お花見列車

    作者:佐和

    「電車からお花見できるです!」
     そう教室に飛び込んできた七重・未春(小学生七不思議使い・dn0234)の手には、桜色のチラシが握られていた。
     ちょうど桜餅をぱくっとしたところだった八鳩・秋羽(小学生エクスブレイン・dn0089)は、もぐもぐしながら首を傾げて見せる。
    「線路の横に、ずーっと桜並木が続いているところがあるんだそうです。
     電車の窓からお花見って、面白そうです! 素敵です!」
     わくわく笑顔で未春は『お花見列車』と銘打たれたチラシを差し出し、声を弾ませた。
     お座敷列車とか何かイベントがあるとかではないようで、いたって普通の路線電車だが、桜並木の続く場所だけ速度を落として運行してくれるらしい。
     窓と桜の花の高さがちょうど同じくらいなので、窓の外が全面桜色に見えるようだ。
     走行中の電車からなので、5分程度の花見となるけれども、いつもと違う見方ができるのは確かに面白そうだ。
     それに、と秋羽はチラシに載っていた、おそらく去年のであろう写真を見つめる。
     桜並木を挟んで線路と反対側に、広めの歩道が写っていた。
     ここを歩いて時折桜の向こうに見える電車を楽しむのも、素敵かもしれない。
     それに何より、チラシを手にした未春が笑顔満開で。
    「……楽しそう、だね」
    「はいっ。楽しいお花見、できると思うです!」
     楽しそうな未春を見つめて、秋羽は残りの桜餅を口に入れた。


    ■リプレイ

    ●お弁当列車
     ガタンガタンと規則的な音を立てて、電車は線路を進んでいく。
     今窓から見えるのは、家や学校や道路など、よくある街の景色。
     そんな普通の先に、目当ての色がある。
     でもその前に、と白峰・歌音(d34072)は大きく膨らんだ鞄を開けた。
    「桜見る前に食べようぜー!」
     出されたお菓子に、榎・美智(d00138)の青瞳が輝く。
    「確かにお腹空いてきましたね」
    「桜が見えてくるまで腹ごしらえだねー」
     坂東・太郎(d33582)はお茶を、白川・雪緒(d33515)も饅頭を差し出した。
    「薄皮饅頭、つぶ餡とこし餡両方ありますよ」
    「じゃあこし餡で!」
     早速受け取った美智は、ぎっしり詰まった中身に微笑む。
     続くように、牧野・メル(d34715)は地元のお菓子を取り出した。
    「今回は茨城縛りで納豆味のスナックと干し芋だよー」
    「お? 納豆のお菓子って初めて見たぜ!」
     歌音は興味深々手を伸ばし、想像以上にちゃんとお菓子な美味しさに驚き喜ぶ。
     美智は手作りの1口マフィンをおずおずと差し出して。
    「えっと、良ければどうぞ!」
    「美味しいですね。美智さんの女子力が羨ましいです」
     雪緒の賞賛に、ほっとしながらも違う意味で頬を染める。
    「以前作ったら、彼氏が凄く褒めてくれて……」
    「おいしいから惚気話されても許しちゃうねぇ」
    「んー♪ 美智姉あまーい!」
     メルと歌音もにこにことマフィンを頬張った。
    「ときに太郎ちゃん、お弁当は?」
    「ちゃんと作ってきたよ」
     雪緒の催促に広げられるお弁当。
     電車の中で食べやすいように心が配られ、彩りも綺麗なおかずを美智は順に眺めて。
    「タコじゃなくてカニさんウィンナーというのも可愛いですね」
     呟いた声に、雪緒が悔しそうに声を上げた。
    「ちくせう! わたくしのタコさん!」
    「味は同じだから気にしない気にしない」
     太郎に宥められて、雪緒はむくれたまま俵のおにぎりを手にした。
    「太郎くんの卵焼きはお塩なんだねー。普段食べないから新鮮だよー!」
     メルの言葉に、口いっぱいに頬張る歌音に、太郎は作り甲斐があると微笑んで。
    「ほらほら、雪緒ちゃん。ほっぺにお弁当ついてる」
     ふとそれに気づいて手を伸ばす。
     不意の接近に雪緒の顔が少し赤くなったけれども。
    「……え、なにどうしたの?」
     首を傾げる太郎を、雪緒は複雑な表情で見据えた。
    「あ、そろそろ桜が見えてくるんじゃない?」
     メルの声で時間が告げられた拍子に、げほげほと響く苦しげな音。
    「歌音さん大丈夫ですか!」
    「息できます!? 背中擦ります!?」
     美智と雪緒が慌てて、メルは太郎から渡されたお茶を差し出して。
    「……うう、目移りして欲張り過ぎたー」
     何とか治まった事件に、あははと太郎は笑う。
    「ゆっくり花見って雰囲気じゃないけど、賑やかなのも楽しいよね」
     別の席でも、おにぎりに舌鼓を打つ2人がいた。
    「結構上達したと思うんです、が……」
     伺う鹿野・小太郎(d00795)に、篠村・希沙(d03465)は笑顔でもぐもぐして。
    「ん! 具もど真ん中! 握り加減も絶妙でおいしいよ」
     美味しさ以上に頑張ってくれたことが嬉しくて、希沙はほわほわ気分で頬袋を作る。
     それを眺めて小太郎は小さく鼻歌を奏でた。
     そして心地よい揺れがその時を運んでくる。
     窓際に座る希沙は、一面の桜に、わあ、と声を上げた。
    「す、ごいっ、綺麗……!」
    「窓開けましょ。横から失礼、と」
     不意に伸びて来た腕に、希沙の胸が高鳴る。
     そのまま手は窓枠に置かれ、背中に感じた温もりは離れない。
     そっと見やれば、小太郎の無表情が綻んでいて。
     つられるように希沙も微笑んだ。
    「……春やね」
    「……春ですね」
     応えて、小太郎は希沙の頬へ頬を寄せる。
     希沙は赤くなりながらも小太郎の大きな手にその繊手を重ねた。

    ●お花見写真
     通り過ぎた電車の連れて来た風で、桜が舞い散る遊歩道。
     そこで声高らかに保戸島・まぐろ(d06091)は宣言した。
    「第1回光画部電車と桜をテーマにした写真コンテスト!」
    「わ~!」
     わくわく顔で拍手を送る月影・木乃葉(d34599)。
    「どうせやるなら狙うぜ1番!」
     その隣で椎葉・武流(d08137)はやる気満々拳を握る。
    「んー。いちごくん、一緒に撮りに行かない?」
    「いいですよ。一緒しましょう」
     墨沢・由希奈(d01252)は黒岩・いちご(d10643)に誘いをかけて、2人は連れ立って歩き出す。
    「写真、コンテスト……?」
     そんな皆をきょとんと見送る今井・紅葉(d01605)は、手元の携帯電話を見下ろした。
     カメラといったらこれしか持っていないのだが。
    「気軽に撮ってみてね。そんなに難しい事じゃないから」
     そんな戸惑いにまぐろは、紅葉と抱かれたテディベアとに笑いかける。
     そうして思い思いに撮影場所を探し始めたのだが。
    「すげーなオイ! 遊歩道に桜のトンネルだぜー」
     頭上を覆うほどの桜色に、マサムネ・ディケンズ(d21200)は目を奪われた。
     ふわふわと舞う花びらがまた綺麗で。
     そして何だか儚くて。
    「散っては咲いてまた散って……そして、再び桜の咲く時期が来たのね」
     見上げていると、忍長・玉緒(d02774)のしみじみとした呟きが聞こえた。
    「うっわー、綺麗な桜ー」
     そこを卯月・あるな(d15875)が元気に駆け抜ける。
     続く八蘇上・乃麻(d34109)の目の前に、ひらりと落ちてくる花びら。
    「……ほっ!」
     それを捕まえようと手を伸ばすけれども、ふわりと花びらは舞い逃げて。
     次々に落ちてくるのを、やっ! とぉっ! と追いかけ続ける。
     あるなも参戦するものの、ひらりふわりと捕まえられず、乃麻と共に翻弄された。
     いつまでも終わらなそうな追いかけっこだったが。
    「あるな。写真撮ろうぜ!」
     武流の声に目的を思い出し、それぞれ撮影へと意識を戻す。
     まぐろは桜と電車がしっかりフレームに収まる位置に三脚を据えて。
     デジカメを連写モードにして、電車が通るのを待つ。
     2本の桜の木を両端に揃えて電車を狙うのは、木乃葉。
     天然の桜フォトフレームはそれだけでも綺麗だった。
     コンパクトデジカメ派のマサムネも、負けまいとシャッターをバシバシ押していく。
     と、皆より線路から離れた場所に立つ玉緒に気が付いた。
     不思議に思いながら同じような場所に立ってみて、マサムネは理解する。
     玉緒の構えた青いデジカメには、桜と電車、そして撮影する仲間が写ることに。
    「まぐろっち部長、真剣な顔だな」
    「月影さんも一生懸命で楽しそうね」
     そっと話しかけると、笑みを含んだ声がマサムネの想像を肯定する。
     玉緒は口元に指を1本立ててみせた。
    「わ! この桜おっきいなぁ!」
     気に入った木を見つけた乃麻は、根本から桜を見上げて。
     そうや! と唐突にそこに寝そべった。
     仰向けに伸ばした手に構えられたカメラは、舞い散る桜を下から狙って。
    「ええ感じのが撮れたー」
     写真を確認しながら、乃麻はふんわり微笑んだ。
     紅葉の差し出した手のひらに、はらりと舞い落ちた花びら。
     そっとテディベアを置いて、紅葉は携帯のカメラでそれをパシャリ。
     次は、と振り返ると、テディベアは桜色の絨毯に座っているようで。
     着せてきた桜の服も相まって見事な春色テディさんを、そのまま1枚。
     小さな画面に写る小さな写真は、スキルも装備も劣るけれども。
    「たまにこんなのも楽しいね」
     大きな思い出に紅葉はテディベアを抱きしめた。
     桜の枝の高さから写真を撮ろうと思いついた武流が言い出したのは、肩車作戦。
     木に登ろうとしていたあるなを止めて、カメラと共に持ち上げる。
    「うー……ボク、重くないよね?」
     昨日おやつのお芋食べ過ぎちゃったかな、と心配するあるなだが。
     武流は重さよりも、あるなの太腿の感触に四苦八苦中。
     電車よ早く来てくれ、と願いながら何とか我慢。
     そして待ちに待ったシャッターチャンスがやってきて。
    「あるなー。撮れたかー?」
    「ばっちりだよー!」
     答えるあるなをさっさと下ろすと、武流は赤い顔を隠すようにそっぽを向いた。
    「桜、綺麗ですね」
     呟きに振り返った由希奈は、桜を背に髪をかきあげたいちごの姿を見て。
     無意識のうちにデジカメを向けていた。
     大きく響いたシャッター音に、由希奈ははっと我に返る。
    「その、桜をバックにしたいちごくんの姿を残したい、って思っちゃって……」
    「ええと、これからいつでも撮れると思いますけれど……ど、どうぞ」
     互いに頬を染め遠慮がちに見つめ合う、まるでお見合い状態。
    「そ、そろそろ戻りましょうか?」
     差し出されたいちごの手に、由希奈のが重なって。
     2人並んで歩き出すと、花びらといちごの声が由希奈に舞い降りた。
    「私も後で由希奈さん撮らせてくださいね?」

    ●花びら列車
     桜並木へ向かって進む電車内で。
     七重・未春(dn0234)は期待たっぷりの瞳を窓の外に向けていた。
    「教室の七重ちゃんと違って、びっくりです」
     その様子を眺めて、有馬・南桜(d35680)は好ましげに笑う。
     羽柴・陽桜(d01490)もくすりと微笑んで。
    「未春ちゃん、電車好きです?」
    「はいです!」
    「あたしも電車大好き。いつもは歩いて見る景色も電車からだと違って見えますし」
     言いながらまた陽桜の視線は窓の外、晴天の下に広がる景色に向く。
     目の前を過ぎ行くそれを眺めているうちに、電車の速度が落ちていって。
    「あ、桜……っ」
     瞬き1つの間に、窓は桜色に染まっていた。
     窓に張り付かんばかりの勢いになった未春の服を、南桜はくいっと引っぱって。
     振り向いた未春に、母に持たせて貰った桜饅頭を差し出す。
    「お父さんがね、桜を乗せたお饅頭を食べながら花見をすると1年幸せに過ごせるって」
     説明してから、南桜は手の中の桜を見下ろして。
    「今年1年、皆が無事に過ごせますように」
    (「七重ちゃんと仲良く過ごせるように、もね」)
     声に出して、心で思って、かけた願いとともに饅頭を1口ぱくり。
     倣うように、未春も桜を見ながら饅頭を口にした。
    「……すごくきれい」
     陽桜も桜饅頭を手に、南桜と未春の楽しげな声を聞きながら、目を細めて流れる桜をじっと見やる。
    「あたし、この景色見れてよかった、です」
     その光景を遠目に見ながら。
    (「七重さん、本当にいい笑顔するわね。楽しそう」)
     微笑んだリュシール・オーギュスト(d04213)は、そのまま視線を落とす。
     向かいの席で、靴を脱いで窓にかじりつく葛木・一(d01791)の姿が目に入り、またくすりと笑った。
    「……灼滅者やってると、つい急いで大人になろうとしちゃうけど」
     楽しそうな光景を、柔らかな緑瞳で眺めてぽつり。
    「とても勿体ない事をしてるって、思う事もあるわね。忘れちゃいけないんだろうな」
    「お前急いで大人になんかなってどうすんだよ?」
     聞き止めた一が、にしし、と振り返った。
    「子供なんだから子供を一生懸命頑張れよな」
     大人になってからじゃ子供みたいな事はできないから。
     あえて軽口をたたきながら、もっと窓際にと誘う。
     風に舞う桜の花びらに目を細める一を見て、リュシールは子供らしく思いついたまま、窓をばっと開けた。
    「んー、気持ちいいわねっ♪」
     舞い込む風と花びらに、志賀野・友衛(d03990)の黒髪が揺れる。
    「わわ、一面の桜……」
     先輩達との初めてのお出かけにすでに充分楽しそうだった風隼・樹里(d28501)は、広がる光景にさらに緑瞳を輝かせ、飛ばされないよう帽子を押さえた。
    「……こうして花見をするのは何時ぶりだったか」
     九凰院・紅(d02718)も、窓一杯の桜色という中々お目にかかれない風情をのんびりと楽しんでいる様子。
     過ぎ行く桜に、喜ぶ皆の姿に、友衛はそっと微笑んだ。
     と、何やら思いついたらしい樹里が、周囲に散らばる花びらを集め出す。
     桜を眺める視界の端で見ていると、樹里の手元で小さな花飾りが出来上がって。
    「はい、志賀野先輩に、プレゼント」
     差し出された可愛らしい桜を友衛は少し照れたように見つめた。
    「桜並木、たった5分しか見れない、けど……
     この『たった5分』が……私にとっての、宝物、なんだよ」
     樹里は、ありがとうと大学進学おめでとう、2つの気持ちを込めて笑う。
     花飾りを受け取った友衛の傍らに、ふわりと1輪の桜が舞い込んできた。
     ふと気づくと、ゆったりした電車の揺れにいつの間にか眠ってしまった紅がいて。
     友衛は桜花を手にして、紅の髪にそっと飾り付ける。
     紅がそれに気づくのは次の駅に着くころだろうか。
     樹里に秘密だとサインを送ると、宝物の時間が増えて綻ぶ笑顔。
     また窓の外を見た友衛は、遊歩道に見知った姿を見つけて手を振った。

    ●仲良し遊歩道
    「天気が良くて良かったっすね」
     遊歩道を歩きながら、山田・菜々(d12340)は隣を振り返る。
    「でも、電車からじゃなくて良かったっすか?」
    「自分達のペースで、ゆっくりのんびり見た方が楽しいでしょ?」
     清水・式(d13169)はそう答えながら、菜々の手を握った。
     繋いだ手の温もりを感じながら、反対の手に持ったお弁当を少し掲げて見せて。
    「お弁当が広げられそうな場所も」
    「探さないとっすね」
    「花より団子だけど」
    「賛成っす」
     仲良く会話を重ねて桜並木の下を進む。
    「桜が散っちゃうのって、なんか、勿体ないっすよね」
     言って見上げる菜々を見下ろした式は、目を細めると。
     花びらの中で輝くその顔を眺めながら頷いた。
     そこに近づいてくる電車。
     周囲にいた人達の視線が線路と桜へと向く。
     瞬間、菜々は式にぎゅっと抱きついた。
     電車が通過する間だけの短い2人の時間を、桜が舞って祝福する。
    「あっちからは、ばーって窓からいっぱい桜が見えるんでしょうか、です」
     電車を見送った北南・朋恵(d19917)は、反対側からの景色を想像して顔を綻ばせる。
     隣にいた八鳩・秋羽(dn0089)は電車に向けて手を振っていたようだった。
     誰か知り合いでも乗っていたのだろうか?
     ちょっと首を傾げながらも、朋恵は秋羽の抱えていた袋の中身に視線を向ける。
    「鯛焼きも桜で、綺麗なのです」
     茶色い焼き目の間から覗く生地の桜色。
    「……食べる?」
    「ありがとうございますです」
     差し出された1匹を受け取ってかじると、中の桜餡がまた鮮やかな桜色を見せた。
     持ってきたお菓子も後で秋羽に分けようと思いながら、歩くお花見を楽しんでいると。
    「あら、秋羽。美味しそうね」
     カメラを構えたまぐろに声をかけられた。
     いいかしら? と尋ねる視線に秋羽の様子を伺い。
     大丈夫そうだと頷けばパシャリと音が響いて。
     桜色の楽しい思い出が1枚、残されていく。

    ●幸せ列車
    「わあ、とっても綺麗です……!」
    「すげーなこれ!」
     窓の向こうに広がる桜に、二之瀬・夕姫(d07010)が歓声を上げると、逢坂・兎紀(d02461)も身を乗り出して窓を開けた。
     窓側に座る夕姫は、乗りかかられるような体勢に心臓が跳ね上がる。
     だが当の兎紀はお構いなしに桜に見惚れていて。
     その顔を見上げた夕姫は、ふと、2年前の花見を思い出す。
    (「……あの頃は彼女さんになれるなんて思ってもみませんでした」)
     あの時と違って、今年は最初で最後の『同じ』高校生。
     でも願うことはあの時と同じ、一緒に過ごす1年間。
    「兎紀くん、今年もよろしくお願いしますねっ」
     夕姫から兎紀の手を握ると、驚いた顔が振り返る。
     照れたようにも見えるけれど、それでも兎紀はぎゅっと手を握り返して。
    「進学おめでと」
     もう片方の手で、夕姫の前髪に桜のピンをそっと付ける。
     嬉しい贈り物に今度は夕姫が驚いて。
     お礼の言葉は桜と共に舞う。
     葛城・百花(d02633)は森村・侑二郎(d08981)と共に、窓越しの桜を見ながらオレンジジュースで乾杯。
    「散り始めっていうのが更にこう、ジャパニーズワビサビ……的なやつですよね?」
     景色と一緒に流れる桜を見て言う侑二郎をちょっと横目で見てから。
     窓側の肘掛に頬杖ついて、百花はゆるりと桜を眺める。
    (「風流って言うか……何か新鮮で面白いわ」)
     ゆっくり走る電車だけど、綺麗な景色はあっという間に終わりに近づき。
    「今から桜餅でも食べに行きませんか?」
    「ふぅん、良いんじゃない?」
     侑二郎からのお誘いに、百花はまずは頷いて。
    「じゃ、降りてからは別行動ね」
    「て、ええ。なんでですか先輩!」
    「私、和菓子ダメだから」
     告げると、知らなかったと慌てふためく侑二郎。
     冷静な表情を作ってしばしそれを眺めたけれど。
    「ふふ、あははっ……冗談よ、冗談」
     堪えきれずに笑いだす。
     降りたら普通の花見も楽しいだろう。
     もちろん甘味を添えて。
     窓際の席に1人座る森田・依子(d02777)は、広がる景色をゆるりと眺めていた。
     舞い降る花びらに、先日、雨の中見た桜が重なる。
     でもそれも一瞬。
     周囲の楽しげな声と明るい陽光に引き戻されて。
     依子はポケットの中で切符を握って思う。
    (「私、やっぱり、幸せを求めて生きようとする命が好きだな」)
     人も、時にそれ以外であろうとも。
     そしてそれを守りたいと願いながら。
     過ぎ去った桜に、まぶたを閉じて思う。
     次はこの景色を一緒に見たい人を誘ってみよう、と。
     それがきっと……幸せ。
     

    作者:佐和 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年4月18日
    難度:簡単
    参加:32人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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