富士の迷宮突入戦~白き野望を打ち砕け

    作者:のらむ

     
     これは、予兆!?
     まさか、私の中にまだ、灼滅者の熾火が残っているとでもいうのか?
     ……だがこれで、私が尾行したあの軍勢の正体が判明した。
     あれは、軍艦島の大勢力。そして軍勢の向かった先は、白の王セイメイの迷宮!

     予兆を見たのも何かの縁だ、武蔵坂学園には連絡を入れておこう。
     その連絡で、灼滅者としての私は本当に最後。
     これより私は、混じり無きひとつの『黒牙』となる……!
     

     神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)は教室に集められた灼滅者達を前に赤いファイルを開き、説明を始める。
    「さて皆さん、こんにちは。皆さん知っての通り、琵琶湖大橋の戦いは武蔵坂学園と天海大僧正側の大勝利となりました」
     安土城怪人勢力の残党達は本拠地であった琵琶湖北側の竹生島に立てこもっているが、カリスマであった安土城怪人が灼滅された事によって離散した者も多く、その勢力は大きく減退したらしい。
    「更に安土城怪人に次ぐ実力者であったグレイズモンキーが拠点に戻ってこなかったこと、中立的な立場ながらもその活動が支持されていたもっともいけないナースが灼滅された事もあり、彼らの勢力がいずれ自壊するのはまず間違いないでしょう」
     そして一方、軍艦島勢力が合流してしまった白の王勢力は大幅に強化が成された。
    「我々エクスブレインとは異なる予知能力を持つ『うずめ様』、現世に盤石の拠点を生み出す事が出来る『ザ・グレート定礎』、ソロモンの大悪魔の一柱『海将フォルネウス』、そしてセイメイと同じ『王』の格を持つ『緑の王アフリカンパンサー』。彼等は白の王セイメイのこれまでの失策を補って余りある力を持っているでしょう」
     しかし多くのダークネスを富士の迷宮に招き入れた事は、同時に白の王に致命的な隙を与える事となった。
    「昨年闇堕ちした白鐘・睡蓮(荒炎炎狼・d01628)さん、現在の『クロキバ』に、その迷宮の入り口を発見されてしまったのです」
     闇堕ちした睡蓮は先代達の意思を継ぐべく、白の王の迷宮に挑もうとしている。そして同時にその情報を、武蔵坂学園にリークしてくれたのである。
    「まさに千載一遇 、絶好の好機です。今こそ白の王だけではなく、軍艦島のダークネス達を討ち取る事の出来るまたとない機会です」
     ただし、この迷宮の入り口を通過できる人数には限りがあり、全軍で攻め入る事は出来ない。更にこの機を逃せば、再び侵入できることはないだろう。
    「迷宮を突破し有力なダークネスを灼滅する……相当難しい事ではありますが、挑戦する意義はあるでしょう。皆さんはどういった結果を求めるが相談し、作戦をまとめて一気に突入してください」
     なお、白の王の迷宮は、内側から迷宮を破壊しようとすると外に弾きだされるという防御機構がある事も判明している。
    「うざったい仕掛けですが、逆にこの仕掛けを利用し、危機に陥った場合は迷宮自体を攻撃する事で瞬時に安全に避難する事が可能となっています」
     そこまでの説明を終え、ウィラはファイルをパタンと閉じた。
    「説明は以上です。これまで様々な暗躍を行い事あるたびに私たちの敵となってきた白の王の首を掻き切る事も出来る今回の作戦は、言うまでも無く超重要です。迷宮からの脱出が容易な反面、敵戦力に攻め込む戦力は決して多くありません。成果を上げる為には、目的を絞る事も必要になってくるかもしれません」
     白の王セイメイを灼滅できれば、クロキバとなった白鐘を闇堕ちから救出する事も可能になるかもしれない。
    「……お気をつけて。皆さんが無事に、多くの戦果を得られることを願っています」


    参加者
    色射・緋頼(生者を護る者・d01617)
    泉・星流(箒好き魔法使い・d03734)
    阿久沢・木菟(八門継承者・d12081)
    分福茶・猯(不思議系ぽこにゃん・d13504)
    月村・アヅマ(風刃・d13869)
    狩家・利戈(無領無民の王・d15666)
    ユーリー・マニャーキン(天籟のミーシャ・d21055)
    エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)

    ■リプレイ


     富士の迷宮突入戦は、灼滅者達の怒涛の進軍から幕を開けた。
     入り口に入るや否や、下層へ続く巨大な大道へ足を向ける灼滅者。
     セイメイの企みを暴くべく下層に向かった100を超える人数の灼滅者達が、立ち塞がるゾンビやスケルトンを数の暴力で薙ぎ払い突き進んでいた。
    「さあ道を開けよ亡者共、このまま最下層まで到達し、作戦も準備していた何かも一切合切かっぱらって丸裸にしてやろう……くっくっく、セイメイの驚く顔が目に浮かぶわい」
     立ち塞がるスケルトンを拳で粉砕しながら、分福茶・猯(不思議系ぽこにゃん・d13504)はにやりと笑みを浮かべていた。
    「同じ場所へ向かう灼滅者達がこれほど大勢となると、静かに探索するというのはかなり厳しいかもしれませんね。というか、既に厳しいですが」
     ユーリー・マニャーキン(天籟のミーシャ・d21055)は灼熱の蹴りでゾンビの身体を丸焦げにしつつ、そう呟いた。
    「だけど一方的にアンデッド達を叩ける分、戦力も温存できてるわね。あいつの計画を完璧に破壊する事も現実味を帯びて来たわ」
     エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)はそう言いながら、ゾンビが振り下ろした長剣を軽く避けた。
    「………………」
     月村・アヅマ(風刃・d13869)は坦々とゾンビ達を消し飛ばしながらも、一瞬上層の仲間たちが無事か気がかりになった。
     しかし今は成すべきことをするだけと、アヅマは気持ちを切り替え戦いを続ける。
     多くのゾンビ達を蹴散らし進み続け、灼滅者達は存外早く最下層に到達していた。多くの灼滅者達が集まってこそ成し得た結果だっただろう。
    「なんでしょうか、この臭い。ゾンビがいるのですから仕方ないですが、時間が経っている分ここまでの強烈な臭いはしない筈……ッ」
     徐々に強まる謎の異臭に色射・緋頼(生者を護る者・d01617)は顔をしかめるが、最下層の大広間に足を踏み入れた途端、絶句する。
     そこは、とても広大な空間だった。これまでの道中からは想像もつかない程に広い空間。
     しかしそんな広さなどどうでも良くなるような光景が、灼滅者達の前に広がっていた。
    「どんぴしゃりって奴だな。全然嬉しくねーが……それにしてもグロイわー。燃やして消毒したくなる」
     狩家・利戈(無領無民の王・d15666)はある程度予想していた様で、そこまでの驚きは感じていない様だった。
     この空間一杯に敷き詰められていたのは、数えきれない程に大量の死体。
     先程から感じていた異臭は、明らかにこの死体の山から発せられているものであった。
    「百や二百じゃすまないね、この数は。数千、いや、もしかしたら万いくかも……ん?」
     泉・星流(箒好き魔法使い・d03734)は血塗れの死体に目を向けると、ある事に気付く。
     この死体は全て、何かに噛まれたかの様な傷痕がある。更に死体の状態から、つい最近殺されたという事も分かった。
     気は進まないが更に調査を進めなければと思ったその時、大広間に異変が起こる。
    「……冗談だろ」
     アヅマは思わず息を呑んだ。生気も無く横たわっていた死体が、むくりとその身を起こし始めたのである。
     大広間に存在していた死体の約半数が起き上がると、その濁った瞳を灼滅者達に一斉に向ける。
    「これは……流石の拙者も吃驚でござるな。11フィート棒もへったくれもないでござる」
     阿久沢・木菟(八門継承者・d12081)は殲術道具を構え、数多のゾンビ達をぐるっと見渡した。
     とにかく数が多い。だがこれがセイメイの研究結果というならば、唯の大量のゾンビ、で済む筈もない。
     ここで全滅させなければ、何かとんでもない事が起こる。灼滅者達はそんな予感をひしひしと感じていた。
     数千体のゾンビと144人の灼滅者。
     彼らの激闘が、今まさに始まろうとしていた。


     腐臭を放つゾンビの群れが、様々な凶器を手に灼滅者達に迫る。
     恐らくこのゾンビの全てがセイメイが創りだしたもの。この地獄を生み出したのは、間違いなく白の王セイメイであった。
    「…………数は多いですが、こちらの数もそれなりのものです。やってやれない事はないでしょう」
     ユーリーは『暁王剣』を構えると、襲い掛かるゾンビ達に立ち向かう。
    「グァアーー……」
    「遅い……個々の戦闘能力はそれほどのものではないようです」
     スーツ姿のゾンビが振り下ろしたアタッシュケースを避けたユーリーはそれ違いざまに剣を振るい、その斬撃を受けたゾンビはバタリと床に倒れ伏す。
    「「「ウグァアアアア!!」」」
     学生服を来た数体のゾンビがバットを振りかざし突撃し、アヅマは帽子をしっかり被り直すと真正面から迎え撃つ。
    「やっぱりこのゾンビ達は、最近殺された一般人の死体……外道め」
    『破砕機構【荒御霊】』を構えたアヅマは、接近してくるゾンビ達に勢いよく杭を突きだす。
     突き出された杭は激しく炸裂すると、ゾンビの身体を吹き飛ばし仕留め切った。
    「グアアァァ……」
    「……悪いが、あたる訳にはいかない」
     残りの学生ゾンビが振り下ろしたバットを避けたアヅマは、一旦距離を取ろうと学生ゾンビの身体を蹴り飛ばす。
     するとその拍子に足をもつれさせ頭を強く打ったゾンビは、そのまま何故か動かなくなってしまった。
    「……? どういう事だろう、これは」
     その光景に嫌な違和感を感じた星流だったが、その間もゾンビの攻撃は止まらない。
     包丁を構えた女性の攻撃を避けた星流は、自らの魔力を解放し魔術を詠唱する。
    「纏めて、凍り付かせる」
     するとゾンビ達の足元に巨大な魔方陣が浮かび上がり、大きな光を放つと同時に纏めて凍りついた。
    「とにかく数が多い……持久戦になるね、これは」
    「一体何故これ程の大量のゾンビを……それに、この死体は一体どこから用意したのでしょう」
     身体のどこかに必ず噛まれた傷がある、数千のゾンビ。緋頼は疑問を抱きつつも、自らの役目を果たすべく行動する。
    「幸いにもゾンビ達の攻撃力は高くありません。すぐに傷は癒せます」
     そして緋頼が掲げた蝋燭から黒い煙が立ち昇ると、灼滅者達を包みその傷が癒されていく。
    「ウガァァアアーー!!」
     ランドセルを背負った小柄なゾンビが、鋭いガラス片を手に緋頼に突撃するが、
    「そんな物騒な物振り回すな、でござる。元小学生とはいえ容赦はしないでござるよ」
     そこに割り込んだ木菟がガラス片を腕で受け止め、そのまま引っこ抜いてどこかへ放り投げた。
    「ここらで纏めて数を減らすでござる」
     木菟はそのまま縛霊手に己の霊力を込めると、一気に地面へ叩き付ける。
     そして構築された巨大な結界が、ゾンビ達の動きを封じ次々と倒れさせていった。
    「こやつらの生命力などたかが知れてるじゃろうが……仕方あるまい。このわしがすぱっと吸い尽くしてくれよう」
     殺人注射器を構えた猯は、ゴルフクラブを手にしたゾンビに一瞬にして接近する。
    「このゾンビ達がセイメイが創りだしたものならば、一体どんな風に使うつもりだったのじゃろうな」
     猯が放った鋭い針がゾンビの胸元を抉ると、そこから全ての生命力を奪い取られたゾンビはぐったりと倒れ込んだ。
    「グォーー……!!」
    「当たりはしないわよ」
     レンチを手に持った一体のゾンビが素早い動作でエリノアに迫るが、エリノアはゾンビを足を払い転がす事でその攻撃を避ける。
     そして、先程と同じ事が起こる。サイキックではない唯の打撃を受けたゾンビが、そのまま動かなくなってしまったのである。
    「本当に、一体どうなってるのかしら……何で今ので動かなくなるのかしら」
     エリノアは思案しつつも、攻撃を続ける。あと少しで、答えに辿りつける。
    「とにかくこれがなんだろうと、セイメイの計画なら全て破壊するのが吉よね」
     そしてエリノアが放った紅き斬撃が、ゾンビの首を刈り取り一撃で仕留める。
    「…………よし、試しにやってみるか」
     戦闘の中で度々起こる謎の現象を目撃し、思考した利戈は、拳を固く握りしめ手近なゾンビに迫る。
    「行くぞ、これが俺の本気も本気、超全力の……唯のパンチだ!!!!」
     闘気もなにも無い、サイキックですらない唯の右ストレート。
     その一撃は綺麗な孤を描きゾンビの顔面に突き刺さると、そのまま凄い勢いで吹き飛んで行った。
     いくら派手だろうと、サイキックでないならゾンビは倒れない。筈だった。
     しかし利戈の拳を受けたゾンビは口から血を流しながら倒れ、動かなくなってしまった。
    「………………」
     これは一体どういう事だ。セイメイの研究とはゾンビを唯弱くするためのものだったのか。
    「…………成る程、そういう事ですか」
    「これはまあ、恐ろしい物を作ったものね、セイメイの奴」
     緋頼とエリノアが納得したように呟く。他の数人の灼滅者達も、同じように理解した様だった。
    「このゾンビ達には……バベルの鎖がない」


     戦場の中、利戈は自らの考えを纏める様に言葉を続ける。
    「サイキックじゃない俺の拳であのゾンビはくたばった。つまりあのゾンビはサイキック以外でもダメージが通るって事だ」
     利戈に続くように、エリノアが言葉を続ける。
    「サイキック以外の攻撃が効かないというのは、バベルの鎖の効果。そしてあのゾンビにサイキック以外の攻撃が効くという事は、つまりあのゾンビ達にバベルの鎖が無いという事になるわね」
    「それだけ聞くと唯の弱体化にも聞こえるでござるが……話はそう単純ではないでござるな」
     エリノアの言葉に耳を傾けながら、木菟は盾の打撃でゾンビの身体を打ち付けていた。
    「バベルの鎖のもう1つの効果、バベルの鎖を持たない人物への情報の伝播の阻害。バベルの鎖がないなら、当然この効果もないと考えるのが妥当だね」
     星流はそう言いゾンビを魔法の矢で撃ち抜くと、緋頼がその言葉を引き継ぐ。
    「つまりこのゾンビ達は、バベルの鎖を持つ私達灼滅者やダークネス以外の人々……つまり一般人達に対しても容易く知れ渡ってしまう存在という事ですね。その結果起こりうる事態は……」
    「日本中が大パニックになる事、ですね。殺す事が不可能ではないにしろ、このゾンビ達は非力な彼らにとって十分な脅威になるでしょうから」
     緋頼の言葉にアヅマは応え、眼前のゾンビを鬼の拳で叩き潰した。
    「全くセイメイめ、ここまで凶悪な手札を隠し持っておったとは……クロキバの奴の思惑に乗って、正解だった様じゃな」
    「このゾンビ達がそれほどまでに危険な存在と分かった以上、尚の事放っておく訳にはいきませんね。1人残らず灼滅しましょう」
     猯とユーリーがそう言い、改めて武器を構えなおす。
     灼滅者達の奮闘の甲斐ありゾンビ達の数も目に見えて減ってきている。
     だが弱くとも数が多い分、じわじわと体力を削られ始めているのも事実であった。
     だがここで倒れる訳にはいかない。灼滅者達は残った力を振り絞り、一斉にゾンビ達に攻め込んだ。 
    「行くぜ、纏めて吹っ飛ばす!!」
     利戈が放った巨大な杭はゾンビの身体の中心を穿つと、他のゾンビをも巻き込みながら大広間の壁まで吹き飛ばしていった。
    「シティアドベンチャー寄りの性能を持つ拙者がハック&スラッシュに挑む事に若干の不安を持っていたでござるが、まさかゾンビアクションになるとは思いも寄らなかったでござる」
     木菟は魔改造した足甲に影を纏わせ飛び出すと、エキセントリックな跳び蹴りでゾンビの頭部を蹴り飛ばした。
    「このゾンビ達を利用し白の王がどんな悪事を企てていたのかは分かりませんが……酷い事態にならない内に止めさせて貰います」
     緋頼が渾身の魔力を込め放った魔力の矢が、ゾンビの全身を一瞬にして貫き風穴だらけにした。
    「蒼の王コルベインの頭でもあるかと思ったけど、ここには無いみたいだね。危険度としてはそれに劣らぬものがあった訳だけど」
     星流が放ったダイダロスベルトの束が、ゾンビ達の全身を次々と締め上げていく。
    「こちらのゾンビ掃討はどうやら上手くいきそうじゃが、上層の方はどうじゃろうな……肝心のセイメイが討ち取れなければ、再び同じ物が創りだされかねん」
     猯が構築した巨大な結界がゾンビ達の身体を蝕み、一瞬にして複数のゾンビ達を仕留め切った。
    「あなた達が本当に人を手にかけるその前に、ここで必ず終わらせます」
     ユーリーが振り下ろした巨大な十字架が。ゾンビ達の身体を叩き伏せていく。
    「……行くぞ。せめてこれ以上、苦しまない様に」
     アヅマが手にした棍、『呪装棍【天津甕星】』が眩い光を放つと、膨大な魔力が込められた一撃がゾンビの身体を吹き飛ばした。
    「慄け咎人、今宵はお前が串刺しよ!」
     そしてエリノアが突きだした巨大な槍が、ゾンビの胸を貫き一瞬にしてその生命力を奪った。
     灼滅者達の猛攻の甲斐あり、ほとんどのゾンビが灼滅された。
     と、その時、富士の迷宮に文字通り激震が走る。
    「……無線が繋がりました。どうやら他の班がセイメイの灼滅に成功、その結果迷宮が崩壊し始めている様です」
     それまでは全く使用不能であった無線機が繋がり、緋頼はその内容を仲間たちに告げる。
    「迷宮が完全に崩壊すれば、脱出の機能も使えなくなるかもしれない。早く脱出しよう」
     壁も崩れ始め、最早考えている時間は無い。灼滅者達は星流の言葉に頷きすぐさま迷宮の壁にサイキックを放つ。
     その時、灼滅者達の視界は一瞬ホワイトアウトした。


     灼滅者達が迷宮の壁を攻撃したまさに次の瞬間、灼滅者達はとある学校の屋上に転移させられていた。
     先程まで大広間で戦っていた別の班の灼滅者の姿は無い。しかし数体のゾンビの生き残りが、灼滅者と一緒に転移させられてしまった様だ。
    「俺達の転移に巻き込まれたのか? まあいい、さっさと片付けるぞ」
    「後片付けは大事でござるからな」
     利戈と木菟が放った蹴りの連打が、残った数体のゾンビを打ち倒すと、ようやく灼滅者達に襲い掛かるゾンビ達はいなくなった。
    「ついにセイメイ死す、じゃのう。奴の最期をこの目で見れなかった事は、少し残念じゃ」
    「思えば武蔵坂との縁もそうとう長かったのよね、セイメイ。だけどクロキバの手によって倒されたのなら、もうあの面を予兆で見なくて済むわけね」
     猯とエリノアはそう言いながら、仲間たちの傷を癒していた。
    「白の王は灼滅、軍艦島勢力と合わさった大規模な勢力の誕生も阻止出来た。中々の結果だね」
    「そしてセイメイが残した研究も破壊。あれを残してれば別のダークネスに利用されていた可能性も考えると、今回の作戦ではかなりの戦果を得られたと思います」
     ユーリーとアヅマは戦闘からの緊張から抜け、思い出したように殲術道具を封印した。
    「それでは、帰りましょうか。うずめ様を含めたダークネス達の動きを警戒する為にも、今は身体を休めなければなりません」
    「そうだね……これから、考える事が多くなりそうだ」
     緋頼と星流がそう呼びかけ、灼滅者達は学校を後にする。
     多くの戦果を得た富士の迷宮突入戦は、こうして幕を降ろしたのだった。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年3月2日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ