黒翼卿迎撃戦~錯綜する思惑

    作者:泰月

    ●急襲、寸前
    「あれは――?」
     それらは、いきなり現れた。
     巨大な蝙蝠、鶏の足の小屋、首輪をつけた集団に騎兵団、竜のような生物や獰猛そうな動物、異形の何かまで――様々に集まった混成部隊。
    「白い炎……」
     一部の者――エクスブレインには、軍勢は突如吹き上がった白い炎柱の中から現れたように見えていた。
    「灼滅者の戦力は出払ってるし、今回の作戦には、黒の王の完全バックアップが付いているんだ。だから勝利は確実だよ、瑠架ちゃん」
    「えぇ、そうですね、メイヨール子爵」
     軍勢の本陣には、黒翼卿メイヨールとその車椅子を押す朱雀門・瑠架の姿があった。
    (「武蔵坂学園を滅ぼすわけにはいかない。どこか良いタイミングでこの軍を撤退させるしかない……。でも、どうすれば」)
     瑠架が思案するそこに現れた配下は、彼女もメイヨールも数時間は聞かないと思っていた言葉を告げた。
    「武蔵坂学園の灼滅者が、こちらに向かっています」

    ●灼滅者の帰還
    「皆、お帰りなさい。良くこんなに早く戻れたわね。おかげで、学園が占拠されるって言う最悪の事態は、回避できたわ」
     名古屋での戦いを素早く終えて戻ってきた灼滅者達に、夏月・柊子(高校生エクスブレイン・dn0090)が笑顔を見せる。
     とは言え、まだ危機が去ったとは言えない。
     強大な吸血鬼の軍勢――黒翼軍は、武蔵坂学園のすぐそこまで、迫っている。
    「灼滅者の皆が帰還した事で、敵軍の一部は戦意を失っているわ。でも、黒翼卿メイヨールが、まだ諦めていない。戦いは、避けて通れないわ」
     メイヨールさえ灼滅、或いは撤退させれば、吸血鬼軍も撤退していく。
     状況を打破する為には、何とか迎撃するしかない。
    「皆がこんなに早く戻ってくるのは、敵も予想外だったみたい。黒翼軍はかなり混乱しているわ」
     灼滅者がいない隙を突くつもりだった敵の予想を、大きく上回った帰還。それによる混乱の隙を逃す手はない。
    「吸血鬼軍と言っても混成で、それぞれに思惑があるみたいだけど、黒翼卿を撃退さえして学園を守れれば、こっちの勝ちよ」
     灼滅者達を見回して送り出そうとした柊子は、そう言えば、と思い出して続ける。
    「こうなる直前に、校長先生が久しぶりに学園に戻ってきてたのよ。何でも、重大な話があるとか……何かしらね?」
     それを聞く為にも、まずはこの窮地、乗り切らなければならない。

    ●敵将たち
     一方、その頃。
    (「灼滅者の大返し……。会長が失敗したのか、それとも、これも彼の予定通りなのか。とにかく、最大の懸案は消えたわ」)
     混乱の中、瑠架は胸中で呟いていた。
    (「あとは、メイヨール子爵を無事に撤退させれば。メイヨール子爵は、ボスコウなどとは違う、本物の爵位級ヴァンパイア。彼が灼滅されれば、爵位級ヴァンパイアと武蔵坂学園の敵対を止める事はできない」)
    「僕と瑠架ちゃんの共同作業を邪魔するなんて、許せないね。灼滅者なんて、踏み潰してグチャグチャにしてしまえっ! 突撃ー!」
     傍らの瑠架の考えを知らずか、気炎を上げるメイヨール。
    「卑劣な罠を破って現れる正義の味方。それでこそ、灼滅者だ。だが、これは瑠架の望み。簡単に黒翼卿を討たせるわけにはいかないな」
     そう呟いたラゴウの方が、瑠架の望みを解しているのかもしれない。
    「殺された多くの我が同胞の恨み、今こそ晴らそう。ゆくぞ、竜種の誇りにかけて!」
     その反対、左翼ではファフニールも戦意を失わず。
    「爵位級ヴァンパイアに協力して、楽して力を取り戻す予定だったのに、どうも話が違うねぇ。これは、適当に戦って、折を見て撤退するしかないね」
     逆に戦意が削がれているのが、ソロモンの大悪魔ヴァレフォール。
     そんな軍勢を、最後方から見渡すはナミダ姫。
    「黒の王には義理があった。故に軍団の隠蔽は引き受けたが、さしたる意味は無かったようじゃのう。さて、儂らは退く者どもを助けるとしよう。黒翼卿は戦う気のようじゃが……まぁ、死なぬことはともかく、勝つことはあたわぬじゃろうて」
     大軍勢を作る各軍団は、それぞれに動き始めていた。


    参加者
    無堂・理央(鉄砕拳姫・d01858)
    李白・御理(小夜鳴鳥の歌が聞こえる・d02346)
    槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)
    洲宮・静流(蛟竜雲雨・d03096)
    花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)
    武神・勇也(ストームヴァンガード・d04222)
    凪野・悠夜(闇夜に隠れた朧月・d29283)
    月影・黒(八つの席を束ねる涙絆の軍帥・d33567)

    ■リプレイ

    ●VS黒翼軍
     剣戟、爆音、破砕音。
     戦いの音と怒号が飛び交う武蔵野の空に、巨大な蝙蝠達が翼を広げていた。
    「いくよ、何としても戦力を削ぐんだ。そしてここを死守するよ」
     自分に言い聞かせるように、そして仲間を鼓舞するように告げて。月影・黒(八つの席を束ねる涙絆の軍帥・d33567)が愛用の得物を絡ませた腕を振り上げる。
     怨みの具現たる刃から放たれた漆黒の波動が、タトゥーバットの群れを薙ぎ払う。
     その中から1匹、急上昇で飛び出すと翼の紋様を光らせた。
    「てめーらに好き勝手させるもんか! ぶっ飛ばす!」
     魔術的な力で放たれた超音波を阻みながら、槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)が翼を狙って、獣の腕を振り上げた。
     銀の爪が閃き翼を引き裂いた直後、その上から別の影が鬼の拳を叩き込む。
    「メイヨールの軍は数と勢いが違いますね」
     殴り落としたタトゥーバットの上に飛び降りた李白・御理(小夜鳴鳥の歌が聞こえる・d02346)の背中で、ロップイヤーのフードが揺れる。
    (「他もラゴウ、フアフニールなんかは、多少因縁などあるので、わかるんですが……後方でうろうろしているのは、何しに来たんでしょうか」)
     勝手に攻めてきて不本意な状況に甘んじるなら、さっさと帰れば良いのに。
     抱いた嫌悪を、御理は口にも顔にも出さずに胸中で呟く。声に出したところで、この激戦の中では聞こえないだろうが、万が一にも無意味な挑発はすまい。
    「しかし戦争中に本拠地襲撃を狙われるとは、旅行中に泥棒に入られるような気分だな。間に合ってよかった」
     ウイングキャットが尾のリングを光らせ仲間を癒すのを見ながら、洲宮・静流(蛟竜雲雨・d03096)は光沢のある羽二重の帯を放ち、タトゥーバットを撃ち抜く。
    「名古屋からとんぼ返りしての防衛戦の甲斐はあったか」
     溜息でも吐きたそうに言って、武神・勇也(ストームヴァンガード・d04222)の足が力強く地を踏んだ。
     刀身だけで自分の身長と変わらない剣を構えて飛び上がり、巨大な鉄塊でタトゥーバットを地面に叩き落とす。
    「ったく。随分とまあ、嫌らしいタイミングで仕掛けてきたもんだ」
    「メイヨールがいつかは仕掛けてくるのは、予兆で分かってた事。名古屋の決戦に合わせた襲撃は、明らかにメイヨール側には上策だよ」
     消え行くタトゥーバットに吐き捨てるように言う凪野・悠夜(闇夜に隠れた朧月・d29283)に返して、今度は無堂・理央(鉄砕拳姫・d01858)が地を蹴った。
     雷気を纏った拳を振り上げ、別のタトゥーバットに叩き込む。
    「ま、思い通りにはさせねえけどな……メイヨール本人は他の班に任せるとして、俺らは敵の戦力を削ぐ事に集中するか」
     理央の言葉に返しながら、悠夜の身体から放たれたどす黒い殺気が、タトゥーバットの群れを覆い尽くした。
    「はい。メイヨールが今後大きな活動が出来なくなるくらい、面子を思いっきり潰してあげましょう」
     少しオーバーサイズの赤いジャケットを羽織った花園・桃香(はなびらひとひらり・d03239)が断罪輪を掲げ、その霊犬・まっちゃがタトゥーバットに六文銭を放つ。
     一瞬送れて、空中に描かれた光の陣が超音波を浴びた仲間の痺れを取り払い、天魔の力を宿していく。
     タトゥーバットの攻撃1つ1つの威力は強くはないが、数が数だ。
     敵の戦力を削ぐ形で撤退させるなら、長期戦になる可能性は低くない。体力は残しておくに越した事はない。
     それに、だ。メイヨールの軍は、黒翼軍の中心。
     それだけに対する灼滅者の人数も多く、タトゥーバットはその数を着実に減らしていたが、そこにいるのはタトゥーバットだけではない。
     ――ドドドドドドドドッ!
     地響きかと思うほどの重たい足音が、灼滅者達に近づいて来ていた。

    ●魔女の眷属
    「新手のお出ましかぁ……ん?」
    「なんだ、あれ?」
    「バーバ・ヤーガの眷属だな」
     何故か生えている鶏の足をせわしなく動かし自ら走って来る小屋の群れ。
     その姿に思わず呟いた悠夜と黒に返しながら、勇也が巨大な剣を構え直す。
     鶏の足の小屋。
     かつてボスコウを討ち取った戦いの際にもこの武蔵野に来ていた敵であるが、当時まだ学園に所属していなかった者もいる。当時を知っているものでも、あの時戦った事があるのはそう多くはないか。
    「今回はメイヨールに従っているようですね。中には――」
     小屋の群れに向き直った御理が振るった剣の刀身が、分裂して伸びた。ウサギっぽい感じの形の刃の群れが、鞭の様に小屋に襲い掛かり、切り刻む。
    「誰もいなさそうですね」
    「小屋の相手だけで済みそうだな」
     横で御理に頷きながら、静流もウイングキャットに猫魔法を放たせる。それでも、小屋の中から何者かが現れることはなかった。
     かつては、ヴァンパイアの兵を運ぶ輸送役も兼ねていた。少し前には、メイヨールが乗り物にしていた予兆を見た者もいる。
     が、今回は、純粋な戦力として使われていると見て良さそうだ。
    「バーバ・ヤーガの眷属。メイヨールの面子を潰すには、良さそうですね」
     桃香は落ち着いて告げながら、光の陣を前と後ろに2つ同時に描く。
    「他人から借りた配下か。確かに、壊滅させれば大々的な活動は出来なくなりそうだ」
     その言葉に頷きながら、黒が怨みの具現たる刃を振り上げる。
     漆黒の波動と小屋の群れの先頭集団がぶつかった直後、群れの中から、一斉に歯車が弾丸の様に放たれた。
    「それに他のチームも、他の敵で手一杯みたいだ。こいつらは、俺達がぶっ飛ばすしかなさそうだぜ!」
     鎖と炎が刻まれた白銀の刃で歯車を弾きながら、康也が声を上げる。
     捌ききれなかった歯車に撃たれながら、鋼の鴉の上に帯を巻きつける。そこに、桃香のまっちゃも魂を癒す視線を向ける。
    「メイヨールには、手痛い敗北を喫して貰わないとね」
     飛び出した理央が歯車の一部を蹴り飛ばし、巻き起こった暴風が小屋についている歯車を幾つか吹き飛ばす。
    「コウモリでも小屋でも、メイヨールの取り巻きならやる事は変わらねぇ。テメェら、まとめてかかって来なッ!」
     そこに笑みすら浮かべて飛び出したのは、戦狂いの殺人鬼。
     歯車攻撃が止んだ間。意識の死角を使って間合いを詰めた悠夜が、鈍く光る鋏で小屋の鶏足を斬り裂いた。
    「名古屋では、初っ端に重傷をくらっていきなり後退だったからな。その時の鬱憤、晴らさせてもらうとしようか」
     溜まった鬱憤を示すかの様に、勇也の身体から炎が吹き上がる。
     足を切られた直後に炎を纏った巨大な鉄塊に横殴りに壁を叩かれた小屋が、鶏足がもつれて横倒しになる。
     だが、その後ろにいた別の小屋が倒れた小屋を踏み越え、跳びかかる。
    「慌しく行ったり来たりさせられた鬱憤、全部ぶつけてやる!」
     振り下ろされる鶏足の蹴りに、静流が飛び出した。摩擦の炎を纏った天翔る風の靴が、鶏足を横から蹴り飛ばす。
     尤も、彼の鬱憤には『せっかくの名古屋だったのに味噌煮込みや味噌カツを食べる余裕すらなかった』と言う続きもあるのだが――。
    「さあ、死ぬのが怖くない奴から掛かって来い」
     それは言わぬが花、と言うものである。

    ●デッドライン
    「さっさと退かねえと、ぶっ飛ばすぞ!」
     狼の形を取った康也の影が、小屋に覆いかぶさり牙を立てて喰らい付き、飲み込む。
     だが、影の中からの返事は撃ち出された歯車。
    「ほらよ、斬り裂かれたい奴から前に出な! 出て来ねぇなら、こっちからだ!」
     歯車を掻い潜って、悠夜は影の中の小屋に大鋏を突き立てる。
     その背中に迫る歯車を阻んだ、ウイングキャットが力尽きて消えていく。
    「半壊してもお構いなしか。撤退する気はなさそうだな」
     勇也が振り下ろした巨大な鉄塊の一撃は、歯車を纏めて弾き飛ばし、撃ち出したばかりの小屋をぐしゃりと押し潰した。
    「っ!」
     直後、真横からの鶏足が勇也を蹴り飛ばす。
    「メイヨールが撤退しない限り小屋達も、と見るべきかもしれないですね」
     何やら飛び跳ねている肉塊を遠目に見ながら、御理が地面に十束の大釘を打ち込む。
     足元を這う衝撃が、まさに歯車を撃ち出そうとしている小屋達に叩き付けられた。
    「こっちが何をしても、喋りも鳴きもしないしね。まあ、小屋に鳴けって言うのも無茶な話か」
     魔術で空間の熱を奪いながら、静流が呟く。
     幾つかの小屋が空間ごと凍りついたが、特に何も反応がなかった。
     氷以外でも、焼かれても斬られても砕かれても影に飲まれても、苦悶の声一つない。鶏なのは足だけと言う事か。
     時折、破損した歯車を交換しているのでダメージを認識はしていそうだが。
    「小屋に表情があっても、それはそれで不気味な気がします……ね、まっちゃ?」
     同意を求めて霊犬の名前を呼びながら、桃香は光の法陣を描く。
    「逃げる気にならないなら、何体でも潰すよ」
     法陣が消えた後、黒が蛇の目を持つ鎌を掲げる。
     虚空に生まれる無数のギロチン。
    「それでも逃げないなら、これ以上誰かを傷つけるなら、ここで消えろ」
     敵が吸血鬼なら言いたい事もあったが、喋りもしない眷族にこれ以上言葉はない。
     黒が無言で鎌を振り下ろすと、降り注ぐ刃と、撃ち出された歯車が空中で火花を散らした。歯車を斬り散らしたギロチンの刃が、小屋の屋根に突き刺さる。
    「ふっ!」
     ギロチンを打ち砕いて飛来したギロチンは、理央が暴風を伴った蹴りで迎え撃つ。
     だが、蹴り飛ばし切れなかった歯車に肩口を抉られる。
     眷属相手とは言え、攻撃を避け切れなければ、癒しきれない負傷が疲労になる。質より量で戦力的に劣勢になっているのは、認めざるを得ない。
     それでも――だからこそ、か。
     戦意では、灼滅者達は誰一人負けていなかった。
     退けない理由が、場所が、背中の先にあるのだ。
    「背水の陣です。退けません」
    「ハハッ! いいなぁ……こういうのも悪くねぇ!」
     御理が放った渦巻く風の刃が小屋を切り裂き、それを追う様に飛び出した悠夜が、鋏を突き立てる。凍った壁が切り裂かれ、残骸が鈍く光る刃に食われるように消えていく。
     消え行く小屋を踏み越えた別の小屋の足が、悠夜に襲い掛かる。
    「学園も、仲間も、俺が守りきる! 絶対に!」
     咄嗟に飛び出した蹴りを身体で阻んだ康也に、歯車が降り注ぐ。
    (「私は武蔵坂学園に来たからこそ、たくさんの大切な人達に出会えました」)
    「……この学園は絶対に守ってみせます」
     胸中で呟いた続きを言葉に出して、桃香は意志持つ帯を仲間に飛ばして巻き付ける。
     戦い続ける決意からか、戦いの終わりが見えない不安からか。桃香の指は、無意識の内に首に下げた懐中時計に触れていた。

    ●死戦の末に
     鋼の拳が叩き折った鶏足の向こうから飛来した歯車が、理央を吹き飛ばす。
    「ぐっ……仲間は、誰もやらせない!」
     倒れた理央を背中に庇い、康也が立て続けに放たれる歯車に耐えて歯を食いしばる。
     気力で耐える康也に、横から小屋が跳びかかり――。
    「潰れてろ」
    「させません!」
     勇也の死角からの一撃が鶏足を砕いた所に、御理の鬼の拳が小屋を叩き壊した。
     これで何体目だろうか。小屋の数も当初に比べるとかなりまばらになったが、まだ全滅には至っていない。このままでは、此方の体力が限界を迎えるのが先かもしれない。
    (「このままだと、闇堕ちも考えるべきか……?」)
     悠夜の脳裏にその選択肢が浮かんだ、その時だった。
     ぴたりと小屋達の動きが止まったかと思うと、いきなり踵を返して、一目散に灼滅者達から遠ざかっていく。
    「これは……ついにメイヨールが撤退し始めたか?」
     急な状況の変化を、勇也が訝しむ。
     そこに、他のチームを通じて知らせが届いた。

     ――メイヨールを灼滅した、と。

    「……。ちょっと様子見てくる!」
     予想外の報告を受けて、箒に乗って舞い上がった静流が見たものは、吸血鬼も眷属も揃って慌てた風に軍勢が退いていく様子だった。
     そしてその中に、メイヨールの巨体は確かに見当たらなかった。あの巨体、そうそう隠せるものではない。
     後方にいた吸血鬼以外の敵軍の姿も、既にない。
    「しばらくどころか、永遠に活動出来なくなったか」
     それを聞いた黒が、淡々と呟く。
     戦力を削いでメイヨールの面子を潰し、しばらく活動出来なくするつもりでいたが、潰したのは面子以上。
     この結果が今後にどう繋がるかは、まだ判らないが、間違いなく大金星である。
    「良かったぁ……皆、大丈夫ですか? まっちゃも手伝って」
     すっかり安堵した様子で、桃香は霊犬と共に仲間の傷を見て回る。
    「さあ、どんな難事が待っているのかな?」
     このあと聞けるであろう校長からの話を思い、静流が呟く。
    「……取り合えず、缶おでん食うか」
     前髪の焦げたクリップから手を放し、康也が懐から取り出した缶を開ける。
     またこうして、好きなものを食べられる。
     それだけは、確かなことだ。

    作者:泰月 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年4月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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