甘酸っぱいホワイトデー

    作者:夏雨

    「農業体験?」
    「いちご農園で、タダでいちごが食べ放題!」
    「ジャム作りもやるんだって」
     農業体験という名目のいちご狩り。参加者を募る学園からのお知らせに関心が集まる。
     いちご農園に向かうのは、3月13日の日曜日。
    「13日……」
     13日といえば、ホワイトデー前日。ホワイトデーにかこつけていちゃつきたいカップルが参加する感じになるじゃないか。ぐあああああリア充カップルのためのイベントかよチクショー。ホワイトデー? そんなん関係あるか。こっちはいちご狩り楽しみたいだけだっつーの。
    「――とか考えたでしょ?」
     農業体験のしおりを眺める暮森・結人(未来と光を結ぶエクスブレイン・dn0226)の心情を勝手に想像する月白・未光(狂想のホリゾンブルー・dn0237)。未光に言われて結人は否定した。
    「ちげーよ。一応ホワイトデーのお返し考えなきゃならんと思ってたんよ」
    「あー、お返し……手作りジャムかぁ。手が込んでていいかもね」
     もうすぐホワイトデー。お返しに迷うならこの機会に手作りジャムを送ってみてはどうだろう。
     当日の流れでは、ビニールハウス内でジャム作り用のいちごを摘み、テーブルやカセットコンロなどを用意した青空の下でジャム作りをする。ジャムが完成した後は、食べ放題のスコーンやクラッカー、パンなどにジャムを塗って試食会。いちご狩りシーズンの楽しい思い出作りになるだろう。


    ■リプレイ

     広く長く続くビニールハウスの中には、赤く熟した苺がうねの端までたくさん実り、甘い苺の匂いが漂っている。
    「御伽君、はやく来て来て」
    「急がなくても苺は逃げないって」
     子どものようにはしゃいで野乃・御伽を手招く雨嶺・茅花。どんどんハウスの奥へと進む茅花の後ろ姿を、御伽は微笑みながら見つめていた。
    「すごくおいしそう!」
    「ああ、綺麗に実ってるなあ……!」
     黒鐵・徹とオリヴィエ・オーギュストはハウスの中を眺めつつ、甘そうな苺が実っている場所を一緒に探す。
    (「あの子たちも恋人同士かな……? かわいいなあ♪」)
     平・和守との苺狩り、しかも生まれて初めてのデートを楽しみにやって来た百道浜・華夜。華夜は小学生同士の徹とオリヴィエを眺めて思った。私と和守さんも、恋人同士に見えてるのかな。
     じっと見つめる華夜の視線にふと気づいた和守と目が合い、華夜はごまかすようになりながらも明るく振る舞う。
    「えとえと……さぁ、行きましょう和守さん♪」
    「ああ……しかし、見事に実っているな」
     互いに緊張している素振りを感じさせないよう振る舞い、和守は楽しげに苺を摘む華夜の後についていく。
    「見てみて和守さん! すっごく大きいイチゴです!」
     感情豊かにいちご狩りを楽しむ華夜。その様子を見ていた和守も、次第に打ち解けた心持へと変わる。
    「む……これはイチゴ……なのかな……?」
     ある1粒を手に取って怪訝な表情をする華夜を見て、和守は手にしている苺を覗き込んだ。
    「ほう……確かに。華夜の反応もわかるな」
    「ちょっと食べるのがもったいない気もしますね」
     華夜が見つけた苺は、2つに別れた先端が猫の耳のような形になっているものだった。
    「もっと面白い苺があるかもしれません」
     おいしそうな苺よりも面白い形の苺を探し始めながら、華夜は初デートの緊張を忘れて楽しんでいる自分に気づいた。一緒にうねの間を歩く和守を見上げ、華夜は思い切って和守の腕に抱きつくと、
    「とっても楽しいですね♪」
     恋人らしく腕を組んで満足そうな華夜を笑顔で見つめながら、和守はホワイトデー当日に思いをはせた。

     遠くまで続く苺のうねを見た杠・嵐は、
    「コ、ココの、全部食っていいのか?」
     わかりやすい表情でそわそわし始める。すっかり苺に夢中な嵐の様子に、小鳥遊・葵は肩を揺らしてくすくすと笑う。しかし、笑っていられるのはその内限りだった。一緒に苺摘みをするのはいいが、嵐の食べるペースの速さに驚かされる葵。周辺のめぼしい苺が激減していることに気づき、同じく苺摘みに混ざっていた千喜良・史明も慌て出す。その様子をマイペースでカメラに収める陰条路・朔之助は、飛び切り赤い1粒の苺を嵐のために差し出す。
    「はい嵐ちゃん! あーん」
     嵐の口元へと笑顔で苺を持っていく朔之助の姿を見て、史明の表情が嫉妬で陰り出す。同時に葵が嵐のために摘んだ大粒の苺は行く先を失い、仕方なく史明に抗議する。
    「君んとこの朔に役を取られてるんだが、僕は」
     がっくりとうな垂れる史明は、葵の肩に軽く頭突きをしながら、
    「そんなことより彼氏の僕はここなんですけど、相手間違えてない?」
     正しくは女の子同士だが、ほぼ男子な見た目の朔之助とでは周囲からは仲睦まじい男女として認識されがちである。
     徹は朔之助から苺を食べさせてもらう嵐を見かけてひそかに思った。僕もオリヴィエとあんな風になれたらいいな。
    「……ねえ、徹!」
     徹はふいにオリヴィエに名前を呼ばれて振り返るが、初めて名前を呼ばれたことに気づいて後からうれしさが込み上げた。
     オリヴィエは意識せずに名前を呼んでいたことに気づくが、自然に振る舞う。
    「はいこれ、食べてみなよ!」
     形も色もいい1粒を選び取り、徹に手渡そうとするオリヴィエ。徹はこの時をチャンスと捉え、オリヴィエの前で口を開けて苺が運ばれるのを待っている。
    「……え? ……ええ、と……」
     徹の期待を察したオリヴィエは、まごつきながらも徹に苺を食べさせた。
    「ん〜、おいしいです!」
     徹の小さな唇にオリヴィエの視線は吸い寄せられ、幸せ一杯な笑顔に胸のどきどきが止まらなくなる。
    「僕もオリヴィエにあげる。目つむって!」
     オリヴィエは徹に言われるがままに目を閉じ、徹が差し出してくれるであろう苺を待った。頬に苺以外の柔らかい感触があった直後、苺が唇に触れて目を開ける。すぐそばにあった徹の顔が離れていき、目を丸くするオリヴィエ。
    「お……おいしいね!」
     徹の不意打ちのキスを受けて苺を味わうどころではないが、オリヴィエは顔に出さないよう努める。
    「あ……ジャムの材料集めないと」
    「そ、そうですね。沢山とっていきましょう」
     徹もついつい照れ笑いを浮かべそうになるが、何のことはない風を装う。
    「ね、後で交換しない? 僕、我家のレシピ教わってきたんだ」
     意識しないようにと考えて言いつつも、オリヴィエは頬が熱くなるのを実感していた。徹もどこか早口で苺を摘むことに集中し始めた。
    「交換するなら僕がんばっておいしく作りますね」


     橘・清十郎は摘んだ苺を伊勢・雪緒の口元へと運ぼうとする。
    「はい、雪緒。あーんして、食べさせてあげるー」
     にこにこしながら無邪気に言う清十郎に対し、雪緒は照れてどぎまぎしながら、
    「あ、あわ、……あーん」
     おずおずと口を開き、程よい甘酸っぱさとみずみずしい果肉を堪能する。
     満面の笑みでおいしい苺と幸せを噛み締めている雪緒の様子を、清十郎も笑顔で見守っていた。
    「まだまだいっぱいあるからね!」
     役得と満足している清十郎だが、雪緒もお返しの苺を選んで清十郎に食べさせようと、
    「清十郎にも……どうぞ!」
     うっすらと頬を赤らめる雪緒から苺をもらい、清十郎は恋人からの苺の味を噛み締める。
    「んーっ、甘くて美味しい!」

     でかいのもあるけど、これは流石に一口じゃ食えなそうだな。黄瀬川・花月は何やら真剣な表情で摘み取る苺を選んでいる。
     隣りで一緒に苺狩りをする蒼間・舜に向き直った花月は、「はい、口開けて」と苺を差し出すが、舜には驚いた表情で凝視された。
     「なに、嫌か?」と尋ねる花月に対し、舜は「歯医者みたいな口調だった」という感想は胸にしまっておき、
    「人前でそういうことするタイプだっけ?」
     苺を引っ込めようとする花月を止めて、舜は素直に苺をもらう。
     どこか照れた様子で「うん、おいしい」とつぶやく舜を眺めて、年相応の少年だな、可愛いな。と思いつつ人知れず微笑む花月。
    「摘んで帰ったら何作ろうか」
     苺を摘みながら、2人は苺を使ったお菓子作りの話題で盛り上がる。
    「苺乗せて、カスタードのタルトとか、チーズケーキとかも良いよな。これだけあれば色々と作れそうだな」
     若干不貞腐れて苺を食べ続ける史明の視界にも楽しげな2人組の様子が映り、史明は負のオーラを増大させる。
    「ちゃ、ちゃんと、葵の分もあるぞ?」
     粗方周囲の苺を食べ尽くした嵐は、ようやく葵にも気を配る。残っていた小振りな苺を摘んで、葵に食べせようとする。
    「俺の苺、小さくない?」
     葵は冗談を言って嵐を慌てさせる。嵐をからかいながらも、葵はお返しに取っておいた熟した苺を嵐にも食べさせようとする。
     いちゃついている葵と嵐の姿を目にした史明は心中で舌打ちを乱打する。うらやましい思いを募らせる史明は、2人をからかうためにラブラブな瞬間を隠し撮ろうとしたが、
    「なあ、史……食べるか?」
     苺を顔の前に掲げる朔之助に声をかけられ、陰っていた史明の表情に光明がさす。緩みそうになる表情を引き締めて、史明は「食べる」と即答した。
    「あ……あ……」
     いざ口を開けて待つ史明を前にすると、朔之助は「あーん」と言うのが妙に恥ずかしくてためらっていた。そんな朔之助と史明の様子を眺め、「あら、微笑ましい」と言いたげな葵と嵐の視線に朔之助は気づく。更に恥ずかしさが込み上げ、慌てた朔之助は苺を史明の口の中に押し込んだ。
    「う……っ、ぐ……!」
     史明は思っていた以上に勢い良くやって来た苺に面食らう。危うく喉に詰まりそうになり、史明はしばらく咳込んだ。
     史明もどうにか治まり、嵐は皆で写真を撮ろうと提案する。
    「お、おう! そんじゃ、皆で写ろうぜ」
     仕切り直しを図りたい朔之助は、率先して写真撮影を頼みにいった。

     かごの中を苺でいっぱいにしていく御伽のそばで、茅花はおいしい苺探しに夢中になっていた。苺のおいしさに満足そうに微笑みながら、もう1つもう1つと手を伸ばす茅花。苺を摘み取っていく内に、同じ苺を摘もうとした御伽と茅花の手が触れ合う。御伽を見上げれば、茅花の大好きな青い瞳は優しい眼差しで、「どうぞ」と茅花に苺を差し出す。その笑顔がうれしくてくすぐったくて、茅花は「ふふー」と笑いながら苺を受け取った。
     受け取った苺は御伽の口元へ向けられ、唇にそっと押しつけられた苺は御伽の口に収まる。「美味いよ」と言う御伽は照れて視線をそらすが、茅花にもお返しの苺を差し出し口へと運ぶ。彼からの苺は一際甘いような気がした。

     晴天に恵まれた太陽の下。カゴ一杯に摘んだ苺を用意し、それぞれのテーブルでジャム作りを始める。
     一緒に苺のヘタを切り取っていく日野森・翠とミルドレッド・ウェルズ。
    「ジャム作りは一緒の瓶でいいですね。わたし、ミリーさんのお家に食べに行きますですので♪」
     そう笑顔で話す翠に対し、
    「ん、いつでも食べに来てね」
     ミルドレッドは「……泊りがけでも」とぼそりと付け足す。
    「さぁ、燈。がんばってすてきなジャムをつくろう!」
     識守・理央が張り切る一方で、廿楽・燈の表情は沈みがちである。
    「あう、燈が作ったらきっと失敗する……! 理央くんお願いー……」
     全面的に理央に頼るつもりでいる燈は、拝むように理央に向かって手を合わせた。
    「あ、だいじょうぶ! 燈はイチゴ食べながら応援しているから」
     早速苺をつまみ応援するスタンスを取る燈。
    「……OK、それじゃあ応援にこたえて美味しいのをつくるからね。大丈夫、僕に任せて!」
     恋人の燈にいいところを見せようと、袖をまくる理央はやる気を見せる。理央の頼りになる様子にときめく燈だが、同時に「やっぱりお料理できる子がいいかなぁ」ともやもやした思いも抱えた。
    「うん、これなら汚さないし失くさないもんね」
     花守・ましろはジャム作りの間も大事な指輪は肌身離さずに、シルバーのチェーンネックレスに通して身につけておく。
     八重垣・倭もおそろいの指輪を同じようにネックレスに通して身につけ、
    「な? こういう時にこういうアイテムがあると、便利だろ?」
     煮詰めるための苺のヘタをすべて取り除き、若宮・想希は苺の山から1つを手に取る。
    「1個くらい味見してもいいですよね?」
    「1つと言わんとようけ食うたらえぇやろ? 想希、あーん!」
     東当・悟は選び抜いた真っ赤な1粒を想希の口元まで持っていく。想希は「悟にも、あーん」と悟に向けて苺を差し出し、互いに食べさせ合う。
     幸せそうに苺を味わいながら、想希は言った。
    「うん、やっぱり採れたて苺は格別ですね」
    「生で食うても美味いんやからきっとサイコーのジャムになるで!」


     沸騰させたジャムのアクを取り、砂糖を加えて焦がさないように煮詰めていく。
     真っ赤にとろけた苺をヘラで混ぜながら、「ミリーさんはどんな食べ方が好みかな?」と翠は考える。
     スプーンですくったジャムをよく冷ましてから、更に翠はそのジャムを指ですくい取ると、
    「味見してみますか? ミリーさん。スプーンと指、どちらがいいですか?」
     ミリーが首をかしげると、翠は言い添える。
    「あ、わたしはもちろん、ミリーさんの指、です」
    「えと、それじゃボクも翠の指がいいな」
     互いに甘い指先をなめ取れば、相手の舌の感触にどきどきしてしまう。
     ジャムがついていた指先をミルドレッドが見つめていると、ふいに翠に口の端をなめられる。
     「ふわっ?!」とすっとんきょうな声をあげるミルドレッドに、翠はなめた理由を伝える。
    「ジャムがついていたのです」
     懸命に落ち着いた態度を装う翠の心臓はどきどきが止まらなくなる。
    「そ、そんなところについてた?」
     顔を真っ赤にして動揺するミルドレッドだが、翠に対抗して迫ってみせる。
    「ねぇ、まだ取れてないから、もう一度舐めて……?」
     翠の方も苺のように赤くなりながら、ミルドレッドのおねだりに答えた。
     大好きな人と過ごす一時は、甘いジャムの香りに包まれていく。

     果肉もとけて煮詰まっていくジャムの鍋の前で、腰に手を当ててリズミカルに腰を降る悟。その姿を怪訝そうに見つめる暮森・結人の視線に気づく。
    「しもた、いつもの癖で煮物待ちダンスしてしたで!」
     はっとした表情で動きを止める悟を見て、想希はくすくすと笑う。
    「段々つやつやしてきましたね」
     甘い匂いに目を細めながら、想希はジャムの煮詰まり具合を見守る。
     燈は苺が煮詰まるのを待つ間、苺を食べたり理央に苺を食べさせたりしていた。鍋の中のとろとろになった果肉を見て、「味見したいなぁ」と理央の顔を覗き込む。理央はスプーンですくったジャムを吹いて冷まし、燈の前に「あーん」とスプーンを差し出す。
     燈は満面の笑顔で口にしたジャムの味をほめる。
    「すっごく美味しいよ、さすが理央くん!」
     ジャムのように甘い雰囲気を乱す勢いで、唐突に月白・未光の声が響く。
    「熱ッ、あっつぅうぅっ !!」
     熱々のジャムがついたヘラを直に口につけられ、未光は慌ててぬれた布巾で唇を押さえる。
    「火傷しちゃうでしょ!?」
     ヘラを押し付けた結人に叫ぶように抗議する未光。結人は謝るよりも先に近くの水道で念入りにヘラを洗い出す。
    「ちょ……聞いてる? めちゃくちゃ熱かったんだけど。鍋から出した直後なんだから熱いに決まってるじゃん。ねぇ、結人くん? 何か言うことがあるんじゃないの? おい! ちょっと……念入りに洗い過ぎじゃない!? そんなに俺の口が触れたヘラは嫌ですか――」
     結人はヘラを洗い続けながら未光の方を見ると、
    「ごめん、本気で謝ってないけど」
    「ちゃんと心から謝れよ! イヴちゃん、ひどいんだよ! 結人くんがおれのこといじめるっ」
     膝を抱えてわかりやすい泣き真似をする未光に対し、結人は「ちゃんと鍋見てろよ」と厳しい物言いをする。イヴ・ハウディーンはそんな調子の未光に付き合い、「よしよし」と頭をなでてやる。
    「相変わらずツンデレだな、暮森先輩」
     イヴの一言に対し、未光はガールズトークのようなノリで答えた。
    「本当よね、全然素直じゃないんだから」
     結人は「ツンデレじゃねえ!」とむきになって否定する。
    「そういえば……最近、漫画で読んだんだけど――」
     3人並んでジャムの煮詰まり具合を見ながら、イヴはおもむろにあることを尋ねる。
    「男子はみんな、裸エプロン女子に憧れるもんなのか?」
     イヴの思いがけない質問に呆れている結人の隣りで、未光は肩を揺らして笑いを堪えている。
     なんとなく素直に答えたくない結人は、
    「そういうことは……(家族の)お兄さんにでも聞いて――」
    「お兄さんが答えよう」
     無駄に積極的に話に乗る未光に、結人は「お前じゃねえ!」と突っ込みを入れる。
    「裸にエプロンは古いっ! 彼シャツにエプロンの方がぐっと来る――」
     未光の主張に頷いているイヴを見て、結人は参考にしないよう促した。

     想希は煮沸しておいた瓶に完成したジャムを詰め終えると、
    「悟、記念撮影しませんか?」
    「記念写真えぇな!」
     ジャムが詰まった瓶を掲げる想希と視線を交わし、悟はその提案を快く聞き入れた。
     2人一緒に写れるように悟と顔を寄せ合いながら、想希は言った。
    「帰ったらこの写真、ラベルにして貼ってもいいですか?」
    「せやな! 共同作業の記念にしよや! ほなチーズ!」

    「ん〜、あま〜い♪」
     ましろは倭と一緒のテーブルでできたてのジャムを堪能する。クラッカーやスコーンにつけて、紅茶と一緒にロシアンティーとして味わうなど、甘いジャムづくしを楽しむ。できたてのジャムはまだ温かくて、普段のジャムよりも格別な味な気がした。
     幸せそうにジャムを味わうましろを見ていたら、ましろは倭に向かってジャム入りの小瓶を掲げる。
    「こっちは14日のお楽しみ、ね?」
     そう言ってにこにこ微笑むましろに、倭も笑顔で答える。
    「ん、そうか。どんな仕上がりになるのか、楽しみにしているよ」
     ましろはおもむろに倭の方に椅子を寄せると、ジャムを乗せたクラッカーを上機嫌で倭に差し出す。
    「倭くん、あーんっ」

     風間・紅詩が持ってきてくれた紅茶と、スコーンやクラッカーに一緒に作った苺ジャムを乗せて、新城・七葉はお茶会気分を楽しむ。
    「ん、本当は私が淹れてあげたいけど……美味しいね」
     紅茶もジャムの味もおいしいけれど、大切な人と過ごす時間は自然と笑顔になる。紅詩は笑顔の七葉を見つめながら、
    「ちゃんと淹れる紅茶もいいですけど、こういった場所だとピクニック気分が出て楽しいですよね」
     暖かくなってきた日差しを感じながら、七葉と過ごす春に思いをはせる。
    「もうすぐ春ですし……二人でピクニックに出かけましょうね」
    「ん、お出かけ楽しみだね」
     春の気配を感じる中でうとうとと目を細める紅詩に気づき、七葉は自らの膝の上へと紅詩を誘った。

    作者:夏雨 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年3月14日
    難度:簡単
    参加:25人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 2
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