セイメイ最終作戦~疾走するは守護の為に

    作者:君島世界

    「こォんなろーッ! 近寄るな、バケモノ!」
     ゴシャッ!
     野球部少年渾身のフルスイングが、女子高生ゾンビの頭部にクリーンヒットした。肉と骨とが潰れる嫌な音がして、ゾンビは大きく傾ぐ。……しかし。
    「死ねっ、死ね、死ね、死ねよ……畜生ッ!」
     続けての乱打でも、ゾンビを殺害するには至らない。一般人にとっては脅威的なタフネスを持つそれは、野球部少年を容易に組み伏せた。
    「うわっ! な、何を……やめ、やめろぉおおおおおお!」
     少年の自由を奪ったゾンビは、大口を開けて首筋に顔を寄せる。冷たい息に怖気立ち、少年は絶叫した。
    「やめろ、死にたくないーッ! あ、ぎゃあああああアアアアアッ!」
     鮮血が校舎をざばざばと汚していく。生きながら喰われ、咀嚼されるという恐怖が、この学校を支配していた。
    「そいつはもう手遅れだ、近寄るな! ――屋上へ急げ!」
     少年の、薄れ行く意識の中で、誰かがそう言っていたのは聞こえた。自分のすぐ横を、クラスメイトたちが通り過ぎていく。
     自分も屋上へ逃げようと、少年は懸命に立ち上がろうとはするが、このゾンビが邪魔をしていてできない。
     ――助けて。
     まだ生きてるんだ、死ぬほど痛いけど。だから。
     ――助けてくれよ、だれか……!
     
    「富士の迷宮突入戦に従事された皆様、お疲れ様でした。そちらでの顛末について、まずは説明させていただきますわ」
     鷹取・仁鴉(中学生エクスブレイン・dn0144)はそう言うと、黒板に手書きで説明図を描いていく。
    「結果としては、白の王セイメイ、並びに海将フォルネウスは灼滅されました。加えて白の王セイメイが準備していた数千体のゾンビも壊滅させ、白の王の迷宮自体も崩壊しています。学園の大勝利と言えますわ。
     ただ、この結果に喜んでばかりもいられませんの。
     日本各地の高校で、白の王の置き土産ともいえる事件が発生しています。
     各地の校舎に突然出現した数体のゾンビが、そこに居合わせた生徒などを噛み殺し、『ゾンビ化』させつつ学校を制圧しようとしていますの。
     噛み殺した人間を同じゾンビとする性質から、このゾンビを仮に『生殖型ゾンビ』と呼ぶ事にいたしますわ。この生殖型ゾンビは、厄介なことに私たちエクスブレインの予知を妨害する力があるらしく、現場の状況は残念ながらわかっていませんの。
     ですが、場所だけはどうにか確認することができましたので、皆さまは急ぎ現場へ向かってくださいませ」
     
     敵となる生殖型ゾンビは、富士の迷宮の下層にいたものと同じであるようだ。決して強力な敵ではないが、噛み殺した人間を同じゾンビとする能力は脅威だ。
     放っておけば次々と数を増やし、学校の生徒たちだけでなく周辺の住民もゾンビ化してしまうだろう。
     幸いなことに、用意されていた生殖型ゾンビの大多数は、富士の迷宮での戦いで灼滅できている。生き残りは100体以下であり、その全てが地上にでてきているものと推測されるので、この戦いで全ての生殖型ゾンビを灼滅できれば、その脅威を完全に払拭できるだろう。
     生殖型ゾンビには『バベルの鎖を持たない』という特徴がある。その為、ゾンビを撃破した後は、可能な範囲でゾンビがいたという物証を持ち帰るか、破棄するようにお願いしたい。
     またバベルの鎖を持たないことで、情報が伝達されないという効果も同時に無くなっている。物証が残れば残るほど、ゾンビのような超常現象の情報が表に出てきてしまうだろう。
     完全な情報遮断は不可能だが、可能な範囲での証拠隠滅をしてもらいたい。
     
    「生殖型ゾンビ……恐ろしい敵ですの。こんなものが5000体も解き放たれていれば、日本の社会システムが崩壊していただろう事も想像に難くありませんわ。
     この戦いで後顧の憂いを絶ち、力ない人たちの日常がゾンビなどに壊されないよう――」
     板書を続ける仁鴉のチョークが、ぱき、と折れた。
    「――よろしくお願いいたしますわ、皆様」


    参加者
    千布里・采(夜藍空・d00110)
    神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)
    一・葉(デッドロック・d02409)
    明石・瑞穂(ブラッドバス・d02578)
    八絡・リコ(火眼幼虎の葬刃爪牙・d02738)
    深束・葵(ミスメイデン・d11424)
    片倉・純也(ソウク・d16862)
    オリヴィエ・オーギュスト(従騎士・d20011)

    ■リプレイ

    ●街を抜けて、地獄へ
     最後の曲がり角を抜け、灼滅者たちは鉄扉で閉ざされた校門をついに見つけた。柵の隙間からのぞく異常な風体の生徒は、おそらくは間に合わずに生殖型ゾンビとなった者たちだろう。制服を紅に染め、人間性の失われた瞳で、校舎へと繋がる校庭をさまよう彼女たち。
    「まず校庭の安全を確保しないと、だよね……!」
     八絡・リコ(火眼幼虎の葬刃爪牙・d02738)は、門扉を開く時間も惜しく、大きく跳んで超えた。リコが一番槍と敵へと向かっていくのを、ライドキャリバー『我是丸』に乗った深束・葵(ミスメイデン・d11424)が援護する。
    「『猿神鑼息』! この咆哮に逃げんヤツが、つまり敵じゃ!」
     ガトリング連射が校庭もろとも生殖型ゾンビに穴を開ける。その間に一・葉(デッドロック・d02409)が回りこみ、生殖型ゾンビと一般の生徒たちとの間に立ち塞がった。
    「殺されたくなかったら、俺の前に出るんじゃねえぞ! いいな!」
    「ひ……!」
     有無を言わせぬ迫力に、目を白黒させる女子生徒。そこに、明石・瑞穂(ブラッドバス・d02578)がやってきて彼女の肩を叩く。
    「大丈夫~? 危ないから、先急ぎましょうねぇ。一緒に行ってあげるから」
    「あの、お姉さんたちは……?」
    「アタシは……まあ、医者よ。おいしゃさん」
     と言葉を交わす間に、千布里・采(夜藍空・d00110)はクルセイドソードを構え、生殖型ゾンビへ向かう。
    「あのな、目閉じててな。直ぐ苦しいの、終わりますよって」
     ――ザン。
     采の神霊剣は、生殖型ゾンビの肉体をこれ以上傷つけることなく灼滅した。操り糸が切れたように崩れる彼女の横を、オリヴィエ・オーギュスト(従騎士・d20011)がひたすらに急ぐ。
    「――校舎内、襲われている生徒を優先します! 片倉さん!」
     死した少女を、今は顧みず。片倉・純也(ソウク・d16862)は、オリヴィエとともに『DSKノーズ』を発動、業の匂いを嗅ぎ付ける。
    「範囲内に微弱なものがいくつか……ここからだと右前か」
     迷っている暇はない。足を止めず、正面昇降口から校舎へ駆け込んでいった。瑞穂たちが校庭に残された生徒をまとめ上げる中、葉と神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)が壁に足をかける。
    「明石さん! 屋上までの最短距離、先行するわ。皆も急いで!」
     そう言い残して、明日等は『壁歩き』で屋上へと歩いていく。校舎は3階建て、行程途中で葉が3階に入るのを確認すると、明日等は屋上を覗き込んだ。

    ●救いの形
    (「……ここは思ってたほど深刻じゃないみたいね。怪我人は数人、死人はなし」)
     生殖型ゾンビになるのは、それに噛み殺された人間のみだという話だ。衆人環視の前で『処理』する必要がないのは、不幸中の幸いだったと言える。
     明日等は3階に戻り、屋上へ続く階段を駆け上がる。と、門番の男子生徒たちが彼女に制止をかけてきた。
    「そこの女子生徒、止まれ! お前、我が校の生徒ではないな!」
    「緊急事態でしょ、知ってるわ! もう犠牲者を出さない為にここに来たの、通して!」
     さすがにホウキで灼滅者を止められるわけもなく。明日等は屋上の怪我人たちへと駆け寄ると、重傷の者から『ラビリンスアーマー』で治療を開始した。
    「え……? 傷、が……?」
    「安心なさい、これでもう大丈夫だから」
    「待て! 貴様何者だ! 噛まれているなら隔離を――」
     微笑む彼女の肩を、先の門番の一人が掴む。ちょうどそこに、別の避難者たちを連れた瑞穂が上がってきた。
    「こらこら、話は聞こえたけどそんなんじゃないわよ~。映画やドラマじゃあるまいし。
     ここに殺された子はいないわね~? なら、絶対ゾンビにはならないから、へーきへーき」
    「このお姉さん、女医さんなんだって! なんか銃とか持ってるけど」
     先の女子生徒が解説してくれたおかげで手間が省けた。瑞穂は明日等と治療役を交代し、ここまでの情報交換に努める。
    「速かったわね、明石さん。例のゾンビはいなかったの?」
    「階段にはね~。けど、少なくとも1階と2階の廊下辺りにはいるみたいね。上ってくるかもしれないから、明日等ちゃんは門番さん頼める?」
    「勿論。行くわよ、『リンフォース』!」
     呼ばれた明日等のウイングキャットは、一鳴きすると宙に浮いて主人の前に出た。驚きと、それ以上に可愛いものを見る視線がなんだかくすぐったく、彼女は再度気を引き締める。

    「見つけた――!」
     鮮血は、遠目からでもそれとわかった。オリヴィエと純也とが昇降口を曲がって見た先に、放心状態の野球部少年と、それに被さって噛り付く男子生徒とがいる。
     2人は並んでクルセイドソードを抜剣、神霊剣を発動して猛ダッシュを掛ける。女子生徒は、やはり首筋に生々しい致命傷が見え、生殖型ゾンビで間違いはない――!
    「シッ!」
     鋭い呼気とともに、純也は駆け抜けざまに一閃を浴びせた。超低高度を滑るように抜ける斬撃は、男子生徒ゾンビをぐらりと野球部少年の上から押し退け、そこに。
    「……ごめんなさい。こうするより、他に……!」
     オリヴィエが介錯の一太刀を振り下ろす。聞くに堪えない断末魔が、廊下に響いた。
    「っ、はっ、はっ、は……」
     隣の野球部少年はもはや虫の息だが、つまりまだ死んではいない。間に合ったのだ。オリヴィエはすぐさま彼に駆け寄り、殉教者ワクチンを投与する。
    「助けますよ! だから、頑張って生きて! もう一寸です!」
    「ここはまだ危険だ。避難するが、立てるか?」
     効果はすぐに現れ、野球部少年は『峠を越えた』ようだ。しかし未だに朦朧とした様子で、どうやら自力で立ち上がることもできないらしく、純也は彼を肩に担ぎ上げた。
    「仕方ない。オーギュスト、階段の先行を頼む。屋上へ急ぐぞ」
    「はい! 片倉さんは、その人のこと、どうかよろしくお願いします!」
     言うが早いか駆け出すオリヴィエに、純也もすぐさま後を追う。できればこの野球部少年から情報を引き出したかったが、この様子では難しそうだ。
    「業の匂いはまだ残っているな。30メートル圏内、さして広くもないのだが」
    「今は、仲間の皆さんにお任せするしかありませんね。一刻も早く、僕たちも……!」
     そう、今は先を急ぐ以外に術はないのだ。
     死んだ男子生徒は、今もあの場所で死に続けている。

    ●地獄の層
    「いーい!? 3階の教室に残ってる子は、全員屋上へ避難! 廊下にゾンビはいないから、今のうちだよ!」
     ガトリングガンと拡声器の2刀流に構えた葵は、校舎3階の廊下を我是丸で走りながら、大声で警告を叫ぶ。生徒たちはそれに従い、次々と安全な屋上へと避難していった。
    「うし、音楽室、無人確認っと。ここも封印!」
     宣言どおり誰もいなくなった教室の扉に、葉はテープで簡易な封印を施していく。それはチェック済みであることを示すと同時に、生存者は誰も入らないようにすることができるという、効率的な施策であった。
     これで、3階全ての教室が確認できた。もう一度壁歩きで下階へ向かおうとすると……。
    「あの、お兄さん? ゾンビが怖いので、私たちと一緒に来てくれませんか?」
    「あぁ? 俺か?」
     音楽室に隠れていた女子たちが話しかけてきた。言葉に嘘はないようだが。
    「そこまで面倒見てられるか。勝手にケツまくって逃げやがれ」
     言い捨ててさっさと窓から出る葉である。取り残された格好の彼女らの所に、葵が我是丸でやってくる。
    「ほらほら、道わかんないなら案内するよ! 走った走った!」
     急かされてしぶしぶ駆け出す女子生徒たちであった。と、葵の装着しているインカム型無線機に、一斉通信が届く。
    (「屋上班か。……なるほど、体育館側ね」)
     無事な生徒たちから、生殖型ゾンビがどこから現れたのかについての情報が寄せられたようだ。葵は今後の動きを確認すべく、葉との回線を開いた。
    「だそうだけど、アタシたちは続いて2階の救出作戦ってことで!」
    「お前もさっさとこっち来い。死体は見えねぇが、血痕がある!」
    「了解!」
     葵は我是丸のハンドルを切ると、階段経由で2階に下りる。踊り場を抜け、ちょうど合流した葉とともに、血痕の続く先へ急いだ。

    「嫌やなあ。どうやらこっち側が、発生源の大元、アタリですわ」
     采の言葉に、リコも頷かざるをえない。1階廊下、体育館方面――そこはすでに、地獄と化していた。
    「――死んでるね、沢山。逃げ遅れてやられちゃったみたい」
     進む度にぴちゃぴちゃと、靴底が廊下に溜まる血の海を蹴る。一見して生存者はおらず、しかし、動くモノの気配はあった。
    「あ……うあぁあ、おお……」
     新たに生殖型ゾンビとなった生徒たち。2人もやはり神霊剣を用いて、死してなお歩くそれらを、元の死体へと返していく。
     ……と。
    「八絡さん、あれ、あの掃除ロッカー。何やら人の気配、しまへんやろか?」
     采の霊犬がロッカーの中に吠えかけるが、目に見える反応は無かった。
    「だね。……誰だか知らないけど、開けるよ!」
     一応呼びかけてから開くと、狭い空間の中に2人の生徒がみっしりと詰まっていた。男子の方は滂沱の涙に汚れた顔でこちらを見上げ、もう1人の女子はその腕の中で息絶えている。
    「ゆ、裕子……裕子が、死んじゃった……裕子ぉ……」
     そんな彼らを、采はロッカーの外へ導いた。壁という支えが無くなって、改めて腕の中の重さに気づいたらしい少年に、努めて優しく語りかける。
    「よお、頑張らはりました。後のことは任せて、兄さんははよ屋上へ逃げえ」
    「でも……でも裕子を……」
     首を振る少年に、リコは言葉を繋げた。
    「聞いて。死んじゃったその子、このままゾンビなっちゃうかもしれないんだ。そうしたらきっと、あなたを殺しに来る。……そうなるのはきっと、その子も嫌だろうからさ」
     その言葉が届いたのだろうか。少年は泣きながら少女の死体を床に横たえた。未練に何度も振り向く彼が、廊下の向こうに見えなくなってから――。
     ――少女の死体は仕方なくそのままに、教室を封鎖した。時間が経って、生殖型ゾンビとならないことを祈るばかりだ。

    ●後始末
    「……屋上は今のところ敵影なし、みんなが上手く働いてくれてるおかげかしら。引き続き、ゾンビ倒したら報告上げて頂戴。図書館側も忘れずにチェックして」
     と、インカム無線機をつけた明日等は、手元の見取り図に目を落とした。情報は確かのようで、ゾンビの撃墜マークは体育館付近に集中しているようだ。一方でその反対側に目撃談があることも考慮に入れ、的確に指示を出す。
    「じゃ、屋上にいる子にゾンビはいるかなぁ? あら、手を挙げるなんて、度胸あるのね?」
     大方の治療を終えた瑞穂は、番に立つ前に確認を入れる。雰囲気が緩んできたのか、へらへら笑いながら手を挙げた男子生徒を、念の為にジャッジメントで撃った……もとい、回復した。
    「なぁんてね。アタシも門番に出るけど、おとなしくしてるのよ~?」
     そうこう言っている間にも、状況は進展していく。無線を聞くところによれば、校内は現状ほぼゾンビを排除し終えたようだ。
    「B班の葉だ。2階探索終了。噛み殺された死体が1人いて、こいつで気づいたことが1つある」
     それは。
    「俺の『走馬灯使い』が効かねぇ。通信で采に言われて試してみたが、思わぬ拾い物だな」
    「あ、左様で。それはおそらく、ゾンビになってまうんでしょうなあ」
    「って、言ったそばから!」
     廊下の冷たい床を、死体の爪がカリ、と引っ掻いた。葉はそれを強引に引き上げ立たせると、組み付きの零距離格闘で脳天落としに止めを刺す。
    「……。一さん、お手数おかけします」
    「別にお前のせいじゃねぇだろ。悪いのはあのセイメイの糞野郎だ」
     葉はずれた眼鏡を直し、味方の加勢に駆け出した。

    「悪ぃが、てめぇの素性、試させてもらおうかえ!?」
     図書室付近。葵のガトリングガン放つ銃弾が、そこにいたある生徒の足元を薙いた。が、彼はおびえた様子も無く、葵へと近づいてくる。
     見れば腹のあたりに大きな血の汚れがあった。葵は以上の理由から彼を生殖型ゾンビだと判断、即座の第二射でこれを灼滅した。
    「あー、テステス。図書館近くでゾンビ1体倒したよ。他にはいないね。オーバー」
    「だったら、悪いけど体育館側来てくれないかなぁ? 痕跡も消さなきゃならないし」
     と、リコ。コンビの采とともに、時間差でゾンビ化する死体の相手で手一杯のようだ。
    「まったく、セイメイの置き土産ってだけで面倒なのに、これはボク貧乏くじ引いたかな……ああっ、またゾンビになってるぅ!」
     半ばヤケになって神霊剣を振るい、その死体を一箇所に纏めていく。そうしている間に、今は遊撃担当のオリヴィエと純也が駆けつけてきた。
    「ッ! なんて、ひどい……!」
    「オーギュスト、体育館の奥だ。まだ彷徨っているのが、それこそ何体もいる」
    「……わかってます。行きましょう片倉さん。早く、終わらせます」
     両者ともに決意を瞳にたたえ、事件の発端であろう体育館に踏み込む。
     そこにいたのは……学生とは違う、私服に身を包んだ男女の生殖型ゾンビであった。そこには8体ほどのゾンビがいたが、灼滅者との力の差は歴然であり、ほどなくして全てが無力化された。

    「――体育館、クリア。あの……証拠隠滅は、ここで行いましょうか。生徒の皆さんも、近寄らないと思います」
     オリヴィエの提案に、皆賛成した。屋上班は避難してきた生徒たちをそこに留め、それ以外の者たちが構内の死体を体育館へと搬送する。

    ●仮初に、仮初を
     走馬灯使いで蘇った者を、幸運と呼ぶことはできないだろう。
     彼らは事件のことを何も覚えていないまま、一様に体育館内の死体の多さに驚愕し、逃げるようにこの場を去っていった。残されたに幸多からんことを、葉と采は見送りながら祈る。
     走馬灯使いが失敗してしまった者には、オリヴィエと純也が擬死化粧を施す。神霊剣を使ったことが功を奏したのか、噛み付かれた傷跡は気にならないレベルにまで消すことができた。肉親を喪った悲しみは、しかし和らいだとしても消えることは無い。
     校内は葵と瑞穂が対処することとなった。血痕はもちろん、生徒たちの反撃で飛び散ったゾンビの肉片なども残されており、それらを貴重なサンプルと考えた瑞穂がいくつかを回収する。葵は淡々と、痕跡を片付けていった。
     そして、屋上にいた生徒や教員達には、明日等とリコが口止めを施した。明日等は比較的丁寧に、リコは……どちらかといえば『強い』口調で頼み込んだ。それらがどれほど効果的であったかは、今のところは期待するほかに無い。
     かくして、この学校を襲った生殖型ゾンビによる殺戮は、幕を下ろしたのであった――。

    作者:君島世界 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年3月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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