雪の女王は氷像がお好き

    作者:四季乃

    ●Accident
    「あぁ、良い表情ね。とても素敵よ……」
     さくり、さくり。踵の高い白いヒールが視界の端に映っている。
     まるで、雪に抱きしめられているかのように身体中を締め付ける冷たさの痛みに、薄く開いた唇からは呻き声しか出てこない。助けを呼びたいのに、まるで喉まで凍ってしまったかのようだ。
    「だめよ動いては。じっとしていて……」
     女性は動かそうとした右手の指をそっと掴む。ふいに顔に影が落ちたのが分かった。かろうじて動く視線を持ち上げると、血が通っているとは思えない真っ白な肌をした女性が、酷く嬉しそうに微笑んだ。
    「あなたを美しい氷像にしてあげましょうね」

    ●Caution
    「そうして雪の女王は子供たちを氷漬けにしてしまうのです」
     ことり、と温かな湯気が立ち上るマグカップを机上に置いた五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)は、小さな吐息を一つ零した。
     この地域では三月に入った今もまだ雪深く、それこそ身も凍るような毎日だそうだ。そんな中、子供たちの間で囁かれている噂話があって、それが雪の女王、らしいのだ。
     なんでも遊んでばかりで帰り道の遅い子供を攫っては、氷漬けにして自分の棲家に飾っているというのだが、元を辿れば暗い雪道は危ないから明るい内に帰っておいで、という親御の意図があったらしい。
    「でも子供たちは、本気にしちゃった、ダヨー」
     しゅん、とした様子で口を開いたのは花籠・チロル(みつばちハニー・d00340)だ。彼女は金色のふわりした髪を揺らし、被害者を出してしまったこの都市伝説を灼滅してほしい、と頭を下げた。

     都市伝説の雪の女王はすらりとした長身の美女で、肌は血が通っていないのか雪のように真っ白だと言う。青いドレスに白のケープを羽織り、氷像の獅子や蛇といった動物たちを生み出し、攻撃を仕掛けてくる。
    「都市伝説を誘き出すには、夜が間近に迫った黄昏時に帰路につく子供を演じる必要があります」
    「子供、は難しい、ケド、背が小さくても、いいみたい、ダヨー」
     にこりと笑ったチロルの言葉に、姫子は笑みを浮かべて頷いた。遠目から見て子供だと分かる様子であれば良いとの事だ。見た目が難しい場合は、雰囲気や言動で何とか頑張ってもらいたい。何も囮は一人でなくとも構わないので会話でカバーするのも手だ。
     今回姫子たちが指定したのは山の麓の畦道だ。積雪は足首ほどで、周りは田畑となっている。見通しが良いため、隠れる場合は麓付近の枯れ木か、適当な場所に雪壁を作るのも良いだろう。
    「この都市伝説によって数名の子供たちが犠牲となっております。どうか皆さんで灼滅して下さい」
    「よろしく、ダヨー」
     姫子とチロルはそっと、頭を下げてお願いした。


    参加者
    花籠・チロル(みつばちハニー・d00340)
    アレックス・イルムイル(小学生シャドウハンター・d01916)
    彼岸花・深未(石化系男子・d09593)
    中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)
    イサ・フィンブルヴェト(アイスドールナイト・d27082)
    椿本・呼石(御伽の欠片探し・d33743)
    栗須・茉莉(助けてくれた皆様に感謝します・d36201)
    河本・由香里(中学生魔法使い・d36413)

    ■リプレイ

    ●Glace
     息を吸えば、肺から凍りつきそうな寒さだった。
     しんしんと天より降り注ぐ雪の花びらは、春を望む町を真っ白に染め上げても尚、やむことを知らなかった。
    「雪が積もっている日に子どもがやる事といえば、これですよね」
     鼻先と頬を赤く染めながら大玉の雪を転がしている河本・由香里(中学生魔法使い・d36413)の背には、もう使わないだろうと仕舞った筈のランドセル。せっせと作っていれば、背後から聞こえてきた震え声に視線が持ち上がる。
     振り返ると両手を擦り合わせて身を小さくしている椿本・呼石(御伽の欠片探し・d33743)が、「寒いですわー」と慣れぬ雪道でぽてぽてとついてきているのが見えた。そんな彼女のペースに合わせるように歩んでいる彼岸花・深未(石化系男子・d09593)もまた、踏み均された雪道をちょこちょことした足取りで着いてきている。
    「早く春が来るといいですの」
     はーっと白い息を吐いた呼石は、雪道用のブーツの爪先でぽすん、と雪を小さく蹴る。予め百物語で人避けの準備は出来ているので、いつ敵が現れてもおかしくはない状況だ。
    (「子供を凍らせ攫って行くだなんて許せないですぅ……! でも……ちょーっと知り合いを思い出したのは内緒ですぅ」)
     深未はそばを歩く自身とあまり変わらない背丈のアレックス・イルムイル(小学生シャドウハンター・d01916)を見、それから前を往く由香里の隣、黄色い長靴にランドセルを背負った花籠・チロル(みつばちハニー・d00340)の背中を仰いだ。
    (「噂から出た、とはいっても……子どもたちをねらう、なんて…許せない、ダヨ……!」)
     目に眩いくらいの金色の髪を揺り動かし、けれどそんな内心の思いなど悟らせぬ笑顔を浮かべるチロルは、背にしたそれにちらりと視線を落とす。
    (「ちいさ……あ、あんまり大きくない身長、を役立てるとき、ダネ…!」)
     ぎゅっ、と両手を握り締めて、いつどこから襲ってきても大丈夫なように仲間たちと周辺の様子を窺いつつ、チロルはどこか張り切った様子で新雪を踏みしめた。
     あぁ、それにしても、寒い。

    ●Glacer
    「遅くまで遊んでると人さらいが出るとか、悪い事をすると鬼に連れていかれるとか。私も小さい頃に親に言われたけど、こういうのって寒い地方ならではよね!」
     ねぇ、めーぷる? と腕の中でカイロ代わりに抱きしめているウイングキャットの顔を覗き込み、中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)は小さな笑みを浮かべてみせた。
     畦の脇道に出来た僅かな段差を利用し、雪を盛って作った壁の裏に身を潜める紅葉。その隣でかんじきの紐を結び直して共に身を潜めていたる栗須・茉莉(助けてくれた皆様に感謝します・d36201)たちの姿を、少し離れた枯れ木の陰から盗み見ていたイサ・フィンブルヴェト(アイスドールナイト・d27082)は、雪にも劣らぬほど見事な白髪が風に遊ばれるのを片手で抑え、黄昏色に染まる辺りを見渡し、瞳を細くする。
    (「黄昏色に染まる銀世界……美しいな……」)
     遠くの山間に沈んでいく夕陽は、曇天に隠れてはっきりと見えはしないが、滲みだすような橙の色が次第に雪を浸食するさまは、とろりと濃密で妖しささえ思わせる。
    (「そこに氷の女王は映えるだろう。だが、美しいものが人類の味方とは限らない……。さぁ、氷の騎士がお相手しよう」)
     小さな仲間たちが雪道できゃっきゃと楽しげな笑い声を零すその背後。するりとまるで煙のごとく何処ぞより現れた美しい女の姿を捉えたイサは、そっと詰めていた息を吐いた。

    ●Flamme
     えーい、と呼石が投げた雪玉がアレックスの肩口を叩いた。
     柔らかな雪で作ったため、ぶつかっただけでほろほろと崩れた雪の欠片は、そのまま彼の足元に落ちていく。アレックスは肩に着いた雪を指先で払い落し、自分も応戦しようと雪玉を作るためにその場にしゃがみこもうとした、その時である。
    「嗚呼、なんて愛らしい」
     この場に居る、誰のものでもない女の声に、五人の動きがピタリと静止する。恐ろしく至近から聞こえた声に、そろりそろりと背後を顧みたアレックスはしかし、己の両脚に覚えた違和感に、小さく息を呑んだ。
    「なんと、愛らしい『素材』たち……」
     振り返った先に居たのは、この寒空の下で息も凍りそうなほど冷たい色をした青いドレスを身に纏い、白のケープを風に揺らして笑う一人の真っ白な女であった。
     少年少女たちの口から悲鳴が起こる。その音色に女は口元に浮かべた笑みを深めると、長くなめらかな人差し指でスイッと宙をなぞるような仕草をしてみせた。
     するとどうだ。まるで地面に縫いとめられたように、途端に動かなくなった両脚にアレックスは気が付いた。パキ、パキン、と薄い氷を折るような音を立てて足元から凍りついてゆく。
    「や、やめてぇ…」
     じわじわと浸食する、冷たさ以外の全てを奪うような無慈悲な感覚。ゆるりと氷漬けにされてゆくアレックスを見て、酷く嬉しそうに笑った女の視線が、他の四人に向く。
    「いや……やめて……」
     足音もなく近付いてくる女の姿に、酷く怯えの様子を見せる由香里だが、女の指先が彼女を狙う。
    「あっ……」
     零した声は誰のものだったか。
     瞬きする間に、見る見ると凍り始める由香里の姿を前に、チロルと呼石たちは身を寄せ合って震えるしかない。あっという間に蒼い氷像と化したアレックスと由香里の傍らを抜け、さぁ次はどの子にしようか、と女の視線が深未に止まる。す、と人差し指が持ち上げられた。
    「動いてはだめよ。美しく在りたいでしょう?」
     にこりと浮かべた笑みのなんと美しいことか。まるで悪意など感じさせぬその艶やかな笑みに、寸の間恐怖を忘れるほどである。けれど。
     パキン、と深未の足元から音が立つ。視線を落とせば更なる獲物を求めて氷が張ってくるのが見えた。
     かくして三人目の氷像が――と誰もが思った、その刹那。
     女の背後ですべての雪を溶かし尽くさんとする炎が立ち上った。そのあまりの熱量に、女の顔が驚愕に満ちる。その為、己に迫るその燃え盛る炎の一撃を、彼女は受け止める事が出来なかったのだ。
    「あぁっ……!」
     背面から強い衝撃を受けて、雪道に崩れ落ちた女は、乱れた髪を耳に掛けながら辛そうに振り返る。そこに居たのが、先ほど確かに凍らせたはずの由香里とアレックスの二人だと云う事を知るや否や、瞳がこれでもかと見開かれた。
    「これ以上被害がでないようにがんばって止めないといけませんね…」
     妖の槍『シルバリオン・スター』を片手に握り締めたアレックスが、回転を交えながら突っ込んでくる。その姿を目にした紅葉と茉莉は、自分たちのウイングキャットと共に場に現れると、旋風輪にて女――都市伝説を蹴散らす攻撃に続き、左右から挟み込むように紅葉がスターゲイザーを、茉莉がグラインドファイアによる蹴りで応戦。
    「一体どこから……!」
     咄嗟に両腕を広げて、ケープの下から氷の蛇を出現させた女は、茉莉に向かってその牙を剥く。だが、その間を割って入るように現れた彼女のウイングキャット、ケーキが攻撃を庇い受けたのだ。それだけじゃない、ケーキはお返しとばかりに猫魔法を撃ちこみ、そちらへと気を取られている隙に深未が制約の弾丸をお見舞いする。
     あちらこちらから繰り出される攻撃に、女が唇を噛むのを横目に見ていた呼石は、ライドキャリバーのプリンチェを呼び出し、颯爽と飛び乗って走り出す。
    「プリンチェ、行きますの!」
     ゴー、と女に向かって指を差すと、プリンチェが張り切った様子で雪道を激走。うねりを上げてキャリバー突撃をかますプリンチェの攻撃に苦しげな声を上げた都市伝説は、両手の五指を広げて、あたかも己の爪で威嚇するような仕草をして見せながら作りだした氷の獅子を灼滅者たちに差し向ける。
    「噛み砕いておやり!」
     女の命に従うかのようにゴォッと獅子の息吹が彼女たちを襲う。それを目にした呼石は、手にした古書から七不思議である青毛巨大ハムスターを呼び出すと、
    「ひやもふさん、氷のライオンさんなんてがじがじしちゃってくださいまし!」
     それはもうすごい歯で齧るひやもふ公星の怪談で立ち向かう。真っ向から立ち向かう凄まじい威力の風に圧倒されつつも、めーぷるは先ほど傷を負ったケーキの回復に回り、その隙にチロルがレーヴァテインを脇腹に叩き込み、女の体勢を崩してみせた。
    「余所見は、めっ、ダヨー」
     にこりと笑ったチロルの台詞に、女王は眉間に深い皺を寄せると、彼女に向かって今度はケープを翻す。するとケープがまるで猛禽類の翼の如く広がりをみせ、内から鋭い瞳をギラつかせた鷹が飛び出してきた。
     まるで氷柱のようなくちばしを持ったその氷鷹にチロルがアッと短く息を呑んだ、その時。
    「自分が凍る恐怖を教えよう……」
     チロルの眼前に現れたイサが、冰槍『モリス・テンプス』にてその猛攻を受け止める。その凛とした藍色の瞳が真っ直ぐに女王を射抜き、イサは冰槍から放たれる妖気を冷気のつららに変換すると、脇腹を押さえてよろけた都市伝説へと妖冷弾を撃ち出した。
    「わたしを凍らせるなど、笑わせないでちょうだい」
     しかし、女はその攻撃を交わそうと左へ身を傾けたのだが、その方向から繰り出された非物質化された刹那の一撃に膝から崩れ落ちてしまった。
    「暗くならないうちに家に帰ってきなさいと親が心配して生み出した都市伝説さんですか。被害者が出てしまったのなら灼滅するしかないですね」
     アッ、と短く息を呑んだ女王の耳に届いた茉莉の言葉。どうやら彼女の放った神霊剣を喰らった事が窺えたが、女王は迫りくるイサの攻撃に目を奪われている。
    「さぁ、氷獄へと堕ちるがいい……」
     夕闇が差し迫る銀世界で白き髪を靡かせるイサの言葉を理解するより早く、その冷たさが己の肩口から腕を凍らせてゆく。
    「く、ぅ……なんてことを……っ」
     しかし女王はすぐさま立ち上がると、もう片方の手で蛇を産み出し、まるで鞭のようにしならせ灼滅者たちに向かってくる。その一撃はペトロカースを放った深未の二の腕にかぶりついた。
     するとどうだ、誰かが短く「あっ」と息を呑んだ傍らから、見る間にその小さき体が凍り始めるではないか。アレックスは雪を蹴ると、彼の腕に未だ噛り付いている蛇を叩き折るように螺穿槍を突き出し、女王を穿つ。だが、それでも浸食が止まらない。
     あっという間に氷像と化してゆく深未を目にした由香里は思わず、
    「結構素敵かも………って何を考えてるの、私は!」
     氷像にされて飾られる自分や仲間たちの姿を想像してしまい、慌てて首を振って、フリージングデスを撃ち出す事で思いを振り払った。
     慌てて呼石が祭霊光にて深未の救出に向かうと、バキン、と甲高い音を立てて氷が崩れ落ちた。中からころりと落ちてきた深未は、胸に手を当てて大きく息を吐いて、呼吸を整える。
    「こういうのはよく経験するけど、都市伝説相手に凍らされるとなるとずっと凍ったままの予感がして怖いですぅ…」
     気の抜けたような声を出す彼が無事な事に安堵の吐息を零した紅葉は、改めて女王の存在にどこか感心したように肩を竦めて見せた。
    「実際雪の女王出ちゃうなんて子供の想像力ってすごいわよね。とは言え犠牲者が出てるってなると、うかつに何か怖い存在出すの考えちゃうかもっ」
     その時ちょうどチロルがフォースブレイクを持って女王の懐を思い切り殴りつけたところだった。容赦なくガンガンと攻める彼女の張り切りように感化されたように、仲間たちの回復に回るめーぷるを横目に見やった紅葉は、ローラーダッシュの勢いに乗せて女王への距離を一気に詰める。
    「動けない所を熱ーい蹴りで溶かしてあげる!」
    「ヒッ……!」
    「悪い子にはお仕置き、なら、一番されなきゃいけないのは貴女よね。子供達にした分やり返されてねっ!」
     燃え盛る炎が怖いのか、真っ青な顔をして一歩退いた女王と視線を重ねあわせ、ニッと口元に笑みを乗せた紅葉は、死角から繰り出されたケーキのパンチを受けてよろけた所へプリンチェに射撃されてしまい、視線があっちへこっちへせわしない。
     くるくると踊るように攻撃を浴びる女王が雪上に膝を突いた、その無防備な姿を蹴り上げようとしたが、しかし敵も黙ってやれれてばかりではいられない。咄嗟に生み出された獅子の牙が、紅葉へ襲い掛かる。それでも。
     ゴッ、と鈍い音が辺りに響いた。蹴り上げられた紅葉の爪先が女王の躯体を真っ直ぐに虚空へと突き上げる。だが、喰らいつこうとした獅子を粉砕し、女王の冷たさも物ともせずに真っ向から喰らいついたのはイサであった。
     彼女は、片腕に獅子を喰らいつかせたまま、微動だにせず己の一撃を放ったのだ。その凍てつく冰剣の切っ先は、真っ直ぐに女王の胸部を貫いていた。引き抜くと、パキ、と内側から何かが割れるような音が鳴る。
    「あっ……」
     女の口から小さな声が零れ落ちた。
     その視線は己の胸に落とされている。引き抜かれた切っ先。まあるく穴の開いた己の胸の傷口から四方へ広がるように氷のヒビが入っていた。まるで女王そのものが氷であったかのようだ。
    「これでおしまい、ダヨ」
     雪上に両膝を突いて、呆気に取られる女王の背後から迫ったチロルは、内から燃え盛る炎をまとい、最後のトドメとして都市伝説へと叩き込んだ。
     声にならぬ声が耳朶を噛む。
     崩れ落ちるでもなく、倒れ込むでもなく、ただガラスが割れる無情な響きを辺りに散らして女王は砕け散った。奇しくもそれは、天上から降り注ぐ雪のごとくきらきらと眩しくて、悲しいくらい綺麗だった。
    「綺麗なおとぎ話、も実際に起きちゃう、のは…悲しい、ダネ…」

    ●Printemps
     亡くなった子供たちへ祈りを捧げる呼石の横顔を見、チロルは小さく瞼を伏せた。
    「犠牲になった子どもたち、も…助けられたら良かった、ダネー…」
     その言葉を耳にした呼石はそっと顔を上げ、けれど小さく笑みを浮かべてみせる。
    「雪の女王さまも居なくなりましたから、きっと春も近いですの」
     町もそろそろ、雪の季節とさよならする頃だろう。どこかではもう、花が開いている頃だ。
    「おつかれさまですぅ!もうこれ以上、犠牲者は出ることはないですぅね! ずっと冷気に晒されていたので何か温かいもの食べたいですぅね?」
     するとそこへ、にこにことした笑みを浮かべた深未の声があがり、先ほど作っていた大玉で雪だるまを完成させていた由香里や紅葉たちがパッと振り返る。後片付けをしていた茉莉やアレックスも加わり、どこかで温まって帰ろうか、と灼滅者達は帰路に着いた。
     一人、女王が居た場を見つめていたイサは、吹き抜けていく冬の残り香に目を細めると、仲間たちの方を振り返り颯爽と歩き出した。
     冬ももう終わる頃。

    作者:四季乃 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年3月18日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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