●都内某所
『この世は既に腐っている。新しい世を創るためには、悪しき文明を滅ぼさねばならない』という考えから、破壊活動を行っていた集団がいた。
彼らは自らの行為を天罰と称し、夜な夜な破壊活動を行っていたらしい。
そのため、まったく罪悪感がなかったらしく、破壊行為を行う事が世のため、人のためになると考え込んでいたようである。
そういった歪んだ正義感を持ったまま、重要施設に忍び込み、破壊活動を行っていたため、最後は捕まってしまい、獄中で憐れな末路を辿ってしまったようだ。
しかし、近隣の住民達からは『まだ残党が残っているのではないか』と言う気持ちが消えず、そういった思いから都市伝説が生まれてしまったようである。
「……正義って何だろうな?」
そんな事を考えつつ、 神崎・ヤマトが今回の依頼を説明する。
今回、倒すべき相手は、革命家風の都市伝説。
工事用のヘルメットにガスマスクを被っているから、すぐに見つける事が出来るはずだ。
都市伝説は『すべてを破壊せよっ!』と叫び、手に持った釘バットで、ありとあらゆるものを壊して回っている。
おそらく、お前達が着く頃には誰かが襲われているはずだ。
しかも、襲われている相手は、全身灯油まみれ。
都市伝説の手にはライターと言うシチュエーション。
まずは一般人の避難を優先しないと、間違いなく火達磨。
都市伝説も一般人を狙って、攻撃を仕掛けて来るから、くれぐれも気を付けてくれ。
参加者 | |
---|---|
薬袋・えん(一縷の紅蝶・d00210) |
左藤・四生(中学生神薙使い・d02658) |
九条・都香(ヴァーミリオンハート・d02695) |
早河・結季(高校生エッグヒーロー・d03491) |
クラウィス・カルブンクルス(朔月に狂える夜羽の眷属・d04879) |
青柳・琉嘉(天信爛漫・d05551) |
アルカンシェル・デッドエンド(ドレッドレッド・d05957) |
滝摩・翔(中学生殺人鬼・d06109) |
●悪は滅びよ
「……天罰ってさ、人間が行ったら天罰じゃないと思うんだよなー。オレが言うのもなんだけどさ……頭、大丈夫かな? ま、なんにせよ、都市伝説はしっかり倒しておかないとな!」
自分なりの考えを述べながら、青柳・琉嘉(天信爛漫・d05551)が都市伝説の確認された場所に向かう。
都市伝説が確認されたのは、閑静な住宅街の一角。
実際に破壊活動を行っていた者達は、すでに捕まっているのだが、あまりにも呆気なく解決してしまったせいで、『まだ残党が残っているんじゃないか』という気持ちが強くなり、都市伝説が生まれてしまったようである。
「当人の意志に関係なく都市伝説化されてしまうとは、有名になるのも考え物じゃな!」
複雑な気持ちになりながら、アルカンシェル・デッドエンド(ドレッドレッド・d05957)が口を開く。
だが、当人達も『自分達の意志を継いで、戦ってくれる者達が現れた! これで、まだ希望が持てる!』と喜んでいるかも知れない。
「……正義の名の下に、何をしても良いと言う思想は理解不能ですね……」
彼らの考えを全く理解する事が出来ず、クラウィス・カルブンクルス(朔月に狂える夜羽の眷属・d04879)が呟いた。
どうやら、彼らは自分達の行いが正義であると信じ、何をやってもいいと思い込んでいたようである。
「正義も間違ったら悪になっちゃうんだね。でも、そのままなんてのは悲しすぎるよ。せめてもう間違いをしないように、僕らで止めなくちゃね!」
自分自身に言い聞かせ、早河・結季(高校生エッグヒーロー・d03491)が気合を入れた。
その途端、どこかで悲鳴が上がる。
悲鳴が聞こえたのは、ここからそれほど離れていない、どこか。
結季達は先ほど聞こえた悲鳴を頼りにして現場へと急ぐ。
そこには都市伝説に襲われた一般人がおり、恐怖のあまり腰を抜かして身動きが取れなくなっていた。
「先ずはライターをなんとかせねば……。都香殿がクリーニングを施す間に引火してしまっては、それこそ被害倍増じゃ」
少しずつ間合いを取りながら、薬袋・えん(一縷の紅蝶・d00210)が都市伝説に視線を送る。
都市伝説は一般人を人質に取りつつ、ライターを構えていた。
おそらく、そこから一歩でも動けば、コイツの命はない、という警告。
「このままだと、全く無関係な人が殺されてしまう。それなら……!」
覚悟を決めた様子で体当たりを仕掛け、左藤・四生(中学生神薙使い・d02658)が都市伝説と一般人を強引に引き離す。
これには都市伝説も驚き、ライターを落として、自分の体に引火!
途端に都市伝説の体が燃え上がり、ケモノのような唸り声が辺りに響く。
だが、都市伝説は倒れる事なく怒り狂い、四生達に対して鋭い敵意を向けた。
「このまま自滅してくれたら、手間が省けたんだけど……。悪党ほどしぶといっていうのは、本当のようね。……とはいえ、こんな迷惑な都市伝説は早めに排除しないと。その破壊(はえ)、灼滅させてもらうわ」
都市伝説と対峙しながら、九条・都香(ヴァーミリオンハート・d02695)が言い放つ。
しかし、都市伝説は怯まない。
隙あらば、再び一般人を襲うつもりで、ジリジリと間合いを詰めている。
「……ったく! 世界破壊なんてゲームみたいな話は、ゲームの中だけでやってほしいぜ。……というわけで、滅びろ都市伝説!!」
すぐさまスレイヤーカードを構え、滝摩・翔(中学生殺人鬼・d06109)が叫ぶ。
それと同時に、都市伝説が一般人を狙うようにして、釘バットを構えて襲い掛かってきた。
●一般人
「ひ、ひぃぃぃぃ、助けてくれ!」
都市伝説に狙われた一般人が再び叫ぶ。
自分の身に降りかかった不幸を呪いつつ……。
これが夢なら、どれほど幸せな事か。
目の前で繰り広げられるありえない事の数々。
ようやく、助けに来てくれた者達も変身したため、どう考えても普通じゃない。
きっと、悪い夢を見ているんだ。
そう思うだけで、ここ心が落ち着いた。
ガスマスク姿の男が今にも振り下ろそうとしている釘バットも……、怖くない。
「し、死にたいのか!」
一般人が自ら死を受け入れようとしていたため、えんが叱りつけるようにして体当たりを食らわせる。
途端に一般人がハッと我に返り、『俺は今まで何を……』と自答した。
「考えるのは後。行くわよ、ハートレスレッド!」
ライドキャリバーに乗ったまま一般人を担ぎ上げ、都香が都市伝説から離れるようにして突っ走る。
それと同時にずっしりとした重みが肩に圧し掛かり、思わずブチ切れて一般人を放り投げそうになった。
そう思ってしまうほど、重い。無駄に重い。腹が立つほど重かった。
だが、ギリギリのところで考えを改め、一般人の体をクリーニング。
「な、なんだ、こりゃ!? うわわわわ!」
再びパニックに陥る、一般人。
都香の頭や背中をポカポカ叩き、『下ろせ、下ろせ』と連呼する。
そのため、都香がイラッと来て感情の赴くまま一般人を放り投げそうになったが、グッと我慢……出来る訳がない!
……既に怒りが爆発寸前!
その事に気付かず、一般人が好き勝手な事を言っていた。
「文句があるのなら、俺がいくらでも聞いてやる! 今だけでいいから大人しくしていやがれ!」
都市伝説を牽制しつつ、翔が一般人に怒鳴りつける。
それに驚いた一般人が『あー、俺は間違いなく、殺される。もしくは、改造されて、悪の組織の手先ィ! 嫌だ、そんなの!』と呟き、自暴自棄になった。
「まさか、ここまでネガティブな考えの持ち主だったとは……、先が思いやられますね、色々な意味で……」
深い溜息を漏らしながら、クラウィスが
一般人を守るようにして陣取り、クラウィスが都市伝説をジロリと睨む。
しかし、都市伝説は怯まない。
そのままクラウィス達を纏めて叩き潰す勢いで突っ込み、狂ったように釘バットを振り回す。
……的確に相手の急所を狙い!
タンスの角に小指をぶつけるほどの的確さで!
「おのれ妖怪ガスマスク……革命家なら、もっとオペラに頼むのじゃ! 浪漫がないぞ!」
地味に痛い部分を何度も攻められ、アルカンシェルが涙目になりつつ、ギルティクロスで反撃する。
だが、都市伝説も反撃。破壊、破壊、破壊!
自動販売機から、ゴミ箱、看板、街灯まで。
「手当たり次第に破壊するなんて、そんなのが正義な訳ないよ! あなたが自分を正義と言い張るなら、僕達は悪で構わない!さぁ、まず僕達から破壊してみろ!」
都市伝説を挑発しながら、四生が仲間達にアイコンタクトを送る。
とにかく、一般人の傍から離れねばならない。
このままでは、確実に巻き添えである。
「ううっ……、怪しげな連中が俺を巡って殺し合い。ひょっとして、俺には出生の秘密的な何かがあったのか!? そういえば、最近妙に右手が疼きやがる!」
無駄に男の顔になりつつ、一般人が右手を押さえた。
確か、医者には腱鞘炎と言われていたが、そんな嘘だ!
おそらく、あの医者は悪の秘密結社で働くドクター的な何か。
きっと、奥の手術で怪人でも作っていたのに違いない。
「何だか妙な方向に突っ走っているようだけど、とりあえず落ち着いたようだね」
苦笑いを浮かべながら、結季が都市伝説にエッグビームを放つ。
その一撃を食らって都市伝説がバランスを崩し、ガックリとその場に膝をつく。
「何が正義かなんて、人によって違うけどさ、……誰かを傷つけるのは間違ってる! 人の犠牲の元に成り立つ正義なんて、ただの偽善じゃんか。そんなのオレ許せないよ!」
ふくれっ面になりながら、琉嘉が龍翼飛翔を仕掛ける。
その一撃を食らって都市伝説のガスマスクが吹っ飛び、醜い素顔があらわになった。
●都市伝説
「その醜い素顔が、あなたの歪んだ正義そのものを表しているようね。それぞれの考え方の違いはあるだろうけど、それを押し付けた時点でそれは間違っているわ。その事にすら気づかず、何が正義よっ!」
都市伝説を叱りつけながら、都香がライドキャリバーに乗ったまま、乱れ手裏剣を放っていく。
突然の事に一般人は動揺していたようだが、ここで気を抜けばそのまま地面に真っ逆さま。
必死になって、都香の体にしがみついている。
その拍子にうっかり胸を触ってしまったため、『……殺されるかも!』と思ったが、この状況では仕方がない。
きっと、許してくれる……はず。
最悪の場合は、土下座して謝ろう。
そう思いつつ、胸を揉み。
そして、予想外に強烈な肘鉄を食らい、一般人の意識は遥か遠くに飛び立った。
「まあ、自業自得じゃな」
霊犬と一緒に呆れた様子で、えんが深い溜息をもらす。
だが、そのまま都香が都市伝説との横を突っ切って行ったため、一般人を気にせず戦う事が出来そうだ。
しかし、都市伝説は自らの正義を貫くため、悪人として一般人を罰するため、全速力で後を追う。
「お前の相手は俺達だ……なんつってな!!」
都市伝説の行く手を阻み、翔が黒死斬を炸裂させた。
その一撃を食らって都市伝説がバランスを崩し、釘バットを杖代わりにして何とか立つ。
「……天罰はさ、神様が悪い人を正しい道に戻すために行う罰なんだと思う。それを人が……都市伝説がやろうとしている事自体、間違っているよ!」
一気に間合いを詰めながら、が都市伝説に龍骨斬りを叩き込む。
だが、都市伝説は諦めない。
すぐさま釘バットを握り締め、琉嘉に殴り掛かっていく。
「周りを気にせず、前しか見ず……。それで正義を語るとは……」
都市伝説の死角に回り込み、クラウィスが影縛りを仕掛ける。
その途端、都市伝説の動きが封じられ、持っていた釘バットがゴロンと足元に落ちた。
「腐ってるのは、貴方の中だけの世界だよ。そんなに壊したいのなら、僕達が手伝ってあげる」
都市伝説に語りかけながら、四生がシールドバッシュを放つ。
そのため、都市伝説は立ち上がる事さえ出来ず、悔しそうにグッと唇を噛み締めた。
都市伝説が何を考えているのか分からないが、四生達に向けられているのは、明らかな敵意。
見えない刃物を喉元に押し付けられているような感覚。
「そんな怖い顔をしても、容赦はしないよ! 覚悟してよね!」
一瞬、背中に寒いものを感じつつ、結季が都市伝説に突っ込んでいく。
その途端、都市伝説が動き出し、傍にあった釘バットを掴む。
だが、間に合わない。
反撃に転じようとした時には、サイキック斬りで真っ二つ!
都市伝説は断末魔をあげて、跡形もなく消滅した。
「正義感の暴走か……。僕達も気を付けないとね」
自分自身に言い聞かせ、四生が都市伝説の消えた場所を眺める。
もしかすると、都市伝説は最後まで正義の意味を理解していなかったのかも知れない。
都市伝説にあったのは、歪んだ思想。
それ故に、理解する事は永遠に無理だったのかも知れないが……。
「やれやれ……確証のない不安は碌な事にならないものなのじゃな」
疲れた様子で溜息をつきながら、アルカンシェルが背を向ける。
おそらく、人々の心から不安な気持ちが消えぬ限り、似たような事件が起こる事だろう。
それでも、都市伝説を倒していかねば、この世に平和が訪れる事はない。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年9月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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