その軍勢は唐突に現れた。
タトゥーバットが群れ飛び、奴隷級ヴァンパイアの軍団が控え、その後ろにはバーバ・ヤーガの眷属たる鶏の足の小屋とヴァンパイアの魔女団、殺竜卿の配下である鉄竜騎兵団。
それだけではない。ファフニール率いる竜種イフリートに動物型の眷属、ソロモンの大悪魔・ヴァレフォールの眷属たち。彼らを白い炎の柱をもってこの地へ連れてきた、ナミダ姫率いるスサノオの群れ。
それらは武蔵坂学園に向け、進軍を始めた。
「灼滅者の戦力は出払ってるし、今回の作戦には黒の王の完全バックアップが付いているんだ。だから勝利は確実だよ、瑠架ちゃん」
「えぇ、そうですね、メイヨール子爵」
活動のため手足を切り落としたメイヨールの車椅子を押しながら、朱雀門・瑠架は考えを巡らせていた。
(「武蔵坂学園を滅ぼすわけにはいかない。どこか良いタイミングでこの軍を撤退させるしかない……」)
けれど軍勢は動き始めている。どうしたら。
緊急連絡がきたのはその時だった。
「武蔵坂学園の灼滅者がこちらに向かっています」
ハンドレッド・コルドロンの戦いに最速で勝利した灼滅者が戻ってくる。
軍勢の中でざわめきが広がった。
●反撃の狼煙
教室で待っていた埜楼・玄乃(高校生エクスブレイン・dn0167)が顔をあげた。
「……諸兄らの帰還の早さにはまったく驚くな」
かすれた声で呟く。主戦力たる灼滅者が出払った状態で敵を前にすれば、緊張は隠せなかったようだ。
「よくぞこんな時間で戻ってくれた。一時はどうなることかと思ったが、諸兄らが戻ったら学園が占領されているという事態は避けられたな。とはいえ、見ての通り敵は目の前だ」
吸血鬼中心の混成軍。灼滅者たちが戻ったという一報で一部は戦意を失っているようだが、言うまでもなく黒翼卿メイヨールはへこむどころかやる気満々だ。
彼さえ灼滅するか撤退させることができれば混成軍は退く。
灼滅者の大返しで混成軍は混乱しているから、迎撃戦でうまく隙をつけば、黒翼卿を撃退するだけでなく他の有力ダークネスも討ち取れる可能性があるだろう。
「状況の詳細は資料にまとめた。黒翼卿を撃退すれば学園は守れる。どうかよろしく頼む」
ぶ厚い資料を配りながら、思い出したように玄乃がぽんと手を打った。
「そうそう、先ほど校長先生も帰還なされた。迎撃戦の後に重大な話があるとか、諸兄らも必ず戻って貰いたい」
●思惑の交錯
軍団中央で車椅子を揺らし、黒翼卿メイヨールが激していた。
「僕と瑠架ちゃんの共同作業を邪魔するなんて、許せないね。灼滅者なんて、踏み潰してグチャグチャにしてしまえっ! 突撃ー!」
朱雀門高校の有志や魔女団に囲まれた瑠架は必死に頭を巡らせていた。
(「会長が失敗したのか、それとも、これも彼の予定通りなのか。とにかく、あとはメイヨール子爵を無事に撤退させれば」)
黒翼卿が灼滅されれば、爵位級ヴァンパイアと武蔵坂学園の敵対を止める事はできない。
左翼を担い竜種イフリートを従えるファフニールの戦意が衰えることはなかった。
「殺された多くの我が同胞の恨み、今こそ晴らそう。ゆくぞ、竜種の誇りにかけて!」
右翼を固め動物型眷属を率いる義の八犬士・ラゴウはむしろ感嘆の声をあげていた。
「卑劣な罠を破って現れる正義の味方。それでこそ、灼滅者だ」
それでも瑠架の望みは叶える。黒翼卿を討たせるわけにはいかない。
配下を連れたソロモンの大悪魔・ヴァレフォールは前線から引っ込んで、やる気なさそうに唸った。
「楽して力を取り戻す予定だったのに、どうも話が違うねぇ。これは適当に戦って、折を見て撤退するしかないね」
スサノオと古の畏れに守護されながら、ナミダ姫がどよめく軍勢を後方で見据えていた。
黒の王への義理で軍団の隠蔽は引き受けたが、大返しにあっては意味もない。
「……まぁ、死なぬことはともかく、勝つことはあたわぬじゃろうて」
己は退く者を支援するだけのこと――。
参加者 | |
---|---|
ティノ・アークライン(一葉ディティクティブ・d00904) |
花檻・伊織(蒼瞑・d01455) |
天方・矜人(疾走する魂・d01499) |
蒼月・碧(碧星の残光・d01734) |
九凰院・紅(揉め事処理屋・d02718) |
ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954) |
赤松・鶉(蒼き猛禽・d11006) |
榊・拳虎(未完成の拳・d20228) |
●二度目の学園防衛戦
武蔵野の地でダークネスと灼滅者が激突する。
学園襲撃は主な戦力が出払った隙をついた奇襲、となるかに思われたが、ぎりぎりで帰還した灼滅者たちの大返しにより迎撃戦に持ち込まれていた。
「他人様の留守を狙うたぁふてぇ連中っすな」
動きやすいグレーのスウェット上下で入念に関節を回しながら、榊・拳虎(未完成の拳・d20228)が不機嫌そうに眉を寄せる。
同じように身体を動かしながら、赤松・鶉(蒼き猛禽・d11006)は年初のナベリウス戦を思い返していた。あの時は闇堕ちを選ぶほどまで追い込まれた、苦い勝利だったのだ。今回も、敵の中には大悪魔がいる。
「背水の陣ならぬ背校の陣だね。廃校の危機だけに。笑えないから、さっさと撃退して笑ってやろう」
花檻・伊織(蒼瞑・d01455)が望遠鏡で戦場の様子を確認しながら呟いた。本当に笑えない、という顔で吐息をついたティノ・アークライン(一葉ディティクティブ・d00904)が首を振る。
奇襲に失敗したことで、敵軍の中でもヴァレフォールは明らかに士気が低いという。敵の本陣を攻める仲間と共に敵陣の右翼へ向かって進みながら、天方・矜人(疾走する魂・d01499)がスレイヤーカードの封印を解いた。
「敵に戦意が無いなら好都合だ、ヤル気を出される前に叩く! 行こうぜ!」
「そろそろ突撃をかけないと出遅れるしな」
前線を突破されればいつ逃げてもおかしくはない。九凰院・紅(揉め事処理屋・d02718)も続く。緊張の面持ちでクラブの先輩たちの背を見ながら、蒼月・碧(碧星の残光・d01734)は深呼吸をした。大丈夫、そう自分に言い聞かせる。
「どいつもこいつも殺虫剤を浴びたゴキのごとく、俺の歌声でカンドーにうち震えるがいいぜっ」
不敵な笑みをうかべたファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)が自信満々に、不吉な予感しかしないセリフを放った。
両軍の前線が激突する。
一行は一気に敵陣右翼に突っ込んだ。狙いはソロモンの大悪魔の一人、ヴァレフォール。優先すべきは前線にいる敵個々の確実な撃破より、この場を押し通ることだ。
「よーしおまえらよく来たなっ。歓迎の歌を披露してやるから聞いていくといいさっ」
戦場に大音量でファルケの歌声が響いた。情熱のこもりまくった、しかし致命的に音のずれた音波攻撃でタトゥーバットがばたばたと地に落ちる。進路にいる鶏の足の小屋が矜人の振り回すロッドで吹き飛んだ。
「進め進め、どうせ相手が引かなきゃこっちも引けねえんだ!」
「巧遅より拙速を貴ぶって言うっすしね」
巧みにインに踏み込んだ拳虎のフックでヴァンパイアが殴り飛ばされ、紅の構えたガトリングガンが炎弾の雨を叩きつける。一行は手当たり次第に薙ぎ払うと、敵陣に空いた空間を突破していった。
●まみえし大悪魔
前線から距離をとっていたヴァレフォールは首を傾げた。いつの間にかナミダ姫から離れ、眷属たちもろとも前線の方へ押しやられ始めている。
「何事だい、しっかりおしよ!」
眷属たちが浮き足だっていた。見れば前線右翼を突破して向かってくる一団がある。丁度骸骨の仮面をかぶった矜人が、背骨を模した愛用のマテリアルロッドで獅子たちを薙ぎ倒したところだった。
「お前等に用はねえ! 上を出しな、上を!」
「さぁ、1体でも多く大悪魔を仕留めておきませんとね!」
エルボーで獅子の眷属を打ち倒した鶉が、ヴァレフォールに気がついて青いリングコスチュームへと身を変じる。ナベリウスと同じ大悪魔、まして長い戦友である比良坂・逢真たちが敗退した相手となれば、否が応にも戦意は高まった。
鶉の傍らでギターを構えながら、碧は気圧されそうになるのを必死に堪えていた。
(「……初めて会うけどなんだかいやな感じが……」)
「そう楽等出来ぬものですわ。ですが気安く横槍を入れた報い、楽にして差し上げます」
余裕ありげに皮肉をぶつけながらも、ティノは大悪魔への嫌悪感に内心穏やかではいられなかった。直に会ってみると殊更闇堕ちに忌避を覚える。闇堕ちを出す訳にはいかない。
戦意の高い一行を前にして、ヴァレフォールはあからさまに嫌そうな顔で翼を広げた。
「冗談じゃない、こんな戦闘狂とつきあっていられないよ」
紅の目が咄嗟に大悪魔の姿を追う。灼滅者との交戦で翼は切断され、かなりのダメージを受けたはずだ。今は手負いという姿ではない――それでも『力を取り戻す』つもりだったからには、まだ万全ではないのか。
確かめる暇もないまま、大悪魔と灼滅者たちの間に素早く二体の配下が立ちはだかる。
「この場はお引き受け致します」
「ヴァレフォール様をお守りしろ!」
一体はヴァレフォールと同じように、獅子の身体に男の顔をした大柄な獣。顔のまわりをたてがみが縁取っている。もう一体は身体こそ人間だったが、頭部が獅子そのもの。声や身体を見るに女であろう。獅子の体の方ほどではないが、オレンジ色の被毛で全身が覆われている。
後も見ずに地を蹴るヴァレフォールを囲んで眷属たちが移動を始めた。追撃しようとした伊織に、獅子の体の配下が飛びかかる。
「行かせん!」
振り上げた前脚から不可視の刃が伊織に迫った。咄嗟に跳びのいて、彼が目を細める。
「余計な手間をかけさせた代償、しっかり払ってもらうんでお覚悟を、っすよ」
スレイヤーカードを解放した拳虎の姿が、青系統で統一したボクサースタイルへ変じた。
「ラヴァル、盾は任せたぞ」
頭だけが獅子の配下が両手を広げた。優雅にすら見える挙措だが、その腕のなかに氷のつぶてが次々と現れて凶悪に輝く。
「任せよ、ファウラ」
体が獅子の配下がもう一方を庇うように前へ出る。
この二体を倒さなければヴァレフォールを追うことはできない。攻撃に備えて『タクティカル・スパイン』を半身に構え、矜人は開戦を告げた。
「さあ、ヒーロータイムだ!」
●立ちはだかる障害
ヴァレフォールを追いたいという焦りのせいか、数分が随分と長く感じられる。氷弾の嵐は主に癒し手である碧を狙って頻繁に放たれた。
「部長、花檻さん、凌ぎますわよ」
「わかっているよ」
「ええ、耐え切ってみせますわ。このくらいなら、ナベリウスの方が!」
ティノと伊織、鶉が仲間を庇うべく飛び出す。攻撃の火線を遮り、伊織の縛霊手が反撃の赤い光を灯して唸った。ラヴァルがファウラの前に飛び出し、毛皮で一撃を引き受ける。
「こやつら、味な真似を!」
「わざわざ留守を狙ってちょっかいを出したんだ、落とし前はきっちり付けさせて貰うぜ?」
コートを翻して構える矜人に、獅子の頭の配下――ファウラが唸るような声を返した。
「それはこちらの台詞。我が主に盾ついた罰を受けよ」
「罰を受けるのはそちらになりそうですわよ」
ティノの言葉が終わるより早く、素早く回り込んだ鶉のラリアットがまともにファウラの首を捉えた。人間なら首がへし折れても不思議はないほどの勢いで地面に叩きつけられる。
「危ないぞ、部長」
鶉に攻撃に転じようとする動きを見てとった紅が、ラヴァルの機先を制して炎を纏った弾を浴びせた。タイミングを逸したラヴァルが跳び退るのを追い、鶉が思わず微笑む。
「今回も心強い戦友と一緒。それが私の支えですわ」
舌打ちをしたラヴァルが、仲間に癒しの力を込めた矢を放つ碧に嘲弄の声をかけた。
「攻撃はしてこないのか? まあ、その程度の力ではな」
「弱くったって、できることはたくさんあるんだから、それをやるだけですっ!!」
「その通りだぜっ。俺の魂の旋律もお前らに届けてやるから覚悟しなっ」
「おまえは少し黙れ!!!」
歌い続けるファルケの音波攻撃に辟易したか、ファウラが必死で耳を寝かせていた。正直言って仲間もかなり辟易しているが、彼らの救いにはならないだろう。
そんな騒ぎを見ながら、殺人鬼がもし大悪魔を殺せたら殺魔鬼と名乗っていいのかな、などと伊織は考えていた。酷く語呂が悪いし何かダサいから御免蒙るけど、と呟いてラヴァルの背後に回り込む。
「ま、戦場なんだ。番狂わせくらい付き合ってもらう」
赤い輝きを灯した『花に嵐』が、軋む音をたててふるわれるや悪魔の背を引き裂いた。サイキックエナジーの光輪でラヴァルを斬り刻み、ファウラの攻撃が碧に届かないようティノが位置をとる。
「こんな小童ども相手に……!」
「その油断が命取りになるっすよ」
不意に懐に飛び込んだ拳虎がそう言い放つと、影をまとった拳をしたたか鼻面に捻じ込んだ。トラウマを引きずり出され、怒りの唸りをもらしたラヴァルが爪をふるう。が、拳虎は鮮やかなステップで攻撃範囲から逃れ出た。
「その身に刻め! スカル・ブランディング!」
踏み込んだ矜人が渾身の力をこめ、ぐんとしなった『タクティカル・スパイン』がラヴァルの巨体を半ば浮かせるほどの衝撃を叩きこむ。
「げはっ!!」
血の代わりに白い光を吐いて、ラヴァルが体をよろめかせた。地響きをたてて倒れる。
内側からずたずたに引き裂かれた体が衝撃でばらばらになった。砂の像が崩れるように見る間に風化し、跡形もなく消えていく。
●敵の屍を超えて
二体で抑えきれなかったものが一体でどうにかできるはずもない。ましてこの班は手練れが揃っている。何度か逃走の隙を窺ったファウラだったが、その度に手痛い打撃を受ける羽目になった。
「おのれ、こんなところで滅びるわけには!」
「逃がすわけにはいかないんでな」
紅の銃弾が嵐の如く降り注いで全身を穿つ。初めのうちこそそれほどの痛みではなかったが、狙いは徐々に正確になり、もはや急所を避けることすら難しくなってきた。
「非力な人間が磨き上げた『戦いの芸術』の精華、冥土の土産にしかとご覧あれ!」
拳虎が素早いフットワークで回り込み、相手の加護を弾き飛ばして戦意を奪うストレートを見舞う。零距離から驚くべき速さで撃ち出される魔力の矢すら見切って、雷を孕む必殺のアッパーカットが獅子の顎を打ちあげた。
「いくらアンタでも立てないだろ?」
「雉も鳴かずば撃たれまい、ってな。手を出す相手を間違えたと後悔して逝け!」
巨大な十字架を軽々と振り回し、矜人が膝から落ちかけたファウラを殴り飛ばす。たたらを踏んだ瞬間に十字架がもう一撃叩きつけられ、頭の上に振り下ろされた。鈍い音をたててオレンジの光がまた飛び散る。
「ぐっう!」
「貴女達が侮った、これが私たちの力ですわ!」
魅力的な体を青いリングコスチュームに包んだ鶉の放ったドロップキックは、鮮やかな軌跡を描いてファウラの胸を蹴り抜いた。息を詰まらせた悪魔が勢い余って吹き飛ぶ。
ティノの矢車菊が縫いとられた繻子織のストールが意志ある如く翻る。『乙姫』の名に恥じず、悪魔の胸を竜の牙もかくやとばかりの正確さで抉った。紅が狙いすまして放った銃が、喉を貫通して血の花を咲かせる。
「実力は劣っていても、相手のほうが狡猾でも上回っていても、頑張りますよ!」
碧のギターが弾かれて、鋭利に研ぎ澄まされた音波が叩きつけられた。
「バックハンドブロウ、見せてあげよう」
桜吹雪を伴いながら、伊織の『花に嵐』がファウラの足を引き裂いて爪痕を残す。もはや逃げることもままならない。
「歌エネルギー、チャージ完了! 聴かせても心に響かないのであれば、直接叩きこんで響かせるのみっ」
マイク代わりに持っていたマテリアルロッドがくるりと回る。立っているのがやっとのファウラの鳩尾に、それはまともにめりこんだ。
「刻み込め、魂のビートっ。逃げるよりも堪能しな? これが俺の旋律、サウンドフォースブレイクだぜっ」
体内で爆発的に膨れあがる魔力に、ファウラは為す術もなかった。
「灼滅者、ここまでとは……っ!」
驚嘆の声だけ残して、オレンジの被毛で覆われた体が内圧に耐えかねて裂ける。ひときわ大きく、鮮やかなオレンジ色の光が飛び散った。ちりちりと線香花火のように散って、全てが消える。
「これがお前に捧げるレクイエムってやつだ」
元通りくるりとマテリアルロッドをマイクのように戻して、ファルケが微笑んだ。
●学園防衛成功せり
戦いが終わったころには、ヴァレフォールの姿は既に付近になかった。
一行は混乱する戦場の中で、退路側からヴァレフォールを追っていたもう一方の班の姿を認めて駆け寄った。気付いた統弥が戦闘に及んだ状況を説明する。
「すみません、ヴァレフォールに逃げられてしまいました」
「気にするな、奴が吸血鬼軍に合流できなかっただけ十分だぜ」
応じた矜人が彼方へ目をやった。
撤退する者たちを引き受けているナミダ姫に合流出来ていないのは確かだ。別の勢力に合流する前にその動きを捉えられれば、倒す機会はまた得られることだろう。
「残念ですけれど、機会を待つことに致しましょうか。皆さん、お怪我はありませんか?」
吐息をついた鶉が部員たちを振り返ると、碧が心配そうに切り返した。
「部長が一番怪我してたんですよ、痛くないですか?」
「援護が要るところがあれば歌で助っ人にいこうと思ってたが、大体終わったようだなっ」
「いやーめちゃくちゃ残念っすねえ!!」
辺りを見回して残念そうな顔になったファルケを、拳虎がうわずった声で必死に慰める。そろそろ聞き納めにしないと、耳が元に戻らなくなるかもしれない。
「無事撃退できたことだし、帰ったらティータイムと行きたいな」
「気が早いのではありませんこと?」
苦笑するティノに伊織が会心の笑みをうかべた。彼女の淹れる紅茶は一番美味しいと思う――本人には内緒だけれど。
ひとまず、学園の防衛は成功。撤退していくダークネスたちを見送り、紅は短く吐息をついた。
かくて嵐のごとき混成軍の撃退は成った。
今や一大勢力を為す武蔵坂学園の灼滅者たちに、ひとときの休息は来るのか。
次に学園を襲う嵐の姿は、まだ見えない。
作者:六堂ぱるな |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年4月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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