富士の迷宮突入戦~訪れた好機

    作者:湊ゆうき

     
     これは、予兆!?
     まさか、私の中にまだ、灼滅者の熾火が残っているとでもいうのか?
     ……だがこれで、私が尾行したあの軍勢の正体が判明した。
     あれは、軍艦島の大勢力。そして軍勢の向かった先は、白の王セイメイの迷宮!

     予兆を見たのも何かの縁だ、武蔵坂学園には連絡を入れておこう。
     その連絡で、灼滅者としての私は本当に最後。
     これより私は、混じり無きひとつの『黒牙』となる……!
     
    「みんな、琵琶湖大橋の戦いでは、お疲れ様」
     橘・創良(高校生エクスブレイン・dn0219)は、集まった灼滅者たちに優しく微笑みかけた。先の戦いでは、灼滅者達の活躍もあり、武蔵坂学園と天海大僧正側の大勝利で終わった。
    「安土城怪人勢力の残党達は、本拠地であった琵琶湖北側の竹生島に立てこもっているけど、カリスマ的存在だった安土城怪人を失ったことで離散した者も多く、その勢力は大きく減退してしまっているみたいなんだ」
     創良はわかりやすく、現在の状況を説明する。
    「更に、安土城怪人に次ぐ実力者だった『グレイズモンキー』が拠点に戻ってこなかったこと、中立的な立場ながら、その献身的な活動で支持されていた『もっともいけないナース』が灼滅されたこともあって、組織としての結束力もなくなって、遠からず自壊するのは間違いないようだね」
     逆に、軍艦島勢力が合流した、白の王勢力は大幅に強化されたのだと創良は説明を続ける。
    「エクスブレインとは全く違う予知能力を持つ『うずめ様』、現世に磐石の拠点を生み出すことができる『ザ・グレート定礎』、ソロモンの大悪魔の一柱『海将フォルネウス』、そしてセイメイと同じ『王』の格を持つ『緑の王アフリカンパンサー』。彼らは、白の王セイメイのこれまでの失策を補って余りある力を持っていると推測されるよ」
     けれど、多くのダークネスを富士の迷宮へと招き入れたことは、白の王に致命的な隙を与えることにもなった。
     その迷宮の入り口を、富士の樹海で探索を続けていたクロキバに発見されてしまうのだった。
    「闇堕ちしてクロキバとなった、白鐘・睡蓮(荒炎炎狼・d01628)さんは、先代達の意志を継ぐべく、白の王の迷宮に挑もうとしているんだ。同時に、武蔵坂学園に対して、この突入口の情報を教えてくれた……」
     そこで一度言葉を切ると、創良は真剣な表情でこう告げた。
    「今こそ、白の王セイメイだけでなく、田子の浦の戦いでは、討ち取ることができなかった、軍艦島のダークネス達を討ち取る千載一遇のチャンスなんだ」
     残念ながら、白の王の迷宮の入り口を通過できる人数には限りがあり、全軍で攻め入ることは不可能。そして、この機会を逃せば、再び侵入することはできない。
    「迷宮を突破し有力なダークネスを灼滅することはもちろん簡単じゃない……けど、挑戦する意義は充分にあると思うんだ。だからこそ、この作戦に参加するみんなには、どういった結果を求めるかをしっかり相談して、作戦をまとめて突入して欲しいんだ」
     ちなみに、と創良はこの迷宮の仕組みについて説明する。
     白の王の迷宮は、内部から迷宮を破壊しようとすると外にはじき出されるという防衛機構があるため、危機に陥った場合は、迷宮自体を攻撃することで緊急脱出が可能となっている。ただし、この防衛機構により、迷宮への破壊工作もほぼ不可能となっているので、その点は注意する必要があるようだ。
    「これまで様々な暗躍をしてきた白の王の喉下に牙をつきつける今回の作戦は、非常に重要な作戦になると思うんだ……迷宮からの脱出は難しくないけど、その反面、敵拠点に攻め込むのに充分な戦力を投入できるわけじゃない。成果をあげるためには、目的を絞ることも大事かもしれないね」
     やみくもに攻め込んでも成果は得られない。今こそ、灼滅者たちの団結力が試されるだろう。この作戦は難しい。だが、その分大きな成果を上げられるチャンスでもあるのだ。
    「それに、白の王セイメイを灼滅できれば、クロキバとなった睡蓮さんを闇堕ちから救出することも可能だと思う。そうすれば……」
     いろいろなことが開けてくるかもしれない。
     最後に創良は、一人一人を見つめてからゆっくりと口を開いた。
    「この戦いは、田子の浦の戦いの雪辱戦なんだ。みんなの健闘と無事を……心から祈っているからね」


    参加者
    花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)
    無道・律(タナトスの鋏・d01795)
    ルーシア・ホジスン(高校生エクソシスト・d03114)
    ゲイル・ライトウィンド(ホロウカオシックコンダクター・d05576)
    戒道・蔵乃祐(プラクシス・d06549)
    リステアリス・エールブランシェ(今は幼き金色オオカミ・d17506)
    久瀬・雛菊(蒼穹のシーアクオン・d21285)
    鈴鳴・真宙(蒼銀の自鳴琴・d26553)

    ■リプレイ

    ●白の王の迷宮
     まだ太陽が姿を現さない早朝。富士裾野の樹海で、その作戦は決行された。
     クロキバの情報を元に樹海を一時間ほど進んでいくと、隠された風穴を発見する灼滅者達。普段は隠されて発見できないであろう風穴の入り口に足を踏み入れ、しばらく進むと氷柱が現れる。いかにも何かありそうな場所の、すぐそばの壁に少しの違和感を覚える。ちらちらと二重写しになっているように見える場所がどう見ても怪しい。意を決し、えいと体当たりをすると――おそらくこれがセイメイの迷宮なのだろう。不気味な地下迷宮がそこに広がっていたのだった。
     灼滅者達はチームごとにそれぞれの目的を決めて動く。順番に迷宮入りした灼滅者達は、それぞれの目的に向かい、素早く行動を開始した。

    「セイメイ、なに……企んで、いるのかな。何にしても……止めないと、だね」
     リステアリス・エールブランシェ(今は幼き金色オオカミ・d17506)が迷宮を前にぽつりと呟く。表情の変化には乏しいが、その内面ではさまざまな感情が渦巻いているのだろう。
    「ええ、セイメイの企みは気になりますね。ここで何かしらの情報が手に入ればいいんですが……」
     鈴鳴・真宙(蒼銀の自鳴琴・d26553)も同じ気持ちで頷く。
     このチームは、セイメイの研究成果の発見と破壊を目指して、下層に向かって進んでいた。
    「下層へはこちらの道でいいみたいですね」
     事前に念入りに準備した道具を手に戒道・蔵乃祐(プラクシス・d06549)は仲間に道を示す。彼の手を離れたパチンコ玉が緩やかな傾斜を下っていく。
    「……携帯電話はもちろん、どうやら無線も使えないようですね」
     事前に学園の仲間達と連絡を取り合う段取りをしていた無道・律(タナトスの鋏・d01795)だが、無線での通信は不可能と知り、皆に報告する。自然の洞窟と違い、特殊な迷宮のせいか、通信手段は断たれてしまっているようだ。
    「とりあえず地図は書いておくな」
     ルーシア・ホジスン(高校生エクソシスト・d03114)がスーパーGPSが使えるように歩いてきた道をマッピングしていく。
     一体この迷宮はどのぐらいの広さがあるというのだろうか。
     念のため、明かりの準備をしてきたが、迷宮内部は淡く光っていて、明かりを持たずとも行動に支障はなさそうだった。だんだんと目が慣れてくると、薄暗い迷宮が灼滅者達を飲み込むような錯覚を覚える。
    「さて魑魅魍魎の巣で何が見つかりますかね?」
      注意深く辺りを見回しながら花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)。トラップや隠し扉などにも全員で充分に気を配って進んでいく。
     他チームとも示し合わせ、分岐などで目印を残していく。既に他のチームも通ったのか、いくつかの目印も残っていた。
    「できる限り戦闘を避けようと思っていましたが……」
     ゲイル・ライトウィンド(ホロウカオシックコンダクター・d05576)がそう呟いたとき、数体のスケルトンが横道から現れ、襲いかかってくる。
     素早く全員で攻撃し、難なく灼滅すると、ゲイルはふうとため息をついた。
    「上層に向かうのが半数、下層に向かうのも半数……下層に向かったチームは20近いそうですよ。さすがにこれだけの戦力があれば、隠れてやり過ごすより、実力で突破していく方が早いでしょうね」
    「チームごとに行動はバラバラでも、下層に向かう以上目的は一緒やしね。みんなでセイメイの企みをぶっ潰すんよ」
     久瀬・雛菊(蒼穹のシーアクオン・d21285)も罠に気をつけながら油断なく探索を進める。
    「竹取物語だと、終盤は帝と月に帰ったかぐや姫の悲恋話なんですが、姫が下界の去り際に残した不死の妙薬を燃やした場所が、富士(不死)山だと言われていますね」
     蔵乃祐が囁く声が不気味な迷宮に小さく反響する。
    「或いは竹取物語も。ダークネスによって歪められた歴史の名残なんでしょうか? 転生を繰り返す不滅の白の王セイメイ。富士の地下迷宮……何とも意味深な組み合わせですね……」
     セイメイの研究成果と目的については、各自思うところがある。だが、もうすぐそれも明らかになることだろう。
     既に他のチームに灼滅されたアンデットたちと思しき姿も、進む道に何度となく現れている。無線で連絡を取り合うことはできないが、ある程度固まって動いてはいるので、連絡を取り合う必要も今のところはなさそうだった。
     迷宮といっても迷路というほど複雑なものではなく、分かれ道はあれど、徐々に下層へと――目指す場所へと近づいているようだった。

    ●迷宮の奧に隠されしモノ
     下層へと向かう途中、ゾンビやスケルトンに何度か出くわしたが、体力を削られるほどのこともなく、全員の力で灼滅できた。武蔵坂の灼滅者達の力が結集すれば、アンデットなどあっさりと蹴散らされていく。ただ、上層には有力敵も多く潜んでいることだろう。こちらは充分な戦力があるが、上層の方がやっかいな敵が多そうなだけに戦力的に心配なところだ。
     迷宮に入って30分ほど過ぎた頃。その変化に一番にルーシアが気付いた。
    「ものすごく生臭い匂いがする……」
     異臭に対しても警戒していたルーシアが一番に気付いたが、その生臭い匂いはその場にいる誰にも感じられた。
    「ゾンビがいるんだから、生臭いの仕方がないんでしょうけど……」
    「でも……今までもゾンビと戦ってきたけど……ここまで生臭いなんてことはなかったような……」
     真宙の言葉に、リステアリスも頷いて不思議がる。
    「ゾンビは死んでから結構経っているのですから、もちろん腐っているのでしょうけど……」
    「なんてゆうか、生ゴミっぽい匂い……」
     律と焔もこの異常さを指摘する。
    「アンデットダークネスを使って、何かしている可能性がますます高まりましたね」
     蔵乃祐は自身の予測が遠くないことを確信する。ゲイルもやれやれと肩をすくめる。
    「セイメイは、まーたくそ面倒な事考えてるんでしょうね」
    「目的に近づいてるってことで間違いないみたいやね……急がんと」
     雛菊が真剣な顔で頷き、皆を促す。
     先を急ぐ灼滅者達だが、下層に降りるほど、その生臭い匂いは強さを増していく。強烈な腐臭に鼻が曲がりそうなくらいだ。
     そして。おそらくここが迷宮の最下層なのだろう。灼滅者達はその光景を見て言葉を失う。
     そこはドーム球場が何個か入るぐらいの大きさを持った広間だった。けれど、驚いたのはその広さにではない。
     そこには、おびただしい数の『死体』が集められていたのだった。

    ●最下層にて
     既に他の何チームかが同じ場所に辿り着き、この異様な光景を凝視していた。
    「ここは、死体の保管庫……?」
    「どれぐらいの時間をかけてこれほどの死体を集めたのでしょうか……」
     リステアリスと律が思わず呟く。死体の数は、千や二千ではきかない。おそらく一万体近い死体がこの場所に集められていた。
     死体たちの中には、つい最近まで生きていたことを感じられるものもいた。その多くに噛みつかれたような傷があり、それがまだ生々しい傷跡として残っているのだった。
    「研究のためにこんな多くの人を……?」
    「人の命をなんだと……」
     目の前の状況に驚きつつも憤りを隠せない灼滅者達。大人だけでなく、まだ小学生ぐらいの子供の死体の姿も見える。
    「あの、今……動きませんでしたか?」
     真宙が恐る恐る指を差す。視線の先では、死体だったはずの者がゆっくりと起き上がり、動き出していたのだった。
     他のチームも気づき、それぞれ戦闘体勢に入っていく。不幸中の幸いとも言うべきは、1万体近い死体が全て動き出したわけではないことだった。その半数ほどはぴくりとも動かない。
    「ま、後々に長引くのもやですし、ちゃっちゃと片付けますか」
     ゲイルが飄々とした表情で武器を構える。ゾンビ自体は大したことはない敵だが、いかんせん数が多すぎる。けれど、下層にはたくさんの仲間達が集結しつつあった。それぞれの場所でゾンビを蹴散らす戦いが始まる。
    「これがセイメイの研究成果というのなら、破壊するまでだな!」
     ルーシアがゾンビの攻撃をひらりとかわし、ワイドガードで守りを固める。ビハインドも霊撃で攻撃に参加する。
    「これが計画のために用意していたものなら、ただ数が多いだけというわけではないでしょうしね。きっと何か他にありそうです」
     サイキックソードから光を放ち、蔵乃祐はゾンビをまとめて片付けにかかる。雛菊もガイアパワーを秘めたタコセントアックスでゾンビを叩き斬る。ウイングキャットのイカスミも猫魔法で応戦する。
    「斬り潰します」
     焔もイクス・アーヴェントから超弩級の一撃を繰り出し、ゾンビを粉砕していく。
     ゾンビ自体は灼滅者達にとって大した敵ではないが、とにかく数が多すぎる。徐々に体力を削られながらも、ゾンビの群れにひたすら立ち向かうのだった。

    ●ゾンビの謎
    「いわゆるアンデットのゾンビと違い……なんというか、ここのゾンビ達にはつい最近まで生きていたような生活感がありますね」
     暴風を伴う強烈な回し蹴りを放ちながら、律はぽつりと呟く。律の指摘したように、ここのゾンビ達は制服を着たゾンビや、スーツ姿のゾンビ、ゲートボールのクラブのようなものを振りかざすお爺さんゾンビと、先日まで普通に生活をしていたと思えるようなゾンビばかり。
    「ゾンビを大量生産してなーに考えてるんでしょうね」
     ゲイルのガトリング連射がゾンビを蜂の巣にする。
    「関係ない人を……こんなに、巻き込んで……」
     リステアリスが仲間を癒しながら、静かにセイメイに対する怒りを燃やしていた。その気持ちは皆同じだ。
    「人間という実体は、灼滅者になったりするし、めんどくさい代物だから実体に代わるナニカを創造しようとしてたのかな……」
     ひどい腐臭に耐えながらも、次々と襲いかかってくるゾンビを観察するルーシア。動かないままの死体も半数以上はいるということは、まだ実験段階なのだろうか。
    「凍りつくといいよ!」
     冷たい炎を放ちながら、戦闘モードに入ったため、高らかな声で真宙が叫ぶ。全員で既に百体以上は倒してきたが、まだ相当数のゾンビが蠢いている。各チームも応戦しているが数千体のゾンビを相手にするのはやはり骨が折れる。
    「動いとるゾンビは、噛み殺されたようなのが多い気がするんやけど……」
     腐乱した身体でもわかる、大きな噛み傷。一方、動かない死体達は撲殺されたようなものが多い。
    「何か意味があるんかな?」
     攻撃の手を休めず、生み出した影でゾンビを飲み込みながら雛菊が呟く。
    「そういえばさっき、攻撃を避けたついでに勢いでゾンビを蹴ったら、動かなくなったんですよね」
     ゲイルもマテリアルロッドでゾンビを殴りつけながら、違和について語る。
    「アンデッドダークネスのガイアパワー強化体かと思っていましたが……」
     ゾンビを氷漬けにしながら、蔵乃祐は自身の推測と目の前の状況とを照らし合わせる。
     そこへ何か考えた様子のリステアリスがサイキックを使わず、武器でゾンビを殴りつけてみた。弱っていたとはいえ、動きを止めた様子を見てリステアリスは確信する。この目の前のゾンビは、サイキック以外の攻撃でもダメージを受ける、普通のゾンビとは違う存在であることを。
    「普通の攻撃でダメージ受けるのは……かなりの弱点だと思うの。でも、弱点があるからこそ、不完全だからこそ一気に大量に生み出せるのかも……」
     最近まで生きていた形跡のあるゾンビ。短期間で大量のゾンビが生み出せるとしたら、人口密集地で同じようなことが起これば、その規模は数百万という莫大なものになるかもしれない。
    「でも、ここでセイメイの計画を潰すことができれば……」
     優しい風を招いて仲間を癒しながら、律は終わらないゾンビ討伐を終わらせるべく気持ちを奮い立たせる。
     体力を削がれながらも、一体、また一体とゾンビの数を減らし、大広間のゾンビをあらかた灼滅し終えた頃……迷宮に激震が走った。
    「わ……何?」
     きょろきょろと辺りを見回す真宙。大きな揺れは止むことなく続いている。他の仲間達も油断なく辺りを見回す。
    「たった今、無線が通じました。情報によると……セイメイが倒されたそうです」
     律が無線で受け取った仲間からの情報を厳かに伝える。
     皆、それぞれに大きく頷き合う。そしてセイメイの作った迷宮だからこそ、主を失った今崩壊しようとしているのだろう。
    「崩壊する前に撤退しましょう」
     近くから、そんな声も聞こえてくる。
     セイメイは倒れ、セイメイの研究と思しきものも灼滅者の手によって破壊された。ここに長居する理由はない。
    「確か壁を殴ればいいんでしたかね」
     ゲイルの言う通り、迷宮の脱出機構を利用するため、壁を破壊しようと攻撃すると、目眩にも似た感覚ののち、一瞬のうちに8人全員で転移していたのだった。

    「ここは……?」
     焔が呟き辺りを見回す。先ほどまで共に戦っていた学園の仲間達はおらず、一緒に行動していた8人だけが別の場所に飛ばされたようだった。
    「学校……みたいやね」
     雛菊が辺りを見回し、黒板に机や椅子を確認して呟く。武蔵坂ではないが、どこかの学校の教室のようだった。早朝のためか、人の姿も見えない。
    「ん、みんな無事で……良かった」
     リステアリスがほっと安堵の息を吐くと同時に、ルーシアが違和に気付く。
    「ねえ……あれ、ゾンビじゃない?」
     途端に生臭い匂いが鼻をつく。
     教室の隅に、先ほどまで戦っていたゾンビと同じようなゾンビがうずくまっていた。
    「僕たちの転移に巻き込まれたんでしょうか……」
     蔵乃祐が呟く。理由はわからないが、放っておいていいものでもない。
     たった一体でそれほど強くもないので、疲弊していた灼滅者たちだが、あっさりとゾンビを灼滅する。
    「予定通りにはいかないことも多々ありましたが……それでも、目的を達成できて良かったです」
    「謎もまだまだ残ってるようですがね」
     律の言葉に、ゲイルがやれやれと応じる。
    「学園に戻れば、みんなが持ち帰った情報でもう少しいろいろなことがわかるかもしれませんね」
     真宙の言葉に皆頷くと、大量のゾンビとの戦いで疲弊した身体を奮い立たせる。
     灼滅者一人一人の力が集まり、白の王とその研究成果及び迷宮を破壊したことは、この好機を活かした充分な結果だと言えるだろう。

    作者:湊ゆうき 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年3月2日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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