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しとしとと雨が降りしきるある日の昼時。
湿った音を響かせながら、その肉塊は山道を転がっていた。
肉塊は人間の死体や灼滅されたダークネスの残骸を巻き込みながら大きくなっていき、とある廃工場の中でついにその動きを止めた。
ズブズブと肉塊が蠢き僅かな時が経つと、その肉塊から何かが吐き出された。
それは、傷一つない鋼鉄の西洋甲冑と、巨大な黒き大剣であった。
無造作に放り出された甲冑はカタカタとひとりでに動き出すと不意に組みあがり、中身の無い人型と化した。
「ふむ……成程な」
兜の隙間に瞳の如き赤い光を灯した甲冑は何処からか声を発すると、足元に転がる大剣を拾い上げ、『悌』の名が刻まれた胸元の霊玉を撫でる。
すると霊玉がうっすらと光を放ち、同時に現われた赤色のマントが綺麗に甲冑に装着された。
「この程度の装飾は無礼に当たらないだろう……さて、私が仕えるべき主は一体何処にいるのやら。特に呼びかけがないという事は、今は自由に動いていいという事なのか……?」
ガシャンガシャンと廃工場の外へ足を踏み出した甲冑は、右手に携えた大剣を一振りする。
放たれた巨大な斬撃は地面を抉り、大きく削り取った。
「ふむ」
納得した様に呟いた甲冑が続いて左手を振り上げると、魔術によって生み出された矢が射出され、錆びた鉄塔に風穴を空けた。
「流石にこの程度の時間では、完全に力が満ちぬか……まあいいだろう、それも時間の問題だ。今は主の為に何が出来るか……配下を集め、いつでも事を起こせるよう軍備を整えておくべきだろうな」
甲冑はそう決断すると、人里を目指しすぐさま移動を始めるのだった。
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「賽子の出目は全てを語るわ……悌の霊玉、生み出されし甲冑の悪魔、その身に宿る犬士の力……みんな、事件よ」
ラグナロクにしてエクスブレインの鳴歌はそう言い、占いによって得た事件の情報を灼滅者たちに伝えていく。
「随分前にみんなに灼滅された、大淫魔スキュラ。彼女が遺した迷惑極まりない仕掛け、犬士の霊玉に関してはみんな既に知っているかもしれないわね」
新たなスキュラのダークネスが生み出されてしまうこの仕掛けの一つが、大きな時を経て新たに発動したのである。
「皆が現場へ訪れた段階では、この霊玉は大きな肉塊になっている状態よ。でもこの状態で攻撃してしまえばこの霊玉は何処かに飛び去ってしまう。つまり皆はこの肉塊からダークネスが生み出された段階から、戦闘を仕掛ける事となるわ」
このダークネスは、誕生後しばらく力が弱いままだが、時間が経つにつれ予備の犬士に相応しい力を得ていくこととなる。
「もしも戦いが長引いてしまったら、闇堕ちなしでの勝利は決定的に不可能となってしまうわ。大事なのは短期決戦よ。素早く確実に、敵を灼滅して頂戴」
そう言って、鳴歌は今回灼滅者たちが対峙するダークネスについての説明に入る。
「みんなが相手するのは、中身の無い空の西洋甲冑の姿をしたソロモンの悪魔よ。性格は非常に真面目で、主であるスキュラの忠実な僕よ。その事に誇りすら持っている様だけど……さっきも言った通り、その主は既にこの世にいないわ」
ソロモンの悪魔に相応しく知略に長けているが、同時に大剣を駆使した剣術にも習熟している。
「魔法と剣術を組み合わせた戦いで、皆を追いつめていくわ。ソロモンの悪魔はどちらかといえば戦闘能力がそう高くない種族だけど、こいつは別よ。絶対に油断はしないで」
そこまでの説明を終えると、鳴歌は改めて灼滅者達と向き合う。
「これで占いの情報は全部よ。このダークネスはスキュラによって八犬士の空位を埋めるべく創られた存在。知略と力に長けたこの悪魔を逃してしまえば、どれ程の被害が出るかは計り知れないわ。どうか油断せず、確実に仕留めてきて頂戴」
参加者 | |
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蓮華・優希(かなでるもの・d01003) |
神虎・闇沙耶(修羅刹獸・d01766) |
木嶋・キィン(あざみと砂獣・d04461) |
庵原・真珠(魚の夢・d19620) |
成田・樹彦(サウンドソルジャー・d21241) |
物部・暦生(迷宮ビルの主・d26160) |
風間・紅詩(氷銀鎖・d26231) |
貴夏・葉月(地鉛紫縁は始まりと終末のイヴ・d34472) |
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悌の文字が刻まれた霊玉を持ち、生まれてくるソロモンの悪魔。
大きな脅威になるであろうこの存在を灼滅すべく、灼滅者達は雨が降りしきる廃工場を訪れていた。
「ここは一体何の工場だったのか……荒れすぎて、本当に今にも崩れ落ちそう」
「まあ、その分逃走経路も複数用意出来るな……使わずに済むのがベストではあるんだけどな」
蓮華・優希(かなでるもの・d01003)と物部・暦生(迷宮ビルの主・d26160)はあらかじめ廃工場とその周辺の地理を確認し、戦闘に備えていた。
「それにしても……未だ発生するのね、困った話だ事」
「生まれて数分の命だが……ここできっちり摘み取っておかなきゃならねぇな」
貴夏・葉月(地鉛紫縁は始まりと終末のイヴ・d34472)と木嶋・キィン(あざみと砂獣・d04461)がそんな事を話していると、どこからがゴロゴロという音が響いてくる。
そして廃工場の中に現れた巨大な肉塊は廃工場の中心、灼滅者達の眼前でその動きを止める。
「……ここで逃したら確実に被害が出る。絶対倒さないと、ね」
庵原・真珠(魚の夢・d19620)はトントンと心臓の上を2回軽く叩き、灼滅者としてのスイッチを入れる。
そして肉塊から吐き出された空の鎧は、強大な魔力と共に組みあがり、人型を成す。
「ふむ……成る程な」
自らの姿と目の前の灼滅者達を確認した剣士は納得したように頷くと、赤いマントを生み出し黒い大剣を灼滅者達に向ける。
「つまり貴様等は敵か。恐らく、完全な力を持つに至らぬ私を殺すつもりだろうな」
「随分と察しが良いな、悪魔の騎士。その考えの通り一戦、交えようか」
全身に鎧を装着した神虎・闇沙耶(修羅刹獸・d01766)はそう応えると、剣士のそれに劣らぬ巨大な大剣を向ける。
湿った空気の昼下がり、ソロモンの悪魔と灼滅者の戦いが始まった。
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「我が主の栄光の為、消え去れ」
まず仕掛けたのは剣士。一瞬にして発動した氷の魔術で、灼滅者達の身体を凍結させていく。
「そんな物の為に消えてやる道理はねえな。……同じ玩具でやってやる。来いよ」
キィンは大剣を携え剣士に接近すると、超重量の振り降ろしで剣士の身体に傷を付ける。
「力が満ちていない状態でこの力か。本当に急がないといけないね」
成田・樹彦(サウンドソルジャー・d21241)は全身から放った紅き霧で、仲間たちの傷を癒しその力を高めていく。
「よし、このまま攻勢に出るよ」
そのまま斧を構えた樹彦は剣士との間合いを一気に詰め、斧を大きく振り上げた。
「仲間が危機に陥る前に、ここで倒させて貰うよ」
そして放たれた斧による強烈な一撃が、剣士の肩を抉りその防護能力を削り取る。
「隙が出来た……ここだよ」
樹彦の攻撃の直後、素早い動きで剣士の背後に回り込んだ真珠が、鋭い下段蹴りを放ち剣士の足元を砕く。
「小癪な」
「ある意味それが私たちの強みでもありますからね」
風間・紅詩(氷銀鎖・d26231)は更に続いて攻撃を仕掛け様と、手元の糸を手繰り寄せ一気に放つ。
「その堅牢な鎧を、切り裂いて見せましょう」
そして放たれた無数の糸が、剣士の全身に絡みつきその身体を縛り、斬りつけていった。
「この様なか細い糸で殺される程、私達八犬士の力は甘くはない」
身体を裂く糸を無理やり引きちぎった剣士だが、その足元に大きな影が迫る。
「確かにあなた達の力は強大でしょうが、それらを灼滅してきたのは他でもない私達です。そちらも甘く見ない方がいいですよ」
そう言い、紅詩が放った巨大な影が、剣士の全身を呑みこみその魂に大きな苦痛を与えた。
影から吐き出された剣士の身体はガシャンと地面に叩きつけられ、その兜が転がり落ちる。
「ふむ、確かに。貴様等の力は侮れないだろう。が、私は最初から油断などしていない。スキュラ様の敵は全身全霊で消すのが私の務め」
ヒョイと兜を掴み元の位置へ戻した剣士は、黒の大剣を駆使し巨大な斬撃を灼滅者達に放った。
「今が3分目か……このまま押し切れるかどうか、だな」
暦生はその斬撃から仲間を庇い、大きな深手をその身に負った。
「これ以上攻撃が苛烈になれば、耐えきれるかどうか……攻撃するなら今の内ね」
金色の髪をなびかせ、桜色の偽翼を装着した葉月は、椿の装飾が施された紅色の刃の大鎌を構え剣士と相対する。
「……貴様、真剣勝負の場で何故視界を封じている」
「あなたに話す義理はないけれど、決して手を抜いている訳ではない。とだけ言っておきましょう」
葉月が常に付けている目隠しを訝しがる剣士にそう返した葉月は、大鎌を掲げ込められた『虚』の力を解放する。
虚空から放たれた無数の刃が剣士に降りかかると、その全身を容赦なく削り取っていった。
「確かに、スキュラ様の下僕である私を舐めている訳ではなさそうだ」
戦闘の余波で崩れ落ちてきた瓦礫を軽く避け、剣士はそう呟く。
「これで4分目……この犬士を決して野放しにはできない。必ず滅するわ」
葉月はそう言うと桜色の羽衣をふわりと広げ、剣士の動きを探る様に慎重に間合いを取る。
それと同時に葉月のビハインド『菫』が、淡い霊力を宿した刃を携え剣士に接近する。
「…………ここよ」
そして放たれた羽衣が剣士の全身を貫き、菫が付きだした刃が胸に風穴を空けた。
「中々の痛みだ……だがこの状況では、先ずは攻撃手を潰すのが先決だろうな」
剣士は魔力で生み出した矢をに向けて撃ち放つが、
「ぐっ……一撃が重いな」
そこに飛び出した闇沙耶が全身の鎧で矢を受け止め、その命が削り取られる。
「明らかに狙い撃ちにされてるね。ディフェンダーが2人と一匹居るとはいえ、最後まで立っているのは厳しいかもしれない」
剣士に最も多くの傷を与えていた優希はそう呟きつつ、片腕を鬼の異形へと変化させる。
「まあだとしても、ボクがやる事は変わらないか。とにかく攻撃するのみ」
そして優希は剣士に突撃し、その巨腕を大きく振り上げる。
「…………当てる」
そして放たれた巨大な打撃が、剣士の全身を打ち廃工場の壁まで吹き飛ばした。
「ふむ……確かに強いな。八犬士を殺したという話はにわかに信じ難いが、この強さを見ればその信憑性も高まる」
己の魂を燃やし自らの傷を癒す剣士。だがその眼前に、優希の姿が迫りくる。
「信じるも信じないもあなたの自由だけど、倒されてから嘆いても遅いからね」
そう言って優希が放った灼熱の蹴りの連打は、剣士の全身を抉りそのまま壁を突き破った。
一層強まった雨の下に投げ出された剣士は、泥で汚れた身体をゆっくりと起き上がらせる。
「力の高まりを感じる……終わりの時は近い」
剣士はそう言い、再び真正面から灼滅者達に向かっていくのだった。
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それから数分の時が経つ。
戦いの序盤においても剣士の攻撃力には目を見張るものがあったが、時が経つにすれその傾向はより一層強まっていた。
「私の魔力を受けるがいい」
威力を増した死の魔術が灼滅者達を包むと、その肉体の温度が一瞬にして奪い取られた。
「……まずいですね。私達は思った程、彼にダメージを与えられていない様です」
紅詩は表情に若干の焦りを滲ませながら、糸と影の一撃を放っていく。
「まだだ。攻撃手が落ちなければまた十分勝ち目はある……端からこっちだって無事で済むとは思っちゃいない……やれる事をやれるだけやるだけだ」
積極的に仲間を庇い前線を維持してきた暦生は、傷だらけの身体で盾を構え、剣士に向かっていく。
「お前はさっきから主の為だなんだと言っているが……生憎、お前の主はもうこの世にいないんだよ」
「馬鹿な。戯言も大概にする事だ」
剣士は暦生の言葉に大きな疑いを向けるが、暦生はそのまま続ける。
「お前の主は、俺達が倒した。もう、お前ら犬士の役目は終わってるんだよ」
そして暦生が放った重い打撃が、剣士の兜を打ち付け僅かに仰け反らせる。
「貴様……私を侮辱するならまだしも、主までも侮辱するか! 我が主は貴様等如き矮小な存在に倒されなどはしない!!」
「何度でも言う。お前の主は俺達に倒された。仕える相手はもう居ないからさ、お前もとっとと無に還りな」
「貴様!!」
剣士が振り下ろした重い一撃が、暦生の身体を真っ直ぐと断ち斬った。
「あーらら、ここまでか。もう少し粘りたかったんだが……頼むぞ、上手い事奴を倒してくれよな……」
剣士の攻撃を幾度となく受けてきた暦生はついに力を失い、地面にバタリと倒れ気を失ってしまった。
「まずい……これ以上時間をかけてはいられない」
樹彦は緋色のオーラを纏わせた斬撃を剣士に放つが、
「その攻撃は既に見切った」
剣士は身を翻し、樹彦の斬撃をギリギリの所で避けた。
「己への侮辱には怒らず、主の侮辱にのみ怒りを燃え上がらせるか……随分と忠誠心が強いな。悪魔とは思えんよ」
「……八犬士ならば、当然の事」
闇沙耶の言葉に剣士はそう返し、2人は共に大剣を構え真正面から対峙する。
「やはり、貴様に出会ったのは正解だったな」
闇沙耶はそう呟き、巨大な大剣を大きく薙ぎ払う。
「中々の腕だ」
剣士が呟くと、放たれた斬撃によって身体を斬られ、2人は再び間合いを取る。
「名乗れ、悪魔の騎士よ。犬士としてではなく、剣士としてな」
「私の名は……無い。我が名はスキュラ様の手によって賜れるものだ」
「そうか……ならば覚えておこう。名は無くとも、亡君の為に仕えた騎士の事を」
そして闇沙耶は大剣に大きな炎を灯し、再び剣士に突撃する。
「俺はお前を超えて見せる!!」
放たれた灼熱の斬撃は剣士の身体を一瞬にして斬り伏せた。
「見事だ」
剣士はその一撃を受けて尚、大剣を構え更に前へ出る。
「窮鼠猫を噛むって言葉があるけど、この状況はそれに凄く近いと思う」
自身が狙われている事を察知した優希はむしろ前へ飛び出し、渾身の力を込めた拳で剣士の肩を吹き飛ばす。
「良い覚悟だ。だがこれで終わりだ」
そして剣士が突きだした刃が優希の身体を一閃し、優希はそのまま倒れ気を失った。
「……あの剣士に、完全な力は満ちていない。でも、時間がないのは明らかね……」
葉月は一種の覚悟を決め、最早回復をする段ではないと剣士に攻撃を放ち続ける。
「消え去れ」
剣士は溢れんばかりの魔力を糧に、灼滅者達に死の魔術を放つ。
真珠のウイングキャット『くろ』が交錯する様な形で放った魔力の塊が剣士の身体を穿つが、剣士の放った魔術を浴び、くろはそのまま消滅した。
「くろ…………いや、今は戦いに集中しなきゃ」
真珠は複雑な表情を浮かべながらも、構えた槍に妖気を込めていく。
そしてしなやかな動きで戦場を駆け、剣士の側方まで回り込んだ真珠は勢いよく槍を突き出した。
「負けられはしない……あなたはここで終わるの」
放たれた氷の刃の雨は、騎士の全身を突き破り凍り付かせていく。
と、その時。戦場に大きなアラーム音が鳴り響く。戦闘開始より12分が経過した合図だった。
「……まだ、時間はある……あと少し、あと少しで押し切れる……」
「未だ抗い続けるか……!!」
剣士は鋭い魔法の矢で真珠を狙い撃つが、真珠は僅かな動作でそれを避け、再び剣士に接近する。
「ここで、外す訳にはいかない……」
祈る様に付きだした縛霊手が騎士の鎧に突き刺さり、同時に放たれた霊力の網が剣士の動きを封じ込める。
「グ……!!」
攻撃を集中し、2人の灼滅者と1体のサーヴァントを斬り伏せた剣士だが、ここにきて蓄積されてきたダメージがその身体を大きく蝕んでいく。
「動きが鈍った……もう僅かな猶予も存在しない。最後まで喰らいつくぞ」
キィンは自らの闘気から練り上げた雷を拳に纏わせると、体勢が崩れた剣士の元へ一瞬にして間合いを詰める。
「打ち砕く……!!」
そして放たれた拳が剣士の兜を打ち付け、弾ける雷はその全身を痺れ上がらせた。
「私も貴様等も、ここが正念場だ……あと数分、貴様等が私を殺すに至らなければ私の勝ち、そうでなければ貴様等の勝ちだ」
砕き剥がれた鎧を軋ませながら、剣士は魔法の矢を連射する。
「速い……だけど見切ったぞ、あんたの攻撃」
キィンは自らの眼前に漆黒のオニキスが飾られたベルトループを展開すると、自らを守る楯とし魔法の矢を受け止めた。
「あんたがこの世に生を受けてから僅か10数分……だがどんな形で授かったとしてもあんたの命だ、抗えるうちは自分で守り切れ……だから、オレも全力でやるさ」
大剣を大きく振りかぶりながら、キィンは剣士にそう告げる。
剣士もまた大剣を構えると、負傷によってノイズが混じり始めた声で高らかに応える。
「例えどれだけ短い命であろうと、私はこの命を全身全霊でスキュラ様に捧ぐ事を誇りに思う。全力を出すのは当然の事……スキュラ様の為に死んで逝け、灼滅者」
戦闘開始から15分目。剣士は灼滅者達に向け渾身の斬撃を放った。
灼滅者達はその斬撃を真正面から耐えきると、剣士に一斉攻撃を叩きこんだ。
闇沙耶が放った炎の一撃が胸を抉り、
真珠が放った霊力の打撃が全身の動きを封じる。
紅詩が放った糸が全身を鋭く切り裂き、
樹彦が放った紅き斬撃が生命力を奪い取る。
葉月が放った刃の雨が全身を穿つと、
キィンは大剣を振り上げ、霊玉の犬士に突撃した。
「尽くす相手の夢想を抱いたまま、いけ」
振り降ろされた鉄塊の如き刃は、悪魔の鎧を真正面から断ち斬った。
真っ二つに分断された鎧は大きな音を立て地面へと崩れ落ちると、そこに秘められていた魔力が徐々に薄れていく。
「見事だ……強者との戦いの中でこの命潰える事を、嬉しくも思う。しかし……」
砕けた鎧の何処からか、か細い声が聞こえてきた。
「申し訳ありませぬ、スキュラ様……」
兜の奥の赤き光が消え、犬士の最期の呟きもまた、雨音に掻き消えていくのだった。
作者:のらむ |
重傷:蓮華・優希(かなでるもの・d01003) 成田・樹彦(サウンドソルジャー・d21241) 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年2月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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