穢された十字架

    作者:相原あきと

     そこはとある外国人墓地だった。
     曇天の空の下、喪服姿の参列者達が一様にうつむく。
     すでに死者は埋葬され、神父が最後の祈りを捧げている。
     だが、参列者の誰が気が付いただろう。
     いつの間にか神父の服が真っ白な神父服へと変化していたのを。
     いつの間にか神父の手に巨大な十字架が担ぎ上げられ、今にも振り下ろされようとしている事を。
     いや、正確には気が付いていた者もいたかもしれない。だが、誰もが動けなかったのだ。
     参列者の誰もが、途中から絶対的な王者の顔色を伺う従順なしもべになったように、神父の「目を瞑り、俯き、祈りなさい」の言葉だけに従わざるをえなかったのだから……。
    「あなた方の家族だけを死者の国へ向かわせるのは心が痛むでしょう。大丈夫、皆平等に死の世界へ導いてあげます」
     白い神父はブンッと十字架を振り降ろし、無気力状態の参列者達の頭を叩き潰し、次から次へと撲殺していく。
    「ふふふ、神は誰にだって平等です」

    「みんな、六六六人衆の1人、クラウド神父っていうダークネスの動きを掴んだわ!」
     教室に集まった灼滅者達を見回しながら鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が宣言する。
     思うがままに殺人を繰り返す六六六人衆、その中で白い神父服を着て十字架を振り回すダークネスがおり、その者は自らのことをクラウド神父と呼称しているらしい。
    「今回、みんなに向かって欲しいのはとある都市の外国人墓地よ。そこでクラウド神父は事件を起こすの」
     平地に整然と墓が並んだ外国人墓地、そこで葬儀が行われているらしいがクラウド神父は本物の神父に成り代わり、参列者を皆殺しにすると言う。
     灼滅者が到着した時、神父の前には10人ほどの参列者がおり、放っておけば全員が殺されると言う。
    「参列者の人たちは、無気力状態というか……何をするにも神父の顔色を伺ってから判断するみたいで……ちょっと避難とかには手間取ると思う。だから――」
     珠希は一度唇を噛むと、強い語気で宣言する。
    「だから――10人中、せめて8人は助けて……」
     2人の被害は仕方がないと、そう割り切って欲しいと珠希は言う。
     灼滅者が到着すればクラウド神父は攻撃してくるだろう。その際、神父が一度攻撃すれば2人は確実に巻き添えになると言う。そうならない為に良い手を講じられれば良いのだが……正直、一般人を避難させずに敵を取り囲む程度の作戦では、結局被害が出てしまうだろう。
    「クラウド神父は前にも発見した六六六人衆なんだけど、今までの間に何かあったのか前とは違う武器……というか攻撃方法が変わっているわ」
     前は殺人鬼とシャウト、そして龍砕斧と魔導書に似たサイキックを使ったらしいが、今回は殺人鬼とシャウトとそしてクロスグレイブに似たサイキックを使ってくると言う。
     また、武器が変わったせいか前と同じ戦術は取らないらしく、戦闘時のポジションもクラッシャーとのこと。
     性格は冷静で臆病、クールにですます調で話しかけてくるタイプ、能力値はフラットでどれが特化しているわけでも無い。
     敵は灼滅者達が手強く自らが不利だと悟ると逃走すると言う。被害を最小に止めつつ敵を撤退させられれば……。
    「今回の目的はあくまで被害を2割にとどめること……でも倒せない敵でも無い、とは言っておくわ」
     複雑な表情の珠希。つまり、被害を無視し灼滅に専念するのも選択の一つ、ということだ。もちろん被害を押さえ灼滅できるのが一番ではあるのだが、無策でそれができるとは思わない方が良い。
    「クラウド神父は序列六一六位、現場に行く皆の判断とアイディアに……期待するわ」


    参加者
    ヴェルグ・エクダル(埋み火・d02760)
    杜羽子・殊(嘘つき造花・d03083)
    空井・玉(リンクス・d03686)
    槌屋・透流(トールハンマー・d06177)
    太治・陽己(薄暮を行く・d09343)
    深海・水花(鮮血の使徒・d20595)
    エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)
    城崎・莉々(高校生エクソシスト・d36385)

    ■リプレイ


     曇天の空の下、外国人墓地の墓石の合間を縫うように5人の灼滅者が一般人を2人ずつ抱えひた走る。
     彼らは六六六人衆の殺戮を止める為にここに来た。実際、墓石を遮蔽に迅速に対象へ接敵し、被害者となる10人と敵の間に割って入るまでは想定通りだったが、ヴェルグ・エクダル(埋み火・d02760)が王者の風を使い「神父の言葉に耳を貸すな」と命令するも、一般人はヴェルグと六六六人衆の顔をオロオロと見比べるだけで――。
     効果がすぐに得られないと即断した灼滅者たちはヴェルグと太治・陽己(薄暮を行く・d09343)、城崎・莉々(高校生エクソシスト・d36385)、そしてサーヴァントのライドキャリバーとウィングキャットを残し、それぞれが2人ずつ一般人を抱え撤退を開始したのだった。
     撤退する5人の先頭は深海・水花(鮮血の使徒・d20595)。事前に敷地内の情報を得ていたおかげで墓地周辺の木々が立ち並ぶ場所へ最短距離で到着する。
     六六六人衆と離れたからか判断力を回復させつつある一般人たちが「何が起こっているのか?」と聞いてくるが、長々説明する時間は無い。
    「アンタ達を助けに来た。早く逃げろ!」
     槌屋・透流(トールハンマー・d06177)が手短に説明し、後は自分たちでさらにここから離れてくれと促す。
     墓地の中心地からは足止め班と六六六人衆が戦う剣撃や銃撃に混じりエグゾースト音も響いてくる。空井・玉(リンクス・d03686)が表情を変えずピクリと反応する。あれは自分のライドキャリバー・クオリアの音だ。どうやら苦戦を強いられているようだが……――。
    「わたしが生きる証明を」
     玉の思考を断ち切ったのは杜羽子・殊(嘘つき造花・d03083)の殲術道具の解除コード。
     殊はカードから解放した解体ナイフ散華を構え短く皆へ言う。
    「行こう。一般人の救出は完了したし、あとは……」
    「序列六一六位のクラウド神父を」
     エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)が殊の言葉を引き継ぐようも言葉を被せ。
    「此処は墓地だし、神父を埋葬するには丁度いい」
     5人は墓地の中心地へ向かって再び走り出す。


     一般人の救出という点に置いて灼滅者達の選んだ作戦は最も確実な作戦だったと言える。故に誰一人として被害を出さずに避難させることができたのだ。だがその作戦のリスクは……。
    「ふふふ……死ぬ順番は決めずとも良いですよ?」
     十字架を担ぎながらクラウド神父が言う。その前には回復仕切れぬ傷から血を流し、それでも立ちはだかる足止め班達がいた。
     神父は全員で当たってやっと倒せるか否かの強さだ。それを半分以下の戦力で足止めするのはさすがに厳しい。余裕の声音で神父が言葉を続ける。
    「全員まとめて殺して差し上げます。神は誰にだって平等ですから」
     その言葉にピクリと反応するは、壁役に徹する仲間をアルと共に癒し続ける莉々だ。
    「何を愚かな――」
     大きな目でキッと神父へ嫌悪感をぶつけ莉々は続ける。
    「人々が苦しむ事を、主が望んでいるとでも?」
    「だから平等に死という解放を与えるのでしょう」
    「違うっ! 主が与えたいと思ったのは楽園――人々がより良く生きるため――」
     ガシャン。
     莉々が語っている途中、神父の持つ十字架に銃口が開かれ無遠慮に莉々へと向けられる。ニヤリと笑う神父。
    「(避け、られ――)」
     スローモーションのような風景の中、莉々は覚悟を決める。かくなる上は闇堕――。
     その瞬間、ぐっと腕を引っ張られ視界が誰かの背で埋め尽くされ、ドンッという重たい発砲音が続く。
    「まだ……覚悟を決めるのは、早い、ぞ」
     ピンチになるのはまだ早いと、莉々を庇った陽己がそう呟き、そのまま不可視のシールドを張り神父を弾き飛ばす。だが、さすがの痛みに膝を折る陽己。
    「1分は稼ぐ、回復は任せるぞ」
     そう言って神父へ飛びかかるはヴェルグ。
     何も言わず治癒を開始する莉々に陽己が言う。
    「仲間を、信じろ」
     一方、神父と1対1で戦い出したヴェルグは神父と同じくクロスグレイブを振り回し戦うも戦力差は歴然だった。玉のライドキャリバーも連携してくれているがすぐに防戦一方となる。
    「1分と言わず、30秒も持てば誉めてあげますよ?」
     声とは裏腹に攻撃の速度と苛烈さを増す神父の十字架。
     慣れぬ武器も相まって口数無く必死に捌くヴェルグ。
     25秒目。
     ガッ、と神父の蹴りがヴェルグのクロスグレイブを宙に蹴り飛ばす。思わず手を伸ばすも届かず、チクリと殺気に神父を見れば、十字架を振りかぶる残忍な六六六人衆と目が合う。
     ――持ちませんでしたね。
     そう神父の口が動いた気がした。ヴェルグの脳天へと振り下ろされる十字架。
     ザシュ! 
     大地を抉るような音がして……いや、言葉の通り、神父の十字架は墓地の大地を抉っていた。
    「間に合ったね」
     声の主に顔を向ければ、そこには淡い青色の髪の少女がヴェルグを抱え存在した、一般人の避難に向かっていた空井玉だ。
     無傷では無い所を見ると、ぎりぎりでヴェルグを庇ったのだろう。
     玉の傍にライドキャリバーが寄り添い待っていたとばかりにエグゾースト音を響かせる。
    「行くよクオリア。為すべき事を為す」
     ヴェルグや陽己達前衛に小光輪の盾が飛び回復を促す。
    「チッ」
     わずかに呆然としていた神父が舌打ちと共に跳躍、先ほどまでいた場所をエリノアの槍が貫く。
     そして次々と現れる灼滅者達。
    「おい神父、30秒はとっくに経ったぜ?」
     ヴェルグが再びクロスグレイブを拾い構え言えば、対する神父の表情は苦虫を噛み潰したかのよう。
     全員合流した灼滅者達の中から透流が歩み出る。
    「……また会ったな、くそ神父」
    「おや……確か前に、闇堕ちゲームをやった際にいた子羊の1人、でしたか」
     何かを思い出したか透流が僅かに表情を曇らせ。
    「ああ、そうだ。今度こそぶち抜いてやる、覚悟しろ」
     言葉と共にその身に纏うダイダロスベルトを展開、意志持つ帯が一斉に神父へと降り注ぐ。だが、十字架を盾に僅かなステップで回避する神父。
    「連携するよ」
     透流の横に殊が並び同じくレイザースラストを発動、降り注ぐ帯の雨が倍となりさながら鳥籠のようになる。
    「お、のれ……この程度!」
     傷を受けつつ十字架を頭上で回転させ帯の群を弾き飛ばす神父。だが鳥籠が解除されると共に、今度は神父の頭上から十字架が振り下ろされる。
     ドガッ!
     咄嗟に十字架で防ぐも足が大地にめり込む。
    「神に仕える者として、あなたの行いは決して許せません」
     それは水花だった。
     退魔用に洗礼された蒼銀の銃刃――Lacrimaを構えたシスターがいた。
     水花の目に、クラウド神父に過去が重なる。
     あの日、あの時、ダークネスとなった神、父が……そして――。
     水花は高ぶる気持ちを押さえるように自然とお守りのイヤーカフスに触り、そして手に持つ十字架でクラウド神父を指差す。
    「神の名の下に、断罪します!」


     戦いは全員が合流した事で一進一退の攻防が続く……かと思えたが、決して灼滅者有利で推移はしなかった。
     ここに来る途中、誰かが言ったようにクラッシャーの神父に対して効果的な戦術は短期決戦だ、しかし灼滅者達は一般人の救出を優先した事で、灼滅優先の戦術はとれなかったのだ。故に――。
    「これで2匹目ですね」
     神父の放ったどす黒い殺気の波に、耐えられなくなったライドキャリバーが動きを停止し大地に転がる。すでに先ほど狙い撃ちされたウィングキャットが消滅しており、これで残るは灼滅者のみ。
     回復役が減り優先的に治癒に回ったのは玉だ。標識を黄色に換え仲間たちに癒しを与える。事前にメディックとの連携まで計算に入れていたおかげでその立ち回りは無駄が無く戦線が再び維持される。
    「ぶち抜く!」
     一方、全力で攻撃し続けるは透流だ。口癖の言葉と共に炎の弾丸をガトリングガンで連射する。流れ弾が墓の付属品を破壊しようとその銃口は神父を追って乱射を続ける。
     そんな風景を見て心の中で頭を下げるは莉々だ。目的上どうしても仕方がない部分はあるが、それでも……とは思う。
     莉々は盾役と回復をこなす玉をラビリンスアーマーで治癒しつつ、何度目かの神への祈りを口に……。
     だが、それをあざ笑うよう神父が口を開く。
    「神は誰にだって平等です、あなた達の次は先ほどの10人を殺してさしあげます。だから、安心して逝って下さい」
     シュンッ!
     気持ちよくしゃべる神父の頬を刀身に菊の華が彫られたナイフ――殊の散華が掠る。スウェーでぎりぎり回避していた神父だが、散華を持つ殊の狙いは二の手、炎を纏った蹴りが神父の背に叩き込まれる。
    「神の名のもとになんて……バカみたい」
     ズザザっと立ったまま地を滑った神父が、追撃してくる殊のナイフを回避しジロリと睨む。そこにコンビネーションで飛び込んでくるはエリノア、殊のナイフの連撃にさらにエリノアの槍が加わる。
    「だいたい、1年以上経って、しかも闇堕ちゲームで勝っているのに序列に変化なしって可笑しくないの」
     連続で刺突を繰り出しつつエリノアが言う。
    「もしかして闇堕ちゲームの後に大ポカでもやらかして上げた序列を下げでもしたのかしら?」
    「!?」
     あまりの言葉に動揺する神父、何とか殊のナイフは十字架で受け止めるも、エリノアの槍から発せされた冷気のつららに脇腹を貫かれる。
    「ふんっ」
     エリノアが槍を引き同時に殊と共に後ろへ跳躍。瞬後、現れた水花の周囲に帯がひらめいたかと思うと、上から左右から一斉に神父へと伸び――。
    「裁きを受けなさい!」
     水花の言葉と共に帯達の先端が神父へと突き刺さる。
    「私は失敗などしていない……堕とした子羊が再び灼滅者に戻った事も、慎重に動き過ぎゲームに乗り遅れた事も……」
     十字架で自身に刺さった帯を振り払い、神父が手で髪をオールバック気味にかきあげながら言う。
    「神は誰にでも平等のはずです! もちろん、この私にも!!!」
     神父の持つ十字架が内側から発光を始め、その節々から光が漏れ輝く。
     危険を察知し即座に動くは盾役の3人、急ぎ前へと立ち塞がると同時、神父の十字架から多数の銃口が開き、オールレンジにレーザーが乱射される。
     光が収まった時、倒れなかったのは玉だけだ。ヴェルグと陽己は足止め時の傷がたたったかバッタリと倒れ伏す。
     幾つもの小さなクレーターが出来き、破壊された墓石も数知れず。
    「さて、1人も殺せませんでしたが……私は臆病ですので」
     2人倒れた事で陣形が崩れた、そこを狙い逃走しようとする神父。
     だが――。
     ドスッ。
     神父の胸からバベルブレイカーの杭が生えていた。
    「わかって……言ってるんだよな。神は平等ってのは、平等な死を与えるって意味とは違う」
     ズルリと引き抜き杭の、言葉の主を振り向く。
    「だいたい、お前のやってる事は、全く、平等でも、何でも無い」
     それは肉体の傷を魂の力で凌駕し、再び立ち上がったヴェルグであった。
    「ッ!?」
     驚きの表情のまま慌てて逃げようと走り出す神父だが、崩れた陣形の穴はすでに埋められていた。そう、そこに立つは、太治陽己。
     ヴェルグと同じく凌駕した男。
    「かつて、死こそが救済だと嘯く奴がいた……だが、お前の言葉は奴より軽い。少なくとも、お前のように薄っぺらでは無かったからな」
     陽己が武器を再び構え宣言する。
    「神は平等だと言うのなら……お前も、死ぬべきだろう、否、殺されるべきだ」


     撤退を阻止された所から目に見えてクラウド神父に余裕が無くなっていた。
     逆にそれは灼滅者側のチャンスでもあり――。
     暗き闇の中で魔力の血が脈打ち、そして広がった領域から影が神父を掴み縛りあげる。
     領域の始まり――玉を睨み十字架で影を殴り散らす神父だが、自由になったその顔に影が落ちる。
     轟ッ!
     見上げ、跳躍して迫っていたヴェルグに気が付くと同時、燃える脚で横ッ面を蹴り飛ばされる。
     十字架を大地に突き立て耐える神父だが、その動きが止まった一瞬に背後の死角へ回っていた陽己の黒死斬が決まり膝を付く。
     灼滅者は神父の隙を見逃さなかった、一気呵成に攻撃へと転じたのだ。
    「なぜです神よ! 私はまだ、殺し足りないっ!」
     周囲を見回し囲みの突破を図ろうとする神父。
     だが即座に水花が立ち塞がる。
    「あなたの行為は神の名を穢すもの、決して許しません!」
     ジャッジメント・レイ!
     水花の手が振り下ろされ、同時に悪しき者を滅ぼす裁きの光条が神父を貫く。
    「グッ……私は、私は――ああああっ!!」
     神父が叫ぶと共に衝撃波のように殺気が放たれ、それは後衛の灼滅者達へと襲い掛かる。
     しかし後衛3人の前に壁役の3人が立ち塞がり守り抜く。
     ドササッ、さすがに昏倒するヴェルグと陽己、玉だけは何とか魂の力で踏み止まるが……。
    「おお、神よ……やっと、道が開かれました!」
     逃亡の糸口を見つけた神父が一目散に逃げようと――。
    「慄け咎人」
     冷たく響くエリノアの声。同時に槍が神父の胸を背から貫き、その身体を大地に繋ぎ止める。
    「グアアアアアッ!」
    「今宵は、お前が串刺しよ!」
     ジタバタと槍を抜こうとする神父だが、エリノアは決して離さない。
     そんな神父にゆっくりと近づき莉々が問う。
    「神父。私も主の僕ですが――何故、あなたは人間を殺すのです?」
     誰でも良いのか、基準があるのか、何か理由があるのか……。
    「それを言うなら、あなた達こそなぜ私達ダークネスを狩るのです!?」
     逆に問いかけてくる神父。
    「なぜ……ですか、達成感? 存在意義? いいえ、私は、主の約束された世が欲しい」
     莉々の答えに神父が笑う。
    「全ての子羊を殺す事、それこそ私が望む神の世界です」
    「……あなたは、主を……何も解っていない。殺害は律法に反する行為、故に、あなたを排除します」
    「いいえ! 神は! 誰に対しても平等なのです! どんな子羊にも本当の世界を見る権利はある! その為に私は――」
     ふと、大地に貼り付けにされた神父の顔の前に誰かが立つ。殊だった。
    「神も悪魔もいるわけない。いるのは人と、ダークネスだけ」
     神父の前で殊が告げる。
    「殺しも、貴方がやりたいから、やるだけ。そして殺すなら……殺される覚悟も、あるよね?」
    「わ、私は――」
     殊のナイフが煌めき、莉々の、水花の帯が四肢を、エリノアの、玉の攻撃が一斉に放たれ……。
    「殺したいってだけの奴が大仰な理由をつけやがって……前に会った時から気に食わなかったんだ」
     ボロボロの神父にガトリングガンを突きつけ透流が言う。
    「神が平等だって言うのなら、手伝ってやるよ……貴様から先に逝け! ぶっ壊れろ!」
     ガガガガガガガガガガッ!
     そして盛大な音が止んだ時、そこにはボロボロの白い神父服だけを残し、六六六人衆は塵と消えていた。
     六六六人衆序列六一六位、通称クラウド神父……灼滅、完了。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年4月1日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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