再誕せし青のロード

    作者:カンナミユ

    ●都会の喧騒の片隅で
    「もしもし、ワタシの声が聞こえますか? シャシャシャ……」
     黒い影のような男が、シャシャシャと笑う。
     笑う男の前に存在するのは青き宝石のような人型の、既に灼滅された存在。
    「もしもし? あなたはどなたですか? なんですかこのスマホ?」
     青い人型――ロード・ビスマスは黒い影に気付けず、キョロキョロとあたりを見回しながら手元のスマートフォンに話しかける。
    「シャシャシャ、ワタシは六六六人衆『トリプルクエスチョン』。そのスマートフォンはワタシが改造した『改造John-Phone』で、それを使えば擬似的に『慈愛のコルネリウス』の力を使えます。そして今、アナタには『ベヘリタスの秘宝』を埋め込んでいます」
     その声を聞きながら、影にようやく気付いたビスマスは少し思案し、納得したようだ。
    「すると、僕は生き返ったんですね。これは凄い、びっくりしたなぁ」
    「……随分と理解が早いですねぇ」
    「ラブリンスターさんから寝返った時、アガメムノン将軍から色々聞きましたからね」
     えへんと胸を張り応えるビスマスだが、とたんに体を強張らせてしまう。
    「……ああでも、身体のあちこちが痛くて、今にも死にそうだなぁ。助けてくれませんか?」
    「ふむ、流石にコルネリウスの完全再現は無理ですか。じゃあひとまず、新鮮な生命力でも集めてきましょうかねぇ」
     そう言いトリプルクエスチョンがビルの屋上からぐるりと見渡せば、『新鮮な生命力』はいくらでもある。
    「ここから動かないでくださいねぇ」
    「早く戻ってきてくださいね」
     手を振るビスマスに見送られ、屋上からするりと降りたトリプルクエスチョンは都会の喧騒の中へと姿を消した。
     
     この日、新宿の闇の中で原因不明の多数の死者が出る。
     それはトリプルクエスチョンが『人間狩り』を行った、当然の結果であった。
      
    ●ロードの再誕
    「プレスター・ジョンの国の防衛戦の後、慈愛のコルネリウスとも会談が行われ、様々情報を得る事が出来た。ただ、プレスター・ジョンの国とベヘリタスの秘宝の力については、まだ分からない事が沢山ある」
     集まった灼滅者達を前に神崎・ヤマト(高校生エクスブレイン・dn0002)は、そう話を切り出した。
    「なぜ、慈愛のコルネリウスだけが灼滅されたダークネスをプレスター・ジョンの国に招くことができるのか。そして、一度は灼滅された筈のダークネスがプレスター・ジョンの国を経由する事で、ベヘリタスの秘宝で復活させる事が出来る理由……」
     資料を手にしたヤマトは視線を巡らせ思案するも数瞬。
    「これが解明されれば、過去に死亡した全てのダークネスが再誕する可能性があるという事だな」
     口にするのは考えたくもない、恐ろしい事。
     ――だが。
    「この考えたくない、恐ろしい事を考え付いたダークネスが存在してしまったようだ」
     そう言いヤマトが挙げるダークネスの名は、トリプルクエスチョン。おそらくは非常に高い実力を誇る、高位の六六六人衆である。
    「トリプルクエスチョンは、プレスター・ジョンの国から得られた何かを元に、ダークネスの『再誕』を画策しているようだ。そして、その再誕の場所は、第二次新宿防衛戦の戦場となった『新宿』」
    「新宿? ……まさか」
     もしやと呟く灼滅者にエクスブレインは頷いた。
     再誕の対象はこの戦争で灼滅された、『ロード・ビスマス』。
     既にロード・ビスマスは再誕したが、非常に不安定な状態であるようで、多量の新鮮な生命の力が無ければ崩れてしまう。そこで、ビスマスを再誕させたトリプルクエスチョンは、新宿の闇の中から人間を狩って、生命力を手に入れようと動き出したのだ。
    「トリプルクエスチョンがその場を離れた隙をついて、再誕したロード・ビスマスを再び灼滅して欲しい」
     真摯な瞳を向け、ヤマトは手にする資料を開く。
     
    「まず注意して欲しいのは今回の依頼はロード・ビスマスを灼滅する事が目的であり、トリプルクエスチョンと直接戦う事が目的ではない事だ」
     資料へ視線を落としたヤマトは最初にそう説明し、トリプルクエスチョンが行う人間狩りを止める事も出来ないと話す。
    「どんな警戒をして阻止しようとしても、捕捉する事も出来ずに、次々と一般人が殺されていくだろう。それを止めるには『復活しかけているロード・ビスマス』を再び灼滅する必要がある」
     ビスマスの復活が失敗となったと分かれば、トリプルクエスチョンは人間狩りを中止し撤退するが、戦闘開始から8分以内にビスマスを撃破しなければ、トリプルクエスチョンが救援に駆けつける危険が高くなる。
    「トリプルクエスチョンは非常に強力な六六六人衆である為、救援に駆けつけた場合の勝利は難しい。お前達を撃退した後、再び人間狩りを行うだろう。そうさせない為にも素早く、ベヘリタスの秘宝で再誕したロード・ビスマスを灼滅しなければならない」
     そう説明するヤマトは灼滅者から問われ、ビスマスに関する資料を見るが、
    「ロード・ビスマスは……まあ、お前達の方がよく分かっているんじゃないか?」
     彼に関する今までの行動や言動は天然そのもの。ビスマスは何だかよく分からない。
     そんなビスマスはのらりくらりと会話をして戦闘を長引かせようとするかもしれないので、その術中にはまらないよう注意する必要があるだろう。
    「灼滅されたダークネスの再誕……。恐ろしい事を考えたものだ」
     広げた資料をまとめながら、ヤマトはぽつりと口にする。
    「ビスマスはただの実験。今回の結果によっては、より強力なダークネスを再誕させようとするかもしれない。それを阻止する為にも、この企みは失敗させなければならないだろう」
     そう言いヤマトは真摯な瞳を灼滅者達へと向け、言葉を続けた。
    「トリプルクエスチョンの狩りによる被害者を減らす為にも、可能な限り素早く、ロード・ビスマスを灼滅して欲しい。頼んだぞ」


    参加者
    神門・白金(禁忌のぷらちな缶・d01620)
    霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)
    花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)
    赤威・緋世子(赤の拳・d03316)
    銀・紫桜里(桜華剣征・d07253)
    今井・来留(藁縋る・d19529)
    月姫・舞(炊事場の主・d20689)
    風輪・優歌(ウェスタの乙女・d20897)

    ■リプレイ


     さらりと夜風が頬を撫で、空を見上げる今井・来留(藁縋る・d19529)はナノナノと共にそのタイミングを待っていた。
    「厄介な案件ですね」
     ビルの非常階段で月姫・舞(炊事場の主・d20689)はぽつりと口にし、これから灼滅すべきロード・ビスマスについて思案する。
     レアメタルナンバーであるロード・ビスマスは刺青羅刹・外道丸に保護され、それから転々と流浪を続けた末に第二次新宿防衛戦で灼滅された。
     ご当地怪人に弟子入りしたり、淫魔に勧誘されたりとかアイドルレスラーを勧誘したりと何だかよく分からない存在だったが……。
    「……どんな奴だったっけ」
     神門・白金(禁忌のぷらちな缶・d01620)は宿敵以外の事は疎かった。
     今回、そんなビスマスを六六六人衆、トリプルクエスチョンが再誕させた。灼滅されたダークネスは数多い中、実験としてこのレアメタルナンバーを選んだとエクスブレインは話している。
    「安定の為に新鮮な生命力が必要だからって人間狩りとか食えねぇやつだな! 犠牲なく復活させてたコルネリのがどれだけマシだったかって感じだ」
     霊犬・ラテへと視線を落とし、赤威・緋世子(赤の拳・d03316)は言い、花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)はこれからトリプルクエスチョンが行う行為に瞳を伏せる。
     ビスマスは完全に再誕した訳ではない。安定させるには大量の命が必要なのだ。
     大量の命を得る為に、トリプルクエスチョンは人を狩る。だが、灼滅者にはそれを止める術はない。
    「本当は今すぐにでも人間狩りを止めに行きたいですけれど……ビスマスを倒すことでしか止める方法がないのであれば。できる限り一般人さんの被害を減らすためにも、できることを精一杯やります……!」
     懐中時計に触れ言う桃香を霊犬・まっちゃが見上げ、風輪・優歌(ウェスタの乙女・d20897)はビスマスとトリプルクエスチョンが会話をしているであろう屋上へと瞳を向けた。
    「前から思ってましたが……ビスマス、変なやつ!」
     サバト服に身を包む霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)は神妙な音声で青い異形の人型の姿を思い浮かべ、
    「見た目とのギャップありすぎでしょうとは凄く思います。ま、見た目がどうあれ、さくっと倒してとっとと逃げましょう」
     続く言葉を耳に銀・紫桜里(桜華剣征・d07253)が耳を澄ませば、エクスブレインの予兆どおり、人間狩りに出るトリプルクエスチョンを見送る声が微かに聞こえる。
     8人は顔を見合わせ、そのタイミングが来た事を知り、動く。
     

     各自武器を手に屋上へと上がれば、一人残されたロード・ビスマスがちょこんと座っていた。
    「こんばんわ、いい天気ですね」
     足音で気付いたのだろう。灼滅者達へと向いてビスマスは言い、空を見上げれば周囲のネオンや照明が届かない夜空に星が瞬いていた。
    「でもごめんなさい、僕とても具合が悪いんです。今にも死にそうで……」
     そう言いビスマスはのんびりと夜空を眺めたが――、
    「……いきます」
    「わあっ」
     百物語を語る刑一を横に、自分を奮い立たせるように呟く紫桜里の黒死斬をかろうじて避けた。
    「いきなりなにするんですか、あぶないじゃないですか」
     突然の攻撃に非難の声を上げるビスマスだが、灼滅者達は聞く耳を持たない。
    「話は無用。やるなら肉体言語で語るべし!」
    「え? 肉体言語?」
     サバト服に身を包む刑一の言葉に首を傾げる慌てるビスマスの前に迫るのは舞。
    「貴方は私を殺してくれる? それとも殺されるのかしら?」
     解除コードと共に放たれるレイザースラストをビスマスはばしんと弾く。
    「貴方に恨みはありませんが、もう一回死んでもらいますね」
    「せっかく生き返る事ができたのに殺されるなんて、僕……いえ、私は嫌です」
     にこりと微笑まれたビスマスは言い見渡せば、武器を構えた灼滅者達。囲まれている事にようやく気付いたようだ。
    「私は……戦います!」
     ぐっと拳を握り締め、放つパンチを真正面から受けた舞は飛ばされそうになるのをかろうじて堪えた。
    「大丈夫か?」
     声をかけ、緋世子はちらりと見るが、どうやら大丈夫そうだ。ばっと構えなおす姿に内心でほっと息をつく。
    「死人に口なし! 大人しく眠ってろ!」
     構えたシールドががつんと打ち合い、ラテが続くと狙い定めた優歌と白金のサイキックがビスマスを捉え、
    「あはは♪」
     笑い顔の来留が構え放つ弾丸を腕で防ぐ。
    「何か面白い事でもあったんですか?」
     指示を受けたナノナノが動き、桃香が天魔光臨陣を展開させる中でビスマスは問う。
    「そんなに笑うくらいに面白い事があったのなら、私も是非聞いてみたい――」
    「デストローイ!」
    「うわっ」
     戦いの中でその言葉は刑一と紫桜里の螺穿槍によって遮られ、
    「悪を極めんとした男の業(わざ)と業(ごう)を見なさい、血河飛翔っ、濡れ燕!」
     舞の刀が抜き放たれ、その刃を飛び越えた。
    「……花園さん、時間は?」
     ビスマスの攻撃をかいくぐり、仲間達が攻撃するのを目にしつつ、紫桜里は限られた時間を桃香に問うた。
     白金と来留の攻撃をビスマスは弾き、そして捌く。再び天魔光臨陣を展開させた桃香は大切な懐中時計を取り出し時間を告げた。
    「残りは6……5分です!」
     

    「そういえば気になっていたのですが、クリスタライズってどういう能力なのかしら?」
     戦いの中、ふと舞はビスマスに問うた。
    「クリスタライズ、ですか?」
    「ええ」
     にこりと物腰柔らかいその言葉にビスマスは灼滅者達の攻撃を捌いていたが、
    「ええと、そうですね……クリタライズ……クリスタライズ、クリスタライズ……ええと」
     戦闘の手をぴたりと止め、思い出そうとする。うーん、うーんと唸る事しばし。
    「クリスタライズってアレですよ! クリスタライズ的な!」
     ぽんと手を叩き自信満々に言った。
     まったくもって答えになっていない。異形な顔立ちのせいで表情を読み取る事は出来ないが、とてもいい笑顔をしていたに違いない。
    「あはは♪ おもしろいね、それ♪」
    「もう少し時間があればもっと思い出せるかもしれないけれど。……あ、ごめんなさい。ちょっと攻撃を止めてもらえると私、嬉しいんですが」
     そんな事を言いながらビスマスは腕を組んで思い出そうとするが……。
    「ああ、私の人生……なんだか流されっぱなしでしたね」
     戦いで受けた傷を癒しながら、自分が過ごした日々を思い出したようだ。走馬灯のようにそれが脳裏を巡り、
    「あ、クリスタライズの事を忘れていました。詳しく思い出すのにもう少し時間をもらえませんか?」
    「誰がやるかよ!」
    「いたいっ」
     突っ込みの如くエアシューズが炸裂!
    「痛いじゃないですか、何するんですか」
     言葉なく狙う優歌が放つシークレットシューズに呻くビスマスに白金が迫る。
    「お前と話する時間なんてないんだぞ」
     そう、この戦いには時間の限りがある。ビスマスとのんびり会話をする時間などないのだ。
     動きを抑えようと放たれる鋼糸はビスマスを捉え、回避に失敗した来留の攻撃に血を流す。
    「痛い……私、本当に死んでしまいそう」
     血はぽたぽたと床に落ち、ビスマスは攻撃を受けた痛みと、それ以外の痛みに小さく呻く。
     エクスブレインの説明によれば、ビスマスは非常に不安定な状態であるという。体のあちこちに生じる痛みはどれほどのものだろう。だが、刑一が放つ妖冷弾と紫桜里の黒死斬を耐え、舞の居合を回避した。
    「私はここで待つと約束したんです。倒れる訳にはいきません!」
     自分を生き返らせてくれたトリプルクエスチョンとビスマスは約束したのだ。
     力を振り絞り、ビスマスは攻撃を仕掛けるが、その約束を果たせる訳にはいかない。
    「ラテ、そっちも頼んだ!」
    「お願い、まっちゃ……!」
     仲間達へと向く攻撃を緋世子はラテと共に防ぐと、桃香に応え、まっちゃも動く。
     時間との戦いが続く中、蓄積されたダメージをビスマスは過去を振り返り癒す。
    「色々あったけど、沢山の人に出会えた事……私、とても嬉しかった」
     痛む腕を押さえ、口にするビスマスの脳裏には誰の姿が過るのか。
     呟くような言葉と痛々しいまでにダメージを受けたビスマスの姿に優歌の胸中には様々な思いが過るが――、彼に何も語れない。
    「新宿の戦いでの再現だ! ぶっとべぇえ!」
     ビスマスの体は緋世子によって宙を舞い、地面に叩きつけられる瞬間を狙い十字架戦闘術を用いて攻撃すれば、攻撃の要である白金の閃光百裂拳が体に叩き込まれる。
    「う……っ」
    「あはは♪ 最初の勢いはどうしたのかなあ♪」
     笑いながらオーラを纏う来留のオーラキャノンがビスマスを捉えるのを目に、桃香はちらりと懐中時計へと瞳を向ける。
    「あと2分です!」
     まっちゃと共に仲間達の傷を癒す桃香の声に仲間達は畳み掛ける。
     トリプルクエスチョンが合流する前にビスマスを倒さねば。
    「ビスマス……爆発しろぉ!」
     槍を構え放つ渾身の一撃にビスマスはよろめき、隙を突き再び刑一の槍は肩口をえぐり、
    「これで……、終わりですッ!」
    「血河飛翔っ、濡れ燕!」
     紫桜里が構えたArgent Hearts――クルセイドソードを上段の構えから全体重を乗せて縦一文字に斬り裂き、舞の白刃が閃いた!
    「……わ、私……は、ま……まだ……」
     畳みかける攻撃にビスマスは耐えようとするが、おそらくは限界を超えたのだろう。だがそれでも生きたいと願ったのだろう。
     だらだらと傷口から血のようなものが流れ続ける腕を振り上げ――、
     そこが限界だった。
    「……、…………、……」
     ビスマスは何かを口にしたようだが、それを聞き取る事はできなかった。
     がくりと膝を突き、様々な思いを胸にそれを見つめる優歌。ビスマスの体は淡く光を放つと輪郭を失い、光の粒子となって消えていく。その光景を目に緋世子の脳裏に過るのはあの男。
    「……おっさんと同じだ」
     慈愛のコルネリウスによって、かの国に送られた男と同じようにビスマスもまた、消えていく。
     消えゆくビスマスを桃香も見守る中、
    「どうですか?」
     紫桜里から尋ねられ、舞は無言で首を振る。
     改造John-Phone、そして埋め込まれていたベヘリタスの秘宝を探していた二人だが、ビスマスの体と同様に光の粒子となって消えてしまったようだ。
    「もう復活する事はないと思うが……次復活するときはこいつをちゃんと使え」
     探索を続ける優歌を目に、白金が投げたコインがきいん、と冷たい音を立てる。
    「こんてにゅーってのをする時には使わないといけないそうだぞ」
     落ちたコインはアスファルトをの上をころころ転がり――こつんとつま先に当たって止まる。
     それをぼうっと目で追っていた来留は瞬きを一つし、仲間達もそれに気付く。
    「完全復活の前に本体が倒されてしまうとは失敗でした。シャシャシャ……」
     初めて聞く声に灼滅者達はその存在を初めて目の当たりにした。
     

     その存在はおそらくは非常に高い実力を誇る、高位の六六六人衆。
    「この方法は効率が悪いですねぇ。一人づつ人間を狩っていたのでは、全く間に合いませんでした」
     そう言い、黒い影のような男はコインを拾ってシャシャシャと笑う。
     気配もなく現れたダークネスを目に武器を構えた灼滅者達は対峙するが、どうやら戦うつもりはないらしい。微かに残るビスマスであったものへと顔を向ければ、それもすっかり消えてしまった。
    「まあでも、今回の実験は有意義でした。四大シャドウの手を借りずとも、これだけの事が出来る事がわかったのですからねぇ。次は、もう少し『死にたて』の『強いやつ』を、『沢山の生贄』で蘇生する事にしましょう」
    「……沢山の生贄?」
     その言葉につと桃香の頬を汗が伝う。
     
     『死にたて』の『強いやつ』を、『沢山の生贄』で蘇生?
     一体何を――?
     
    「ナンバーの誰か大事な人でも起こしたいのかなあ? あははは♪」
     笑う来留にダークネスは応えない。
    「というワケで、もし強いダークネスを灼滅する事がありましたら、ぜひワタシにお教えください。そうそう、従来通りの闇堕ち者も募集しておりますよ。何しろ、ハンドレッドナンバーには欠番が多いのですよねぇ」
     そう言い灼滅者達を見渡すトリプルクエスチョンだが、そのまま踵を返し、屋上から去ろうとする。だが、何か思い出したようだ。足を止めると不気味な笑顔を向け、
    「申し遅れました、ワタシの名は『トリプルクエスチョン』。以後お見知り置きを。シャシャシャ……」
     それだけ言うと屋上からするりと去っていった。
    「なんとかくっしょん……呼びにくい、他にいい名前ないのか」
     白金は言うがトリプルクエスチョンは笑い声だけを残し、姿はない。
     再誕したロード・ビスマスは灼滅し、トリプルクエスチョンも去り、さらりと夜風が灼滅者達の間を抜けていく。
    「武蔵坂に戻りましょう」
    「そうだな」
     優歌に緋世子は頷いた。
    「今回の結果を報告しないといけませんね」
    「私達でも何か調べられそうな事があればいいのですが」
     紫桜里と舞が言葉を交わす中、RB団である刑一は新たな敵へと心を切り替えていた。
    「相棒とバレンタインデーからホワイトデーを通じて発生したリア充を爆破せねばですし」
     言いながら見つめる瞳は何を捉えるのか。
     
     トリプルクエスチョンが残した疑問はいずれ分かるだろう。
     笑い声は消え、灼滅者達もまた屋上から消えていった。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年3月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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