下へまいります

    作者:那珂川未来

    「はぁ……疲れた」
     真由はエレベーターを降りようと、持っていたカバンを担ぎ直したその時。
    「あれ、あれれ? うっそぉ……」
     テニスのユニフォームが入ったカバンを自転車のカゴに入れたままだということに気づいて。
     自分何やってんだろうと盛大にため息。
     二枚しかないユニフォーム。今日洗わないと大変。また下に行かなくちゃなんないと思うと、どっと疲れが出て。けれどすでにエレベーターは別の階へ。
     すぐにボタンを押して、待っていたら、おもったよりすぐにやってきた。
    「下へまいりまーす」
     中には五歳くらいのおかっぱ頭の女の子が一人乗っていた。
     見たことない子だな。そう思った。けれど別に、えっちそうなオヤジでも、アブなそうな男でもないものだから、普通に乗り込んだ。
    「下へまいりまーす」
     女の子が、閉のボタンを押した。
    「……きゃっ!!?」
     足元の感触がなくなる。代わりに、体が風をとらえる感触だけがはっきりと。
     真由は、下へと落ちた。
     そして――切れた蜘蛛の巣のように垂れ下がるワイヤー。バチバチと電光弾ける瓦礫の山。
     死に物狂いで、エレベーターを支えていただろうワイヤーにつかまる。けれど――。
    「下へまいりまーす」
     愉快そうに笑う女の子の声。見れば、首が真後ろに折れ曲がっていて――。ワイヤーにつられている体がくるりと回る。
    「きゃぁ!?」
     完全に背中へ張り付いたさかさまの顔が、にたりと笑った。
     思わず声をあげた。瞬間、ぶちりとワイヤーが切れた。
    「あっ……」
     また下へ。咄嗟に別のワイヤーにぶら下がるけれど。
     ギシ、ギシッ。上には壊れたエレベーターが今にも降ってきそうで――。
     重力に従いぶらんとぶら下がる真由の体。自分が力尽きるのが先か、エレベーターが降ってくるのが先か。
    「下へまいりまーす」
     ほら落ちろ。そう言わんばかりに笑う女の子。
     ぶちり。また切れた。
    「助けて……助けてーーーーっ!」
     
    「都市伝説が現れた。速やかに灼滅してくれ。すでに一般人が都市伝説の作った特殊な空間に囚われている」
     この都市伝説の出現条件は、七階でエレベーターを降りた後、何処の部屋にも用事を足したりせずに、すぐに踵を返して下へ降りるボタンを押せば条件が満たされるのでそのまま、来たエレベーターに乗り込めばいい。出現条件はいたって簡単なものなのであるため、すぐに真由の救出に向かえる。
    「ただ戦闘となる空間が特殊なものになる。ワイヤーが蜘蛛の巣のように張り巡らされた薄闇の空間だ」
     灼滅者たちが戦闘するには支障はない。落ちることはわかっているから、上手に着地できるだろう。しっかりとワイヤーを捉えていれば跳躍も可能。しかし真由は一般人の為、うまくワイヤーを捉えられずに、ぶら下がっている状態だという。
    「すぐに助けてやりたいところだけれど、都市伝説の習性から考えると、非常に薄情に思えるが倒してから引き上げる方が無難なんだ」
     何故かというと、ワイヤーを上手くとらえて安定した姿勢を保っている人間を優先して攻撃してくるからだ。むしろぶら下がっているほうが、真由の安全が保たれる。
    「じゃあ俺たちもぶら下がって攻撃すれば……という発想になるかもしれないけれど、そうすると由真の命が逆に危険になる。何故ならあくまで安定した姿勢を保っている人間がいれば優先するという話であって、全員同じ条件になれば無差別だ。それに、ぶら下がっていると、サイキックの命中率も悪くなるし」
     因みに回避率も悪くなる。
     しかも、時間制限という枷がある。一分ごとにワイヤーが切れて、七分後には、エレベーターそのものが落ちてきて地面に潰される。
     灼滅者たちはバベルの鎖があるため、死に至る事はないだろう。しかし真由は一般人。即死だ。
     その辺上手く理解して、真由を救うため都市伝説を撃破しなければならないのだ。
    「都市伝説は女の子一体のみ。だけど一体だからって油断しちゃいけない」
     攻撃方法は、口から火を噴く攻撃がバシニングフレアに酷似。抗雷撃に似たひっかき攻撃。そしてシャウトも使用する。
    「女の子を倒せば、現実に戻る。もちろんエレベーターの中にね」
     真由への言い訳はうまく言いくるめてあげると、彼女の今後の為にもいいかもねと少年は言って、
    「それじゃあ、気をつけて行って来て」


    参加者
    加納・夏海(戦闘依存症・d01075)
    笹木森・鏡花(きっと常識人・d01280)
    永倉・ユウキ(オールドディープ・d01383)
    藤谷・徹也(高校生殺人機械・d01892)
    マリア・スズキ(トリニティホワイト・d03944)
    四月一日・メリー(背後のメリーさん・d04104)
    片桐・秀一(高校生殺人鬼・d06647)
    支守・まこと(テキトーにがんばる・d06866)

    ■リプレイ

    ●異界の扉
     先程まで日常の一つとして存在していたそれは、振り返った瞬間、異質な世界への扉となった。
    「下へまいりまーす」
     弾んだ声で乗降を促す声が、狭いフロアーに響く。
     マリア・スズキ(トリニティホワイト・d03944)は女の子を一瞥して、乗り込んだ。
    (「元になった、噂。予想、つくけど」)
     あどけない顔をした只の少女にしか見えないそれは――。
    (「本当にあった、事故じゃ、ないと、いいね……」)
     本当に只の噂でありますように。
     都市伝説の女の子の手が、閉ボタンへと伸びた。
     静かに扉が閉まり、そしてそれは地獄へと墜ちてゆく。

    ●下へ
     世界から平面が消えると同時に、入り乱れる線と重力のみが支配する。
     滑り落ちた先に見えるのは、ワイヤーが密集している場所。
    「助けてー! 助けてぇぇ!」
     真由は、自分以外の、明らかに本物の人間が側に来てくれた事を知り、必死で自分は此処だと叫んだ。
     真由の位置、都市伝説の位置、そして全員が抜かりなく打ち合わせた通りのポジションに付いたことを確認すると、片桐・秀一(高校生殺人鬼・d06647)は全員に注意を促す。
    「大丈夫、すぐ終わらせてそこから引き上げますから」
     引き揚げた方が危険だと暗に言い含め、笹木森・鏡花(きっと常識人・d01280)は相棒のキャリバーと共に構えを取った。
     ギシッ、ギシッ――千切れかかったワイヤーの足場と、今にも落ちてきそうなエレベーターの重量。
    (「私と相棒の頼りない体力で、ディフェンダーとして何処まで皆の火力を集中させてやることができるか――」)
     この戦いでは、縁の下の力持ちでありたいと鏡花は思う。
    (「巻き込まれたヤツには悪ぃけど燃えるじゃねーかこの展開!」)
     否が応でも高揚する気分、支守・まこと(テキトーにがんばる・d06866)はギシリと鳴るワイヤーの感触を確かめつつ、首を吊られた少女へとチェーンソー剣の刃を向けた。
     自然と口元に零れる笑み。
     女の子も、にたりと笑みを返した。
    「下へ……」

     ――奈落(した)へまいります。

     落ちきるのが先か倒すのが先か。まことがゆっくりと腰を落とし――そして、
    「勝負だ!」
     まことが特攻を仕掛けるとともに、電線が弾け、火蓋が切って落とされる。
    「きひっ!」
     女の子の顔が歪んだ。いや歪んだというよりは、脳の重みに耐えきれなくなったかのように口の端が避け、喉の奥をさらけ出す。
     瞬間、仕掛けてきた前衛陣を押し返す様に激しい炎の濁流が迸る。
     その濁流を最初に突き抜け、初撃をお見舞いしたのは秀一だ。
    「この程度で俺は止めらないぜ」
     ダメージとしては列攻撃の割に高めなのは、相手の力量ゆえだろう。しかしこの時間を制するため、秀一は突撃を仕掛ける。未だ身に残る火の粉をそのままに、女の子のその重たげな頭を切り落とさんばかりに居合斬り。
    「……任務は、時間内に遂行する」
     耳元で聞こえた声に女の子が目を剥いた時には、すでに死角へと回りこんだ藤谷・徹也(高校生殺人機械・d01892)の姿。
    「行くぞ、よけちゃダメなんだぞー!」
    「ぎッ?」
     鮮血の逆十字が、女の子の額から噴きだした。回避行動に移る瞬間を、永倉・ユウキ(オールドディープ・d01383)はギルディクロスで狙い打ったのだ。
     ほぼ同時に、徹也の指先に操られる鋼糸が、女の子の体に朱の線を浮かせる。
    「…………」
     四月一日・メリー(背後のメリーさん・d04104)のソニックビートの衝撃が女の子の体に刻まれた。
     これまでの猛攻にも、全くの余裕を見せている少女へ、加納・夏海(戦闘依存症・d01075)は、あえて正面から向かってゆく。
    「アタシらの目の前でなめた真似してんじゃねぇ!」
     連続で繰り出す拳が、女の子の体にめり込んだ。

     ぶちり――。

     五階へと、落下する。

    ●奈落
     吐き出した炎を口の中に燻らせたまま、女の子は高らかに宣言する。
    「下へまいりまーす」
     ぶちり、またワイヤーが切れた。
     二度目の強制落下であるが、全員ワイヤーでの安定姿勢を選び、次なる猛攻へと繋ぐべく。けれど真由の方は一般的な身体能力しかない。
    「もうダメ……。手が痺れてきたよ……!」
     真由が泣きごとを言ってしまうのは、一般人なら仕方ないことだ。しかし引き上げるわけにはどうしてもいかない。
     キャハハと女の子が笑い、首を吊っているワイヤーを巧みに操って、その爪を繰り出そうとしてきた。
     高速で中衛の間を突き抜けてゆく女の子の体。マリアは二の腕からぱっくりと引き裂かれてしまう。
    「引き上げると、こうなる、けど……良い?」
     当然のことながら、一撃が重い。裂かれた肌から滴り落ちる血は玉のようだ。
    「……必ず救助する」
     女の子へ一切の手を緩めずティアーズリッパーで薙ぎ払うと、挫けそうな真由へ、徹也は揺ぎ無い信念を向けて。
    「だから、もう少し、頑張って」
     その言葉をこめるように放たれたマリアのマジックミサイルは、次々と追撃を喰らわせて。霊犬の斬魔刀と合わさり女の子の体を大きく削ぎ取る。
     真由は口をつぐみ、そして落とされた視線へ、しっかりと頷いた。
     頑張っているのは自分だけではないのだと。
     ユウキの彗星撃ちで女の子が動きを止めた瞬間を狙い、メリーはバスターライフルの照準を、その小さな体へと。
     ちゃらり。
     みしみしと軋むワイヤーの震動に、携帯のストラップが揺れる。次いで、撃った衝撃に、激しくたなびいて。
     バスタービームの弾道を追うようにしながら、ポチ公が肉薄する。
     口に加えた浄化の刃が、したたかに女の子の右足を切り捨てて。
     まことも女の子の懐へと飛び込む。
     激しいモーター音。騒音という見えない刃が、呪的保護を即座に破る。更に鏡花の相棒が女の子の体に重い衝撃を残す。
    「これなら落ちきる前にイケんじゃね?!」
     その手ごたえに、まことはそんな予感を感じずにはいられなくて。
     しかし、楽観視してはいけない。相手の実力の方が上だということは、運次第でどちらにも転ぶ。
     女の子がワイヤーを大きく旋回させながら、その爪を振り上げてきた。
    「先程は上手く防げなかったが……」
     鏡花は女の子の動きから攻撃ポイントを読み、咄嗟に前へと。同じサーヴァント使いとして体力の心許ないマリアを庇えなかったこと腹立たしく思っていたから。
    「おっと、テメェの相手は私だ!」
     高速で迫る爪を甘んじて受け、鈍い衝撃が体を走る。
    「くっ」
     ダメージを緩和させているとはいえ、やはりスタートが低ければ危険度も増す。前衛として炎を受けているから尚更である。
     ポジション的役割とはいえ、攻撃を肩代わりしてもらったことを秀一は申し訳なく思うものの、今はその傷の深さを尋ねるより、気持に応えることこそが最良だと。マリアとそのサーヴァントの霊犬から届く、闇の契約と浄霊眼に彼女を任せ、大きく跳躍した。
    (「この時間勝負、決して負けたりするものか」)
     緊迫感を胸に抱きながら、秀一は上から食らいつくかのようにジグザグラッシュ。刃に更に鋭く浮かび上がった獰猛な牙が、女の子の胸元に食い込んだ。
    「ギッ!?」
     血が吹きだすと同時に、都市伝説の中に眠る忌まわしき『設定』を更に強く引きずり出して。

     ――ぶちり。

     とうとう二階まで落ち、奈落まであと二分。しかし落下時のお決まりのセリフはなく。
    「そろそろダウンが近いのか?」
     肩で息する女の子へ、やや揶揄するような物言いで、秀一が正面から居合斬り。
     手を休めるなんてことはしない。真由自身も、いつまでもぶら下がっているのはきついはず。徹也は冷静に、女の子へと鋼糸を振るい、影業を操る。
    「もうちょい耐えろ! 今助けてやっから!!」
     挫けかけている真由へ言葉を投げかけたあと、まことは夏海と列を合わせ、マリアの制約の弾丸を援護に突進。
    「余計なモンはアタシがぶっ壊してやらぁ!」
     夏海の、鋼の如き気を練り込んだ重い一撃によって、エフェクトの耐久力を崩された瞬間を、まことは狙い打つ。
    「おらぁ!」
     疾風の如く薙ぎ払う。うんうんと唸るチェーンソー剣の刃が、少女の腹へと潜り込んだ。
    「ぎ、ぎぎぎっ!」
     折り重なるトラウマと、体を押しつぶすような重圧に、少女はぎりぎりと歯を食いしばると、その苛立ちを吐きだす様にシャウトを繰り出して。
    「真由、本当にもうちょっとの辛抱だぞ」
     今みんなで悪夢を終わらせてやるんだぞ。その強い思い、一般人の命という思いものを背負っている責任感で以て――ユウキはきりきりと弦を引く。精一杯張りつめて、そして。
    「真由は死なせないんだぞ!」
     その指先から、迸る力を解き放つ。
    「グヒィ!?」
     空を劈く力。彗星撃ちが少女の腹に大きな風穴を開けた。
     衝撃でばらばらと四肢を振り乱す少女の体を、夏海はしっかり掴むと、
    「いいかげん倒れろってんだよ!」
     幸運にも早く訪れた畳み掛ける瞬間に、大技を渋る理由などあるのだろうか。その吊られた体を無理矢理に振り上げ、夏海は渾身の地獄投げを繰り出した。
     投げ、叩きつける。打ちっぱなしコンクリートの内壁へ。
     鮮血が弾け、衝撃にエレベーターシャフト内が揺れたような気がした。

     ――ぶちり。

     強打に切れたのはワイヤーではなく。
    「下へ……」
     奈落(した)へと転がり落ちたのは――。
    「まいります……」
     何が起こったのかわからないという表情の、女の子の頭。
     入り乱れるワイヤーの隙間を奇跡のようにすり抜け、小さくなってゆくそれは、ばちばちと弾ける電光の中へと消えていった。
     それを見届けたあと、徹也は声をかけながらすぐさま真由の手を掴み引き上げる。
    「うっ……うぇぇ……うわわーんっ」
     ぽろぽろと涙を零し、声を上げながら、真由はようやく触れられた人のぬくもりと、その頼もしさに縋りついた。
     こういう時、どういう顔を向ければいいのかわからないけれど。
    「もう大丈夫だ。……よく頑張った」
     生きることを諦めなかった真由へ、徹也なりに一生懸命柔らかさを作りながらその頑張りを労うように背中を優しく叩いた。
    「本当にすごかったんだぞ。真由はすごい勇気の持ち主だぞ」
     しゃくりあげながら泣いている真由の傍らで、ユウキも一生懸命に褒めてあげて。
     ただ真由は、未だ離れない恐怖に体の芯まで凍えている。
    「化け物がいるなんて知っていても、怖いだろうしな……」
     真由の様子を見てそう囁いた鏡花の言葉に、選択してもらおうと考えていたマリアも、小さく頷いた。
    (「……忘れる、それがいい」)
     まだまだ長い人生に、余計なトラウマなど必要ないのだから。
     自分が此処にいたのは、皆を攻撃の脅威から守るだけでなく、真由の心を守ってあげるためでもあったのだろうか。鏡花は旅人の外套で気配を消したあと、そっと真由の首元に近付いた。
    「残された恐怖も、全て灼滅しよう」

    ●到着
     ちーん。
     エレベーターが到着した音で、真由は目が覚めた。
    「ん……あれぇ……?」
    「大丈夫ですか? エレベーターの中で倒れてましたけど……」
     意識の戻った由真に、鏡花はそれっぽく尋ねた。
    「え? ええっ?」
     辺りをきょろきょろしながら確認し、そしてたくさんのギャラリーが自分を取り囲んでいることを知り、真由は顔を真っ赤にしながら、
    「いや、全然大丈夫です!」
     自分なんでこんなことになっているのだろうと記憶を思い起こそうとするけれど、なんとなく頭の中がもやがかかったように曖昧で、はっきりしていない記憶。捕まることに必死だった真由は、人の顔まで覚えている余裕も無かったらしい。彼等のことを強く覚えていられなかったようだ。
     ただ、怖いモノを見たような気はするのだと独り言のように。
    「夢でも見たんじゃねぇの?」
    「ん~……疲れてたんじゃないでしょうか?」
     至ってフツーのエレベーターだったぜと夏海。疲れていると何かを見間違うことだってありますしと鏡花。
    「え、いやでもその……小さな女の子……女の子? うーん……」
     凄い怖いものだった気がするけれど、曖昧なせいで現実感がさっぱりない。
    「あーもう家帰って寝たらどうよ?」
     こんなところでぐだぐだありもしない事討論していても仕方ないじゃんと、まことはそう投げやりな様子で言葉を紡ぎ、その場を強制終了。そしていの一番に撤収開始。
    「事件でも事故でもなくよかったよ。これでも飲んだらいい」
     最後に秀一が爽やかな笑顔で栄養ドリンクを差し出した。そして軽く手を振り、足早にマンションから出ていく。
     夏海はもうちょっとバトルを楽しみたかったけれど、真由が無事であることが本日の喜びであったことも間違いじゃなくて。
     すると突然、メンバー全員の携帯にメールが。
    「なんだぁ?」
     一体誰からよ、まことは気だるげに携帯取り出し開いてみたら、
    『メリーちゃん初めてのお仕事で超ドキバクです!! もうなんていうか時間がなくて無駄に喋ってる暇なんて無さそうですね! メリーちゃん基本喋らないで無問題ですけどね!! それにしても……時間との戦い……おちおちメールしてる余裕もないですね! メリーちゃんったら、もー! 欲求不満でぷんぷんですよ! ってことで無事成功したらメールしちゃいますよ! っていうか今してるんですけどね!』
    「へっ……?」
     当然のように戦闘に参加していたはずなのに、そういえば誰も一言も絡んでいた記憶がないかもしれない――と、送信元のメリーを探していたら、
    「わーっ!?」
     ユウキの後ろにいたとか。
     メリーは無言無表情で、ちゃらりと携帯のストラップを揺らす。
    「ビックリしたんだぞ!?」
     ドキバクしたのはこっちなんだぞ。ユウキは心臓押さえつつ思わずその場から退いて。
    「もう此処にいるのもなんだし、帰ろうか」
     はははと笑いながら秀一が帰還を促した。
    「灼滅、完了」
     秋の夜風を受けながら、徹也は身を翻す。
     真っ暗になった空の下、マンションの片隅には、マリアが置いたリンドウの花が静かに揺れていた。
     悲しい噂の元になった、誰かへと向けて――。

    作者:那珂川未来 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年10月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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