名古屋七大決戦～偉大なる礎たる男

■リプレイ

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　濃尾平野――その軍勢と向き合い、最上川・耕平（若き昇竜・d00987）が呟いた。
「さて、一大決戦だね。絶対逃がすものか」
「敵も必死。でも、私達も必死よ。灼滅への道は険しくとも、この好機を逃す訳にはいかないのだから」
　小柄な体で仁王立ちする忍長・玉緒（しのぶる衝動・d02774）の言葉に、海藤・俊輔（べひもす・d07111）が笑っていった。
「お互い背負ってるモノがあるからねー、負けられないのはお互い様ー」
　向こう側――ザ・グレート定礎側の気迫も、彼らは感じ取っていた。まさに、背水の陣。行くも地獄、戻るも地獄――ならば戦う地獄を選んだ、そういう気迫が。
「まさか、地元でこんな戦いになるなんてね」
　ひりつく空気の中、備傘・鎗輔（極楽本屋・d12663）がこぼす。その隣では、じっとシグマ・コード（フォーマットメモリー・d18226）が息を潜めていた。
「後がいると思うと前だけに集中できるな」
　狩りでいえば、集団で行なう狩りだ。狩るべき首は、向こうの戦陣の奥――まずは、そこへ向かわなくてはならないのだ。
「俺達に任せろ、シグマくん達の邪魔はさせない」
「そうですねぇ」
　勇弥の言葉を、隠仁神・桃香（高校生神薙使い・dn0019）が肯定する。これは、ただの激突ではない。軍勢対軍勢、大規模な戦争における戦場の一つに等しい戦力のぶつかり合いだ。
「サポートを入れれば総数8０人ほどですか」
「ああ、正面からやるのは厳しくても突破はできるはずだ」
　霈町・刑一（本日の隔離枠　存在が論外・d02621）のカウントに、インカムを装着しながら銀城・七星（銀月輝継・d23348）が告げる。
　両軍の緊張は、もはや限界に来ていた。定礎怪人やペナント怪人、刀剣怪人達の最後尾で、ザ・グレート定礎が右腕のハンマーを頭上に掲げる。
　それを見て、霧島・竜姫（ダイバードラゴン・d00946）もその右腕を頭上に上げた。
「――いざ、尋常に！」
　ザ・グレート定礎の宣言が、雷鳴のように戦場に響き渡る。それに敵大将と同時に右手を振り下ろしながら、竜姫が告げた。
「さあ、始めるよ！」
　両軍が上げた時の声が、地響きとなって大地を揺るがす――ここに、ザ・グレート定礎が率いる軍勢と武蔵坂学園の戦いが幕を開けた。

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　地響きと地響きが、双方で巻き起こる。
「無数の敵、敵、敵！　うふふっ、素晴らしいですわ、血が滾りますわ！　さあさ、楽しい時間の始まりですの！」
「よっしゃ、まかせろ！　ご当地ヒーローとして、放っておけないんだよなぁ、これは」
　華乃が笑い、行部が意気込む。居並ぶのは、かつては安土城怪人の配下であったペナント怪人たちと村正を筆頭とした刀剣怪人たちだ。
「刀剣怪人、横陣！」
　ザザ！　と横一列に立ち並ぶ刀剣怪人たち。その姿に、刹那が叫ぶ。
「来るぞ！」
「――刀剣キック、一斉炸裂！」
　ダダダダダダダダダダダダダン！　と横一列に並んでいた刀剣怪人たちが地面を蹴った。短刀、脇差、打刀、太刀、大太刀――刀剣怪人たちのご当地キックが雨あられと灼滅者達の先陣へと降り注ぐ！
「立て直しを」
　三宝の御幣を手に、耀が告げた。それに、総士が声を張り上げる。
「連携しろ！　陣形を崩せば、第二陣に食われる」
「ディフェンダー、前に出るぞ」
　国臣が積極的に仲間を守るため、先陣へと駆け出した。ディフェンダー陣が切り込んで来た刀剣怪人の先方と足を止めて競り合う中、小碓・八雲が荒神切 「天業灼雷」を振り払い、鏖殺領域を叩き付けていく。
「単独参加も、集まって行動してくれ。狙い撃ちにされたら終わりだ」
「ああ、邪魔はさせないさ。後方支援は任せてくれ」
　最後列でリーが答え、白炎蜃気楼の白い炎を踊らせる――大規模人数の戦闘において、連携を意識した行動はそれだけで状況を好転させるに足るものだ。ましてや、相手は個々の実力でこちらを勝っているのだから。
（「傷つき倒れる者が少しでも少なくなるよう、この力を奮わねばなりませんね」）
　解体ナイフを手に、祠は夜霧を展開していく。その霧の中を、前衛の灼滅者達は疾走、刀剣怪人の後に続いたペナント怪人達と応戦していった。
「グローバル・ジャスティス様、ばんざーい！！」
「押して押して押しまくってやるぜ！」
　ヴァリアブルギガントブレイカーを構え、勇人が吠える。戦力と戦力を真っ向からぶつけているのだ、気圧されれば負ける――ならば、気迫で押し切るのみだ。
「――オッケー、殴って灼滅するのが一番得意です、任せて」
　杏理が言い捨て、迷わず怪人達のど真ん中へと踊りかかる。攻撃こそ最大の防御――ましてや、本陣を送り届けるためなのだ。その動きに、迷いは一切なかった。
「……ふふっシグマ君ここは任せてね……」
「シグマくん達の邪魔はさせないよ」
　リアが微笑み、ましろが決意と共に告げる。そして、アヅマが言った。
「切り拓きますよ？」
「頼んだ」
　アヅマの言葉に、シグマがうなずく。拓かれた戦端が、両者真っ向から押し潰しあうように激突した。

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「やるでござるな、武蔵坂学園」
「敵に不服はなし」
　村正の言葉に、ザ・グレート定礎は短く断言。戦いが始まり、しばし。先陣が激突し、崩れたのは定礎側の陣営だ。武蔵坂学園が取るのは、一点突破の鋒矢陣形――放たれる矢に似たその陣形の鏃にこそ本隊が居る、その事をザ・グレート定礎は見抜いていた。
「来るな、あれは」
「来るでござるか」
　二人の怪人のやり取りに、長い言葉は必要ない。お互いに、自分のすべき事を理解していたからだ。だからこそ、この戦いで初めてザ・グレート定礎が動いた。
「まずは、我が役目を果たそう」
　ザ・グレート定礎が右腕のハンマーを振り上げ、ドォ！　と地面を殴りつけた。その瞬間、鋒矢陣形の先端で大噴火が巻き起こった――ザ・グレート定礎のサイキック、ザ・グレート大噴火だった。
「刀剣怪人、打刀！　続くでござる！」
　そこへ、村正を筆頭に刀剣怪人達が少数で駆け込む。ザ・グレート定礎の一撃で崩し、鏃の本隊を食い止めようという戦法だ。しかし、砂塵の中からアリスが飛び出した。
「三千の梅の力を借りて！　今必殺の！　水戸六名木！　月影キィィィィィィィックッ！！」
「ぐぬ！？」
　戦闘を駆けていた刀剣怪人の一人が、胸部を蹴り飛ばされ吹き飛ぶ。そして、村正の前にいろはが立ち塞がった。
「させないよ！」
「させぬでござる！」
　同時に言い合い、いろはの大太刀【月下残滓】と村正の刃が激突する。そして、ジャラララララララララン！　とシオンのウロボロスブレイドが打刀達を切り裂いた。
「行くよ！」
「今なら、向こうまで届きます」
　皐もレイザースラストを打ち込み、殺到してくる怪人達を牽制する。
「本戦はまかせたぜ、海藤！」
「俊輔が頑張ってるんだから、ボクが頑張らないわけにはいかいよっ」
　海砂斗が、有紗が、D HOUNDの面々が即座に体勢を立て直した。それに続き、さくらえも仲間達と共に前に出た。
「送り届けるよ」
「此処はあたし達でくい止める！　だからどんな事が有っても必ず勝って、全員揃って武蔵坂へ戻ってきなさい！」
　正面から刀剣怪人、右から定礎怪人、左からペナント怪人が挟撃してくる――鈴音が声を張り上げた。
「シグマさんが戦うっていうんだ……なら俺は露払いに努める」
「ここは食い止めるぞ！」
　実が決意し、勇弥がFlammeを構える。空凛と双調が背中合わせに、本隊を見送った。
「共に頑張りましょう」
「皆で力を合わせて勝ち戦としましょう」
　二人が互いを守りながら、怪人達を迎撃する――そして、バンリが言った。
「今です、ここを抜けて――」
　本隊の前に立つのは、翔也と薫だ。
「さて、道を開くといたしましょうか」
「はい、翔也さん」
　翔也が切込み、薫がサポートする。それに続く本隊の背後を守りながら、明日等が言った。
「しっかりと灼滅してきなさいよね」
　そして、ゴウン！　と爆炎が巻き起こり、ザ・グレート定礎への道が拓かれた。
「グレート定礎……直接相見えたかったが、願わぬなら仲間たちに血路を開くまで。皆、行け……！」」
「お膳立てはしたぜ、後は頑張れよ！」
　碧は、願いを託した。ベネディクトに、同クラブの耕平と刑一が笑い駆けて行く。
　鋒矢陣形により、ついにザ・グレート定礎の陣営が射抜かれた。鏃――ザ・グレート定礎の命を射抜こうと、本隊がその前に立ったのだ。
「この身、一振りの凶器足れ」
　七星が、言い捨てザ・グレート定礎の前に出る。身構える彼らを前に、ザ・グレート定礎もズン……！　と地響きを立てて踏み出した。
「来るがいい、灼滅者よ」
「ええ、いくわ」
　鍵を握り締め、玉緒が返す。合戦が始まり、ついに本命同士の戦いが幕を開けた。

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　ザ・グレート定礎へと、ライドキャリバーのドラグシルバーを駆る竜姫が迫った。ガガガガガガガガガガガガガガガガン！　とドラグシルバーの機銃掃射がザ・グレート定礎の足元へと降り注ぐ中、竜姫が跳び下りる。
「レインボービート！」
　放たれるのは、オーラを集中させた連打――閃光百裂拳だ。七色の輝きの軌跡を描く拳の雨は、しかしその定礎石の頭に取って小雨程度でしかない。
「ただ全力で、心技体全て出し尽くしてアンタに勝つぜー！」
　そして、真っ直ぐに俊輔は槍を構えて疾走した。ザ・グレート定礎へと繰り出した俊輔の螺穿槍は、しかしその腹筋で受け止められる。
「硬っ！？」
「我が身は、この国と考えるがいい」
　ブォ！　とザ・グレート定礎が無造作につま先蹴りを放った。まるでサッカーボールを蹴るような動きだが、紙一重で俊輔は掻い潜る。
「わんこすけ」
　オーラの砲弾を投擲する鎗輔の言葉に、霊犬のわんこすけはその刃で定礎へと襲い掛かった。だが、定礎はギギン！　とその刃をハンマーで受け止める。
「ここよ」
　その一瞬の間隙に、死角から滑り込む玉緒が鋼糸を張り巡らせた。ズザン、と定礎の足を切り裂いた鋼糸――それに合わせて、刑一が跳んだ。
「っと！」
　ヒュガ！　と放たれた炎をまとう回し蹴り、刑一のグラインドファイアが絶妙のタイミングで――。
「温い」
　放たれたはずの蹴りを、ザ・グレート定礎は左腕で掴むと力任せに刑一を投げはなった。刑一はすかさず空中で身を捻り、着地する。
「これで弱体化しているのか？」
「然り」
　イエローサインを発動させる七星に、ザ・グレート定礎は事実のみを告げた。これが日本のご当地幹部、その実力の一端――否、氷山の一角なのだ。
「軍艦島からの因縁、ケリをつけに来たよ」
　雲蒸竜変を構え、竜の因子で自己強化しながら耕平が告げる。それに、定礎は平然と答えた。
「ならば良し、こちらも行く」
　ズガン！　とザ・グレート定礎が地面をハンマーで殴打する。衝撃が一気に駆け抜け、地に眠る怨念が呼び起こされていった。ただ撒き散らされる衝撃だけでも、体の芯まで響く――そういう攻撃だった。
「させるかよ」
　すかさずシグマが∇codeを爪弾きリバイブメロディを奏で、ウイングキャットのピオニーがリングを光らせる。
　こうしている間にも、仲間達が戦ってくれているのだ――本隊は、決死の覚悟でザ・グレート定礎へと食い下がっていった。

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　――包囲された、その事を自覚したのはしばらくたってからだ。
「……支える！」
　鋭二郎が防護符を投げ放ち、傷を負った者を回復させる。それを横目で確認しながら、鵠湖は身構えた。
「こっちです！」
「行かせないぜ！」
　鵠湖の横手阿櫻城ビームと六義の必殺ソメイヨシノビームが、ザ・グレート定礎を援護に向かおうとした定礎怪人を貫く。振り返り、定礎怪人は怒りのままに彼らへと襲い掛かった。
「クロネコ・レッド、見参！」
「さーて、久しぶりに暴れるとするっすかね」
　直哉とレミが、共に複数の刀剣怪人の前に立ち塞がる。何としても本隊の邪魔はさせない――その気迫で、怪人達を押し勝っていた。
「田子の浦での借りを返す為にも、名古屋の人達の笑顔を守る為にも道を切り開いてみせる！」
「名古屋の人達の笑顔を守る為にも！ご当地ヒーローとして全力で貴方達に抗わせて頂きます！」
「こしゃくな！！」
　來鯉と悠里のグラインドファイアとご当地キックのWキックに、ペナント怪人は吹き飛ばされながらも、必死に起き上がる。
（「向こうも必死ですか」）
　二人の盾となりながら、ホテルスは思う――この戦線、確実に有利なのは灼滅者側だ。防衛戦の最低人数の倍、言葉にすれば簡単だがこの戦力は大きい。簡単に殲滅はできないが、踏みとどまり時間を稼ぐだけであれば、かなりの余裕がある。
「だけど、これは――」
「ああ、そうだね」
　登の呟きの意図を察して、良太は同意する。清美は、静かに呟いた。
「鶴翼の陣で、こちらを懐に取り込んできましたね」
「じゃが、戦力はこっちが上――ああ」
　敬厳はヒーリングライトで回復させながら、自分で答えに行き着いた。その答えを敢えて口にしたのは、キィンだ。
「向こうも、持久戦に持ち込みたい訳か」
「グレート定礎が勝つって信じているのか」
　明がオーラキャノンで迫るペナント怪人を迎撃しながら、そう結論ずけた。向こうにとっても援護戦なのだ、これは。ザ・グレート定礎の元へは向かわせない――そして、奴が勝てば盛り返せる、と。
　それに、ジンザが言い切った。
「上等だ」
「数で押し込め！　撃ちまくれ！」
　風蘭の言葉と同時、武蔵坂学園側の弾幕が怪人達へと撃ち込まれて行く。戦況は硬直状態――ならばこの、本隊の戦いがこの戦場を左右すると言っても過言ではなかった。
「ライディング・レインボーキィィーック！」
　ドラグシルバーのシート上に立ち、竜の咆哮の如きエンジン音と共に加速を利用した竜姫の蹴りが放たれた。しかし、それを定礎はハンマーの右腕で受け止める！
「お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！」
　そして、裂帛の気合と共にザ・グレート定礎の大噴火が戦場に吹き上がった。庇ったドラグシルバーとわんこすけが、その一撃で砕け散る。
「体勢を立て直せ！」
「抑える！」
　Ring roadでイエローサインを発動させるシグマに、耕平が放電光を拳にまとって前に出た。ピオニーがリングの尾を光らせる中、玉緒がクロスグレイブを構えて黙示録砲を放つ。
「……丈夫すぎるわね」
　ゴウン！　と爆煙の中から、平然と現れる定礎の姿に玉緒がこぼす。牽制で放たれた定礎の回し蹴りに、刑一が笑って言った。
「前から思ってましたが、腕や上半身のインパクトの割に下半身が普通な辺り……さてはギャップ狙いですね！」
「知らぬ」
　蹴りを跳躍でかわし、刑一がバベルブレイカーを繰り出す。しかし、定礎は自ら顔面の定礎石で受け止めた。己が一番信じるもので、受け止めたのだ。
　そして、その定礎石は本人の期待を裏切らない。ガキン！　と杭が大きく弾かれた。
「まだまだー」
　トン！　と軽く跳躍した俊輔のグラインドファイアが、定礎を捉える。捉え――そして、蹴ったはずの俊輔が弾き飛ばされた。
「おおう！？」
　空中でバランスを崩した俊輔へ、ザ・グレート定礎は右腕を振り上げ――そのハンマーに一条の電光が落ちた。
「させないよ」
　鎗輔の轟雷だ。ズガン！　と落ちた雷は、しかし定礎のハンマーに弾かれる。
「ここまでやって、まだ届かないか」
　イエローサインを発動させながら、七星がそう呟いた。弱体化してなお、本隊を寄せ付けない強さをザ・グレート定礎は誇っていたのだ。
「足りぬ。それがお前達の全力だというのなら、惜しいが一歩足りぬな」
　ザ・グレート定礎は、そう答えた。一歩、言葉にすればわずかな差だが、ひたすら遠く感じる距離だ。その一歩を埋め切れなかった――だからこそ、本隊は追いやられていく。
　このままでは、こちらが遠からず瓦解する――。
「いや、まだだ」
「そうだな」
　冷静に鎗輔が否定し、シグマがそれに賛同した。終わっていない、だからこそ諦めず食らいつく――それが正しい判断であった、とは決していえない。その一歩を埋める手段を、彼らは持っていないのだから。
『ナナ、あたしがいるんだから絶対負けるんじゃないわよ』
「……ああ」
　インカムから届くシアンの言葉に、七星はうなずく。
　彼らは諦めない、凌駕に追い込まれ、紙一重の状態に追い込まれてなお――。その戦いが、ひとつの奇跡……あるいは、偶然を引き寄せたのは運命か。
　グラリ、と定礎の体が揺らいだ。それと同時に、別の方角を見た定礎に動揺の気配が走ったのを七星は目撃する。アフリカンパンサーと灼滅者達が戦っている方角だ。

「アフリカンパンサーよ。お前は、まだ死ぬべき時では無い。
　今こそ、ダヴィンチ・コードの全てを解放しよう。
　グローバルジャスティス様の愛を知り、その愛と共に生きるのだ」

　ヒュオン！　と一条の流星がごとき光が、ザ・グレート定礎の定礎石から天へと昇った。
　光の中に紙片を認め、耕平は我が目を疑う。
「あれは、ダヴィンチ・コード！？」
　グラリとザ・グレート定礎は片膝をついた。ダヴィンチ・コードの射出と共にサイキックエナジーが急激に減少し、活動が困難になっているのだ。
「くっ、分かっていたことだが、これは……」
「いかん！　定礎様をお守りし――！」
　一人の定礎怪人の声が、ヒュガガガガガガガガガガガガガガン！　と降り注いだ魔法の矢の雨に遮られた。
「マジックミサイルりゅうせいぐん、とくと見ぃ！」
≪TOFGLO FAFEN PANPIR VORS DE MADRIAX QUASB TOL≫
　空飛ぶ箒に乗っかった丹のマジックミサイルだ。それに動きを止まった怪人達に、いろはと切り合っていた村正が大きく飛びのく。しかし、それを優奈と佳奈美のスターゲイザーが許さなかった。
「させないわ！」
「邪魔をするなでござる！」
　佳奈美の言葉に、村正がなおも向かおうとする。しかし、優奈の連撃がそれを止めた。
「アフリカンパンサーを助けるために……か。敵ながら天晴れといったところだ、その覚悟は認めよう」
「手が空いている者、こっちを頼むぜ！」
　和守の言葉に、悠と流希、そして純也が合流する。手数を裂いてでも、この村正だけは抑えなくてはならない――そう悟ったからだ。
「行かせないよー！」
「地元をこれ以上荒らさせない」
　悠と流希の連携に、村正はそれでもなお助力に向かおうとする。が、それを純也のDMWセイバーといろはの斬撃が防いだ。
「諦めろ」
「ここだけは、死守だよ」
　だが、複数人が抑えに回ったからこそ空いた隙間もある。そこを埋めようとしたのは桃香、そして希沙だ。
「もう少し、です！」
「シグマ先輩の邪魔は、させへん」
　桃香の鬼神変が、希沙のレイザースラストが迫る定礎怪人を食い止める。だが、なおも怪人達は数で押し寄せてくる――そこに、嶋・八雲の黒い波動が薙ぎ払われた。
「頼みます！」
「お任せください」
　そこに重ねるように、炯のブレイドサイクロンが荒れ狂う！　切り裂かれた怪人達の中へ、エルファシアがダークネス絶対撲殺捩じり切り取りすり潰し太郎君をぶんぶん振り回して、跳び込んでいく。
「そっちも！」
「こんなにも敵がうじゃうじゃと。ああ、なんとも鬱陶しいことです、邪魔なものは全て、全て打ち砕いてしまいましょう」
　絹が龍砕斧を手に、怪人達を押し返し。そこに遥香が、セイクリッドクロスの光条の乱射で薙ぎ払っていく。
「向こうも、これが最後の抵抗です！」
「ご当地への執念は、私たち学園のヒーローだって負けてませんから！」
　菖蒲も遠距離から、着実に怪人達を撃ち抜き足を止めていた。悠一も怯まずに、刀剣怪人達の白刃をいくつも防いでいく！
「俺は、俺に出来る事をやるだけだ」
　――誰もが、この瞬間が最後なのだと知っていた。知っていたからこそ、誰もが猛る――敵も、味方もだ。
「は、ははははは！　来るがいい、灼滅者！」
「言われるまでもない」
　猫と鴉の影――ユウラとヤミを己の足元から走らせ飛ばし、七星が答える。猫が足元を、鴉が頭上を。定礎の動きを鈍らせたその刹那、跳んだ鎗輔の跳び蹴りが定礎石の顔面を捉えた。
「今だよ」
「ええ」
　ズン！　という重圧に定礎の膝が揺れたのと同時、踏み込んだ竜姫のマテリアルロッドが定礎の胸部を殴打する。ズドン！　という魔力による衝撃に、定礎がのけぞった。そこへ、玉緒が鋼糸を操り定礎の手足を深々と切り刻む！
「ぐ、ぬ――ッ！！」
「私は私として最後まで戦うの」
　こみ上げる殺意を、自然と握った鍵の感触で抑え込んで玉緒がこぼした。重圧が増した定礎へ、シグマがヒュガン！　とレイザースラストを射出する。
「ここで決める――！」
　決めなければ、まずい――シグマの直感が、そう告げていた。偶然か必然が生んだこの唯一絶対の好機逃せば、やらえるのはこちらだ、と。
「これ以上、動かないでもらいます！」
　ザクン！　と死角から走った刑一のRB団式断縁鋏が、定礎の足を切り裂く。さながらリア充の視線から身を隠すような、見事な死角からの一撃だ。
「オレが今出せる最高の一撃をもってアンタを倒すぜ！　それが一人の強い漢であるアンタに対する敬意だよー！」
　そして、魂の奥底に眠る破壊衝動を具現したオーラを両の拳へ。俊輔の連打が、定礎を打つ、打つ、打つ――！
　一撃一撃に渾身をこめた連打、俊輔の閃光百裂拳にグラリとザ・グレート定礎は揺れて――踏みとどまった。
「見事、ならば今の我が渾身！　存分に受けよ！」
「――ッ！！」
　ドドン！　とザ・グレート定礎のハンマーが、二回大地を殴る。再行動による、ザ・グレート大震撃とザ・グレート大噴火の二連撃。衝撃と炎が、戦場を揺るがした。
　砂塵の中で、定礎は一人立つ。立ちながら、ハッと軽く肩を震わせた。
「――やってくれる」
　バチン！　とピオニーの猫魔法が定礎を拘束する。そして、ズタボロの耕平が一歩砂塵から前に這い出た。
「お前の愛するこの国の地で眠ることが出来るんだ、本望だろ！」
　破邪の白光を宿した剣の一閃、耕平のクルセイドスラッシュが定礎の胴を切り裂いた。しかし、定礎は倒れない――倒れる事を、拒んだのだ。
「は、はは、ならば、貴様らも、貴様ら、で……この国を、守るがよい……っ」
　大地とは背を預けるものではなく、立つべきものだ――だからこそ、両腕を広げ天を仰いだザ・グレート定礎は高らかに叫んだ。

「グローバルジャスティス様――万歳！！」

　ドン！　と大気を震わせ、ザ・グレート定礎が爆発する。偉大なる礎たる男、日本のご当地幹部ザ・グレート定礎――日本の大地に立ったまま逝く……。

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　ザ・グレート定礎が、灼滅された――それは、この場の戦いの終わりを意味していた。
　残る怪人達も、灼滅者達の追撃を受けるものの少数は逃亡。他の戦場も、終わりを告げていた。
「もしも、あの時ダヴィンチコードが失われていなければ……」
　鍵を握り締め心を落ち着けた玉緒の呟きに、鎗輔は淡々と答えた。
「負けていたのは、僕達だったねぇ」
　ダヴィンチコードを失った事により、定礎は多くのサイキックエナジーを失った。アフリカンパンサーの軍に力を分け与え、それでもなおこちらの予想を上回った……最期まで、日本のご当地幹部に恥じない戦い振りと言えるだろう。
　本隊に、余力のある者など誰も居ない。最後の攻撃、あれもダヴィンチコードを失う前に受けていれば、完全にこちらの敗北が確定していたはずだ。
　運も実力の内、そう考えてよいのかどうか。その判断は、個々がすべき事だ。ただ今言える事は、辛勝を得た――その事だけだった……。

作者：波多野志郎	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2016年4月8日 難度：難しい 参加：8人 結果：成功！
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