●最強に添いし者
「……ふん、中々面白そうだな」
テレビに映る、とあるアングラな格闘技の試合。
その試合はパイプイスで殴り合ったり、有刺鉄線に相手を叩き付けていたり……と、所謂ルール無用のデスマッチバトル。
そして、その映像を見ているのは……これまた筋骨隆々な男。
彼の頭の中は、目の前で繰り広げられるバトルにすっかり目を奪われていた。
そしてその試合は更にエスカレートしていき、流血は当たり前の世界。
テレビに映る映像を見て……そして。
「……よし。面白そうだ。ここに行けば、俺の力を振い、楽しむ事が出来るだろう……行くぜぇ!」
と、彼はタンクトップに一個のズタ袋を背中に掛けて、家を出るのであった。
「みんな、集まってくれたみたいだね? それじゃ早速だけど、今回の事件の説明を始めさせて貰うね!」
須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は、ノートを手にしながら、みんなが集まってくれたことを確認し、説明を始める。
「今回は東京都、お台場某所のとある格闘技集団に行ってきて欲しいんだ」
と言いながら、彼女が見せる写真にはプロレスリングの様なところが映っていた。
ただ、プロレスリングとは言っときながら、有刺鉄線などが周りに張り巡らされていたりして、物々しい雰囲気で。
「ここにどうやら、ダークネスのアンブレイカブルがやってくるらしいんだ。アンブレイカブルはこのプロレスリングで行われる試合の放送を見て興味を持ったらしくて、この試合で戦う人達と戦う事に興味を持ってしまったみたいなんだ」
「なので皆へのお願いは、このダークネスを倒す、もしくは強さを認めさせて、彼を満足させて帰らせることになるんだよ」
そして、続けてまりんは詳しい説明をする。
「ダークネスはバベルの鎖による予測があるけど、私の未来予測に従ってくれれば大丈夫なんだ。その方法は、自分達がそのプロレスの観客となる事か、もしくはプロレスラーとして、リングの上に登ることなんだ」
「まぁ幸い、ダークネスが来るのは真夜中……当然格闘技集団の人達はその場にいないから、プロレスリングに忍び込んで偽装工作を装えば良いと思うんだ」
「またダークネスは、プロレスリングの上で挑戦を仕掛けてくるんだ。だから皆も有刺鉄線のプロレスリングの上で戦う事になる訳で、あんまり広い空間ではないから注意してね?」
「後は……そうだね、アンブレイカブルはかなり強力な力を持ってる男なので、決して油断をしないようにしてね?」
そして最後にまりんは。
「アンブレイカブルは腕っ節が強い相手だからこそ、戦闘を楽しんで来ると思うんだ。余り挑発とかも効かないと思うけれど、それならこっちも戦闘を楽しめるようにすれば良いと思うんだよ!」
と言って、そして。
「絶対にみんなが勝利を収めて帰ってくると信じてるから、だから頑張ってね!! っきゃぁ!?」
と、最後はいつもの通り、ずっこけるのであった。
参加者 | |
---|---|
三十日部・牛肉(動かざる事牛の如し・d00142) |
南・茉莉花(ナウアデイズちっくガール・d00249) |
大堂寺・勇飛(三獅村祭・d00263) |
天瀬・空人(高校生ストリートファイター・d03118) |
水心子・真夜(剣の舞姫・d03711) |
ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954) |
織元・麗音(ピンクローズ・d05636) |
坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041) |
●闇のリング
まりんの事件の話を聞いた灼滅者達……彼らが向かうのは、お台場のとあるプロレスリング。
時間は深夜……当然周りには人の影もほとんど無く、静けさに包まれている。
「しかし戦ってりゃ楽しい、ね……はた迷惑な話だが……あながち嫌いでもない……んだよな、そういうのは……」
「ああ。戦いに己の居場所を求めるのは悪くはない。が、行き過ぎた行為は見逃す訳にはいかねぇ……みせてやるよ。俺なりの戦い方って奴を。俺の歌で感動させて、戦意を無くしてやらぁ!」
坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041)と、ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)の二人の会話。
対峙する敵は、戦いへの執着心が強い存在、アンブレイカブル。
ただただ戦いを楽しみ、そして満足すれば帰っていくという……はた迷惑な存在。
そんな彼の気持ちは、アンブレイカブルを宿命に持つ者達である仲間達も理解は多少出来る訳で。
「まぁ、強い奴に戦いたい気持ちはわからんでもないな……」
「ええ。戦う事が楽しみな強敵……なら、今宵は十分に満足させてもらってからご退場願おうかしらね♪ 私も日頃の鍛錬の成果を試させて貰う為に、全力を出させて貰うわ!」
と、大堂寺・勇飛(三獅村祭・d00263)と、水心子・真夜(剣の舞姫・d03711)が心を奮わせ、更に織元・麗音(ピンクローズ・d05636)も。
「ふふふ……私は戦えれば何でも良いと言えば良いのですけれど……やはりこういうお仕事が一番良いですね。ふふふ、とても楽しみです♪」
と嬉しそうに笑う。
……そうしている内に、灼滅者達はそのプロレスリングの入る建物へと到着。
当然この時間とあらば、観客も居る訳が無いし……鍵も掛かっている。
「さーて、皆さん、準備は良いー?」
「ええ……初依頼、やれる事をしっかりこなさせて貰いましょう」
南・茉莉花(ナウアデイズちっくガール・d00249)に天瀬・空人(高校生ストリートファイター・d03118)が頷くと……。
「あぁ、そうだぁー」
三十日部・牛肉(動かざる事牛の如し・d00142)が突然思い出したかの様に声を上げる。
「ん、どうした?」
と空人が聞き返すと。
「電流爆破系の団体って、私服っぽい格好でリングに上がっても大丈夫だよねぇ? ぴったりコスチュームはやだなぁ」
「……んー。そうねぇ。まぁその辺りは別に関係無いんじゃないかしら? だって……戦闘狂だしね」
「そうだな……戦えればそれで満足だろうから、服装までに執着はしていないだろうさ」
牛肉に真夜、空人が答えている間に……カチャリとドアを開ける。
そして息を潜めながら中にはいると……どん、ど真ん中に配置されたプロレスリング。
有刺鉄線で囲まれたそのプロレスリングは、普通のプロレスリングとは全く違う物々しい雰囲気。
「……このデンジャラスなリングは、さすがにどうかと思うんだがな。オレは正当なリングで戦う、まっとうな試合が好きだしなぁ」
「全くだな……さて、と、それじゃどうする?レスラー役は……空人、勇飛、真夜、麗音だったか?」
と未来が確認するように言うと。
「ああ! あ、俺はちょっと考えが在るんでな、後から仕掛けさせてくれ」
「私も同じく……ちょっとカッコイイ登場をしてみたくて、ね……いいかな?」
勇飛と真夜の言葉に。
「了解。じゃ俺と麗音で試合をしつつ誘い込む……と、言う事で」
「ええ、分かったわ♪」
そう言葉を交し、頷き合うと共に。
「それじゃー早速始めよー♪」
茉莉花は有刺鉄線の周りに並べられたイスにちょこんと座る。
麗音、牛肉、そして未来も……いつの間に用意した飲み物とポップコーンを手にして座るのであった。
●力の臭い嗅ぎ付けて
「さぁて、と……私のお相手は、貴方かしら? 少しは楽しませてくれると嬉しいのですけれど……ふふ、果たしてどうかしら?」
「ふっ。減らず口叩いている暇なんて無いぞ。その鼻先をへし折ってやろうか?」
そんなおきまりの売り言葉に買い言葉を大きな声で叫ぶ麗音と空人。
有刺鉄線に囲まれたリング……その上で戦う二人のレスラー……という舞台設定。
そんなレスラーの二人を、観客として周りから見渡す四人の灼滅者達……といった雰囲気。
男対女という戦いは余り無いものの、地下リングだからそういうのもあるだろう。
とは言えそんな言葉の応酬から組合。ぶん投げたり、腕ひしぎをして苦しめようとしたり。
そんなバトルを眺めつつ、ポップコーンをぽりぽり食べてる未来。
……そうしていると……。
『おうおうおう、面白そうだな!』
入口から、笑みを浮かべて侵入してくる、アンブレイカブル。
そして彼はそのままリングへと向けてカツカツと歩いてきて……。
『面白そうな戦いじゃないか! さぁ楽しませてくれるだろうか?』
と言いながらリングイン。
そんなリングインする彼に対し……空人は。
「ふ……このリングはルール無用のリングだ。数の差があろうとも、卑怯などとは通じないが代わりに、貴様がどう戦おうとも受けて立とうじゃないか」
『あぁん? 勿論だ!! 戦えるならば、どんな奴でも受けて立ってやるぜ!』
ニヤリと笑う戦闘狂の彼。
と、そこに……。
『ブゥゥン……!!』
その場に響く、バイクのエンジン音。
それと共にライドキャリバーに乗ってリングへとやってくる真夜、勇飛……リング傍までやってくると、ぴょん、とジャンプ、クルクルとその身を回転し、すたっ、とリングに立つ。
「さぁ、逝こうか!!」
ずびしっ、と勇飛がアンブレイカブルを指差し、そしてスレイヤーカードを解除。
その動きに合わせて、次次と。
「厳密な占いの結果、今日のあなたの試合の運勢は超バッド! そんなあなたのアンラッキーアイテムはこの私達だよー☆」
「1 on 8の変則マッチだが、お前にとって喰い出はある筈だ。さ、Show dawnと行こうか……Mr.Unbreakable!」
「剣術対徒手空拳の異種格闘技戦だけど、卑怯なんて言わないわよね? いざ、剣の舞姫が参る、なーんちゃってね! 逃げるだなんて言わないでよ!」
茉莉花、未来、真夜もそんな言葉を宣告しながら、スレイヤーカードを次次と解除し、戦闘態勢を整え、リングインも次次としていく。
そんな灼滅者達の動きに、アンブレイカブルは。
『はははは! こういう戦いも面白いじゃないか! さぁ行くぜ!』
ズタ袋をひょいっと放り投げて、先手で仕掛けてくるアンブレイカブル。その拳を大きく振り回して勇飛へとまずは殴りかかる。
「っ!」
その一撃はかなり素早い一撃、だがバックステップでぎりぎり回避。
『ほぅ……ちょっとはやるみたいだな?』
「当然だぜ!! さぁ……漢が魂を込めた拳には、不可能なんてねぇんだよ!!』
勇飛が鋼鉄拳で反撃で殴りかかる……が、その一撃を片手でガード。
『甘い……止まって見えるわ!』
「くっ……」
唇を噛みしめる勇飛……それにすぐさま連携して。
「さぁ、楽しい楽しい殺し愛のお時間ですよ?」
「今代が剣の舞姫の舞、篤と御覧あそばせ♪」
麗音はドラゴンパワーで己に盾を付与しつつ、真夜は影喰らい、空人は閃光百裂拳で攻撃。
前衛陣が次次と攻撃する一方。
「さぁ、俺の歌を聴きやがれぇぇええ!!」
と叫びながら、ギターを掻き鳴らしながらファルケはディーヴァズメロディ。
……その歌は少々、というか……結構な音痴。
その歌を聴いて……なんだか未来も。
「……何だか、あんまり歌いたくないけれど……そうも言ってられないしな……」
勇気づけられた様な気が……しないでもない、というのは本心な訳で。
とは言え彼女もサウンドソルジャー、歌で戦う者な訳で……目を閉じて鏖殺領域を展開し、奏でる。
そして、続けて牛肉、茉莉花が。
「いっきまーす、どっかーん!!」
牛肉は抗雷撃で、茉莉花は。
「えーい! ……あ、これはずるいとか卑怯とかじゃ無くて、そう、ヒールのプロレスなんだよー!」
と言いながら遠距離からのブレイジングバーストで攻撃を嗾ける。
また、先ほど乗ってきた勇飛、真夜のライドキャリバー達は、勇飛が機銃掃射で敵の足留めを行い、真夜のはキャリバー突撃で猛攻を仕掛ける。
アンブレイカブル一体に対し、灼滅者達8人の総力攻撃。
本来であれば、圧倒的不利な戦闘状況の筈。しかしアンブレイカブルの顔には……僅かな笑みさえ浮かんでいて、この戦闘を楽しんでいる様で。
『楽しいじゃねぇか、こういう戦いも面白いぜ!』
そう言いながらも、次のターン以降、思う存分拳を振い……かなり強力な一撃を次次と叩き込む。
対する灼滅者からの攻撃は、持ち前の頑丈な体躯で、回避よりは受け止めるという対処をしていく。
「本当頑丈な奴だな……でもよ、それが楽しいって事もあるよな!」
『ああ! 楽しいぜ!!』
勇飛の言葉に頷くアンブレイカブル。
一進一退の攻防が、刻一刻と続く……そしてその戦場を、ファルケと未来の歌声が響いていた。
そして10ターンは軽く超えた頃。
「はぁ……はぁ……」
『っ……く、や、やるじゃねえかホントによぉ!』
「……ええ、当然ですわ」
「ああ、こっちも楽しいぜぇ!」
麗音とファルケの言葉に、アンブレイカブルも笑みを浮かべる。
心の底から、この戦いを楽しんでいるのだろう、というのはよく分かる。
とはいえどちらも既に体力はかなりの疲弊に及んでいるのは間違い無い。
防御出来ていた攻撃も、次第に直撃を喰らうようになってしまう……そしてそのダメージは。
「すまん……牛肉、回復に回って貰っていいか?」
「ん? りょうかーい。それじゃ前はお願いねー、茉莉花ちゃん」
「了解だよー♪」
そんな短い会話と共に、牛肉がキャスターからメディックの位置に移動し、未来と強力してエンジェリックボイスで連携回復、前衛で彼の攻撃を受ける仲間のダメージを回復して、戦線は維持し続ける。
そして……。
「よーし、そろそろ一気に仕掛けようぜっ!」
ファルケがギターをより一層掻き鳴らし、威勢を付けると共に。
「さぁさぁ我が打ちし刀の斬れ味を、篤とご賞味あれ♪」
真夜が渾身の力でもって、華麗に動きながらの雲櫂剣。
それに続け麗音も龍翼飛翔をメインにして、勇飛、空人も連携しながら縛霊撃、閃光百裂剣。
前衛陣の猛攻に、疲弊しているアンブレイカブルは攻撃を交わせなくなりつつある。
「ろけっと!!」
「……墜ちな」
と、牛肉のロケットスマッシュ、未来のパッショネイトダンス。
茉莉花もギルティクロスで攻撃をし、そしてファルケがポールによじ登り。
「俺の熱い情熱の歌を、この一撃に込めるっ!!」
渾身のご当地キックが、ポールからずさっとキック。
『うっ!!』
後方に吹き飛ばされ、有刺鉄線がその身体を蝕むと。
「……その隙、頂く……そしてくれてやるよ、これが俺の一撃、だ……!」
空人がそのタンクトップを握りしめ、地獄投げで彼の身体を地面へと叩き付けると。
「せめて祈ろう。汝のオモイに救いあれ!!」
と勇飛も連続しての地獄投げで、その身体を地面へと叩き付けて。
『う……っがああああ!!』
断末魔の叫び声と共に、その身体は消えていったのである。
●力認めし者
「……どうにか、ギリギリ勝てたみたいだな…………どうだ、楽しかったかい? Mr.breakable」
ふぅ、と息を吐いて……緊張を解いていく未来。
周りの仲間達も同様に解除していく。
「ふー……満足して帰ってくれたかな? まぁ勿論結果は、リングの上でみんなで大勝利じゃなきゃねー☆」
「そうだねぇ……うーん……みんな無事だよね?」
「ああ……まぁ何とかな」
茉莉花に牛肉とファルケの言葉……そして一方麗音は。
「もうちょっと戦いたかったですねぇ……こちらも結構ギリギリでしたけど、こういう戦いこそが楽しいものですのに……」
「……そうだな。俺も確かにに……戦闘中は何処か楽しかったしな。まぁとは言えダークネスとは、まだまだ実力差はある、という事か……」
「そうね。こっちもまだまだ鍛錬しなきゃいけないって事ね……うん、頑張るわよ!」
勇飛に真夜が拳を振り上げ、気合い一杯に声を上げる。
そして。
「まぁ無事勝利出来た訳だし、せっかくだから俺の歌でエンディングでも行こうかね?」
「……いや、別に気を遣わなくていいぞ……」
ファルケが歌おうとするのを止める未来。
……サウンドソルジャーの能力を持つのに音痴な二人……妙な親近感を感じつつも、でも勝利の舞台にあの歌は……。
「えー? ダメかい? まぁ……仕方ないかぁ」
「ああ……今度の機会に聞かせて貰うな」
空人も一言加え……それに周りの仲間達もうんうんと頷く訳で。
「さーてと、それじゃぁ帰りましょー。余り長い時間いると、見つかっちゃいますしねぇ」
「そうだねー。帰ーろ帰ろ☆」
牛肉が促し、茉莉花が先に入口へ。
……周りに誰も居ない事を確認してから、みんな揃ってその場を離脱……しっかりと再度鍵を掛ける。
空はほんのり明るくなりつつあり……そして電車も丁度走り始める時間帯。
「さて、と……それでは皆さん、お疲れ様。また機会があれば宜しくね!」
真夜の別れの言葉に、皆も頷いて……帰路へとつくのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年10月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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