    「……む」
     留守・正嗣(四穂の呑底・d01992)が顔をしかめるももう遅い。
    「勝手にかけるなよ」
    「ちょっと、何勝手にレモンかけてるの? せめて一言断ってよ」
    「ちょっと待て、酸っぱいの嫌だって言ったろー!」
    「なんだよ! そんなの掛けたら酸っぱくなっちゃうだろ!」
     二つの卓から上がる非難の声とブーイング、おそらくは隣のテーブルの物も混じっているのだろう。
    「レモンは明治時代より日本に輸入されている、我々にとって縁深い果物なのです」
    「摘佳、俺達同志っすよね」
     そんな中、摘佳は後ろめたいことなど何もないと言うかのように微笑んだ。無表情ながらに自分を見てくる煌介へ頷いて。
    「一言欲しかったな。そうすれば死守したというのに……」
    「そういうんは一言断り入れてからやるもんやろー?」
    「ですから、存分に掛けます。酸味と油のハーモニーをここに!」
     恨み言めいた正嗣の声も内心姑っぽいと苦笑しつつが狐目・涼(ネクロポリタンは嗤う・d02229)口にした文句もさらりと流し、行うは更なる追撃。
    「唐揚げは好き、レモンをかけても好きよ」
     と矛盾・七誌(中学生似非神職初段・d00132)の様に実際のところはレモンをかけても問題ない灼滅者もいるものの、都市伝説をおびき出すには憤るなり非難すべきところだ。
    (「……皆演技だよな」)
     胸中で思いつつも煌介は口に出さず批判され、横目でちらりとラーメンを食べていた七誌を見る。
    「何?」
     具材を先に食べ終え、レンゲにスープと麺を入れていたところで丁度目があって。
    「すんません、替え玉――」
    「食欲があるのは結構なことだけど、時計も見てね」
    「あー、もうそんな時間か」
     とんこつラーメンのスープから立ち上る湯気を顎に、涼は追加注文しようとしたが、時計の針が刺す位置を指摘されて諦める。
    「夜八時前には食べ終わろか」
     と言ったのは自分なのだ。そもそもエクスブレインからの推奨時間もあった。

    ●KKLB団です
    「ごちそうさま」
    「ありがとうございましたー」
     食事を終えた一行はラーメン屋を後にして、人気のない路地裏へと足を踏み入れる。
    「から揚げはレモンというより酢をかけたくなるんだがな……」
    「やっぱ、レモンは掛けない方が旨いよな!」
     まだ引き摺ったりダメ押ししている灼滅者が居るように見え聞こえるが、これも演技。
    「割引券もらえたんは嬉しいけど、どうせなら全額奢ってくれてもええのにな。依頼の必要経費やんかー」
     なんだかんだ言いつつも一行はラーメンと唐揚げを堪能して食事を終えたのだ。きっと不満なんて無いに違いない。
    「待ていっ!」
     だが、KKLB団の面々もとい都市伝説達は灼滅者達の内面まで見透かせなかったのだろう。路地裏に男の声が響き渡って灼滅者達は獲物が罠に掛かったことを知る。
    「そこの貴様とそこの少女!」
    「貴様等の悪行」
    「許し」
    「難し!」
     現れた覆面の男達はまだ気づいていなかった、唐揚げにレモンをかけた二名を除く面々も自分達の敵であることに。
    「それじゃ、芸舞を始めるか」
     正嗣がスレイヤーカードの封印を解いても。
    「我々は」
    「「勝手に唐揚げにレモンをかける奴を撲滅する団!」」
     気にせず名乗りを上げていたのだ。
    (「レモンかけるのはいいが、勝手にというのは確かに腹が立つ」)
    「ゆくぞ!」
     だからこそ。
    (「制裁を加えるのもいいが、病院送りまではやりすぎだ」)
    「なっ?!」
     己に向かって飛んでくる魔法の矢を知覚したのは直撃のコンマ数秒前、裁くべき相手へ向かって駆け出そうとした時だった。
    「見たか、俺の結界糸」
    「いや、どう見てもマジックミサイルだったと思うのだけど」
    「すまない、本当は結界糸、月光衝、鏖殺領域を切り替えつつ戦っていけたら良かったんだけどね」
     行使可能なサイキックがそのどれでもないのは、灯夜がきっと高度な情報戦を繰り広げるつもりだったのだろう。何はともあれ、予想外の方向から放たれた攻撃に突っ込んで来ようとした男達の動きは一瞬止まり。
    「くっ、卑きょばべっ?!」
    「悪いなぁ、けど……隙だらけやで?」
     不意打ちに激昂しつつ叫ぼうとした覆面男の一人が槍を回転させるが早いか突撃してきた涼の一撃に貫かれ、罵倒を中断させられ。
    「一つ聞くけど」
    「がぁあっ」
     立ち直る暇もなく上段の構えから繰り出された重い斬撃を見舞われていた。
    「酸っぱいのが嫌いなのか? それとも、勝手されるのが嫌なのか?」
     リズミカルにアスファルトを踏む蓮二からすれば、エクスブレインに詳細を聞いてふと思い浮かんだ疑問。後者だと自己完結を見はしたが、実際胴どうなのかを知るのは都市伝説の当人達のみ。
    「気持ちはわからないでもないが、やりすぎは良くないと思うぞ」
    「うぐっ」
    「オレだって負けてられねぇ」
     もっとも、男達に答える余裕など無かったのだが。鎌の力を根源とする黒き波動によって正嗣が男達を薙ぎ払い、アキラの撃ち出した必殺ビームも男達の一人を目掛けて直進していたのだから。
    「ぐああっ」
    「確かに、唐揚げレモン勝手にかけるのはどうかと思うの。だからといってひどい目に合わせる必要は無いんじゃないかしら?」
    「否っ」
     味方の盾になるよう分裂させた小光輪を飛ばす七誌の声に傷を押さえながら覆面の男が首を振る。
    「誰もが言葉だけで悔い改めるなら、我らは不要」
    「だが、現実はそうではないのだ。その場しのぎの謝罪の言葉を口にしただけで終わらせ、明くる日にはまた過ちを繰り返す」
    「教訓が必要なのだよ、悪しき行為を止めるにはっ!」
     攻撃されたから敵と見なしたのか、囮役の二人以外も視界に入れたまま覆面男の天に掲げたレモンが巨大化する。
    「受けてみるが良い、檸檬・大震撃っ!」
     地面に叩き付けた巨大レモンから衝撃波が飛び。
    「「おおおっ!」」
     二人の男が果汁っぽい尾を引きつつレモンを握った拳をほぼ同時に繰り出す。
    「っ……しかし、正解やったな。結構いたいで、これ」
     うち一方が涼に逸れたのは、先程の突撃に覆面男が怒りを覚えたから。
    「そうですね」
     バベルの鎖を瞳に集中させつつ傷を癒しながら、摘佳はロケットハンマーを振りかぶる。
    「つん、回復してやってくれ」
    「感謝、つん」
     霊犬のつんに癒され、礼の言葉を口にしながら立ち上がる煌介は目の前で繰り広げられる光景を眺める。
    「世界が求めているからこそ必要悪としての我々が居るのだっ、何故わからぬっ!」
    「わかんねーよ、どっちでもいいじゃん!」
     無駄にヒートアップする都市伝説と仲間のぶつかり合い。
    「……さて」
     黙って見ているつもりはなかった。煌介は噴き出した炎を解体ナイフに宿らせ。
    「俺は」
     タンと踏み出す音がアスファルトの上で弾けた。

    ●ご一緒にレモンは如何でしょう
    「食える物なら何でも美味く食う。レモン位好きにさせてやれっす」
    「熱っ、あぢぢ……」
     その一撃で、覆面男が燃え上がる。更にヒートアップという訳ではない、サイキックによって炎上したのだ。
    「っ」
     すぐ隣の男は摘佳のロケットハンマーへレモンを握った拳を叩き付け、飛びずさる。
    「何をやっている」
    「まずは貴様からだ」
    「殺気は良くもやってくれたなぁ?!」
     KKLB団からすれば最優先で狙うべきは煌介と摘佳の二人なのだが、怒りにかられた半数の団員はもはや制御不能といった態。
    「ぬうううぁぁっ!」
    「ほっと、ちょっと直線的過ぎやで」
     レモンと殲術道具の激しいぶつかり合いに果汁が飛び散り。
    「私にかけても美味しくないですよ」
    「流石にこっちまでは飛んでこないみたいね」
     顔に飛んだレモン果汁を拭う摘佳を後方から眺め、七誌は嘆息すると念のためどこからかタオルを取り出した。所謂タオル補正である。
    「すげー、準備万端じゃん」
     補正の使い方が違うような気もするが、おそらく気のせいだろう。
    「ほな、こっちの番や」
    「なっ」
     次の瞬間、声の主の姿が覆面男の視界から消え。
    「ぎゃぁぁぁっ」
     服ごと身体を切り裂かれた男は断末魔と共に崩れ落ちる。
    「まず、一人や。レモン汁で拷問とか色んな意味で痛いし」
     絶対勝たせてもらうわ、と涼は妖の槍に付着した液体をしごくことで振り払い。
    「へへ、調子良いじゃん。じゃあ俺もっ」
     味方が倒れ、KKLB団の面々が怯んだタイミングを見計って蓮二がアスファルトを蹴った。
    「これは先程の」
    「そうだ」
    「しまっ」
     高速で死角に回り込む立ち回りにあわせ、正嗣は黒き波動で別方向から覆面男達を薙ぎ払う。
    「がああっ、見事。見切らせぬ為連携で攻め」
    「オレもいるぜ」
    「うぐぬおぁっ」
     起きあがりながら男がかけようとした賞賛の言葉は、放たれたビームに中断された。
    「こちらも忘れて貰っちゃ困るっすよ」
     再び倒れ込む覆面男目掛け、煌介は飛んだ――しなやかに身体のバネを活かし。
    「貧乏人舐めるな」
     ギザギザの形状に変化した刃を濡らすのは、血かレモン汁か。
    「残り二人だね」
     一人、また一人と屠られてKKLB団はいつの間にか半数にまで数を減じ。
    「それじゃ、このまま片づけちゃおっか?」
    「ぬぅぅ」
     日本刀を鞘に戻しつつ灯夜は距離を詰める。灯夜を睨んで唸った覆面男までの距離を。
    「なめるなぁぁっ!」
     抜刀からの斬撃が当たったのは男の無防備な身体ではなく、かざされたレモンで。
    「あーあ」
     攻撃は止められた。
    「美味しいところ持って行かれちゃったかな」
     だが、同時に男の動きも一瞬止まっていて。
    「ナイスアシストです」
     弧を描いて迫るロケットハンマーの回転殴打が、次の瞬間男をぶっ飛ばした。
    「くらうが良い」
     アスファルトに弾んだ覆面男が起きあがるよりも早く、正嗣の影がその身を呑み込み。
    「ぐ、裁くのだ。許されざるも」
    「はい、そこまでよ」
     顔を上げた男は言葉を最後まで紡ぐこと能わず、七誌が飛ばした符の力に崩れ落ちる。
    「よくも皆をっ」
     残された最後の覆面男は潰れんばかりにレモンを握りしめながら拳を振りかぶった。
    「うおぉぉぉぉ」
     もはや戦力差から勝利は望めず、一矢報いようとしたのだろう。
    「よし、捕まえた」
    「へっ?!」
     走っていた身体が急にがくんと向きを変え、地面とのキスを強いられたのは、アキラが男を投げたからで。
    「ほな、仕上げと行こうか」
    「了解」
    「え、あ、ちょ、待」
     失速した男を待つのは、容赦のない集中攻撃。
    「っぎゃぁぁぁぁぁぁ」
     路地裏に男の悲鳴が木霊した。

    ●お持ち帰り
    (「灼滅って、こんなノリだったっけ……?」)
     勝利は事実。だが、今まで経験のない仲間達と得た勝利に煌介は戸惑う。
    「お疲れさん。ん、どうかしたか?」
     ただ、他者を労う仲間の声は心地よいもので。
    「……まぁ、良っか」
    「いや、そいつはこっちの台詞だけどな」
     頭を振った煌介は優しい光を瞳に湛え、自分の言葉に首を傾げつつ背を向けた蓮二を眺め。
    「これは評判になるだけのことは……レモンがないと、素の味わいが前面に出ますからね」
    「あ、ずりぃ」
     ティッシュの包みから取り出した唐揚げを口に運ぶ摘佳を見つけてアキラが声を上げた。一人だけレモンのかかっていない唐揚げを確保していたのだ、この非難は是非もなく。
    「そうか、あの時確保しておけば酢で……いや、まだ時間があるな。お土産を買って行こう」
     店を出た時のことを思い出して提案をしたのは、正嗣で。
    「あぁ、忘れそうになってた!」
     七誌がポンと手を打てば。
    「そうだよな、オレも友達に買ってかねぇと」
    「え?」
     アキラも提案に賛成する。おそらくエクスブレインのことはすっかり忘れているようだったが。
    「動いたらまた腹減ってきたな。もう一軒行くか?」
     続いて提案したのは、涼。
    「お土産を買って帰るか、ハシゴかか」
    「とりあえずクーポン残ってるし、先に唐揚げを買っていこう」
     エクスブレインが望んだのは先程の店の唐揚げなのだろうから。
    「いらっしゃいませー」
     再び店に戻った灼滅者達を店員の声が出迎え。
    「これで買えるだけくれっ!」
    「こっちも持ち帰りでお願いします」
    「わかりました、少々お時間頂きますがよろしいでしょうか?」
     注文して待つこと数分。
    「お待たせしましたー」
    「へへ、狩ってやったぜ、唐揚げ!」
    「えっ?」
    「あー、すんません。えっと……」
     何故か一名、店員から「何言ってるの」的な目で見られた唐揚げ狩人がいたものの、灼滅者達は無事お土産を手に入れて店を後にすることとなる。
    「で、どないする? ラーメン屋」
     その後、ラーメン屋のハシゴをしたかどうかについては定かではない。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年10月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 12
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