魔人生徒会~にゃんにゃんグランプリ開催!

    作者:春風わかな

    ●魔人生徒会の会合
     武蔵坂学園内の某キャンパス某教室。
     その秘密の会議は関係者だけを集め、本日もひっそりと行われていた。
     暗色のフード付きコートを羽織り、仮面で素顔を隠した人物は、見た目から性別を判断することは難しい。フードの隙間から覗く赤い髪を揺らし、やや低い声音で本題を告げる。
    「ウィングキャット・グランプリを開催したらどうかと思うんだ」
     過去にもライドキャリバー、霊犬、ナノナノと開催されたこの企画。
     次はウィングキャットの番ということか。
    「べ、別に俺が見たくて提案するワケじゃねーが……」
     ごにょごにょと言い訳じみた言葉を口にしながら、ぐるりと教室を見渡した。だが、この場には異を唱える者は誰もいない。
    「じゃぁ、やるってことで――」
     こうして、ウィングキャット・グランプリ――もとい、にゃんにゃんグランプリの開催は決定したのだった。

    ●開催! にゃんにゃんグランプリ!
     廊下の掲示板に貼られた一枚のチラシの前で久椚・來未(高校生エクスブレイン・dn0054)はふっと足を止める。
    「にゃん、にゃん、グランプリ」
     眠たげな眼差しを向けてぼんやりとチラシを眺める來未の姿を見つけた星咲・夢羽(小学生シャドウハンター・dn0134)がパタパタと駆け寄ってきた。
    「えー、なぁに、なぁに? 武蔵坂学園のNo.1ウィングキャットを決めるの!?」
     面白そう! と瞳を輝かせる夢羽に來未はチラシの内容をざっと説明する。
     今回は2つの観点で審査を行い、その総合点で優勝を決める。
     まず、ウィングキャットの毛艶や衣装のコーディネートを競う『見た目審査』。
     美しく整えられた毛並はもちろん、こだわりの帽子や可愛らしくアレンジされた尻尾のリボンなど、お気に入りのアイテムのアピールはもちろん、テーマに沿った洋服をお披露目するなど、その詳細は自由。自慢のコの一番可愛い姿を皆に見せてあげてほしい。
     そして、もう一つは『フリー審査』。
     これは限られた時間の中でウィングキャットの特技・才能など外見以外を自由にアピールし、競い合う。
     賢さ、器用さ、俊敏さ、可愛らしさ――特技は皆それぞれ異なるだろうし、アピールの仕方も千差万別。一番輝く姿を皆に見せてあげてほしい。
     ステージに立つのはウィングキャットだけでも良いが、ご主人と二人で参加することも可能だ。主人との固い絆を皆に見せるまたとない機会だともいえる。
    「ふむふむ――ユメ、かわいいネコちゃんいっぱい見たいな~」
    「それなら、審査員、やる?」
     グランプリ出場者とともに、審査員も募集しているらしい。
     審査員たるもの贔屓は厳禁だが、ウィングキャット好きにはたまらない至福の時間となるだろう。
     やるやる! と張り切る夢羽の背中を見つめる來未のマフラーがふわりと春の風に揺れる。

     ――あなたも、グランプリ、一緒に、楽しんでみる?


    ■リプレイ

    ●にゃんにゃんグランプリ開幕!
    「みんな、準備はいいかぁーっ?」
     元気よく呼びかけるファルケの声に会場からは「おーっ!」と威勢のよい声があがる。
    「そいじゃまずは一曲聞いてもらおう!」
     ギターを掻き鳴らし、ファルケが今日のために準備したテーマソングを歌い出そうとしたその瞬間! プツリと電源が切れ、ステージ上は暗闇に包まれた。
     すぐさま電気は復旧したが、何者かに連れ去られたのか、そこにファルケの姿はない。
     何はともあれ。
     今ここに、にゃんにゃん・グランプリの開幕を宣言する!

    ●審査その1・見た目審査
     まず最初に行われるのは、ウィングキャットたちの外見を競う見た目審査だ。
    「どんな可愛……いや、皆さん自慢のウィングキャットが出てくるのか、本当に楽しみです」
     審査員席からステージを見つめるアトシュの前に最初に登場したのは、見るからにふわふわそうな茶トラの毛並み。葵のウィングキャットの遥陽だ。
     人懐っこい遥陽は、審査員が腕を伸ばしてそっと遥陽の顎を撫でてやれば、ごろごろと嬉しそうに喉を鳴らす。
     山伏風の衣装を身に着け、のんびりとした佇まいを見せるヴァーリのウィングキャットのカイリ。
     そのポヨポヨとしたお腹は実に気持ちよさそうで、さぞや一緒に昼寝をしたら良い夢が見れることだろう。
     主人である元気なレイチェルとは裏腹に、ミケことミケランジェロは今日も気だるげ。
     唐草模様のマントをなびかせ、ゆらゆらと尻尾を揺らせば燻し銀色のリングが太陽の光にきらりと輝いた。
     黒いベストに青いネクタイをきゅっと締め、ねこさんはふわりふわりと羽を羽ばたかせてステージに現れる。
     その姿にねこさんの応援へと駆けつけた【糸括】の皆はわっと一斉に盛り上がると同時に観客席から熱い声援を送った。
    「らぶりぃ☆ね・こ・たぁぁぁぁぁん!!」
     うちわとペンライトを振って声を張り上げていた明莉は、ぐるりと仲間を見回し仲間を煽る。
    「ほれ、皆も一緒に!せーの!」
    「らぶりー、ね、ねこたん……」
    「らぶりぃ☆ね・こ・たぁん……って言えるかぁあああああ!」
     控えめな声ながらも明莉と一緒に声援を送る理利の横では、脇差が耐え切れず全力でツッコミをいれた。
     ――なお、渚緒はビデオ撮影に集中しており、女子たちは全力でスルーしていたことをここに記しておく。
    「待ってたぜ、にゃんにゃんグランプリ!」
     張り切る宵月に見守られ、紫色のネクタイが良く似合う汾陽(フェンヤン)がステージに出てきた。
     尻尾を地面につけないようにしながらぽてぽてと歩く姿は実にキュート。
     赤いチェック柄のリボンと金色の星飾りを付けたストールをなびかせ、ステージでくるりと可愛らしくポーズを決めた杏仁の姿を見て、主人の夜深は嬉しそうに手を叩く。
     杏仁が薄いピンクの羽を羽ばたかせると、心地よい花の香りがふわりと漂った。
    「……お、パー子がいる」
     ステージを見つめる治胡の視線の先にいたのはクリスの相棒のパーシモン(通称パー子)。
     柿色の魔法使いのようなマントと帽子を纏った薄桃色の毛並のお嬢様の姿は愛らしく。戦闘中に見せるきりりとした表情とはまた違った一面を見れたことに治胡は満足気な表情を浮かべる。
    「あの白い睡蓮のコサージュ、クリスとお揃いなんだな……」
     そんな思いがけない発見もまた乙なもの。ふむふむと独りごちる治胡だった。
    「特徴? 赤目なのと羽が生えている以外は普通の三毛猫です」
     でも、そこが一番のお気に入り――と事前に主人の真琴が語っていた通りの風貌のペンタクルスはふわぁっと眠そうに欠伸を一つ。
     名前の由来にもなった五芒星のメダルがペンタクルスの胸元でシャランと揺れた。
     千歳の相棒・棗は三毛のノルウェージャンフォレストキャット。触り心地が良さそうなふわふわとした首回りの毛に大きな尻尾が自慢の女の子だ。
     大き目な体の後ろにちょこんとついた小ぶりな羽とのバランスも絶妙。彼女の愛らしさを引き立てている。
     一方、今回参加したウィングキャットたちの中でも異彩を放っているのはまり花の相棒で旅仲間でもあるりんず。
     フーテンを思わせる帽子に羽織。落ち着き払った振る舞いに漂う雰囲気は、一言で言うならば『渋い』という言葉がぴったりだ。
     続いて、一匹のウィングキャットがぬいぐるみを背に乗せ、颯爽とステージに飛び出してくる。
    「あ! 明日等お姉ちゃんのリンフォースだ!」
     咲桜の声に膝の上のカーくんを撫でる手を止め、來未もぱっと顔をあげた。
     リンフォースは銀色の毛並に左右の耳に付けたピンクのリボンがチャームポイントの甘えん坊さん。
     咲桜が「頑張ってね!」と笑顔で声をかければリンフォースもまた嬉しそうに尻尾をぱたりと振って応える。
     見た目審査もいよいよ最後の一匹となった。
    「あ、シャロさん……!」
     『シャルロッテ応援団』と書かれた鉢巻をきりりとしめた栞は、手作りのうちわを手に友人である愛樹の相棒・シャルロッテが登場すると懸命にうちわを振って声援を送る。
     インパネスコートにハンチング帽は名探偵なシャロにぴったりな装い。
    「お似合い、です……」
     そして、今日も変わらぬシャロのもふもふっぷりに栞はこくこくと何度も満足そうに頷くのだった。

    ●審査その2・フリー審査(前半)
     見た目審査が終わり、ステージ裏ではフリー審査の準備の真っ最中。
    「あれ? パー子ってばライバル多くて燃えてる?」
     はたと気づいたクリスの言葉にパー子は何も応えず、ただピンと尻尾を立てた。
     もっふもふな毛並が自慢のウィングキャットたちが多く、負けず嫌いな一面のあるパー子は密かに闘争心を燃やしていたらしい。
     そんな彼女に応援に駆け付けた桃夜がにこやかに声をかける。
    「お! パー子、気合入ってるね~」
     調子いいんじゃない? と言われ、パー子も嬉しそうに尻尾をパタパタと揺らした。
    「うんうん、今日も毛並は綺麗だし、コスチュームも可愛い! ピンクの毛に真っ赤なオメメも最高!」
     桃夜にベタ褒めされ、パー子はすっかりご機嫌の様子。
    「パー子、応援して貰って嬉しいんだね」
     クリスに頭を撫でられ、パー子はうにゃっと嬉しそうに目を細めた。
     時間となり、司会者がフリー審査を始めることを告げる。
     フリー審査は外見以外の全てを対象とした審査になるが、アピール方法も多岐にわたり、皆もイメージし辛いだろうということで急遽亜綾がデモンストレーションをすることになった。
    「サーヴァントは相棒であり、戦いで背中を預ける戦友でもありますぅ」
     ――そして、重要なのは阿吽の呼吸の連携技。
     語る亜綾の言葉に会場に集まった仲間たちはうんうんと深く頷く。
     皆が見守る中、亜綾はすぅっと大きく息を吐くと、傍らの烈光さんをおもむろに掴んだ。
    「必殺ぅ、烈光さんミサイルぅ、です」
     聞いてねぇーと言いたげな表情を浮かべ、烈光さんが的に向かって豪快に飛んでいく。
     その見事なパフォーマンスにおぉっと観客席から拍手が湧き上がった。
    「――負けてられねぇな。私達の強さを見せてやるんだぜ!」
     フリー審査のトップバッターとしてステージに現れたのはレイチェルとミケ。
     行くぜ、と派手に弾丸をばら撒いてアピールするレイチェルの頭をミケはテシテシとやる気なく叩く。
    「……疲れた! もーだめ」
     ガトリングガンを下ろして倒れ込む主人をミケは翡翠色の瞳でじっと見つめ。
     にゃーと一声あげると嬉しそうに目を細めてごろりと主人の隣に寝転んだ。
     千歳が猫じゃらしをふるふると動かすと、嬉しそうに棗は元気いっぱいコロコロ転がるように全身でじゃれつく。
     棗が動くたびに首につけた紅色の組み紐がひらひらと揺れ、その楽しそうに遊ぶ姿は見ているだけでも愛らしい。
    「そうだ。是非、皆、棗に触ってほしいな」
     千歳の許可がおりるや否や、アトシュはガマンできずにぎゅっと棗を抱きしめた。
     人懐っこい棗は嬉しそうに尻尾をぱたぱたと振って愛想よく応える。
    「汾陽、もっふもふだろー。シャンプーにはいつも気を使ってるんだぜ!」
    「わふ?」
     誇らしげな宵月に審査員席から鋭い質問の声があがった。
     見れば、声を発したのは審査員席に座っているくりくりっとした瞳がキュートな黒柴。実の霊犬、クロ助だ。
     もふもふっぷりではウィングキャットたちに負けてはいないクロ助が厳しい眼差しで猫たちを審査する。
    「洗った後は、ちゃんとふかふかタオルで水気をとって、ドライヤーで乾かしてるんだぜ」
    「わんっ!」
     宵月の答えにクロ助はくるんと丸まった尻尾をパタパタと振りながら、満足そうに頷いた。
     立派に審査員を務めるクロ助の姿に主人の実も感慨深そうに何度も頷く。
    「……そうそう、汾陽、意外に俊敏なんだぜ」
     そう言って宵月が紙風船をポンと投げれば、しゅっと紙風船へ向かって汾陽ダッシュ!
     楽しそうに紙風船にじゃれ付く姿もまた審査員たちの心を和ませた。
    「ほぅれ、これがうちのりんずや、可愛かろ?」
     まり花に名前を呼ばれ、りんずはゆっくりと顔をあげる。
    「りんず、皆はんにご挨拶しよか?」
     まり花の声に応えるように、りんずはお行儀よく「にゃぁ」と鳴いた。
     つやつやとした美しい毛並は毎日丹精込めてまり花がブラッシングした賜物だ。
    「……えぇ子やなぁ、よう出来はりました」
     まり花に撫でられ、りんずは嬉しそうにごろごろと喉を鳴らした。
    「さぁ、思いっきりアピールしちゃって! ペンタクルス」
     だが、真琴の呼びかけに頭上にいるはずのペンタクルスは動く素振りを見せない。
    「……ペンタクルス?」
     そろそろと真琴が頭上に視線を向ければ、ペンタクルスはぽかぽか陽気に包まれて心地よさそうに惰眠を満喫中だった。
    「……戦闘以外では、いつもこの調子で」
     ――照れくさそうに笑って誤魔化す主の心、猫知らず。
    「我、一緒。だンす、すル、の!」
     色違いの青いリボンと銀色の星飾りを付けた夜深が振るう新体操用リボンを嬉々としながら杏仁は追いかける。
    (「杏仁、練習と違……!」)
     焦る夜深は必至にリボンを動かすも、気づけば杏仁はリボンにこんがらがって困り顔。
     取って、とばかりに情けない声をあげて主に助けを求める可愛らしい姿にアトシュは無意識のうちに身を乗り出した。
    (「是は、是、デ。あぴーる出来た……かナ?」)
     愛樹が優しく背中を撫でるとシャロは嬉しそうに目を細めて鳴き声をあげる。
    「シャロは自分でも毛づくろいするけど、手や舌が届かないところはわたしがしてあげるのよ」
     美しい毛並をうっとりと見つめていた栞は吸い寄せられるかのように、ふらふらとシャロへ近づいてきた。
    「あ、こら栞。もふるのは後になさい」
     ゆっくり堪能させてあげるから、と愛樹に制され、栞ははっと我に返る。慌てて審査員の方を向いてフォロー。
    「……あの、もふもふ、は、一味、違います」
     栞の言葉に審査員たちも興味津々。どんなもふもふ心地なのかと想像が広がるのだった。
     ステージに次々と現れるウィングキャットたちを観客席から見つめる莉々はそっと寄り添うウィングキャットのアルビオンの背を撫でる。
    「このグランプリ、甲乙つけがたいよね」
     ふぅっと莉々は息を吐く。どの子もみんな主人にとってかけがえのない存在。
    「だから――皆とウィングキャットの絆が1番。素敵だよね」
     主の言葉に同意するように、アルは小さく鳴き声をあげ、そっと莉々に頭をこすりつけた。

    ●審査その2・フリー審査(後半)
     フリー審査もあっという間に後半へと突入。
    「さぁ、皆にその魅力をたっぷりと見せてくるのよ!」
     明日等の声に応え、リンフォースは軽快に会場を飛び回る。
     そして、最後にタイヤ型のボールを転がし、器用にステージを1周してみせた。
    「良く出来たわね、リンフォース」
     上手にアピールが出来、主に頭を撫でられリンフォースも得意そうな表情を浮かべる。
    「他のコたちもみんな可愛いけど、やっぱりリンフォースが一番だね!」
     咲桜の言葉に、相棒のバロンがにゃぁと鳴いて尻尾をぱたぱたと振った。
    「遥陽は人と一緒にいるのが好きで、気が付くと誰かの傍にいたりするんだ」
     葵に名前を呼ばれると、興味深そうに審査員席を散策していた遥陽がぴくりと顔をあげ緑色の瞳でじっと見つめる。
    「人が動くとすぐ後をついてきたりするし……」
     ステージを歩く葵の後ろをパタパタと羽を羽ばたかせて遥陽がついて歩いた。そののんびりとした雰囲気は審査員だけでなく見ている者の心を癒してくれる。
    「家のカイリの良いところ……肉球だな」
     むぎゅっとヴァーリはカイリの前足を掴むとずいっと審査員たちに差し出した。
    「ぜひ皆も触ってみてくれ。カイリは人に触られるの嫌がらないしな」
    「ぽよぽよ、してる」
     説明するのは難しいが、とにかく癖になる手触りだ。無言で触り続ける來未にヴァーリは続いて後ろ足を指し示す。
    「後ろ足はまた前足と違う感触が楽しめるぞ」
    「こっちはぷにぷにしてるー!」
     気持ちいい、と触り続ける夢羽にカイリは我関せず。ふわぁと大きな欠伸を零すのだった。
     フリー審査の最後にステージに現れたのは杏子とねこさん。
    「ねこさん、一緒に頑張ろうねっ!」
     傍らに立つ杏子がにこりと笑顔を向ければ、ねこさんはにゃぁと元気よくお返事を一つ。
    「二人とも可愛いー!」
     ステージ上の二人に声援を送る和奏に千尋もうんうんと頷いた。
    「ベストとネクタイも良く似合っているし。……あと、ねこさんは結構お利口だよね」
    「そうそう!ねこさんは色々なことができるし、キョン嬢のよき相方じゃし!」
     力説する心桜の頭上で、スリムなねこさんを真似て一生懸命スレンダーのふりをしているナノナノのここあを見て、輝乃はくすっと笑顔を浮かべる。
    「ちょっと、ここあってば、何やってるんだよ」
    「ここあ……!」
     思わず噴き出した心桜の姿もしっかりとビデオカメラに収めた渚緒はステージに立つ杏子とねこさんに再びカメラを向けた。
    「ねこさん、たまあにね、ボンテージなお姿で鞭持ってるの」
     似合うのよ? と笑顔を浮かべる杏子の言葉に脇差の脳裏をねこさんと共に過ごした思い出が駆け抜けてゆく。
     ……鞭持ってボンテージ姿のねこさんに踏まれつつの腹筋500回とか。
    「キョンは花や星も似合うので、ねこさんも似合うでしょうに……」
     何故に鞭打ちボンテージ押しなのかとたまげる理利の呟きに和奏は全力で同意を示す。
    「あたしもねこさんの色々な格好見たいです! 美人猫さんだから何でも似合うと思う!」
    (「……やっぱり、猫っていいなぁ」)
     なんてね、と渚緒は考えつつ、ふっと背後からの視線を感じて振り返ってみれば。
    「カルラ……!」
     ビハインドのカルラが猫耳を手にじっと主を見つめている。
    「か、変えないから! ずっと一緒だからね?!」
     わたわたと慌てる渚緒の傍らでは、ウサ耳を持った明莉がこっそりと脇差に装着させようと忍び寄っていて。
     賑やかなクラブの皆の様子をステージから眺めていた杏子は、にっこりと満面の笑みを浮かべて口を開いた。
    「他にもアピールポイントはいっぱいあるけど、なによりもね、いつも応援してくれて、一緒に遊んでくれるクラブのみんなが、あたしもねこさんも、1番の自慢なのよ!」
    「キョン……」
     ステージ上の杏子たちを見つめ、輝乃は手に持っていた手作りのねこさん人形をぎゅっと握りしめた。
     全部終わったら、お疲れ様って彼女に渡そう。
     ――だって、二人は糸括の笑顔が素敵な人気者だから。

    ●栄冠はキミに
    「あー、どの子もかわいい。一位を決めろとか、難しいってーの」
     審査のために書き綴ったメモを見つめ、アトシュは頭を抱える。
    「わんわん!」
    「クロ助の一票はこの子ね。俺は……」
     來未たち他の審査員も加わり、難航していた入賞者の決定も終了した。
    「それでは、まず部門賞から発表させていただきます」
     審査員を代表し、アトシュが入賞者たちの名前を読み上げる。
    「まずは、『見た目審査』部門です。こちらは真中・愛樹さんとシャルロッテ!」
     もふもふに厳しいクロ助も太鼓判を押す素晴らしいもふっぷりに加え、名探偵シャーロックを思わせる装いも彼女の知的さを引き立てていることが評価された。
    「続いて、『フリー審査』部門です。神夜・明日等さんとリンフォースです!」
     明日等たちの名前が呼ばれ、咲桜は割れんばかりの拍手を送る。
     ボールを器用に転がす猫らしい俊敏な動きと可愛らしさが上手にアピールされていたというのが入賞の決め手となった。
    「そして、栄えある優勝は――壱寸崎・夜深さんと杏仁! おめでとうございます!」
     突如名前を呼ばれ驚きを隠せない夜深の隣りで杏仁はリボンにじゃれついて遊んでいる。
     突然のアクシデントにも負けることなく、オシャレな一面やちょっとお転婆な一面など杏仁の魅力を十分にアピールできたことが優勝に大きく貢献した。
    「杏仁、一番、嬉シ……!」
     おめでとうとお疲れ様の気持ちを込めて、夜深は杏仁をぎゅっと抱きしめる。
     そんな二人を割れんばかりの盛大な拍手が優しく包み込んだ。

     こうして、大歓声に包まれながらにゃんにゃんグランプリは幕を閉じる。
     だが、出場者のみならず、誰もが強く思っていることがある。
     それは――。
     やっぱり、うちのウィングキャットが一番かわいい!

    作者:春風わかな 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年4月27日
    難度:簡単
    参加:29人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 0
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