扉の向う側にある恐怖

    作者:飛翔優

    ●朝まで耐えぬくことができたなら
     やぁ、今夜はこのスリラールームにようこそ。この部屋の中には、君が一晩を過ごすのに相応しいものが全て揃っている。
     でも、決して眠っちゃいけないよ? 何故かって? そりゃ、いるからさ。廊下に化け物がさ。
     化け物は新鮮な子供の肉がだーいすき。君なんてぺろりと……いや、確か恐怖に歪む顔も好きなんだったっけか。
     ともかく、もしも化け物がやって来たら、君は食われちまうだろうねぇ。足からじわじわと、すぐに死なないように時間をかけて……さ。
     もっとも、一晩経てば化け物は動きを止める。夜が明けるまでの一勝負、ってわけさ。
     言ったろ? その部屋の中には君が一晩過ごすのに相応しいものが全て揃ってるって。そう、全てだ。
     部屋の中にあるものを全て使って、化け物の侵入を防ぐんだ。
     あ、もちろん廊下から逃げようなんて考えるんじゃないぞ? 化け物がすぐに飛んできてしまうだろうからね。
     それじゃ、私からの説明は以上だ。健闘を祈るよ。

     ――ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドン……。
    「……嘘つき」
     扉から見て対角線上にある部屋の隅で、小学二年生の少年・コウキは膝を抱えていた。
     扉の前には椅子に机、ソファにベッド、本棚に植木鉢……部屋の中にある全ての品物を設置して、化け物の侵入を防いでいる。けれど夜明けまでは持たないことを、コウキは知っていた。
     何回繰り返したのか、もう覚えてはいないけれど……化け物の力はとても強く、全ての品物をふっ飛ばして部屋の中へと入ってくるから。
     入ってきた、その後は……。
     ――ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドン……。
    「っ……」
     体を震わせ、コウキは首を横に振る。きっと今回もダメだろう……という思いを抱きながらも、かすかな希望にすがり夜明けを夢見ていく。
     夜明けさえ訪れれば、この恐怖から逃れられる。家に帰れるはずだから。
     もっとも……ここはシャドウの作り出した悪夢世界。運の要素など入り込む余地もないスリラールーム。たとえ、謎の声が……シャドウが嘘を言っていなかったとしても……。

    ●夕暮れ時の教室にて
     灼滅者たちを出迎えた倉科・葉月(大学生エクスブレイン・dn0020)は、真剣な表情で口を開いた。
    「小学二年生の少年・コウキさんが、シャドウの作り出した悪夢に囚われてしまう……そんな光景を察知しました」
     本来、ダークネスにはバベルの鎖による予知能力があるため、接触は困難。しかし、エクスブレインの導きに従えば、その予知をかいくぐり迫ることができるのだ。
    「とはいえ、ダークネスは強敵。ソウルボード内では弱体化するシャドウであっても、です。ですのでどうか、全力での戦いをお願いします」
     続いて……と、葉月は地図を取り出した。
    「コウキさんの住む家はこの一軒家。部屋は一階の……この場所ですね。鍵などを用意しましたので、深夜一時ごろに忍び込んで下さい。部屋に入ったなら、即座にソウルボード内に突入して下さい」
     ソウルボード内は窓のない、様々な調度品が置かれている部屋の中。
    「何故その部屋の中なのか。その理由を含めて、コウキさんについて説明しますね」
     コウキ、小学二年生男子。勉強はできるが大人しく臆病なところがある性格で、ホラーものの作品が大の苦手。しかし、数日前、兄がプレイしているホラーゲームを横から覗き込んでしまい……その内容に恐怖を抱いた。
     その恐怖を、シャドウに突かれた形になる。
    「悪夢の具体的内容は、一言で表すのならば……一晩の間、廊下にいる化け物の侵入を防ぐことができたなら抜け出せる閉ざされた部屋……と言った内容になります」
     課されているルールは以下のとおり。
     夜が明ければ、安全に帰ることができる。
     廊下には化け物がいて、コウキを食べるために部屋の中に入ろうとしてくる。また、廊下に出た場合は即座に襲いかかってくる。
     化け物の侵入を防ぐには、部屋の中にある全てのものを使わなければならない。使わないかぎり、どんな工夫をしたところで部屋に侵入されてしまう。
     化け物の侵入を許したなら、恐怖を与えられた後に最初の時間に戻る。
    「また、化け物は夜が明けなければどんな方法を用いたとしても傷つける事はできません。これは、皆さんにも適用されます。ですので……コウキさんを奮起させ、悪夢の中の夜明けまで化け物の侵入を防ぐことが最優先課題となります」
     そうしてコウキを奮起させて夜明けまで守り切ったなら……悪夢を邪魔された事に腹を立てたシャドウが、配下たる化け物と共に部屋の中に入り込んでくる。
     後はコウキを守りながら迎え討てば良い、という流れになる。この状態ならば、化け物を退治する事もできるからだ。
     シャドウの力量は、配下がいる状態で灼滅者たちと五分程度。また、配下が倒れたら不利を悟り逃げてしまうといった慎重な性格も持ち合わせている。
     妨害・強化能力に特化しており、恐怖を呼び起こす闇、治療を封じる化け物の影、自らの力を高めるために闇に身を浸す……といった行動を取ってくる。
     一方、配下たる化け物の力量は低めだが、攻撃の威力がかなり高い。
     戦闘方針もまた攻撃特化で、防具ごと斬り裂く爪、治療を封じる噛み付き、噛み砕いて止めを刺す……と言った行動を取ってくる。
    「以上で説明を終了します」
     葉月は地図などを手渡し、締めくくりへと移行した。
    「誰にだって怖いものはあります。乗り越えられないことだってあります。ですが、いつかは時間が解決してくれるものも多く、本来は今回のコウキさんもそのはずだった、そう思います。しかし、シャドウに付け込まれてしまった以上、乗り越える必要が生じました。そして、それは皆さんの言葉によって、行動によってなされること……そう思います。ですのでどうか、全力での戦いを。何よりも無事に帰ってきてくださいね? 約束ですよ?」


    参加者
    ミリア・シェルテッド(キジトラ猫・d01735)
    神代・煉(紅と黒の境界を揺蕩うモノ・d04756)
    夏村・守(逆さま厳禁・d28075)
    フリル・インレアン(小学生人狼・d32564)
    ニアラ・ラヴクラフト(宇宙的恐怖崇拝者・d35780)
     

    ■リプレイ

    ●スリラールームを乗り越えよ!
    「恐怖。宇宙的恐怖。俺の崇拝するもの」
     ニアラ・ラヴクラフト(宇宙的恐怖崇拝者・d35780)が物静かに語る中、灼滅者たちは降り立った。
     白熱灯の明かりだけが頼りとなる薄暗い部屋の中。何かが置かれていた後だけが伺える部屋の隅に。
     ――ドンドンドン、ドンドンドン……。
    「はわっ」
     机や椅子など様々なものが積み上げられている方角から聞こえてくる、ドアを激しく叩くような音。共に伝わってくる振動を感じて、ミリア・シェルテッド(キジトラ猫・d01735)は肩を震わせた。
     ねこぐるみに包まれている自分の体を抱きしめながら、涙参りの瞳できょろきょろと周囲を見回していく。
     灼滅者たちが立つ場所とは反対側の部屋の隅。様々な品物が積み上げられている場所からは最も遠い位置で、一人の少年が……コウキが灼滅者たちに気づく様子もなく、膝に顔を埋める形で座り込んでいた。
     ミリアは拳を握りしめ、勇気を持って仲間たちとともに歩み寄っていく。
     さなかにも、ドアを激しく叩く音はより大きな物へと変わっていくのだけれども……。

     震えるコウキの元へと、白熱灯の光を遮らぬよう注意して歩み寄った灼滅者たち。
     ミリアは腕を震わせながら、小さくうなずきコウキの前で身をかがめていく。
    「え……」
     ようやく、灼滅者たちの到来に気づいたのだろう。コウキが、躊躇うような調子で顔を上げてきた。
     目を逸らさぬよう強い気持ちを持ちながら、ミリアはコウキを見つめていく。
    「ここは怖い物を見た時の夢、です……。えと、夢から戻ってこないから、お迎えに、来ました……です……はぅ」
     残りの説明は任せたと、ミリアは仲間たちの背中に身を隠した。
     呆然とした瞳で見送りながらも動けない様子のコウキを前にして、夏村・守(逆さま厳禁・d28075)がミリアに代わりしゃがみこんでいく。
    「ま、助っ人ってところだ。この部屋の話は聞いた事あるぜ!」
     曇りのない笑顔と共に、怯える瞳と視線を交わしていく。
    「俺等がいるっていう、今までとは違う状況になってるから大丈夫だって。全員一緒に夜明けまで頑張ろうな」
    「……」
     返答なく、コウキは視線を逸し俯いた。
     構わず、守は続けていく。
    「不安だったら片手握ってやるし、寧ろお前が女子励ましたっていい」
    「……でも」
     芳しくない反応を遮るため神代・煉(紅と黒の境界を揺蕩うモノ・d04756)が口を挟んだ。
    「安心しろ、オレ達も知恵を絞るし力を貸す。オレはこう見えて凄い力が有るんだ」
    「……」
     再び顔を上げてきたコウキの視線を受け止めながら、煉はバリケードに視線を移す。
     積み上げられていた品のうち、一番下に設置されているベッドを瞳に写し、静かな足取りで歩み寄った。
     仲間たちがバリケードを抑え始めていく中、ベッドの下に手をいれる。
     軽々と引き抜き、指一本で持ち上げた。
    「え……」
    「な? 凄いだろ?」
     ベッドをバリケードの上に積み直しながら、煉は再びコウキへと向き直った。
    「けど、それでも一人じゃできないこともある。コウキ、お前の力が必要なんだ。無事、一晩を過ごし終えるためには……な」
     コウキの見ている……シャドウの創りだした悪夢の、厄介なルール。
     部屋の中のものを全て使い、化け物の侵入を朝まで防ぐ。
     それにはコウキ本人も、新たにこの世界へと降り立った灼滅者たちも含まれているはずだ。
     ――ドンドンドン、ドンドンドン、ドンドンドンドン……。
     バリケード越しに伝わってくる、激しい振動。
     体が軽く揺さぶられていくことを感じながらも表情を変えることはなく、守は再びコウキへと視線を向けた。
    「ほら、皆とバリケード押さえにかかろうぜ。確か全部使えって話だろ? 部屋中総動員してやろうじゃん?」
    「……」
     俯きながらも、躊躇いながらも、コウキは立ち上がった。
     一歩踏み出すたび、体中を震わせる。
     少しずつ歩幅が狭くなり、やがて手を伸ばしてもバリケードにギリギリ届かぬ位置で立ち止まった。
    「やっぱ、僕は……」
     仕方ない……と守は仲間たちにバリケードを任せ、コウキのそばへと歩み寄る。
     しゃがみ込み、耳に向かって囁きかける。
    「悪い事言わないからどさくさで女子に元気下さいって頼めって」
    「……え」
    「だって野郎同士で手繋ぐのちょい悲しくね? 平気ならいいけど……」
    「……」
     頬を赤らめながら、顔を上げていくコウキ。
     バリケードの影に隠れたミリアの代わりに視線を受け取ることになったニアラは、不敵な笑みを浮かべたまま恭しく一礼する。
    「人類の最も旧く最も強烈な感情は恐怖で在り、恐怖の中で最も旧く最も強烈なものは未知なるものへの恐怖で在る。されど貴様が観るものは既知だ。既知ならば恐怖する必要皆無。冷えた感情を憤怒に変貌させよ」
    「……」
     意味が飲み込めないのか、小首を傾げていくコウキ。けれどもニアラの後ろ、ナノナノのぜろが掲げる看板、頑張れとの言葉を見て視線を落とした。
     握られていた拳は震えている。
     呼吸もどこか早まっている。
     さなかにも、ドアを叩く音は激しくなる。みしり……と、きしみ始める音も聞こえてきた。
     補強のため、フリル・インレアン(小学生人狼・d32564)は揺れ始めたバリケードを支えていく。小さな物は大きな物の間に差し込んで、安定性の補填に努めさせ……。
    「……」
     視線を感じ、振り向いた。
     顔を上げたコウキがそこにはいた。
    「……」
     ニッコリと微笑み、コウキを手招きする。
     唇を結び、拳を握り……躊躇いながらも、コウキはフリルに歩み寄った。
     腕を伸ばし、フリルの手を……。
    「あ……」
     震えていた。
     握り返した、フリルの手も。
    「……怖い時は手を握り合い自分は一人じゃないと認識することが大切です。みんなでこの恐怖を乗り越えましょう」
    「……」
     小さく頷き、コウキはバリケードへと向き直った。
     フリルと手を握り合ったまま、もう片方の手でバリケードを抑えこみにかかっていく。
     横目で見守っていた煉は安堵の息を吐きだして、本格的な押さえに移行した。
     少しずつ強くなっていく衝撃も、全員で共有しているのならば怖くない。
     音も、少しだけ小さくなった、そんな気がした。

    ●化け物とシャドウ
     腕が疲れても、足が疲れても、揺らぐことなく立ち続けた。
     もう、鼓動が早まることはない。
     跳ね上がることももちろんない。
     近くに優しい人たちがいるから、一緒に頑張ってくれる人たちがいるから、乗り越えられる!
     時に会話を行い、時に微笑み合い、コウキはバリケードを抑えていく。時間が立つに連れて大きくなっていく音に負けないように、元気な声を張り上げた。
     そして、聞こえてくる。
     鶏の鳴き声が。
     朝を告げる鳴き声が!
     同時に、腕に伝わってくる振動は止んだ。
     守は安堵の息を吐きだし、バリケードから手を離した。
    「上等! 頑張ったな、そんじゃ後は任せて離れとけって」
    「え……」
     戸惑うコウキに部屋の端へ行くよう促しながら、反対側の端へと向き直る。
     灼滅者たちが視線を向ける先、闇が二つ生まれていた。
     一つは闇色に包まれた二足歩行の獣……と言った風体の化け物へと、もう一つはシャドウへと変貌する。
     シャドウは灼滅者たちを見回して、ほっほと笑い声を響かせた。
    「いやはやお見事。その子だけじゃ、一晩も乗り越えられないと思ったんだけどねぇ」
     一呼吸の間をおいて、灼滅者たちを睨んでくるシャドウ。
     構うことなく、守は真っ黒い大百足へと変貌して走りだす。
     化け物に足を突き出していく中、ニアラはシャドウへと視線を向けていく。
    「恐怖を魅せよ。俺に道を魅せよ」
     まっすぐ腕を伸ばしたなら、黒に染まった影がシャドウへと向かい始めていく。
    「はっ!」
     気合一つで、シャドウは影をはねのけた。
     視線はニアラで固定した。
     さなかに、フリルは向かう化け物へ。
     腕を獣のものに変えながら。
    「正体がわからない恐怖がじわじわと近づいてくる感じは本当に怖いです。悪夢と一緒にシャドウさんを追い払ってしまいましょう」
     化け物の懐へと入り込み、鋭き爪を突き出した。
     肩のあたりを貫き……。
    「っ!」
     ぐんにょりとした感触を前に閉口しつつ、腕を引いて後方へ……。
    「っ、えうー、こっちに来ないでください!」
     ねちゃり、と音を立てる化け物に追いすがられギターを振り回して牽制する。
    「えと、治療します……」
     援護のため、バリケードから毛布を引っ張りだして見をくるんだミリアが符を放った。
     フリルが符を受け取り化け物をはねのけていく中、煉は大太刀の影を掲げていく。
    「安心しろ、コウキ。オレたちが終わらせてやる。この、悪夢を」
     大上段から振り下ろし、化け物を斜めに切り裂いた。
     さなかには、ぜろもまたフリルの治療を始めていく。
     一方のニアラは拳に黒き影を宿し、シャドウの懐へと踏み込んだ。
    「貴様の恐怖はどんな形で在ろうか」
     まっすぐに突き出した拳は掲げられた腕に阻まれるも、影を打ち込むことには成功。
     シャドウが若干動きを鈍らせていくさまを横目に、化け物の間合いから離脱したフリルは深呼吸。
    「うー、こ、怖かったです。ですが……」
     光輪を手元に引き寄せ、涙目で化け物を睨みつけた。
    「えっと私を怒らせると本当は怖いんですよ」
     勇気を持って、再び懐へと踏み込んでいく……。

     毛布を被って化け物の、シャドウの視線から逃れつつ、ミリアは前衛陣を霧で抱く。
     治療を施し支えながら、戦況の観察を開始した。
     自分が中心となって過不足のない治療が行えてきたからだろう。すでに化け物の動きは鈍く、徐々にターゲットはシャドウへと移行し始めていた。
     むろん、化け物に多くの呪縛を与えてきたとはいえ、両方を抑えてきた今までよりは危険度は上がる。
     だからこそより強く支えていくのだと、ミリアは拳を握りしめた。
     煉は霧の中から飛び出して、影の籠手をはめた拳でシャドウに殴りかかっていく。
    「自分が追いつめられる側になった気分はどうだ?」
    「はっ、この程度……」
    「否、貴様は想像よりも脆弱で在る」
     頬を殴られたシャドウがよろめく中、横合いの霧から飛び出してきたニアラの鋏が体を斜めに切り裂いた。
     後を追わせぬよう、ぜろがしゃぼん玉を放つ。
     衝撃に押され、尻もちをついていくシャドウ。呪縛にも囚われたか、しばしの間立ち上がろうとする様子も魅せなかった。
    「……」
     ミリアはこのタイミングなら……と影の弾丸を生み出していく。
    「も、毛布をバリケードに奪われた恨みです!」
     涙目ながらも打ち出して、シャドウの左胸を貫いていく。
    「ぐ……」
     呻き、シャドウは化け物へと視線を送っていく。
     化け物も同様、動けない。
     多くの呪縛に抱かれて……。
    「かはっ!?」
     さなか、シャドウの頭に凍てつく光弾がぶち当たった。
     凍りついていくシャドウの頭を眺め、光弾の担い手たる守は瞳を鋭く輝かせる。
    「さ、決めちまおうぜ」
    「……」
     頷き、フリルは歩み寄った。
     ギターを高く、掲げ始めた。
    「……」
    「や、やめ」
     半ばにてギターを振り下ろし、シャドウを地面へと叩きつける。
     顔を上げることも起き上がることなく、シャドウは体を薄れさせ……。
    「み、見事……お前たちのような者がいては、スリラールームなど成立するはずも……」
     跡形もなく、消滅した。

    ●光があふれ始めた部屋の中
     その後、速攻で化け物を打ち倒した灼滅者たち。
     気づけば窓から朝日が差し込む部屋へと変わっていた世界の中、フリルはへにょりと座り込む。
    「良かった、これでもう終わり……ですよね?」
    「ああ、お疲れ様」
     煉が笑みを浮かべながら、部屋の隅にいるだろうコウキへと視線を向けていく。
     頷き、近づいてくるコウキ。
     人へと戻った守は、コウキに向かってサムズアップ。
    「もう大丈夫だぜ。悪夢は去った、完全にな」
    「……うん」
     コウキは力強く頷き、笑った。
    「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん! すごく、すごく怖かったけど……でも、心強かった! もう、負けない……なんてことは言えないけど、でも、守ってみせる。もし、困っている人がいたら……怖がっている人がいたら、その人のことを、僕が!」
     それは曇りのない、太陽のような笑顔。
     恐怖を乗り越えられたコウキだからこそ誓えるコウキだからこそ浮かべる事ができる、輝く笑顔。
     大丈夫。その言葉が嘘でないことは、教えてくれている。
     光あふれ始めた、この部屋が!

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年3月19日
    難度:普通
    参加:5人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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