春の武蔵野は麗らかだった。そう、その瞬間までは。
エクスブレインたちは言った。突然、白い炎の柱が現れたと。
さらにその内から現れたものは、吸血鬼の軍勢である。タトゥーバットであり絞首卿の配下、あるいはバーバ・ヤーガの眷属である鶏の足の小屋やヴァンパイア魔女団、殺竜卿の配下である鉄竜騎兵団らが続々と姿を現したのだという。それのみならず、竜種イフリート、ソロモンの大悪魔・ヴァレフォールの眷属、スサノオ、動物型の眷属などがそこに加わり、進軍を始める。
向かう先は、武蔵坂学園。
指揮官として名を連ねるのは、義の犬士・ラゴウ、竜種ファフニール、ソロモンの大悪魔・ヴァレフォール、スサノオの姫・ナミダ、そして――。
車輪の回る音が聞こえる。手足を切り落として車椅子に座した黒翼卿メイヨールと、それを押す朱雀門・瑠架の立てる音だった。この二名もまた、指揮官である。
「灼滅者の戦力は出払ってるし、今回の作戦には、黒の王の完全バックアップが付いているんだ。だから勝利は確実だよ、瑠架ちゃん」
「えぇ、そうですね、メイヨール子爵」
頷きながらも瑠架の心中は複雑だった。
(「武蔵坂学園を滅ぼすわけにはいかない。どこか良いタイミングでこの軍を撤退させるしかない……。でも、どうすれば」)
どうすれば良いのか。懊悩する瑠架の耳に危急の声が届く。
「武蔵坂学園の灼滅者が、こちらに向かっています」
まさか、と思ったのは瑠架だけではあるまい。
ハンドレッド・コルドロンの戦いを最速で制した灼滅者たちが、急の報せを聞いて武蔵坂学園へと戻ってきたのは、彼らダークネスの予測していた時間よりも数時間も早い刻だった。
これを何の大返しと呼ぶべきか。
「戻ってきてくれたか、お疲れ様です。ありがとう」
教室に駆けつけた石切・峻(大学生エクスブレイン・dn0153)は、肩で息をしている。
「皆のお陰で武蔵坂学園が占領されるという最悪の事態を免れる事ができた、が」
喉の奥でかすれた音を立て、峻は教室内へと向き直った。
「大規模な吸血鬼軍が学園のすぐそこまで迫ってきている。皆が戻ってくれたために吸血鬼軍の一部は戦意を失っているようだが、肝心の主将であるメイヨールは武蔵坂学園への攻撃を諦めていない」
決戦は避けて通れないだろう。唸るようにそう告げる。
「これを灼滅、あるいは撤退させて欲しい。それで、吸血鬼軍は引くはずだ。頼む」
さらに。
「黒翼軍は、かなりの混乱を来たしているようだ。皆の参戦が予想外だったのだろう。そこに乗じれば、メイヨールを撃退するだけでなく、他の有力ダークネスを倒すこともできるかもしれない」
そこで配る資料には、敵の布陣が記されている。
「今回はメイヨールたちを退けさえできれば学園の勝利となる。それから、直前に校長先生が学園に戻ってきた。重大な話があるということだが」
何だろう、と峻は首を捻った。
同じ頃、黒翼軍では指揮官たちが各々の動きを始めていた。しかし、その動きたるや統一が取れているとは言いがたい。
メイヨールは勢い込んでいる。
「僕と瑠架ちゃんの共同作業を邪魔するなんて許せないね。灼滅者なんて踏み潰してグチャグチャにしてしまえっ! 突撃ー!」
朱雀門・瑠架は胸に思惑を秘めている。
(「灼滅者の大返し……。会長が失敗したのか、それとも、これも彼の予定通りなのか。とにかく、最大の懸案は消えたわ。あとはメイヨール子爵を無事に撤退させれば。メイヨール子爵はボスコウなどとは違う、本物の爵位級ヴァンパイア。彼が灼滅されれば、爵位級ヴァンパイアと武蔵坂学園の敵対を止める事はできない」)
ソロモンの大悪魔ヴァレフォールには今ひとつやる気が見られない。
「爵位級ヴァンパイアに協力して楽して力を取り戻す予定だったのに、どうも話が違うねぇ。これは適当に戦って、折を見て撤退するしかないね」
と立ち位置も曖昧だ。
朱雀門・瑠架と共に行動してきた義の犬士・ラゴウは、メイヨールを撤退させることに注力するらしい。
「卑劣な罠を破って現れる正義の味方。それでこそ、灼滅者だ。だが、これは瑠架の望み。簡単に黒翼卿を討たせるわけにはいかないな」
一方、同じく朱雀門高校勢力にいる竜種ファフニールは
「殺された多くの我が同胞の恨み、今こそ晴らそう。ゆくぞ、竜種の誇りにかけて!」
と、戦う気満々である。
そして、スサノオの姫ナミダは最後方から軍勢を見渡し、こう呟いた。
「黒の王には義理があった。故に軍団の隠蔽は引き受けたが、さしたる意味は無かったようじゃのう。さて、儂らは退く者どもを助けるとしよう。黒翼卿は戦う気のようじゃが……まぁ、死なぬことはともかく、勝つことはあたわぬじゃろうて」
担うのは撤退の支援。
この戦いはいずこへと向かうのか。
今はまだ、誰も知らない。
参加者 | |
---|---|
今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605) |
シェリー・ゲーンズボロ(白銀悠彩・d02452) |
アイナー・フライハイト(フェルシュング・d08384) |
サフィ・パール(星のたまご・d10067) |
雪椿・鵺白(テレイドスコープ・d10204) |
興守・理利(竟の暁薙・d23317) |
莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600) |
白星・夜奈(夢思切るヂェーヴァチカ・d25044) |
●暗雲の彼方に
蝙蝠だ。タトゥーバットの軍勢が押し寄せてくる。
右に左に不安定な軌跡を描き、目玉を模した呪術紋様をはためかせ、それらは武蔵野の地に薄暗い影を投げかけた。ダークネスたちが、ついにここまで迫ったのだ。
白い肌を陰らせて、シェリー・ゲーンズボロ(白銀悠彩・d02452)は空を仰ぐ。手に握り締めたものは淡い月色の守り袋、君護り。準備は万端、だが。
「視界が……」
これでは、どこにどのような敵がいるのか見通す事ができない。莫原・想々(幽遠おにごっこ・d23600)がヘッドセットからの通信に耳を傾け、すっと目を細める。柔らかな色の瞳に戦意が灯った。
「退けるしかありませんね」
それぞれが繋いだ回線からは、ひっきりなしに戦況が届けられる。敵も多勢ならば味方も多勢。最終的な目標を黒翼卿・メイヨールに置くとして、まずは手分けするしかあるまい。
回線越しの友へと武運を祈ると告げた時、興守・理利(竟の暁薙・d23317)の鼓膜が、キィンという耳鳴りを拾った。
「今……なに、か」
口にすると同時に、真横へと身を返す。踏んでいたはずの地が抉れた。
怪音波。いかにも蝙蝠だ。彼らを襲う群れの攻撃はレンジが長く、耳に堪える。直撃を食らうと麻痺が来るかもしれない。
しかし、初撃を回避できたならば、次は狙いを定めやすい。月白の帯が虚空を裂いた。白星・夜奈(夢思切るヂェーヴァチカ・d25044)の花顔雪膚だ。
「ギィ……ッ」
直撃を受けて高度を落としたタトゥーバットが、耳障りな声を張り上げる。毒に濡れた牙を今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)のクルセイドソードが受け止めると、アイナー・フライハイト(フェルシュング・d08384)の妖の槍が背を貫いた。不気味な眼球紋様から血の涙を滴らせ、蝙蝠は塵へと還る。
その隙を狙って飛来した一体を、子犬カットのヨークシャー・テリアが、じゃれかかるかのように翻弄する。サフィ・パール(星のたまご・d10067)の霊犬「エル」だ。たまらず態勢を立て直そうとするタトゥーバットだが、その時には雪椿・鵺白(テレイドスコープ・d10204)と彼女のビハインド「奈城」に挟まれている。貫かれようが逃げ場がない。血煙が上がる。
「ギギギ……ッ!」
落とした。一体ずつ確実に葬り去っていく。
そうした彼らの後ろには、護るべき場所があった。武蔵坂学園だ。サフィがそちらを見返る。
「何とか、間に合いました……。学園には残っている方々が、いますです。私達、その皆さんも守るです……」
急に取って返したのだから、楽な戦いであるはずもない。だが、漲るものはただ覇気だった。 想々が天星弓の弦を引く。
「戦争の途中に学園を襲うなんて、良い度胸しとれんね。皆で、返り討ちにしてみせます」
白いはずの髪は土茶に、瞳は血のごとき赤へと変じていた。
「……墜ちろ」
降り注ぐ矢は百億の星。飛膜の闇が裂け、弾け飛ぶ。その向こうに見えるのは春霞の空だ。
シェリーがイエローサインで仲間の護りを固めた時、理利が軽く片手を上げた。皆の注意がそちらに集まる。別の班のコロナ・トライバルから連絡が入ったらしい。
『気をつけて、援軍が来るよ! 竜騎兵だね!!』
危急を告げる声は、それだった。
次いで彼らの耳に届いたものは、重たく固い蹄鉄の音。その揺るぎなさは、まるで地鳴りだった。
「確認しました。……迎撃します」
答える声は、内に狂おしい殺意を孕んで戦場を馳せた。
●疾風襲来
一陣の風が巻き起こり、タトゥーバットの遺骸を散り散りに吹き飛ばす。疾駆する騎馬の向かう先は、明らかに黒翼卿・メイヨールの方角だ。
「鉄竜騎兵団ね」
視界を広く取った位置から紅葉が見て取る。
厳つい馬鎧で固めた葦毛の軍馬。人馬一体という言葉があるが、騎手の手綱捌きはそれを超えている。どこかが奇矯だ。
通信先へとその事実を告げた時、アイナーがバスターライフルを構えた。上がる土煙が邪魔で上手く照準が定まらない。目を細め、息を詰めてトリガーを引く。
「この先へは一歩たりとも通さない」
光条が走ると、軍馬の前脚が跳ね上がった。反動を脚で殺してアイナーはその場に留まる。
「破壊はおろか些細な恐怖でさえ、信じて待つ人達に与えはしない」
行く先を灼かれて急停止した騎兵は、立ちはだかる彼らを真っ直ぐに見つめた。軽装の兵を二騎連れている。
「行くべき場があります。退いて下さい」
女だ。背筋の伸びた長身と纏めた灰色の髪は遠目に青年とも見間違えそうだが、声は静かで柔らかい。
首を横に振るのは、想々だった。
「此処には、守りたいものがあるの。負けるつもりも退く気も、これっぽっちもない」
「その気概は美しい。ひるがえりはしないのですか」
行く先は黒翼卿の元だと、女は言わなかった。灼滅者たちの戦意を前に、それは言い訳ですらないと察したのだろう。
「殺してあげる、なんの容赦もなく」
想々の手には怪談蝋燭。劫火の花が吹き荒れる。目を欺くほどに赤く。
それを見るや否や、兵の一人が前に出た。
「隊長、どうか卿の元へ!……っあ、ガッ」
葦毛の騎馬が馬首を逸らす。部下を焼かれながらも任を果たそうとするこの女こそが、部隊長なのだった。
「ジェードゥシカ」
夜奈がビハインドに命じ、その行く先を阻む。ダークネスへの嫌悪もさることながら、敵の向かう先がメイヨールであると思えば腹立ちも著しい。誰のせいで取って返すはめになったというのか。
「あのデブ、ゼッタイ細かく切り刻む」
冷たい呟きを耳にして、騎兵団長の女が手綱を引いた。
「それは、させません」
掲げた右手に現れるものは飛膜型の鉤を備えたグレイブ。その柄で行く手を遮るものを払い除ける。
兵の一方がスピアを手にした。鋭い槍穂が夜奈へと迫る。
それを止めたのは、理利の五濁回帰。シャンという響きも凛然と、狙いを逸らしてそのまま突き込む。
「ア、グッ」
肩を貫かれた兵がたたらを踏み、大きく一歩退いた。脇構えへと槍穂を落とし、理利はメイヨールが居ると思われる方角へと眼差しを投げる。
「恋は盲目とも言いますが……ここまで来ると悍ましい。朱雀門・瑠架の良さを聞いてみたいですね」
前へと出るビハインドたちを屠り、騎兵団長の女が風上を見た。そこに花でも見るように。
「語られても分かりますまい。……恋であるのならば」
ほんの一瞬綻んだ唇は、また、固く結ばれる。
●行く先にあるもの
まずは、護りを落とすべき。シェリーのバニシングフレアが、長を守ろうとする兵たちを呑み込む。
「君達には業火が相応しい」
灰は灰に塵は塵に。人型の火柱が虚空を焦がし、戦場の狂騒の中へと四散する。残るものは、ただ黒煙ばかり。
「学園は絶対に護るよ。今日の獲物は吸血鬼」
彼女の青い瞳とダークネスの赤い瞳とが眼差しをぶつけた。
「狩られる側の屈辱を啜らせてあげる」
味方を守って一歩も引かない。そのためには、援軍の行く手を阻む。
決意の程を痛感したのだろう。一度目蓋を伏せて持ち上げ、騎馬の女はグレイブの切っ先を掲げる。
「我が名はルサリエ。貴方たちを打ち破り、瑠架様の命、果たさせて頂く」
その時、紅葉は気付いた。敵の女の馬は、もはや脚の一部だ。騎乗というよりは一種の装甲に近い。手綱など飾りに過ぎず、両手で長柄を振り回す。
「そのためであらば、屈辱も厭いはしません」
ゴゥッ、という音が地を叩き、真っ赤な突風が灼滅者たちに襲い掛かった。細身のヴァンパイアでありながら重装備の護り手。その一撃は鋼鉄の軍馬の突進にも等しい。前へと出ていた者たちを一気に薙ぎ倒す。
しかし。
「必ず守り切ると心に誓ったのよ」
紅葉は口許へと手を寄せる。人差し指の指輪に唇を触れさせ、その手を大きく前へと捧げ出した。
吹き返す一陣は、セイクリッドウインド。血の色の砂塵を払い除け、仲間の痛みを拭い去る。怒りは目の前の女を大きく飛び越し、黒翼卿の方へと向いていた。
(「学園に攻めてくるっていい度胸だわ、デブ卿!」)
その勢いは相手にも通じたか、グレイブを構え直す敵の面には戯れた色の一つもない。蹄鉄でガッと地を削る。
あの蹄を止めるしかない。鵺白が交通標識を手にした。色は、赤。
「学園は絶対に守って見せる。この学園はわたしの、みんなの思い出の沢山詰まった場所」
駆け込んで振り抜いたその赤い色が、かわそうとした馬の首を打った。
「絶対に壊させないんだから……!」
「く……っ」
大きく体勢を崩したダークネスだが、鵺白はまだ間合いにいる。
「ならば、ここで果てますか」
喉元へと向けてグレイブの切っ先を振った時、そこに居たのは霊犬「エル」だった。目測を誤り斬り付ける。
「不意を突けた、思ったでしょけど、あなた達の好きには、させません……!」
そして天星弓を引き絞るのは、主であるサフィ。
「戦争での犠牲は止められなかった。手の届かなかった、沢山の命、星に、鎮魂を願って……」
サフィの悼みは深く、その手には容赦がない。風が唸る。
「……ッ、う」
左のこめかみに矢傷を受けて、ルサリエが大きく頭を仰け反らした。血に汚れた髪が、バサリと顔に落ちる。
「それほど……まで、の……」
顔面を半ば赤く染め、ダークネスは長柄の刃を振りかぶる。鋼鉄を帯びた騎馬を疾駆させ、突っ込んできた。
「想いですか……!」
凄まじい音が響き渡り、火花が散る。叩き落とされた刃を受け止めたのは、シェリーの縛霊手だった。
「君の相手は……わたし」
ギリリ、ギリリ、と歯軋りに似た異音が上がる。馬の足が地を蹴り、膝を落として耐えるシェリーを後ろへと押した。
灼滅者たち諸共戦場を駆け抜けよう。そんな真っ直ぐな力が、一歩、前へと踏み出そうとする。
●ここにあるもの
その時。
騎馬の前足に、鋭い氷の一撃が突き立った。瞬時にして大気が凍える。
「……?!」
「言った筈だ」
妖の槍を構えたアイナーが、敵の眼前へと立ちはだかった。
「一歩たりとも通さないと」
馬鎧が霜に白く曇り始める。踏み出すはずの歩が踏み出せない。蹄鉄の音が狂って荒れた。
その空隙を縫って、紅葉がシェリーの元へと向かう。ジャッジメントレイは、今は味方のための輝き。
「行かねば……」
痛切の表情のルサリエが、虚空に切っ先を走らせた。鋼色の刃が赤く染まる。
重たく打ち下ろされた一撃を受け止めたのは、理利の槍穂。戦場を背に置いて来るしかなかった痛恨を、奥歯に噛み締める。
「……正義は、どこにも無い」
求めるものは、ただ勝利。
夜奈が駆けた。ここまでの応酬で動きは十分。ほっそりとした体を二つの長柄の下に潜らせ、擦れ違ったと見せた瞬間、大きく一撃を振り抜く。
「……ッ……ア!」
背から裂かれて、ダークネスの唇が血に染まる。ぎこちなく動いてはいるが、かすれた息の他は何も発せない。
ドッ、と地が鳴った。最後の力を振り絞り、それでも使命を果たすために駆けようとする。前にのめった女の胸に、鋭い軌跡が飛び込む。
「思い出は……」
流星の煌めきを描くのは、鵺白の蹴り。
「壊させないわ」
「ッアアア!!」
騎馬の前脚が虚空を掻き毟り、ルサリエの双眸が焦点を失う。長柄を消失させた指先は虚しく彷徨い、求めるものを掴めない。ただひび割れていく。
「る、か……さま」
それが最期。
地に転がった蹄鉄が幾重にも円を描いてその場で回り、深い亀裂を走らせると、音もなく崩れて落ちた。
土にまみれた銀色は、まるで一握の灰だ。
誰も彼も肩で息をする他はなく、そうしていると自分の心臓の鼓動にのみ耳を傾けているかのような時が訪れる。地は足の下にあり、彼らは生きていた。
その時。
ジッ、というノイズに意識を掴まれて、想々が顔を跳ね上げた。片方の耳に手を当てて、別の班から送られて来る声に耳を澄ます。目蓋を伏せて報告を脳裏になぞり、皆に告げた言葉は――
「黒翼卿・メイヨール、灼滅完了です」
戦場の喧騒が耳に戻ってくる。それらは、絶叫でも怒号でもなく勝利の宣言だ。
理利が他班で戦う友人の錠へと回線を繋ぎ、この事実を伝える。返って来る声は明るく弾んで響いた。
「良かった」
答える横顔も眼差しが和らぐ。願った武運は伊達じゃない。
「永遠にここに留まったわけね」
紅葉が微笑むと、夜奈が、アイナーが通信機に声を送る。皆それぞれがそれぞれに事実を、そして想いを伝えることで輪が広がり、戦場は本来の姿を取り戻し始める。
皆の在処。
それは、ここだった。
作者:来野 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年4月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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