富士の迷宮突入戦~白き迷宮を踏破せよ!

    作者:波多野志郎

     
     これは、予兆!?
     まさか、私の中にまだ、灼滅者の熾火が残っているとでもいうのか?
     ……だがこれで、私が尾行したあの軍勢の正体が判明した。
     あれは、軍艦島の大勢力。そして軍勢の向かった先は、白の王セイメイの迷宮!

     予兆を見たのも何かの縁だ、武蔵坂学園には連絡を入れておこう。
     その連絡で、灼滅者としての私は本当に最後。
     これより私は、混じり無きひとつの『黒牙』となる……!
     
    「琵琶湖大橋の戦いは、武蔵坂学園と天海大僧正側の大勝利と終わったっす」
     湾野・翠織(中学生エクスブレイン・dn0039)は、そう語るが表情は晴れない。カリスマである安土城怪人を失った事で離散した者も多く、その勢力は大きく減退してしまったが、逆に、軍艦島勢力が合流した、白の王勢力は大幅に強化されたからだ。
     エクスブレインとは全く違う予知能力を持つ『うずめ様』、現世に磐石の拠点を生み出す事ができる『ザ・グレート定礎』、ソロモンの大悪魔の一柱『海将フォルネウス』、そしてセイメイと同じ『王』の格を持つ『緑の王アフリカンパンサー』――間違いなく、強大な勢力となっているだろう。
     しかし、決して悪いニュースだけではない。
    「富士の樹海で探索を続けていたクロキバが、その迷宮の入り口を発見したんすよ」
     闇堕ちしてクロキバとなった、白鐘・睡蓮(荒炎炎狼・d01628)は、先代達の意志を継ぐべく、白の王の迷宮に挑もうとしている。同時に、武蔵坂学園に対して、この突入口の情報を連絡して来てくれたのだ。田子の浦の戦いでは、討ち取る事ができなかった、軍艦島のダークネス達を討ち取る千載一遇の好機となるだろう。
    「残念ながら、白の王の迷宮の入り口を通過できる人数には限りがあるっす。また、この機を逃せば再び侵入できなるなってしまうっす」
     迷宮を突破し有力なダークネスを灼滅する事は難しい。だが、挑戦する意義はある――参加する灼滅者の皆は、どういった結果を求めるかを相談し、作戦をまとめて突入して欲しいのだ。
    「白の王の迷宮は、内部から迷宮を破壊しようとすると外にはじき出されるという防衛機構があるみたいっす。だから、危機に陥った場合は、迷宮自体を攻撃する事で緊急脱出が可能っす」
     ただし、これはあくまで防衛機構だ。迷宮への破壊工作もほぼ不可能となっているので、その点は注意が必要だ。
    「これまで様々な暗躍をしてきた白の王の喉下に牙をつきつける今回の作戦は、非常に重要な作戦になるはずっす。迷宮からの脱出は難しくないっすけど、反面、敵拠点に攻め込むには戦力は多くないっす。成果をあげるには、目的を絞る事も必要かもしれないっすね」


    参加者
    巽・空(白き龍・d00219)
    狐雅原・あきら(アポリアの贖罪者・d00502)
    黒守・燦太(影追い・d01462)
    棗・螢(黎明の翼・d17067)
    流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)
    雲・丹(てくてくにーどるうにのあし・d27195)
    霊界堂・壁虎(無過値・d34869)

    ■リプレイ


     上層部の最奥――その神社の鳥居のようなものが連なった、厳粛な雰囲気の通路へと彼らはたどり着いた。
    「さっきの音は――」
     明確な戦闘音に気付いた、その時に眼前の風景が変わった――巽・空(白き龍・d00219)が警戒して、立ち止まったその時だ。
    「お客さんみたいデス」
    「この場合、貴様らがそうであろう――招かざる、と頭につくが」
     狐雅原・あきら(アポリアの贖罪者・d00502)の言葉に、ソレは答えた。陰陽師風の服装に、水晶の髑髏の頭――目の前に立ち塞がる相手が何者か、黒守・燦太(影追い・d01462)が言い捨てる。
    「ノーライフキングか」
    「然り。我が主の元へ、決して行かさぬ」
     カキン、と水晶の歯を鳴らして断言するノーライフキングに、燦太はこぼす。
    「RPGじみていると思ったが、中ボスつきか」
    「この先にセイメイがいるんだね……見つけ出して絶対に倒すよ! 我が剣に蛇を、我が体に青き魔獣の力を……」
     棗・螢(黎明の翼・d17067)がスレイヤーカードから海王の蛇腹剣を引き抜く。それに、ノーライフキングは殺気を増幅させた。
    「言うに事欠いて、その未熟さで我が主に刃を――」
    「ああ、もうええんよぉ――へんしーん!《DLUGAM PRGE AOIVEAE IADNAH》」
     解除コードと共に、ウニとなった――もとい、文字通り変身した雲・丹(てくてくにーどるうにのあし・d27195)の言葉に、ノーライフキングが言葉を切った。表情があるのならば怪訝な顔をしていただろう、そんな雰囲気がある。
    「だからよ、雑魚は眼中にねぇって言ってんのさ」
     ダグラス・マクギャレイ(獣・d19431)が、肉食獣のように牙を剥いて笑った。それに同意するように、霊界堂・壁虎(無過値・d34869)のうなずく。
    「ボクとしては特に興味はないんだけど出来れば殺すか邪魔くらいしておきたいよね」
    「さぁさ、どいたどいた! 道を開けないと潰しちゃうよ!」
     笑みと共に霊界堂・壁虎(無過値・d34869)が言い捨て、流阿武・知信(炎纏いし鉄の盾・d20203)が告げた。それに、ノーライフキングが肩を震わせる――笑ったのだ。
    「吠えるか、灼滅者ども」
    「わかってねぇのかよ、もっとわかりやすく言ってやろうか?」
     ダグラスは身を低く構え、そして続ける。
    「お前じゃ相手にならねぇ、そう言ってんだぜ? 雑魚」
    「よく言った――!」
     ノーライフキングはからからと水晶の頭蓋骨を鳴らして、輝ける十字架を降臨さ無数の光線で周囲を薙ぎ払った。


    (「もちろん、油断しているつもりはありませんが」)
     空は、軽快なステップを刻みながら思う。目の前にいる陰陽師風のノーライフキングが弱いとは思わない――しかし、不思議と負けるつもりも苦戦するつもりもなかった。
     それは、全員が同じだった。だからこそ――ノーライフキングに、果敢に攻め込んでいく。
    「クカカカカ!!」
     ノーライフキングがババババババババババババ! と護符を躍らせ、五芒星型描いて発動させる。五星結界符――しかし、灼滅者達の勢いを削ぐ事は叶わない!
    「ハハハハハハハハッ! 全然足りないネ!」
     一直線の護符の嵐の中を、あきらが突き抜けていく。繰り出される矢印型の長槍――断罪ノ磔柱が、ジャランと鎖を鳴らしながらノーライフキングの胸を貫いた。
    「ぐ、ぬ!!」
     ノーライフキングが、思わず後ずさる。真上に、と跳んだあきら――そこに入れ替わるように、空が神秘的な淡い青色の光を拳に集めて連打した。その加速していくリズムの刻む連打に、ノーライフキングの防御が間に合わない。
    「お願い!」
    「うん、さっさと終わらせよう!」
     空の閃光百裂拳に翻弄されるノーライフキングへ、螢のレイザースラストが突き刺さっていった。そのまま、足が宙に浮かされたノーライフキングへと、知信が一気に踏み込み――。
    「――ぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
     裂帛の気合と共に放たれた知信の封巨剣ー山崩しーの一閃が、斬るのではなくノーライフキングをこそぎ落とす。水晶のわずかに残った肉が抉られ、ノーライフキングが体勢を崩した。
    「いくよ?」
     上空で待っていたのは、一見身長120cm程の外見幼女――風の男の娘へと姿を変えた壁虎だ。右手を頭上にかざすと突如として現れた武骨な鉄骨に螺子が突き刺さっているソレを豪快に振り下ろした。
    「ぐが!?」
     ズドン! と地面に、ノーライフキングが叩き付けられる。壁虎のフォースブレイクには、それだけの威力があったのだ。
    「何故、何故、ここまでの余力が、ここまで来た貴様らに――」
    「それは、苦労したんよぉ」
     ノーライフキングの疑問に答えながら、丹の棘――否、マジックミサイルが雨あられとノーライフキングへと降り注いだ。強引にその場から動いたノーライフキングへと、ダグラスがニヤリと笑った。
    「言っただろうが。雑魚は眼中にねぇんだよ」
     ――ノーライフキングの誤算は、ここまでやって来た彼らの損耗度だ。極力音を殺し、マッピングを正確に行ない、ハンドサインを用いて蜜に連携を取って消耗を減らしに減らした結果がこれだ。
    「ぐお!?」
     ズサン、と獣が獲物の喉笛を食い千切るようにダグラスの神霊剣が薙ぎ払われる。それに、膝を揺らしたノーライフキングの眼前に燦太が踏み込んだ。
    「ぶった切るのとぶっ刺されるの、どっちが良い?」
     燦太の問いかけ、それにノーライフキングが答えるよりも早く。
    「どっちでもいいか」
     ヒュガン! と燦太の咎人の大鎌が、ノーライフキングの水晶の胴を文字通り両断した。
    「な、る、ほど……確かに、我が油断……ッ。み、ごと」
     ノーライフキングは、悟る。ダグラスの言葉通り、自身は彼らにとって脅威ではなく単なる障害に過ぎなかった。そして、それは決して軽口でもなんでもなく、それを可能とする確信があったからこその言葉だったのだ。
     ここに至るまでの、創意工夫――緻密な道程があったからこそ、彼らはセイメイの前に立ち塞がった陰陽師ノーライフキング達との戦いに、他の班に先んじて倒す事に成功したのだった……。


     最速で、倒せた――それでも、覆せない悲劇はあった。
     鳥居が連なる空間を、彼らは先を急ぐ。その剣戟の音に気付き、セイメイの足止めに徹し居た仲間達の戦場へたどり着いたその時だった。
    「あなたは、悪縁良縁を操ると言っていましたね。ですが、あなたの裏切りは悪縁であり、業そのもの。つまり、私はその業を喰らえばよいだけでございます」
    「――ッ!」
     セイメイの元へとたどり着いたその目の前で、一つの影が白い光の前に崩れ落ちる。それは闇堕ちしたかつての学園の仲間であり、カリル・サイプレスであった。
    「セイメイ……!」
     ぎしり、と螢のかみ締めた歯が軋みを上げる。闇堕ちしながら、こんなになるまで戦い抜いてくれた――それは、セイメイとの戦いでボロボロとなった班の姿を見れば、明白だ。
    「あなたが、セイメイ……クロキバをアンデッドダークネスにした……」
     怒りや憎しみは無い、しかし戦う事に躊躇もない――知信は、まだその正体を知らない。
    「相手が誰であろうと、ボクはいつも通り全力を尽くすまで。白の王…その企みごと、ここで『破壊する』よ!!」
     凛と宣言する空に、セイメイは薄く微笑した。そして、その両手を広げた刹那、チェーンソー剣を握り言い放つ。
    「裏切り者は既に始末しました、あなた達にもはや勝ち目はありません」
     セイメイが、地面を蹴る。一瞬で間合いを詰めたセイメイのチェーンソー剣の乱舞に、壁虎が鉄骨を肩に背負って言った。
    「余り野郎の回復は気が進まないけど仕方ないね。『the・liar』――」
     語られる壁虎の言霊と共に、空が一気に踏み込む。雷を宿した拳を突き上げ、セイメイの顎を狙う――抗雷撃だ。
    「おっと」
     しかし、セイメイはそれを引き戻したチェーンソー剣で、火花を散らして受け止める。それに、空は言い放った。
    「まだです!」
     空の再行動、放たれた逆の拳による鋼鉄拳をセイメイも逆のチェーンソー剣で受け止め――。
    「いっちょやりマスか!」
     そこへ、あきらのじゃらん! と断罪ノ磔柱による螺穿槍が繰り出された。セイメイはそれをすかさず体を捻り、脇腹をかするに止める。セイメイはそこで、大きく後退――それを追い、燦太はバベルブレイカーのジェット噴射で加速。
    「逃がすか」
     すぐさまセイメイに追いつき、燦太の蹂躙のバベルインパクトが繰り出された。セイメイは、それを両手で受け止め、すかさず軌道を逸らした。
    「やはり、侮れないでございますね」
     燦太が、大きく宙を舞った――その死角に、駆けるダグラスの姿があった。
    「俺ぁ本来チマチマ遣るのは性に合わねえんだ、最後位はガッツリ殴らせろっての!」
     放たれるダグラスの抗雷撃が、セイメイを捉える。しかし、そこまでだ。振り抜くより早く、ダグラスをセイメイは膝蹴りで宙へと浮かせている。
     しかし、構わず丹が動いた。
    「そこやぁ」
    「だなァ!!」
     ダグラスが、大きく空中で身を捻る。そこへ丹の投擲した巨大な氷柱、妖冷弾がセイメイへと迫った。セイメイは、それを両手で殴りつけ粉砕――舞い散る氷片の中で、跳んだ知信の燃え盛る回し蹴りが放たれた。
    「お願いします!」
    「棗・螢……参るよ!」
     そして、知信の言葉に答えて螢は海王の蛇腹剣を振るい、セイメイへと攻撃を繰り出した。
    「さぁて、年貢の納め時ってやつだぜ? ここをてめぇの墓場にしてやるよ、セイメイ!」
     そこへ、無数の足音と共に他の二班が合流する。それを見て、セイメイは呼吸を整え邪を退ける五芒星を形成、自らの傷を癒した。
    「この私とした事が、傷を負いすぎましたか」
     戦況は、時間によって逆転していく――セイメイの戦術眼が、それを正確に読み取っていたからこその言葉だ。
    「今日こそセイメイさん逃げませんよぉにー」
    「まっ、今死んじゃうかもしれないケドね! ハハッ!」
     丹は決意を込めて言い、あきらはハハと笑う。この強大なノーライフキングの首へと指が届いた――そう、確信を得るのに十分だった。


     ――戦いの流れは、セイメイの読み通り最初に援軍に到着した彼らの元へ、ぞくぞくと現れる武蔵坂学園の生徒達によって逆転していく。
    「武蔵坂のヤル気、舐めんじゃねえぞ」
     ダグラスが、歯を剥いて笑う。彼らだけではないのだ、その数に徐々に圧されセイメイも窮地に追いやられていく。それでも、セイメイには最低限の余裕がある――それは、察せられた。
    「足りんのよぉ」
    「ああ、っぽいデスネ」
     丹の言葉に意図に気付き、あきらも同意する。螢も、小さくうなづいた。
    「それでも、それももう終わりだよ……」
    「あぁ、まったくだ」
     鳥居の連なる通路、その奥から駆けてくる気配に気付いたのだ。だから、ダグラスは言い捨てる。
    「ま、クロキバ。アンタが居るなら、最後はアンタに譲るがな」
     こちらへ向かってくる黒い影――クロキバの姿に、灼滅者達がざわめく。その気配を振り返って、セイメイは吐き出すように言った。
    「あなた達を倒し、クロキバを傀儡とすれば、私は王の中の王になれる……なれる……、クロキバー!」
    「終わりだよ、セイメイ」
     知信が告げたその言葉の通り、クロキバの合流がこの流れを決定付ける。クロキバという最後の要素が揃った、後はただその死力を尽くすそれだけだ。
    「おのれ、おのれ、あの裏切り者のせいで」
    「それが、業ってもんだろう?」
     五芒印によって回復するセイメイに、鉄骨を手に壁虎が皮肉げに言い捨てる。
    「自業自得、とはよく言ったものだね」
    「黙れ、黙れ、黙れ!」
     ガチャリ、と咎人の大鎌を手に燦太が呟いた。
    「ぶった切るにせよ、ぶっ刺すにせよ。その道は、作らないとな」
    「あぁ、行くよ!」
     空が言い放ち、ステップを刻んで駆け出した。
     武蔵坂学園の灼滅者達が、殺到していく。クロキバへの道を繋ぐ、白の王へと黒き牙を届かせるそのために――最後の死力を振り絞る!
    「――ッ」
     無数の斬撃を、打撃を前に、セイメイは二本のチェーンソー剣で応戦した。そこへ、タタン! とステップでリズムを刻み、空が迫る。セイメイは、横一閃の薙ぎ払いでそれを阻み――損ねた。
    「遅いよ!」
     斬撃の牽制を飛び越え、変則的な蹴り――グラインドファイアで空がセイメイの首を狩る。それに、グラリと体勢を崩したセイメイへ燦太が踏み込んだ。セイメイはそれを再びチェーンソー剣を振り払うが、燦太はそれを大鎌で受け止める。
    「まずは、ぶっ刺しておこうか」
     ヒュガ! と近距離でバベルブレイカーに持ち替え、燦太はジェット噴射で加速させたバベルブレイカーで零距離でセイメイの脇腹へと突き刺した。
     セイメイの足が、宙に浮く。そこへ、跳んだ知信が武骨な鉄の塊を全力で振り下ろした。
    「潰れろ――!」
     ギギギギギギギギギギギギギン! と火花を散らして、セイメイは二本のチェーンソー剣でセイメイが知信の戦艦斬りを受け止める。素早くそれを振り払おうとしたセイメイの腕に、ジャラン! と蛇腹剣が絡まった――螢だ。
    「そうはさせないよ? セイメイさん?」
     螢の蛇咬斬が生んだ隙は、一秒程度。しかし、この濃厚な戦場での一秒は、大きい――壁虎が、オーラをその両の拳に集中させると連打した。
    「棒立ちしてると、危ないよ」
     ガガガガガガガガガガガガガガガッ! と壁虎の閃光百裂拳が、炸裂する。上下に振り分けた拳の連打に、セイメイの防御が間に合わない――そこに、ダグラスが跳びかかった。
    「ウロチョロ鬱陶しいのは、叩き潰すに限るぜ」
     ヒュガ! と鋭い放電光をまとった一撃に、セイメイが吹き飛ばされる。その着地点に、丹とあきら――そして、多くの灼滅者達が狙いを定めた。
    「ほな――」
    「行きますヨ!」
     ヒュガガガガガガガガガガガガガガン! と丹のマジックミサイルがあきらのデッドブラスターが、無数の遠距離攻撃がセイメイへと降り注ぐ。連続して起こる爆発、その中で耐えるセイメイへと黒い影が一気に駆け込んだ。
    「かつてクロキバだった者達よ。私に力を与えてくれ」
     クロキバだ。クロキバが、その頭上に白く燃え上がる得物を振り上げた。セイメイの喉が、口が震える。
    「あなた達、灼滅者と因縁を持ってしまったことが」
     この私の最大の失策であったというのですか……。
     血を吐き出しながら紡ぎ出された言葉に、炎を振り下ろすクロキバの表情は何も読み取ることはできなかった。ただ、クロキバの一撃がついに白の王を完全に討ち取った……。


    「終わりだな」
     学園の生徒の説得に、崩れ落ちたクロキバの姿を見やり燦太がそうこぼす。それに、螢も一つうなずいた。
    「どうやら、この迷宮も終わりみたいだよ……」
     螢の言葉と同時、ズン……! と迷宮が振動する。その揺れに、人の姿に戻っていた丹が言った。
    「なら、もう帰るんよぉ」
    「そうデスネ、もうここは用なしですカラ」
     丹の言葉に、あきらもそううなずく。目的は、果たした。後は、生還するだけだ。
    「これで決着だね、セイメイ」
     知信は、セイメイの倒れたその場所に静かに告げる。この地下迷宮の死闘において、彼らは最大限の成果を携え帰還した……。

    作者:波多野志郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年3月2日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ