これは、予兆!?
まさか、私の中にまだ、灼滅者の熾火が残っているとでもいうのか?
……だがこれで、私が尾行したあの軍勢の正体が判明した。
あれは、軍艦島の大勢力。そして軍勢の向かった先は、白の王セイメイの迷宮!
予兆を見たのも何かの縁だ、武蔵坂学園には連絡を入れておこう。
その連絡で、灼滅者としての私は本当に最後。
これより私は、混じり無きひとつの『黒牙』となる……!
「琵琶湖大橋の、戦い、お疲れ様」
武蔵坂学園と天海大僧正側の大勝利で終わった琵琶湖大橋の戦いを労う久椚・來未(高校生エクスブレイン・dn0054)の声が静かな教室に淡々と響く。
安土城怪人勢力の残党達は、本拠地であった琵琶湖北側の竹生島に立てこもっているが、カリスマである安土城怪人を失ったことで離散した者も多く、その勢力は大きく減退してしまっているようだ。
更に、安土城怪人に次ぐ実力者であった『グレイズモンキー』が拠点に戻ってこなかったこと、中立的な立場ながら、その献身的な活動で支持されていた『もっともいけないナース』が灼滅されたこともあり、組織としての結束力も無く、遠からず自壊するのは間違いないだろう。
「一方で、白の王勢力は、大幅に、強化された」
エクスブレインとは全く違う予知能力を持つ『うずめ様』、現世に磐石の拠点を生み出す事ができる『ザ・グレート定礎』、ソロモンの大悪魔の一柱『海将フォルネウス』、そしてセイメイと同じ『王』の格を持つ『緑の王アフリカンパンサー』。
彼ら軍艦島勢力が合流したことにより、白の王セイメイのこれまでの失策を補って余りある力を持っているに違いない。
だが、多くのダークネスを富士の迷宮へと招き入れたことは、白の王に致命的な隙を与えることになった。
「クロキバが、その迷宮の入り口を、見つけた」
――その入口がある場所は、富士の樹海。
闇堕ちしてクロキバとなった、白鐘・睡蓮(荒炎炎狼・d01628)は、先代達の意志を継ぐべく、白の王の迷宮に挑もうとしているという。そして、同時に、武蔵坂学園に対して、この突入口の情報を連絡して来てくれたのだ。
残念ながら、白の王の迷宮の入り口を通過できる人数には限りがあり、全軍で攻め入ることは難しい。また、この機を逃せば、再び侵入することはできなくなる。
しかし、これは、白の王セイメイだけでなく、田子の浦の戦いでは、討ち取ることができなかった、軍艦島のダークネス達を討ち取る千載一遇の好機となる、と來未は告げる。
「迷宮を、突破し、有力なダークネスを、灼滅することは、難しい――」
だが、挑戦する意義はあることだといえる。
故に、参加する灼滅者の皆は、どういった結果を求めるかを相談し、作戦をまとめて突入して欲しいのだと來未はゆっくりと語った。
なお、白の王の迷宮は、内部から迷宮を破壊しようとすると外にはじき出されるという防衛機構があるようだ。
そのため、危機に陥った場合は、迷宮自体を攻撃することで緊急脱出が可能となっているのだという。
ただ、この防衛機構により、迷宮への破壊工作もほぼ不可能となっているので、その点は注意が必要となるため忘れないでほしい。
今回の作戦は、これまで様々な暗躍をしてきた白の王の喉下に牙をつきつける非常に重要な作戦になるだろう。
迷宮からの脱出は難しくないが、反面、敵拠点に攻め込むには戦力は多くない。成果をあげるには、目的を絞ることも必要かもしれない。
白の王セイメイを灼滅できれば、クロキバとなった白鐘さんを闇堕ちから救出することも可能だと思う。そうすれば……。
來未は教室に集まった灼滅者たちをぐるりと見回すと、ゆっくりと口を開いた。
「一つ、白の王の、灼滅を、目指す。二つ、軍艦島勢力の、灼滅を、目指す。三つ、白の王が、準備してきた作戦を、探る」
指を立てながら考えうる目標を告げる彼女は、その他にもできることはあると思うと静かに語る。
「あなたたちは、何を、目指す?」
目指すものに正解はない。だからこそ、自分たちが信じる道を進んでほしい――。
來未は、教室を後にする灼滅者達の背中を静かに見送るのだった。
参加者 | |
---|---|
苑城寺・蛍(チェンジリング・d01663) |
武野・織姫(桃色織女星・d02912) |
三上・チモシー(津軽錦・d03809) |
相羽・龍之介(焔の宿命に挑む者・d04195) |
董白・すずり(花糖菓・d25461) |
アレキサンドライト・ジェヴォーダン(小さな狼・d27813) |
玉城・曜灯(紅風纏う子花・d29034) |
吉武・智秋(秋霖の先に陽光を望む・d32156) |
●迷宮への入り口
富士の裾野に広がる樹海の中に隠された風穴の中――セイメイの迷宮へと繋がる入り口は、そこにあった。風穴の内部は天然の氷柱が僅かな灯りに照らされて、キラキラと輝いている。
「ねっ、ここが、入り口かな~?」
武野・織姫(桃色織女星・d02912)が指差す壁はチラチラと揺れて二重写しのようになっており、見た目にも明らかに怪しい。
「うん、どこから見てもそこに入り口があるって感じだよね」
頷く三上・チモシー(津軽錦・d03809)は迷宮突入の前に『アリアドネの糸』を発動させた。
仲間たちとハンドサインやマーキングのルールの最後の確認を行う中、董白・すずり(花糖菓・d25461)はウィングキャットのめれんげに何度も繰り返し言い聞かせる。
「いい? 迷宮の中に入ったら、めれんげは武野さんの言うことをよく聞いてね」
わかってる、と言わんばかりに尻尾を振るめれんげを、すずりは「いいこね!」とぎゅっと抱きしめた。
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。めれんげさん」
にこりと笑顔を浮かべて頭を下げる織姫に、めれんげは小さく鳴き声をあげるとパタパタと羽を動かして織姫の傍へ移動する。
相羽・龍之介(焔の宿命に挑む者・d04195)はぐるりと仲間の顔を見回すと、チラチラと揺れる壁に静かに手を伸ばした。
今まで好き放題やってくれたセイメイに対し、ようやく訪れた一泡吹かせるチャンス。
「さあて、いっちょやってやりますか」
下層へ続く道には強烈に生臭い匂いが漂っていた。異臭に眉をしかめつつ、下へと歩き続ける灼滅者たちの前には薄明りに照らされた道が続いている。
「なんかリアルRPGな気分~」
周囲の壁をぐるりと見回しながら苑城寺・蛍(チェンジリング・d01663)は思わず独りごちた。見たところ隠し通路やスイッチなどの怪しい仕掛けはなく、とにかく先へ進めば良いようだ。
「何もないわね。ちょっとは気利かせて隠し通路や宝箱なんか用意しといて欲しいわ」
残念そうに肩をすくめる蛍の耳元でフープピアスがしゃらんと揺れる。
時折、出現する脇道は、チーム前方を歩く玉城・曜灯(紅風纏う子花・d29034)と吉武・智秋(秋霖の先に陽光を望む・d32156)が先行して様子を伺い、安全を確かめていた。
「智秋、どう?」
曜灯の囁きに智秋はゆっくりと首を横に振る。DSKノーズを使っているが、異臭は感じない。2人はそのまま慎重に先へ進み、行き止まりであることを確認すると仲間の元へと引き換えした。
「あれ……?」
一方その頃。無線の確認をしていたアレキサンドライト・ジェヴォーダン(小さな狼・d27813)だったが、スイッチを入れても無線はうんともすんとも言わない。
「えと、むせん、つかえない、かも」
困ったように目を伏せるアレキサンドライトを慰めるようにチモシーがポンと背中を叩いた。
「セイメイに妨害されてるのかな? ここ、自然の洞窟ってわけじゃないみたいだし、仕方がないよね」
幸い、周囲を見渡せばすぐに連絡を取れる距離に他班の姿がある。無線が使えなくても困る事態にはならなそうだ。
「こっちは行き止まりだったわ。さぁ、深く深奥目指して行くわよ」
脇道から仲間たちの元へと戻ってきた曜灯達を先頭にして、灼滅者たちは奥を目指して歩き続ける。
「この先、何が出てくるのかしらね?」
誰に言うでもなく漏らした曜灯の呟きに答える声はない。――まだ、迷宮の探索は始まったばかり。
●道は続く
迷宮の探索は順調といって問題なかった。
約半数のチームが下層へと向かったため他班との接近は避けられない。だが、逆に想定以上の戦力が下層に集まっていたため、わざわざ戦闘を回避するよりも遭遇した敵は全て殲滅するほうが、効率が良かったのもまた事実。
「こっち、来ないで……っ」
突然目の前に現れたゾンビの攻撃を智秋が受け止め、隙をついた曜灯の鮮やかな蹴り技が一閃、敵はあっけなく地に伏す。
続いて後方から現れたゾンビは織姫とチモシーの連携プレーが決まり、こちらも難なくケリをつけることが出来た。
「一体、今はどのあたりにいるのだろう?」
ゾンビ達の襲撃をかわし、ほっと一息をついた龍之介の問いにすずりは足を止めてマッピングしていた記録用紙を広げる。
「そうね、もう15分以上は歩いていると思うけど……」
入り口から現在までに至る道は多少の脇道はあれど、ほぼ一本道と言ってよい状況だった。一方で下層へと降りるにつれて迷宮に入った時から漂っていた生臭い匂いはさらに強烈になっていく。
不快な匂いに耐えきれずハンカチで口元を抑えていた蛍は、しかめっ面で口を開いた。
「これだけソンビがいれば生臭いのは仕方がないかもしれないけど……、でも、それにしても生臭すぎじゃない?」
「ゾンビ、くさい。ふつう、ちがう?」
う? と怪訝そうに首を傾げるアレキサンドライトの傍らで、曜灯が「そうね」と小さく頷いた。
「蛍の言う通りだわ。だって、普通のゾンビは、死んでからの時間が長いからここまで生臭くないはずだもの」
彼女の言葉に龍之介は顎に手を添え、ゆっくりと口を開いた。
「と、いうことは……この先に、あるものは……」
薄明りに照らされた道を見つめる彼の横で通路を見つめ、智秋はぽそりと言葉を漏らす。
「この、奥……セイメイは、何を、隠しているんだろう……」
「最下層へ着けば、わかるわ。さぁ、早く、行きましょう」
曜灯に促され、一行は再び迷宮の奥へと繋がる道を歩き出した。
行く手を阻むゾンビを片っ端から倒しながら、灼滅者たちは最奥を目指して進み続ける。どんどんと強さを増す腐臭が、最下層へと近付いていることを示していた。
「あそこ、見て……っ」
智秋が指差した先には巨大な大広間のような空間が確認できる。あそこが最奥、今回の目的地だろうか。はやる心を抑えて急いで大広間へと向かうと、そこには予想もしていない景色が待っていた。
「な、なに、これ……っ」
そこにあったものは、無数の『死体』。ざっと見積もっても数は1万体くらいあるだろうか。
「まるで、死体の保管庫、みたい……」
眼前に広がる信じがたい景色に、織姫は思わずごくりと息を飲み込み、震える声で呟きを漏らす。
言葉を失う智明やすずりの傍らで、龍之介は努めて冷静に死体を観察していた。
「思った通りだ。まだ新しい死体が多いように見えるね」
「それに、見て。ゾンビに噛み付かれたような傷を持っている人が多いわ」
曜灯の言葉につられ、ゾンビたちへ視線を向けたアレキサンドライトが小さく悲鳴をあげて後ずさる。
「したい、うごく……!」
突如現れた生者の気配を感じ、ゾンビたちはゆっくりと立ち上がると、ゆらり、ゆらりと灼滅者たちの方へと向かって近寄ってきた。その数はざっと半数といったところか。
「危ない、下がって!」
仲間たちを庇おうと、いち早く前に飛び出したチモシーがキッとソンビたちを睨み付けた。
「みんな、油断しないで。数が多いけど、それだけとは思えないよ」
「……これが、セイメイの研究成果なのでしょうか?」
赤いランドセルを背負った少女のゾンビを見た織姫が、哀しみを滲ませて呟いた言葉に、蛍は「みたい、ね」と肩をすくめて答える。
「セイメイにとって、宝よりも大事なものなんでしょーね。だったら……ここで全部潰すしかないでしょ」
●最奥で待っていたモノ
300体近いゾンビを前にして、一番最初に動いたのは曜灯だった。
ふわりと軽やかに宙を駆け抜けたと思うと、影を宿した【Win-G BloodyRose】で一番近くにいたゾンビを思い切り蹴り上げる。どさり、とソンビはゆっくりと前へと倒れ伏した。
(「ゾンビに殺された死体のようなゾンビ……何か嫌な予感がする」)
龍之介が半獣化した片腕で力任せに敵を薙ぎ払い、チモシーは漆黒の弾丸をゾンビに向かって撃ち込んだ。
「めれんげ、ゾンビは食べちゃダメ! 皆さんを回復して!」
ゾンビへの興味が抑えられないメレンゲだったが、主の指示にはきちんと従う。尻尾のリングが放つ柔らかな光に照らされ、ゾンビの攻撃から仲間たちを庇っていた護り手たちの傷が癒された。
だが、傷の回復は万全とは言えず。続くアレキサンドライトもまた、予知を妨げる白い炎を召喚し、前衛の傷の治療にあたった。
個々のゾンビたち強くないが、いかにせん数が多すぎる。
(「負けない……っ」)
智明の利き腕が寄生体によって刀へと変化し、ゾンビを切り裂いた。寄生体は表面に出すのも嫌いだった智明だが、そんな彼女にも最近では変化が見え始めている。
「邪魔、させない、の……みんなで、帰るんだから……っ」
自分自身を奮い立たすように吐き出された智明の言葉に、灼滅者たちは再びゾンビへと向かって行った。
織姫が放った【Scarlet†Ribbon】が軽やかに空を舞い、傍らのゾンビの身体を勢いよく貫く。紅色の手綱型のベルトに打たれたゾンビもまた、何もすることなくあっけなく倒れ込んだ。
蛍の放った毒の風は竜巻となり、複数のゾンビたちへと纏めて襲い掛かる。毒に苦しむゾンビを包むようにすずりは縛霊手に内蔵された祭壇を展開し、築いた結界に閉じこめた。
「みんな、がんばる。ボク、きず、かいふく、する」
アレキサンドライトが手にした断罪輪は巨大なオーラの法陣を展開し、味方たちの体力を回復するとともに、その身に天魔が宿るのが見える。
ゾンビたちと戦い続け、20分程経過した頃。気づけば残るゾンビの数は半分以下に減っていた。
盾となって仲間を庇い続けていたチモシーが、また一体、ゾンビにとどめをさす。
どさり、と力なく倒れた死体はセーラー服を纏った、見た目も同じ年くらいのおさげ髪の少女。肩に残されたゾンビに咬まれたと思しき傷は見るだけで痛々しく、チモシーは思わずふぃと目を背けた。
「……くっ」
纏わりつくゾンビの攻撃を交わそうと、龍之介は思わず敵を蹴り飛ばす。だが、敵そのまま立ち上がることはなかった。
「……?」
もう一度、龍之介はサイキックを使わずにゾンビを思い切り蹴る。やはり、飛ばされて倒れたゾンビはピクリとも動かない。
「どういうことだろう……」
怪訝そうな龍之介にすずりが「ちょっと」と声をかけた。
「私、気になることがあるんだけど……」
すずりもまたサイキックによる攻撃以外でもダメージが入ることに気が付いたという。
「通常ダメージが有効というのは、明らかに弱点よね」
「でも……こいつらは数が異常に多いですね」
しかも、つい最近ゾンビになったようなものが多い。
……ふと、龍之介の頭にある仮説が浮かんだ。
「これは弱点のあるゾンビを、一気に大量に生み出す技術なんじゃないでしょうか」
そして、龍之介は言葉を続ける。
「もしも、これと同じことが数百万人の人口密集地は行われたら……?」
「数百万体のゾンビが生み出されてしまうかも……?」
2人は視線を交わし頷きあうと急いでゾンビ達の殲滅へと戻っていった。
このゾンビは、絶対にここで消滅させなければならない――。
●ゾンビ殲滅大作戦
「もう戦いは最後の直線まで来てるよ! このまま一気に追い込んじゃおう♪」
疲労を隠して織姫は明るい声で仲間を鼓舞し、ゾンビに向かってTachyon † ringを飛ばす。『超光速の粒子』の名を持つ蹄鉄型の光輪は、その名の通り高速で敵を切り裂いた。
ゾンビの攻撃から味方を庇い続け立っているのがやっとという状況に近い智明も限界が近づいているのがみてとれる。
「いく、よ……っ!」
だが、勢いよく助走をつけると、ローラーダッシュの摩擦を利用して、炎を纏った激しい蹴りを放った。あっという間に炎に包まれ、ゾンビが静かに息絶える。
残るゾンビの数も、もう僅か。1体、また1体と灼滅者たちはその数を確実に減らしていく。
「……これで、最後かしら」
紅く逆巻く風の様なバトルオーラを纏った蹴りを目にも止まらぬ速さでゾンビに撃ち込んだ曜灯がふぅっと息を吐いて肩を落とした。
周囲を見渡せば立っているゾンビたちの姿は殆んど見当たらない。
ゾンビの他に目ぼしいものはないかと龍之介やすずりが調査を始めようとした時だった。
「あい、あい……わかった」
突然、アレキサンドライトが無線に向かって話し始める。――どうやら、無線が使えるようになったらしい。短い通話を終えると、アレキサンドライトは急いで仲間たちを近くに集め、口を開いた。
「セイメイ、たおした、れんらく、きた、なの」
アレキサンドライトがもたらした情報に一同の顔にほっとしたような安堵の表情が浮かぶ。だが、彼が慌てた様子で告げた次の言葉に再び緊張が走った。
「えと、めいきゅう、ほうかい、なのよ。にげる、いそぐ、の」
と、突然、ぐらりと地面が大きく揺れたかと思うと、どこからともなく地響きのような音が聞こえてくる。
急ごう、と辺りを見回す仲間たちに最も壁の近くにいたチモシーが声をあげた。
「みんな、準備はいい? 『転移』するよ」
仲間たちが皆揃っていることを確認し、チモシーが迷宮の壁に向かって勢いよく斧を振り下ろす。次の瞬間、ぐにゃりと何かに弾かれた。
迷宮を後にする瞬間、龍之介はずっと言ってやりたかった言葉を口にする。
「――ざまあみやがれ」
さぞや口惜しそうに果てたであろうセイメイを思うと、すっと胸が軽くなった気がした。
気が付いた時、最初に眼に入ってきたのは机と椅子。ゆっくりと身体を起こすと黒板が見える。
「ここ、どこー……?」
ぱちぱちと瞬きをしながら蛍は辺りを見回した。部屋の様子から察するにどこかの学校――高校のようだが、場所はセイメイの迷宮の近くかどうかはよくわからない。でも、仲間たちはみんな一緒のようだ、とほっとしたのも束の間。
「げ、げげっ。ちょっと、ゾンビもついてきてるじゃん!」
どうやら転移の際に巻き込まれたらしい。倒し損ねたゾンビが教室をウロウロと歩き回っていた。
「ちょっと、あなた達に歩き回られるのは困るわ」
ぱっと立ち上がった曜灯が華麗な回し蹴りをさくっと決めてあっさりとゾンビたちを倒す。
他にも敵はいないかとチモシーと龍之介は警戒を強めたが、どうやら曜灯が倒したゾンビだけだったようで一安心といえよう。
「そういえば、結局、闇堕ちした方たちには会えなかったわね……」
すずりの脳裏をよぎるのは、先生と慕う少年の顔。
(「もしかして、セイメイの傍にいたのかしら?」)
気になることは多々あれど、まずは他の班の報告を聞こうとすずりは深く息を吐いた。
ゾンビたちの撃破に成功し、セイメイが準備していた作戦を破壊することが出来たこの結果は大成功と言ってよいだろう。
学園への帰路に着く灼滅者たちの頭上には、今日も澄んだ空が広がっていた。
作者:春風わかな |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年3月2日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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