●都内某所
カルム・オリオル(グランシャリオ・d32368)は、こんな噂を耳にした。
『アイスを降らせる都市伝説が存在する』と……。
この都市伝説は複数のアイスが融合したような姿をしており、夏頃から住宅街に現れ、自由自在にアイスを降らせ、一般人に愛されていたらしい。
だが、冬の到来と共に都市伝説を慕っていた一般人達が次々と手のひらを返し、『こんな寒い時期に、アイスなんか食わねえよっ!』と言って冷たい反応をしたため、都市伝説が大激怒!
八つ当たり気味にアイスを降らせて、まわりに住む一般人達を困らせているようだ。
しかも、都市伝説のアイスはとても美味しく病みつきレベルなので、迂闊に食べると腹を壊してトイレとお友達になる可能性もあるので要注意。
そういった事も踏まえた上で、都市伝説を灼滅するのが今回の目的である。
参加者 | |
---|---|
普・通(正義を探求する凡人・d02987) |
皇・銀静(陰月・d03673) |
今井・来留(藁縋る・d19529) |
成田・樹彦(サウンドソルジャー・d21241) |
魅咲・狭霧(中学生神薙使い・d23911) |
安藤・ジェフ(夜なべ発明家・d30263) |
仮夢乃・流龍(夢を流離う女龍・d30266) |
滝峰・創司(徒然なるままに・d36399) |
●都内某所
「今回、灼滅するのは……アイスを降らせる都市伝説さんですか。アイスは好きですけど、八つ当たりで一般人の方に迷惑を掛けることに使うのは許せませんね」
魅咲・狭霧(中学生神薙使い・d23911)は事前に配られた資料を読みながら、都市伝説が確認された住宅街に向かっていた。
都市伝説は複数のアイスが融合したような姿をしており、去年の夏頃から住宅街に現れ、自由自在にアイスを降らせていたようだ。
そのおかげで、一般人達から愛されていた時期もあったようだが、冬の到来と共にまわりから煙たがられ、性格が歪んでしまったようである。
「冬に暖かい部屋でアイスを食べる贅沢も悪くはないのですけどね。……愚かですよ。都市伝説も、人も……」
皇・銀静(陰月・d03673)が何処か遠くを見つめて、深い溜息をもらす。
おそらく、一般人達が今でもアイスを必要としていれば、都市伝説が凶暴化する事もなかっただろう。
しかし、現実にはアイスを食べ飽きた一般人達によって、都市伝説は邪魔者扱いされていたため、性格が歪んでしまったのも仕方がないのかも知れない。
だからと言って、このまま放っておくわけにもいかないため、やはり灼滅する以外に選択肢はないだろう。
「……と言うか、人々に愛されたアイス……って洒落かな? そんなに評判がよかったなら、ちょっと食べてみたい気もするけど……」
滝峰・創司(徒然なるままに・d36399)が都市伝説のアイスに興味を持ち、アイス用の深皿とスプーンを持参した。
その上で、アイスの食べ過ぎで腹を壊す事がないようにするため、腹部にカイロを貼りつけた。
もちろん、相手は都市伝説。
そのため、常識では考えられないような方法を使って、相手を腹痛にさせる可能性もあるのだが、何もしないよりはマシだろう。
「でも、寒い時期に外で食べるのはちょっとなぁ……。でも、季節問わず風呂上がりとかに食べるのは美味しいよね!」
そう言って仮夢乃・流龍(夢を流離う女龍・d30266)が、ニコッと笑う。
「……もっと寒い所に行けばあ、アイスを食べる人が多いって気もするけど……そこまで移動するのは、さすがに無理かな? あはは♪」
今井・来留(藁縋る・d19529)が、能天気な笑みを浮かべる。
だが、都市伝説は噂から生まれた存在。
それ故に、そう言った噂が流れなければ、移動する事さえ出来ない可能性が高かった。
「……見つけた、見つけたぞおおおおおおお! 人間、人間だあああああああああああああ!」
次の瞬間、物陰から都市伝説が現れ、興奮した様子で叫び声を響かせた。
都市伝説が誰かにアイスを食べさせるため、今まで街を彷徨っていたようである。
しかし、都市伝説を恐れて(もしくは、相手がするのが面倒なので)誰も姿を現さなかったため、ストレスが溜まりに溜まっていたようだ。
「よほど、まわりに嫌われていたようだね。まあ、こんな寒い時期にアイスを食べさせようとすること自体、罰ゲームのようだから、嫌われても当然だと思うけど……」
成田・樹彦(サウンドソルジャー・d21241)が、都市伝説の前に陣取った。
おそらく、一般人達は都市伝説の姿に気付くと、ダッシュで逃げ回っていたのだろう。
そう思ってしまうほど、都市伝説からは必死さが感じられた。
「人間のワガママに振り回された、哀れな都市伝説ですね。せめて、苦しまないようにスッキリ消えてもらいましょうか」
安藤・ジェフ(夜なべ発明家・d30263)が、都市伝説の逃げ道を塞ぐ。
「ひょっとして、俺を倒しに来たのか? ……面白い! やれるものなら、やってみろ!」
それにきづいた都市伝説が、自信に満ちた表情を浮かべ、ジェフ達に対して言い放つ。
「この都市伝説は、教育し甲斐がありそうですね……ふふふ……」
そんな中、普・通(正義を探求する凡人・d02987)が含みのある笑みを浮かべて、都市伝説に視線を送るのであった。
●都市伝説
「教育……教育だと!? やれるものなら、やってみろ! ただし、俺に喧嘩を売った時点で、お前達は敵っ! 今までの恨み……お前達に全部、ぶつけてやる!」
都市伝説が殺気立った様子で叫び声を響かせた。
「今まで慕われて、ただでご馳走していたのに……。されてた側が急に手のひらを返すと、そりゃ怒るよねぇ」
創司が都市伝説に対して、ある程度の理解を示す。
「お前に何が分かるっ! 分かる訳がないっ! 分かる訳が……!」
都市伝説が吐き捨てるようにして叫び、大量のアイスを降らせていく。
それはすべて透明な袋の中に入っており、地面に落ちても食べる事の出来る安心仕様であった。
そこに何となく都市伝説の優しさを感じたものの、『いくら袋の中に入っているとは言え、地面に落ちたものを食べるのもなぁ』という気持ちを拭う事が出来なかった。
「私のルーツが七不思議使いだったら、都市伝説さんを吸収できたのですが……」
それを目の当たりにした狭霧が、残念そうにしながら、サウンドシャッターを使う
続いて来留が殺界形成を発動させ、念のため人払いをした。
「おお、これは美味しそうですね」
その間に、ジェフが携帯用コタツを置き、都市伝説が降らせたアイスを手に取った。
「どれどれ……、うおっ! 美味い! どうせなら、夏に出会いたかったよ! でも、いける! もっと食べよう!」
流龍も落ちていたアイスを拾い、それを口にした途端、瞳をランランと輝かせ、他のアイスも拾い始めた。
「確かに、これは美味しいですね。濃厚な甘さに滑らかな舌触り。きっと良い牛乳を使っているのでしょう」
ジェフも幸せそうに鼻歌を歌う。
「たまもいるかい?」
そう言って創司がウイングキャットのたまにアイスを見せる。
たまはアイスに興味津々のようだが、少し警戒しているのか、猫パンチを繰り出しつつ、それが安全なものか、危険なものなのか確かめていた。
「これもまた変な風景かもしれないしね♪ あはは♪」
そんな中、来留がのほほんと笑う。
都市伝説も満足した様子で、そんな来留達を眺めて、ウンウンと頷いた。
「とりあえず、僕は遠慮しておきますね」
銀静が警戒した様子で、都市伝説から離れていく。
ここ最近、こういった依頼に参加しているせいか、この時点で嫌な予感しかしない。
おそらく、目の前に置かれたアイスは、すべて都市伝説が作り出したもの。
すべてが幻か、そう錯覚させられているだけ。
そういった事を考えて、アイスを食べる事は、自ら地雷を踏むような行為であると判断したようである。
「……えっ? だったら、代わりに食べておきますね。それに、これなら、いくらでも食べられ……う、お腹が……」
その途端、ジェフが青ざめた表情を浮かべ、携帯用コタツから吹っ飛ぶ勢いで、公園のトイレに向かう。
「お、な、か、が…いったたたたた……! と、といれ……や、やばい、持たない! 小竜、助けて! トイレどこだーっ!」
流龍もダイナミックに地面を転がり、ジェフが入ったトイレのドアをリズミカルに叩いていく。
そのせいで、ジェフはゆっくりトイレに入る事が出来なくなり、『や、やめろおおおおおおおお!』と叫び声を響かせた。
「腹下しに効果があるか分からないけど……」
そんなふたりを心配して、樹彦がエンジェリックヴォイスを使う。
「まさか、アイスに毒を……」
一方、狭霧は都市伝説に対して、疑いの眼差しを送る。
「ご、誤解だっ! そんなモノ、入れる訳がないだろ。俺のアイスは安心、安全。子供からお年寄りまで愛されてきたアイスだ。俺に限ってそんな真似をするわけが……ハッ!」
そこで都市伝説が、ハッとした表情を浮かべた。
「もしかすると、俺の怒りと恨みがアイスの味を……」
都市伝説が信じられない様子で、自分の両手を眺める。
普通のアイスであれば、絶対にあり得ない事だが、都市伝説に限っては、十分にあり得る事だった。
「あなたは間違っています!」
すぐさま、通が都市伝説に鬼神変でツッコミを入れる。
「い、いきなり何をしやがる!」
都市伝説が涙目になって、通をジロリと睨む。
「そもそも、アイスはこんな事に使うモノじゃありません。まわりから愛想を尽かれて、嫌な気持ちになっていたのかも知れませんが、だからと言って何をやってもいい訳ではないんです。それに、寒い時だからこそ、食べられるアイスがあるじゃないですかっ!」
通が都市伝説を叱りつけながら、アイスクリームの外側をモチモチとした薄皮で包んだモノを渡す。
「こ、これは……!」
都市伝説が驚いた様子で口を開く。
それは都市伝説も、こよなく愛した、あのアイス。
誰もが知っているアレである。
「確かに、これは受けがいい。だが、俺は……自分の意志でアイスを選ぶ事が出来ないんだ!」
都市伝説が悔しさのあまり、その場に泣き崩れた。
おそらく、都市伝説なりに『この手があったか!』と思ったのだろう。
だが、その気持ちとは裏腹に、自分ではどうする事も出来ないため、一気に悲しい気持ちが込み上げてきたようである。
「何だか、ナノナノって大福アイスに似ているね♪ あはは♪」
そう言って来留がナノナノの身体をむにむにと触る。
しかし、ナノナノの気持ちは、微妙。
うっかりコタツの上に載っていると、頭から丸齧りにされてしまうと思ったのか、色々な意味で危機感を覚えているようだ。
「……あっ! 皆さんも食べたいですよね? お腹の事なんて心配無用ですよ? ちゃんと私が治しますから」
通が瞳孔の開いた目で、仲間達に笑みを浮かべる。
その上、断る事の出来ない空気。
迂闊に断るような真似をすれば、命すらも奪われかねない勢いだった。
「よくも嵌めてくれましたね……」
そんな中、ジェフがげっそりとした表情を浮かべ、トイレからフラフラと戻ってきた。
「ご、誤解だっ! わざとじゃないんだ、信じてくれ!」
これには都市伝説も動揺したのか、つらつらと言い訳を並べていく。
だが、トイレの中で地獄のような一時を味わったジェフにとっては、言葉の羅列。
何の説得力もないため、都市伝説に対して、怒りしか芽生えなかった。
「この状況で何を言っても無駄です」
銀静が都市伝説に冷たい視線を送り、螺旋槍を仕掛ける。
「……それじゃ、これで終わりにしようか」
続いて、樹彦が龍骨斬を仕掛け、都市伝説にトドメをさした。
その一撃を食らった都市伝説が断末魔を響かせ、まわりにあったアイスもろとも消滅した。
「あぁ、おいしかった。ごちそうさま」
創司が満足した様子で、都市伝説に別れを告げる。
しかし、都市伝説が消滅した事で、催眠状態から解放されてしまったため、何やら物足りない気持ちに包まれた。
「やっぱり、すべて幻でしたか」
狭霧がホッとした様子で溜息を漏らす。
どうやら、すべて都市伝説が作り出した幻だったらしく、跡形もなくアイスが消えていた。
「……あれ? まだ余ってますね。このまま残すわけにもいきませんから、みんなで食べましょうか」
そう言って通が自分のアイスを手に持ち、怖い笑顔を浮かべるのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年2月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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