サクラ咲く

    作者:彩乃鳩

    「桜だ」
    「桜ね」
    「うむ、桜だな」
     桜あるところに、彼らあり。ご当地花見怪人である三人のダークネスが、多くの桜が植えられた自然公園と練り出していた。
    「お花見の季節ね」
    「花見日和だな」
    「うむ、花見客だらけだ」
     花開いた桜の木の下。
     この日、多くの人々がシートを広げて賑わっている。花の美しさに見惚れる者、花より団子と料理を楽しむ者、はしゃいで写真をとったり陽気な歌を唄う者などさまざまだ。
    「悪くない」
    「悪くはないわね。だけど」
    「うむ。我ら、花見を愛する花見怪人。この程度では、まだまだ……満足せぬ」
     花見怪人達は、何やら桜の木に水をかける。
     すると、桜の花はみるみる間にみるみる間に満開となり。鮮やかな花弁が咲き誇る。風が吹くと、見事な桜吹雪が舞った。
    「うむ。三分咲き、五分咲き、八分咲きなど甘い甘い」
    「花見はやるなら、とことん。やるとなれば、全力でだ」
    「そうね、全力で。それこそ、全てを燃やし尽くす勢いがないと」
     彼らにとって花見とは。
     文字通り命懸けで行うべきものだった。
    「そういう意味でいうと」
    「うむ。この花見客たちは、まだまだ盛り上がり方が足りない」
    「そうね、もっと満開でやってもらわないと」
     花の命は短いのだから。
     ダークネス達は、頷き合って花見客達へと向かう。
    「花見をやるときは、自分も命を散らす覚悟を持つべきだ」

    「百瀬・莉奈(ローズドロップ・d00286)さんからの、情報提供によりご当地怪人の動きが確認されました」
     五十嵐・姫子(大学生エクスブレイン・dn0001)は灼滅者達に依頼を説明する。
    「幾多の戦いをくぐり抜けた、武蔵坂学園も力をつけ、より強力なダークネスも現れています。しかし、全てのダークネスが強力なわけではありません。徒党を組むことで、ダークネス同士が協力して活動しはじめているようですね」
     今回問題となる、花見怪人達もそんな一組だ。彼らは花見を愛するあまり、花見客に度が過ぎるレベルの盛り上がりを求める連中だ。
    「多くの桜が咲く自然公園に現れた、花見怪人達は花見客に絡みだします」
     このままでは、最悪死傷者が多数出る惨事が起こりかねない。そんな事態は看過できない。花見と花見客の平和を守ってほしいというのが、此度の依頼だ。
    「皆さんには花見客の中に混じって、まずは花見怪人達を引き付けてもらうことになります。このとき目立つような盛り上がり方をすれば、怪人達も対抗意識を刺激されるし目に付きやすいでしょう」
     花見怪人達が接触してきたら、出来る限り花見の席を壊さないように戦って撃退して欲しいというのが姫子の弁だった。 
    「現場は、まさにお花見にぴったりの状態になっています。事件が無事解決したら、お花見を楽しむと良いと思いますよ。皆さん、頑張ってくださいね」


    参加者
    百瀬・莉奈(ローズドロップ・d00286)
    桃野・実(水蓮鬼・d03786)
    香坂・天音(遍く墓碑に・d07831)
    撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859)
    阿久津・悠里(キュマイラ・d26858)
    寸多・豆虎(マメマメタイガー・d31639)
    ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(白と黒のはざまに揺蕩うもの・d33129)
    ニアラ・ラヴクラフト(宇宙的恐怖崇拝者・d35780)

    ■リプレイ


    「武蔵坂学園御一行様でお花見を満喫するよ」
     百瀬・莉奈(ローズドロップ・d00286)はブルーシートを敷いて、広げるはお花見弁当。美味しい食べ物と飲み物をたっぷり準備してある。
    「こっちも色々と揃えておいたよ」
     桃野・実(水蓮鬼・d03786)が取り出したのは三段のお重。
     一段目は手毬寿司と稲荷寿司のごはん物。二段目は春野菜のマリネに鯛のカルパッチョといった魚と野菜料理。三段目はローストビーフに小振りのハンバーグといった肉料理。
     飲み物も2Lボトル数本。
     満開の桜の下。灼滅者達は、それらを摘まんでいった。花より団子か、団子より花か。
    「桜が綺麗ですね」
    「そうだね、良い日和だ」
     ウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(白と黒のはざまに揺蕩うもの・d33129)も花見用にレタスやタマゴ、ハムなどを挟んだサンドイッチを詰めた弁当を二つ準備してある。花見客に混じり、弁当を一つ展開してその味を楽しみつつ、桜の美しさを語りながら怪人達の出現を待つ。酒は実際には飲まないけれど、阿久津・悠里(キュマイラ・d26858)はぐいぐいジュースやらなんやらを飲んでいった。
    (「とりあえず最初は何もせず宴席に混ざりこんでおいて、と」)
     仲間達と一緒に席を囲んで、まずは様子を見ているには、香坂・天音(遍く墓碑に・d07831)だ。
    「人類は花を謳うものだ。美が生やす棘は強烈。毒を孕む美は至高。甘美な花を眺め、甘味を頬張るが好い。旧支配者の鐘が鳴り、外なる神の声が響く。総ては華を齎す、綺麗な花が成す。ああ、未知に舞い狂え」
     ニアラ・ラヴクラフト(宇宙的恐怖崇拝者・d35780)は、大声で演説を始めていた。一般人は他の場所に行き、怪人が寄る筈……という考えだった。確かに、目立つのは間違いない。
     そして、場が徐々に温まってきた頃に。
     灼滅者達が、身体を張る時間が訪れる。
    「莉奈のお手製ロシアン団子だよ! ずんだ餡のお団子なんだけど、その中にはわさび団子が!」 
     ロシアン団子。
     何ともなネーミングの団子を、莉奈が掲げる。思わず他の者達は、息を呑む。
    「……ロシアン団子とかまぢかよ。オレは宮城のご当地ヒーローだから、ずんだ餡の団子と言ったら間違う訳ねえぜ」
     花見を楽しみ。
     楽しみながら敵の動きを注視していた寸多・豆虎(マメマメタイガー・d31639)は、ずんだ餡のお団子をまじまじと観察して一つを選ぶ。
    「博徒の末裔撫桐娑婆蔵。単純なヒキの勝負なら負けやせんぜ」
     お花見をドンチャン騒ぎにすべく。
     撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859)も、気を惹けるようアゲ方に抑揚を付けてサッと引く。
    「未知なる味覚を賭に求めて」
     演説をぶちまけていたニアラも、躊躇なくロシアン団子に乗った。
     傍らの実の手には、いつの間にかウェットティッシュ、除菌ペーパー、ゴミ袋が握れている。
    「ロシアン料理やる人達が被弾した時の避難用に用意しておいたからな」
     と余念がない。
     ロシアン団子を選んだ者達は、ごくりと喉を鳴らし。一気に一口で喰らう。一回、二回、三回とじっくり噛みしめることしばし。
    「まぢ、この甘さが癖になるンだよなァ。ずんだ餡サイコー!」
    「よござんす」
     豆虎が親指を立てて、勝利の味に舌鼓を打ち。
     娑婆蔵がもごもご咀嚼して頷く。
     すると、当然。
    「Ia.都市伝説の味よりは――無理だ」
     ニアラが頭を抱えて、必死にわさびの破壊力に耐えていた。実はゴミ袋を持って、緊急事態に備えたそうな。
     合掌。
    「にゃー! じゃあ次は皆でわーきゃー楽しんで、カラオケもしちゃう?!」
     天真爛漫ゆるふわに、莉奈は笑って。
     灼滅者達は歌声を響かせる。良く食べ、良く歌い、良く笑う。
     宴もたけなわのところで、悠里が立ち上がる。
    「さあお立会、突然だけど今からベストドレッサーコンテストをはじめちゃうぞ☆」
     キラッキラ光ってプリンセスモードにて変身。
     顔の前で横ピース。周囲のメンバーがESPを使って盛り上げるのを補助する、コンパニオン的役回りをこなすつもりだった。
     ただ……。
    (「一般人感動するんだろうね、これホントに大丈夫なんだろうね」)
     内心でESPの効果を疑いまくっていたりする。
     プリンセスモードにより、悠里は衣服を露出多めのスレンダーな、ゴシックチャイナドレスに変化させていた。
    (「外してたら大学一年にもなってこんな真似、生死に関わるレベルの痴態だぞ……」)
    「……大学生じゃなくてもプリンセスって柄じゃなくね?」
     苦悩する阿久津のプリンセスモードに、豆虎がぼそりと一言。言った後に相手のぶりっこ笑顔が崩れそうになったので、そっと逃げるという一幕もあったりした。
    「え? コンテスト、ですか? いえ、そこまでは……ふふ♪ 楽しみですわね?」
     ウィルヘルミーナは言葉の途中で目がうつろになり。
     妖しい微笑みを浮かべる。
    「セクシーさをアピール……って柄じゃないんだけどこういうのちょっと照れるわね」
     頃合いを見て、天音もプリンセスモードで変身。
     胸元を強調するデザインのタイトなドレスで、皆と同じようにESPで周囲の気を引き始める。ドレスのデザインは一歩間違えば水着か、という際どいライン。肌を晒すことは特に恥ずかしく無いと思っていたが、こうまで大勢の前だと少しばかり頬も染まる。
    「おー、いいぞ! お嬢ちゃん!」
    「セクシーだねえ!」
    「こっち向いてくれー!」
     何だ、何だと。
     一般人達が呑気にからかってくる。天音は恨みがましげに、その者達のことを睨む。
     多くの花見客達が、灼滅者達に注目する。その中に――
    「ご馳走に、歌に、ロシアン団子、謎の演説に、コンテスト……」
    「これは、花見怪人の名に賭けて負けてられないわね」
    「お前達が真の花見を愛する者か、確かめさせてもらおう」
     件の怪人達が現れる。
     どうやら、かなり最初から見ていたらしい。
    「おやおや? ガラの悪いおじさんたちがコンテストに乱入~! みんな危ないからちょっと下がっててね! ここからは趣向を変えて――」
     悠里は一般人を下がって下がってと遠ざけつつ。
     怪人たちに向き直り。
    「酔っぱらいの正しい撃退法のショーをお見せしよう」
     かかってこい、と挑発する。
     途中までぶりっ子を徹底していたが、宣戦布告する辺りでついに素が出たようだ。
    「かかったわね! お花見の邪魔をする悪は許さないっ」
    「ほう、我々に自ら挑むか」
     莉奈は、敵の接触にアルティメットモード。
     最終決戦モードへ変身して。
     まるで催し物という雰囲気の言動で、戦闘が見やすいように一般人を少し遠ざけた。
    「ふん、花見の場で我らに勝てるかな?」
    「アナタの花見にかけるその意気込み、見事ですわ! それでは騎士アイヴァンホーの末裔、ウィルがあなた達のお相手、務めさせていただきましょう!」
     ウィルヘルミーナがスレイヤーカードとスタイリッシュモードを起動。騎士の礼を取って戦いの開始を宣言する。スタイルの良さを強調し、胸元背中が大胆に開いた前開きドレスへと変わる様に。
     観客達は、「おお!」と歓声をあげた。


    「おう、やろうってェのかお前さん方。首三本揃えて束ねた所でそう高くは見えやせん。ってなわけでこの喧嘩、安く買い叩かせて頂きやすぜ」
     娑婆蔵が見得を切り。
     スタイリッシュモード使用し、まるで舞台のように一般花見客らを背に攻撃射線を取り攻撃開始ざま開戦する。
    「ふん。なかなかの盛り上がりぶりだな」
     妖冷弾の一撃を受け。
     怪人の一人がニヤリと笑った。一般人達は当然ざわめくが。
    「これは大学の出し物です」
     と実が言って、周囲には花見の出し物と思ってもらう。その際に、こっそりサーヴァントのクロ助と敵を囲むように陣取る。
     ご当地怪人たちがこちらの宴席に食いついてきたら、近くの一般人をこれからショーが始まるという名目で、攻撃の影響波及がないあたりまで下がらせる。
     それが灼滅者達の思惑だった。
    「オレの活躍、見ててくれよな」
    「よ! 頑張れヒーロー!」
     豆虎はライドキャリバーの牛タンを乗り回してまるでヒーローのよう。一般人を誘導して戦闘に適した距離感を保ち、群衆を沸かせる。
    「始めましょ。全員、墓碑に刻んでやるわ」
     天音もサーヴァントのハンマークラヴィアを呼び出し、戦闘を開始する。初手は除霊結界を発動。霊的因子を強制停止させる結界を構築した。
    「我らの花見キックを喰らうが良い」
    「足技で負けるわけにはいかないね」
     怪人のガイアパワーのこもった蹴りと。
     悠里のキックボクシングをベースとした、炎の脚撃がぶつかり合う。とてつもない衝撃が生まれ、桜の木の枝が揺れる。
     主人の戦いを応援するように、ウイングキャットのウナのリングが光った。
    「花見は軽んじる輩はいないかな」
    「花見。日本が齎す嗜好的文化。素敵だ」
     ニアラはバッドステータスの付与を中心に動く。二枚貝を模す影業が、敵を絡め取りにかかった。ナノナノのぜろは『0』と書かれたプラカードを掲げ、メディックの役目を務める。
    「ご当地花見怪人って名乗る癖に折角のお花見を台無しにするなんて許せないっ」
    「お、やれやれ!」
    「ひゅーひゅー!」
     回復は仲間に任せて攻撃に専念。
     莉奈が縛霊撃で攻め込んだ。殴りつけると同時に網状の霊力を放射し、ダークネスを縛る。アルティメットモードは伊達ではなく、花見客は大いに沸く。あくまでも催し物というスタンスを貫き、一般人にもお花見を楽しみながら、余興として楽しんで貰う。
    「桜の花びら舞い踊る華麗なこの舞台……灼滅までの一時、ダンスのお相手願いしますわ?」
    「よかろう。だが。貴様に私の相手が務まるかな?」
     ウィルヘルミーナがクラッシャーとして、敵怪人と剣舞を舞いながら切り結ぶ。最初は舞初めにパッショネイトダンスでステップを踏む。
    『ほら、私。みんなが釘付けだよ? 私の舞に魅了されてるわ』
     戦いの中。
     内なる闇が語りかけてくる。
     この時、ウィルヘルミーナはスローモーションのように時間を感じながら、観客一人一人の瞳の動きすら感知する思いだった。
    「はい……視線を感じます……とても、快感ですわ……」
     神霊剣で攻撃を繋げ。
     桜吹雪とともにドレスが翻り、踊りと舞いの剣戟は続く。
    「あ」
     一方、ご当地ビームでクラッシャーの一人を引きつける実は、ソメイヨシノがわっさーと余波でよろめくのを見て頬をかく。
    「二年前の春に、ソメイヨシノ怪人と戦ったんだ……その怪人が今も生きてたら……これ、怒られるぞ……」
    「はん、他の怪人の怒りなど屁でもないわっ」
    「んー……、今回のご当地怪人には首かしげたくなるな」
    「何?」
     実はソーサルガーダーとワイドガードを使いながら、敵の一人と向かい合う。ちなみに、霊犬のクロ助はわふわふしてる。
    「花見は悪くないんだぞ、少し騒ぐのもいい。けどその度を過ぎてるのを皆嫌がってる。桜は手前の為に咲いた訳じゃないぞ」
    「……」
    「それに……土。桜自体繊細な植物。土を踏み固める事は根っこを傷つけたり、飲み物こぼした粗相をしたって土地を汚して……桜が枯れる―ーソメイヨシノ怪人に地獄で怒られてくるか?」
     真っ黒な目でじーっと怪人を諭す。
     すると……突然怪人はうなだれた。
    「……帰る」
    「?」
    「……お主の言葉、心に沁みた。私はこの戦いから降りる」
     意外と言って良いのか。
     どうやら、灼滅者の言葉に本当に感動したらしい。実はこんなこともあるのかと、虚を突かれて相手の背中を見送ってしまう。
    「ああもう! さっさと片付けてお花見の続きにしましょ!」
     敵は残り二体。
     天音は竜の腕のような縛霊手により、重量級の一撃を叩きこみ攻撃。サーヴァントは盾として、皆を献身的に守る。
    「っ! この、にわかの花見をする者どもが」
    「人様に命懸けをやらせようってんなら、テメエらも例え死のうが文句ありやせんね?」
     怪人らが絡んで来たら、娑婆蔵は俄然売り言葉に買い言葉の構え。ヤクザの嫡男らしく、喧嘩の気配を嗅ぎ付けるや好戦性剥き出し。 
    「撫で斬りにしてやりまさァ!」
    「!」
     胸で胸へドカドカ当たりに行きながら、超至近距離から睥睨。
     渾身の一撃が、相手に直撃し。二体目の怪人は音も無く倒れた。
    「亘理のイチゴを知っているか、最後の花見怪人?」
    「……ふん、他県のものに興味はないわ」
     豆虎が残りの一体にクルセイドスラッシュを見舞う。
     牛タンはフルスロットルし、防御メインで味方を庇い。次の攻撃に繋がるようにサポートする。
    「花見のテンションクライマックス、花見ダイナミック!」
     怪人はこれこそが花見だと。
     次々と大爆発を起こす。ニアラはナノナノを回復に動かし。自身は蟹の如き断斬鋏を振るい、蒐執鋏でのドレインを行う。
    「蟹と化す」
    「あと、もう一押し」
     悠里は負けじと、荒々しい動きのキックで返す。その勢いは、敵の爆風すら吹き飛ばさんばかり。娑婆蔵の槍が唸り、帯を振るう。天音が砲火を集中し、ウィルヘルミーナが舞うように刺す。
    「ぐ、ぐぐ……まだ、この程度では……」
    「純粋に花見を楽しめねえ奴らなんだなァ。ただ散るのを待つだけなんてつまんねえ人生じゃね? まァ、花見の邪魔されたくねえしやっつけんぜ!」
     豆虎がご当地ダイナミックでやり返し。そこで敵の動きが崩れたのを見逃さず、声を掛け合い連携する。
    「今だ、百瀬!」
    「邪魔をする奴らは莉奈が倒しちゃうよ!」
     仲間の声に。
     莉奈が高らかに神薙刃を叩きこむ。
     己に降ろしたカミの力によって、激しく渦巻く風の刃を生み出し。怪人を斬り裂く。
    「……見事! 貴様等こそ、真の花見客……」
     ダークネスの身体は。
     桜の花が散るように、淡く消え去った。
     後は一言。
    「楽しんで貰えたかなっ? 引き続き、お花見を楽しんでねっ」
     そう一般人へ声掛けした後。
     莉奈はアルティメットモードを解除する。
    「なかなか、面白かったぞ!」
    「凄いアクションだった!」
    「アンコール、アンコール!」
     周囲の一般人達は、先程までのやりとりが実戦だったと気付くこともなく万雷の拍手を送る。ウィルヘルミーナは、淑女の一礼をして応えた。
     花見席は大いに盛り上がり、灼滅者達もそこに再び混ざる。
    「甘味。甘美。未知を望む」
     ニアラはチョコレートを皆に振る舞う。
     天音は好きな紅茶をポットから一杯、そして。
    「みんなもどうかしら?」 
     と紙コップで配り。
     それを受け取った実は、例の団子の前で懊悩していた。
    「ロシアンルーレット参加するぞ……く、クロ助は食べちゃダメだ……」
     ウィルヘルミーナは、もう一つのサンドイッチを開きながら本格的に楽しんだ。
    「来年もまたこうやって花見を楽しみたいですね」
     風が吹き。
     満開の桜が、花弁を華麗に踊らせる。陽気な笑い声は、どこまでもいつまでも終わりそうになかった。

    作者:彩乃鳩 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年4月2日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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