これでワタシの天下アル！

■リプレイ

●第一の関門
　学校のチャイナ化を防ぐため、そしてアヤカを救うため、灼滅者達は事件の起きている高校にやってきていた。アヤカのいる生徒会室を目指して廊下を進む。
「いろんな服が空を飛ぶんだね。やっぱりメイドインジャパンってすごい！」
「そうね、さすが物作り大国ニッポ――って違う！」
　フェイ・ユン（侠華・d29900）がチャイナ服が飛んでいる様を思い出して目を輝かせると、エリザベート・ベルンシュタイン（勇気の魔女ヘクセヘルド・d30945）が乗せられがちにツッコんだ。ちなみにフライングなんちゃら服はレプラコーンとかいう淫魔が作っているらしいので、メイドバイ淫魔が適切なのかもしれない。
「個性が要求されるとは、生徒会長は大変なのです！」
　などとズレたことを言い放ったのはミーア・アルバーティ（猫メイドシスターズ・d35455）。頭は割と残念な出来であるが、メイド服に猫耳＆猫尻尾とキャラ付けはこれ以上ないくらい十分だった。
「待て、貴様ら！　アヤカ様の元には行かせんぞ！」
　灼滅者が階段を上ると、その先に中華風の服を着た男子生徒２人組が現れた。おそらく彼らがエクスブレインの言っていたアヤカの配下だろう。
「フライングシリーズとは久しぶりなのですね。さぁ、正義を成す為、灼滅者活動頑張るですよー☆」
　土星から来た魔砲少女（自称）という、これまた強いキャラを持つ土御門・璃理（真剣狩る☆土星♪・d01097）。スレイヤーカードの封印を解き、なんか土星っぽい感じのするガトリングガンを構える。
「ガトリングを乱射して役員共をデストローイですよー」
　ライドキャリバーに跨り、ガトリングを連射しながら突進。弾丸が横殴りの雨のように降り注いだ。
「そんなに暴れたきゃあたしが相手だよ！　喧嘩上等じゃん！」
　続けて楯無・聖華（悪夢の伝道師・d35708）が後方からガンナイフを連射。銃弾が足元に刺さり敵の動きを鈍らせる。
「チャイナ服……アル……フェイと被っているな！」
「ボクはアルとか言わないよ！　チャイナ服は着るけど！」
「ん……そうだったか？　まあいい、どちらにせよ漆黒の舞台の幕開けだ！　封印されし絢爛なる魔獣よ、我が力として顕現せよ！」
　旭日・色才（虚飾・d29929）はユンの抗議を適当に受け流し、殲術道具を解放するとともにウイングキャット・クロサンドラの鈴を呼び出した。大袈裟に腕を振りかぶり、ダイナミックかつスタイリッシュに縛霊手を叩き付ける。
「お前らの相手してる暇はねえんだよ！」
　さらに切羽・村正（唯一つ残った刀・d29963）が迫り、鞘に収めたままの刀を力任せに打ち込む。物理的な打撃が役員を襲い、１人が倒れた。
「戦力は十分だしね、ここは押し通らせてもらうよ」
　桐谷・結（高校生シャドウハンター・d11933）は高速で敵の周りを動きながら鋼の糸を操り、宙を舞う糸が鋭い刃となって敵を切り裂く。
「ア、アチョー……」
　灼滅者の連続攻撃を受けて瞬く間に倒された役員達。薄れゆく意識の中一言だけ残し、そのまま力尽きた。

●第二の関門
「待ちなさい！　アヤカ様のところには行かせないわ！」
　さらに生徒会室に近づくと、今度はチャイナ服の少女が２人。どうやらアル口調ではないようだ。
「中国拳法だぁ？　服着ただけの奴が調子にのってんなよ！　ウチにはスペシャリストがいるんだぜ！」
「そう、ボクこそクンフーマスターだよ！」
　偉そうに豪語する村正の視線の先には、エヘンと胸を張るユンの姿が。中国人は皆クンフーを会得しているから、（多分）中国人のユンもきっとクンフーを使えるはず。うん、そうだ、そうに違いない！
「ささっと倒して、アヤカちゃんを助けに行こう！」
「ええ、一緒にいきましょう。アチョー！」
（「ここは私に任せて、もロマンだけど……ま、全員で正面突破も灼滅者らしいわよねっ！」）
　エリザベートはいつもは魔女っ娘ヒーローだが、今回はチャイナ服に身を包んでユンのようにクンフー娘に。ユンとタイミングを合わせて軽快に飛び出し、クンフーっぽい掛け声とともに２人同時に跳び蹴りを見舞った。
「トイヤアアアッ！」
「フッ、そうはさせ――ぐほっ！」
　チャイナ服の少女が正拳突きを繰り出し、仲間の盾になるべくスマートに髪をかき上げながら前に出る色才。すると、拳がいい感じにみぞおちに沈んで悶絶した。クロサンドラの鈴が尻尾のリングを光らせて主を回復する。
「さすがにこの程度では苦戦もしないね」
　結の手に暗い影が集まり漆黒の弾丸を形作る。指先を敵に向けると弾丸が撃ち出され、暗黒の想念が少女を蝕んだ。数も実力も劣るとなれば、やはり灼滅者の相手をするには役者不足だったらしい。
「カンフーだかクンフーだか何だか知らないけど、喧嘩じゃアタシは負けないからね！」
「きゃああっ！」
　聖華の腕が膨張し鬼のそれへと変わる。大きく踏み込んで一気に距離を縮め、足が床を強く踏むのと同時に拳を打ち込み、岩のごとき巨拳を食らって少女が膝を付いた。
「全力全開でフルボッコにしましょー☆」
　さらに璃理が容赦なくガトリングをブッ放す。銃身が唸りを上げながら高速で回転し、無数の弾丸を吐き出す。
「これでトドメですにゃん！」
　ビハインドのマーヤがポカッとお盆で殴り付けると、続けてミーアが巨大な十字架でボコッと殴打。角が頭に当たって最後の配下が倒れた。これでも一応手加減してますけど、見た目にはすごく痛そうです。
「フッ、こいつをくれてやろう」
　役員達のチャイナ服が少しボロボロになっていたので、色才が布を被せてやる。なんかすごいドヤ顔をしていたが、いつものことなので気にすることはないだろう。

　灼滅者達は全ての配下を倒し、とうとうアヤカのいる生徒会室に辿り着く。そして中華っぽい装飾のされた扉を開けると――、
「待っていたアルヨ！　生徒会長の座は渡さないアル！」
　真っ赤なチャイナ服を纏った美少女が、映画で見たようなポーズで拳を構えた。

●クンフーバトル！？
「ふっふっふ、この見事なチャイナ服を見るがいいアル。これでワタシの天下アル！」
　アヤカのチャイナ服は配下の役員のものよりスリットが深く、太ももが丸見えになっていた。ちょっと動けば下着も見えそうなくらいである。
（「……普段から「ですの」口調の生徒会長はすでにキャラ濃いと思うわ……。武蔵坂にはよくいるし、従姉のお姉ちゃんも久々に会ったらそんな口調になってたけど」）
　チャイナ服によって変貌したアヤカを見て、微妙で複雑な気持ちになるエリザベート。この生徒会長でキャラが薄いとなると、この高校も武蔵坂に負けず変人揃いなのかもしれない。
（「待てよ、ダメージを受けるごとに破けて、最終的にはかなりボロボロになるんだったよな？　……まぁ倒して助けねえといけねえからな、全力で行くしかねえ！！」）
「よしみんな、アヤカを助けるぞ！」
「目つきがいやらしいわよ」
「ぐはあっ！？」
　鼻の下を伸ばす村正にエリザベートが鉄拳制裁。ガンナイフのグリップで思い切り顔面を殴打する。
「さあ、往くぞ！　クロサンドラの鈴！　中華かぶれの飛行する衣服を破壊だ！」
「色才くんもちょっとテンション高くない！？」
　色才は机を蹴って跳び上がって流星のごとき蹴りを見舞い、クロサンドラの鈴も肉球でパンチを繰り出す。ユンはツッコみを入れながら烈火を宿した剣を振るい、ビハインドの无名も中華刀を一閃して追撃した。彼がテンション高いのはいつものことですよ、ええ。
「ホアタァアアア！」
「これぐらい平気だよ！」
　ワイヤーで吊られているかのように重力を無視したジャンプで跳ぶアヤカ。砲弾のような強烈な跳び蹴りを、ユンは両腕を交差させて受け止めた。
「くっ、惜しい……！」
　アヤカが跳んだ瞬間下着が見えそうになったが、はためく裾に隠れてギリギリで見えなかった。悔しがる村正を、エリザベートが真剣のように鋭い視線で睨む。
「フライングチャイナフルボッコの時間です。……こう言うと、にゃにやら早口言葉のようですね！」
　ミーアは赤の交通標識を鈍器のように使って思い切りぶん殴る。璃理は土星っぽさの欠片もない普通のダイダロスベルトを広げ、矢に変えて撃ち出した。
「ただの服のくせにいい気になるんじゃないよ！」
　聖華がガンナイフのトリガーを引くと、威勢のいいセリフとともに放たれた弾丸が弧を描いてチャイナ服を切り裂く。さらに結がオーラを収束させて撃ち出し、光の砲弾は吸い込まれるようにアヤカに命中した。

●さらばクンフー
「くっ、せっかくのチャイナ服がビリビリアルヨ……」
　灼滅者の攻撃を受けてアヤカのチャイナ服が裂け、お腹や肩が剥き出しになって肌色面積が増している。しかしなぜか胸と腰回りの布は残り、下着が露出することを辛うじて防いでいた。
「はっ、周囲の方が全員がチャイナになると、折角のチャイナキャラが目立たなくなりませんでしょうか！？　これは目的達成のためのピンチが危機です！」
「そそそ、そんなコトはないアル！　大丈夫アル！」
　ミーアが黙示録砲をぶち込みながら指摘すると、アヤカが慌てて否定する。どうやら言われて初めて気付いたらしい。
「私の奥義を見るアル！」
「パクるなアルー！」
　エリザベートもアル口調になり、エアシューズを滑らせて接近。間合いに入るや否や、見様見真似の回し蹴りで炎を帯びたローラーを叩き付けた。
「ボクも言っておかないとね。すぅー……アチョー！！」
　続けてユンが繰り出すのも同じ技。しかし負けじと思い切り声を出し、燃え盛るシューズでアクション俳優顔負けの蹴りを見舞った。
「炎の宴か……ならば加わるとしよう！」
　ついでに色才もグラインドファイアを使用。顔を隠すようなポーズのままエアシューズで前進し、またもや炎に包まれた足で蹴り上げる。
「もうちょっと、もうちょっとで……！」
　仲間外れにされた（？）村正は目を細めながら柄に手をかけ、刀を抜き放ちながら面積の少なくなったチャイナ服を斬った。何がもうちょっとかは分からないが、女性陣にばれたらおそらく命はない。
「そろそろ終わりだね」
　結は一見人当りの良さそうな、けれどどこか軽薄そうな微笑を浮かべ、影を伸ばしてアヤカを呑み込む。
「さぁ、観念してもらうよ！」
　聖華はガンナイフを携えて肉薄し、素早く一閃。小さな刃を器用に操り一太刀披露した。
「必殺のマジカル・クルエル・ガトリングゥー……爆殺ブレェェェイジング・バァァァスト！！」
「アルーーーーーーッ！？」
　そして璃理がライドキャリバーに騎乗し、ガトリングを構えたまま接近。至近距離から炎の弾丸をたらふく食わせ、フライングチャイナ服が粉微塵に吹っ飛んだ。

「っしゃ、かっ――」
「おーっと、しかしライドキャリバーで見えナーイ！」
「なにぃ！？」
　村正が勝利を喜ぼうとした瞬間、璃理のライドキャリバーが村正の視界を遮った。残念ながらこれでは何も見えない。
「はいはい、スケベは引っ込んでなさい」
「ぐぼああっ！？」
　さらにエリザベートが半目でみぞおちにエルボー、村正がお腹を押さえて崩れ落ちた。その隙にアヤカに上着をかけてやる。
「男の子たちはこっち見たらだめだからね！　えいっ！」
「うおおおおっ！　目が！　目がぁああっ！！」
　色才が間違ってもアヤカの下着姿を見ないよう、両目を指で押して目潰しするユン。当然普通の人間なら危険だがそこは灼滅者なので大丈夫、バベルの鎖のおかげでなんともないよ！　なお、結は巻き込まれないよう早々に生徒会室を出ていた。
「あれ、わたくしは……きゃあああっ！」
「大丈夫だよ、変なチャイナ服に操られてただけだから。……って言っても分からないか。でも、あたしたちは味方だから安心して」
　間もなくアヤカが目覚め、いつの間にか下着姿になっていたことに気付いて悲鳴を上げる。聖華はただのボロ切れになったフライングチャイナ服を摘み、敵じゃないと示すように両手を広げた。
「随分激しく服が破れているので、勝手ながらお着替えさせていただきますですにゃ」
「にゃ？　それに、メイド服と猫耳……？」
　ミーアが持参した服をアヤカに着せていくが、アヤカは自分の状況よりもミーアの言動や服装が気になる様子。そして近い将来、ミーアに感銘を受けたアヤカは猫耳メイドの生徒会長として名を馳せることになる…………かもしれない。

作者：邦見健吾	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2016年4月22日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 1
あなたが購入した「複数ピンナップ（複数バトルピンナップ）」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。