神は存在した!

    ●都内某所
     この世に神は存在する、と頑なに信じ、その研究を進めていたオカルトマニア達がいた。
     彼らは自分達に都合よく神について解釈しており、『その存在を否定する者には、必ず天罰が下る』と思い込んでいたようである。
     ……そのせいかも知れない。
     都市伝説が生まれてしまったのは……。

    「幸せってなんだろうな?」
     そんな事を考えつつ、神崎・ヤマトが今回の依頼を語り始めた。

     今回、倒すべき相手は、神。
     ……と言っても、紛い物だ。
     東洋から西洋まで色んなものがごっちゃになって混沌と化した存在。
     神の姿を真似た出来そこない。
     ぶっちゃけ、邪神とかそっちの方が、しっくり来る外見をしている。
     オカルトマニア達はコイツを神として崇め、生贄を捧げようとしているようだ。
     都市伝説は『光あれ』と呟き、相手を光に包んで消し去ってしまう。
     オカルトマニア達はこれを見て『き、奇跡だ!』と喜ぶが、間違いなく邪魔をしてくるから、どこかに避難させてくれ。
     ちなみにコイツらは偏った知識しか持っておらず、裏付けなど全くないような事を鵜呑みにしているから、話を聞いたところで時間の無駄だ。
     あまり時間を掛け過ぎると、『コイツらを生贄にしろ!』と言う事になるから、早めにカタをつけてくれ。


    参加者
    アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)
    東雲・由宇(神の僕(自称)・d01218)
    二条・翠(翡翠色の影・d02030)
    遊城・律(炎の大和魂・d03218)
    八嶋・源一郎(春風駘蕩・d03269)
    藤倉・大樹(中学生シャドウハンター・d03818)
    多々良・鞴(中学生エクソシスト・d05061)
    新堂・辰人(夜闇の魔法戦士・d07100)

    ■リプレイ

    ●唯一神
    「10月やったら、神様はみんな出雲に行ってはるやろになぁ。まったく面倒やわぁ……。ま、でもここの神様は行っても入れてもらえなさそやなー。大きいお友達がいっぱいやなぁ。小さくて潰されたりせんか不安に……。……じ、自分で小さいて……。いや、小さくない! つか、成長期はこれからやし! 小さいとか言うな!」
     必死になって言い訳をしながら、二条・翠(翡翠色の影・d02030)が都市伝説の確認されたアパートの一室に向かう。
     この場所にはオカルトマニアが集まっており、自分達が思い描いた神を信仰し、その教えを広めていたようである。
     もちろん、きちんとした知識があれば、彼らの矛盾に気づくのだが、集まっているのは、その考えを信じる者ばかり。
     誰も否定するものなどいない。
     故に生まれてしまったのかも知れない、都市伝説が……。
    「まあ、神っていうのは人の信仰が生み出した物だから、件のオカルトマニア達にとっては、『本物の神』なのかもしれないけどね。まぁ、だからって、やることは変わらないんだけど……」
     険しい表情を浮かべながら、新堂・辰人(夜闇の魔法戦士・d07100)がドアをノックする。
     その途端、オカルトマニアのひとりがドアの隙間から覗き込み、『同志よ、神は降臨した!』と言って辰人達を部屋の中に招き入れた。
     ……部屋の中には都市伝説。
     今のところ、攻撃を仕掛けて来る様子はない。
    「お使いだっ!」
     プラチナチケットを使ってマニアの一員と思い込ませ、東雲・由宇(神の僕(自称)・d01218)が入り口の方に注目させて両手を合わせた。
     オカルトマニア達も何事かと思い、一斉に入り口の方に視線を送る。
    「神からの天啓を受けた」
     そこにはゴージャスモードで、神の使いに扮した遊城・律(炎の大和魂・d03218)が立っていた。
     だが、本物の神が目の前にいるのにもかかわらず、使いのものがいるという矛盾。
     普通に考えれば、どちらかがニセモノという事になる。
     しかし、オカルトマニア達の神……すなわち、都市伝説は、彼らが思い描いた想像通りの姿。
     それに反して、律の姿は……何か違う。
     神と言えば神だが、オカルトマニア達が思い描いていた姿とは違っていた。
    「……神はこう告げておる。この場から逃げぬと天罰が下ると……、無事逃げる事が出来たら、また拝める日も来るであろう……」
     オカルトマニア達の顔色を窺いながら、アリシア・ウィンストン(美し過ぎる魔法少女・d00199)が口を開く。
     ……いまさら後戻りは出来ない。
     それに、このまま彼らを見捨てて逃げてしまえば、間違いなく都市伝説の餌食になってしまう。
    「神の使いがこの場を離れろとおっしゃってるんだ、従わないと天罰が…」
     プラチナチケットを使って言葉に説得力を持たせ、藤倉・大樹(中学生シャドウハンター・d03818) がオカルトマニアの説得を試みる。
     だが、逆にそれが裏目に出た。
     明らかに自分達の考えとは異なる存在。
     すなわち、邪教。
     オカルトマニアの脳裏に過ぎったのは、その二文字であった。
    「やれやれ、少し面倒な事になったのう」
     オカルトマニア達に視線を送り、八嶋・源一郎(春風駘蕩・d03269)が溜息をつく。
     相手は都市伝説を生み出してしまうほど、思い込みが強く、噂を広めるだけの力を持った者達。
     故に、自分達の考えに反する者……、都市伝説を神として崇めぬ者を、仲間だとは思えなかった。
     そして、オカルトマニア達が呪文のように繰り返す。
     『邪教だ』、『邪教だ』、『排除せよ』と……。
    「つまり、説得しても無駄という事ですか」
     半ば諦めた様子で、多々良・鞴(中学生エクソシスト・d05061)がやれやれと首を振る。
     おそらく、彼らにとっても、この展開は好都合であったのだろう。
     自分達の中から神に捧げる生贄を出す必要が無くなったのだから……。

    ●生贄
    「これじゃ、どっちが悪党なんか分からへんな」
     すぐさまヴァンパイアミストを展開し、翠がオカルトマニア達を睨む。
     オカルトマニアの瞳に宿るのは、狂気。
     ここで異を唱えれば、自分が身代わりにならねばならない。
     そんな気持ちを心に秘めた、危うい連帯感。
    「まあ、我が身恋しで、こんな事をしているようじゃし、時間の問題じゃろう」
     オカルトマニア達の攻撃を避けつつ、アリシアが都市伝説に攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
     都市伝説に、まだ動きはない。
     様子を見ているのか、同士討ちを狙っているのか、現時点で分からないが……。
    「まあ、信じる神なんて人それぞれだし、あなた達がどんなゲテモノを信じてたって、別に構わないんだけどね。それを信じる様に、強制するなら話は別よ。そっちの神と私の神、どっちが強いか手合せしようか?」
     覚悟を決めた様子で都市伝説との距離を縮め、由宇がジャッジメントレイを放つ。
     その一撃を食らって都市伝説が悲鳴をあげ、それを見ていたオカルトマニア達が『なんて事をしたんだ!』と叫んで由宇の胸倉を掴む。
    「まあ、当然の反応じゃな」
     オカルトマニアの反応に驚く事なく、源一郎が都市伝説に神薙刃を炸裂させる。
     再び上がる、オカルトマニアの悲鳴、悲鳴、悲鳴……。
    「これでもくらえ!」
     解体ナイフを振りかざし、辰人が都市伝説の腹を掻っ捌く。
     その途端、都市伝説が『光あれ』と呟き、空間を抉り取るようにして、その場にあったものを消し去った。
     それを見たオカルトマニア達が跪き、『……神よ』と言って都市伝説を崇める。
    「いっそ神モドキに消された方が彼らにとって幸せなのかも知れないが……。一般的な認識では悲劇になる事が起こると分かってて、放置も出来ないしな」
     オカルトマニア達を守るようにして陣取り、大樹が都市伝説に紅蓮斬を叩き込む。
     そのため、都市伝説が再び『……光あれ』。
     今度はオカルトマニアのすぐ傍で……。
    「ここから離れるでござる」
     すぐさまオカルトマニアに飛び掛かり、律が都市伝説の攻撃を避ける。
     それでも、襲われたオカルトマニアは『ば、馬鹿な!? 私達が崇める神が、そんな事……あり得ない』と呟いていたが、他のオカルトマニアは我が身が可愛いせいか、蜘蛛の子を散らすようにして逃げていく。
    「こんな光、間違っています。本当の光には、本当の救いがあります。ここは危険です、避難してください」
     ここぞとばかりにオカルトマニアに迫り、鞴が改心の光を発動させる。
     その途端、オカルトマニアが悩める善人となり、『……俺が間違っていたのか』と自答し始めた。

    ●都市伝説
    「心の拠り所は必要でござるが、神様に依存してはダメでござるよ!」
     オカルトマニアに語りかけながら、律が都市伝説にレーヴァテインを放つ。
     途端に都市伝説の悲鳴が上がり、再びオカルトマニアの傍で空間が消失した。
    「やはり、偶然……じゃない!」
     ……それは認めたくない事実。
     何とかして、それを否定しようとしても、自分の傍で何度も空間が消失している。
     まだ、無事でいられるのは、律達が守ってくれているから。
     しかし、いまさら考えを改める事など、彼のプライドが許さない。
    「……迷っているようですね。まだ間に合います。生きている限り、手遅れなんて思わないでください。今ならやり直せます、きっと……」
     都市伝説にフォースブレイクを放ち、鞴がオカルトマニアに視線を送る。
     ここで考えを改めると言う事は、今までの自分を否定する事にも繋がってしまう。
     何年も積み重ねてきたものを否定する事。
     それがどれほど辛くキツい事なのかも、彼の顔を見ていれば何となく想像する事が出来た。
    「考える時間なら、いくらであるで。とにかく、邪魔はせんといてや」
     オカルトマニアが自暴自棄にならないように注意しつつ、翠が都市伝説にデスサイズで攻撃をする。
     いまのところ、オカルトマニアは動かない。
     おそらく、心の中で神を信じる自分と、それを否定する自分が壮絶な死闘を繰り広げているのだろう。
     全身から零れ落ちた脂汗が、それらすべてを物語っている。
    「本当の神なら、目の前にいる迷える子羊を救うはずじゃが……。すべて消し去るつもりか、何もかも……!」
     都市伝説をジロリと睨み、源一郎が神薙刃を放つ。
     そこですかさず、都市伝説が『光あれ』。
    「その程度の光じゃ、俺の闇を消せやしないぜ!」
     素早い身のこなしで攻撃を避け、大樹がデッドブラスターで反撃した。
     そのため、都市伝説も反撃しようとするが……、間に合わない!
    「真似してやるわ、『光あれ』!」
     都市伝説を射程内に捉え、由宇がセイクリッドクロスを仕掛ける。
     次の瞬間、十字架は内部から無数の光線を放たれ、都市伝説が断末魔をあげて消滅した。
    「後は彼次第だ。僕はさっさと退散だね」
     都市伝説が消滅した事を確認し、辰人がオカルトマニアに視線を送る。
     オカルトマニアは、崩れ落ちたまま動かない。
     ……よほど今回の出来事がショックだったのだろう。
     だが、それでも前に進まねばならない。
     例え、自分達で崇めていた神が、この世から消滅していたとしても……。
    「神は死なず、ただ消え去るのみじゃ。落ち込む事ではないぞ」
     オカルトマニアの肩をポンと叩き、アリシアがその場を後にした。
     おそらく、彼が立ち直るまで、しばらく時間が掛かるだろう。
     しかし、それでも……前を見て進まねば、明日は……ない。
     果たして、彼はこの苦難を乗り切る事が出来るのだろうか?
     ある意味、神の与えた試練である。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年9月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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