夢の大城塞に住みませんか?

    作者:黒柴好人

     表面上は落ち着き、何事もなかったかのように静かな名古屋市。
     しかし市内にある住宅街の一角では、小さな異変が起きつつあった。
    「ふぁぁ、おはよー……。ん? んん!?」
     つい最近完成した新築の一軒家には賑やかで若い夫婦が越してきたという。
     夫はエリートサラリーマンらしく、なかなかに立派な家のようだ。
     こだわりの眩しい物件は、人の目を引き付けるには十分だった。
     今は別の意味で。
    「やあ目覚めたか我が妻よ! 間もなく完成するぞ!」
    「え、いや、完成ってどういう……。てか、なにこれ」
     朝、妻が目覚めると大胆リフォームされていたのだから驚くのも無理はない。
    「これこそが使命みたいなものだからな! ひいてはお前のためになる!」
     ご覧あれ、家をガッチリ防護するバリケードを!
     家具やベニヤ板、その他諸々の生活用品や資材を惜しみなく使用し、十重二十重に防壁を固めている。
     木材で固めた壁の上には有刺鉄線を貼り、尖ったアクセントとして光る。
     玄関、庭、窓に至るまで隙はなく、何者の侵入をも阻むだろう。
     そう、愛しのマイホームはマイフォートへと変貌していたのだ。
    「い、いやいや。ウチはセキュリティもバッチリだし、バリケードみたいなの作っちゃって……どうするのこれ?」
    「無論、更なる防衛力の強化を! これが城の石垣となるとあらば!」
    「何それ……今すぐ片付けなさーい!!」
    「安心しろ。俺はエリートなクラフターだからな!」
    「朝ごはん抜きにするからね!?」
    「ああ! バリケードかわいいよバリケード!」
     ご近所さんも何事かとその様子を覗き込むが、「ああ、いつもの夫婦コントか」と微笑ましい様子で立ち去っていく。
     今はまだ、笑い飛ばせる状況であろう。
     ……今、は。
     
     様子を伺っていたのは近隣の住民だけではなかった。
    「間違いない」
     少し離れたビルの屋上で、複数の人影が頷きあう。
     人影――武蔵坂学園の灼滅者たちは名古屋市内の住宅にバリケードを築く一般人が増えているとの報告を受け、調査に動き出していたのだ。
     確かに平時とは言えない状況の名古屋ではあるが――それにしては様子がおかしい。
    「やっぱり定礎怪人の仕業というのは確定みたい」
     まだ件の家を観察していた灼滅者の1人が人差し指を向ける。
     その先では、今まさに家主がでかでかとバリケードの木材にペンキで『定礎』と記し、満足そうに頷いていた。
    「……あからさま過ぎる」
    「あ、奥さんのツッコミが入ってる」
     先行した灼滅者の報告によると、同様にバリケードを作っている一般人のソウルボードを調べると、ザ・グレート定礎の配下である定礎怪人がソウルボード内を城砦化しようとしていたのだという。
     当然、そんな事をされてはどのような悪影響が出るのかわかったものではない。
     そこで、不審な行動をしている一般人のソウルボードに侵入、調査し、もし定礎怪人がいればこれを灼滅する事としたのだった。
    「さて。まずは作戦を考えるとしよう」
     決行は夜。
     ダークネスの礎を破砕すべく、灼滅者たちは準備に取り掛かる。


    参加者
    風真・和弥(風牙・d03497)
    武月・叶流(夜藍に浮かぶ孤月・d04454)
    小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156)
    御崎・美甘(瑠璃の天雷拳士・d06235)
    海堂・月子(ディープブラッド・d06929)
    オリヴィエ・オーギュスト(従騎士・d20011)
    花衆・七音(デモンズソード・d23621)
    饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)

    ■リプレイ

    ●夢か幻か
     人の往来がすっかりと途絶え、街全体が寝静まったと言える頃。
    「展開、完了しました」
     小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156)がサウンドシャッターを使用した事を確認すると同時に、闇の中から複数の灼滅者が件の家の前に素早く集合する。
    「おお……朝よりも強そうな感じになってるねー、バリケード」
     小さな声で目の前の有様をそのまま口にする御崎・美甘(瑠璃の天雷拳士・d06235)。
     今灼滅者たちがいるのは塀の外側。
     小洒落た小さな門柱と玄関の間は、全て木の板やガラクタ、レンガのようなものなどで塞がれてしまっていた。
    「これじゃ自分も出入りできないんじゃないかな……?」
     美甘の言葉に「確かに」と頷く風真・和弥(風牙・d03497)。
    「素人が作ったにしてはかなり頑丈だな。今の所は罠はないようだけど、気を付けた方がいいかもな」
    「そうね。なら私は周囲に人か、それ以外の目が見張ってないかどうか気を配っておくわね」
     和弥がバリケードを見分し、海堂・月子(ディープブラッド・d06929)が周囲を警戒する厳戒態勢。
     少しの後、障壁にこれといった危険性はない事が確認された。
    「誰かが覗き見している事もなさそうね。やるなら今よ」
     月子のゴーサインを受けたオリヴィエ・オーギュスト(従騎士・d20011)が静かにダイダロスベルトを伸ばす。
    「釘打ちされているつなぎ目を切断していきます……!」
     得物を自在に操り、的確にバリケードを解体していくオーギュスト。
     人一人分の穴を開け、そしてまたベルトを振るう。
     そうしてあまり時間も掛からずに玄関まで辿り着くと。
    「うわっ……」
     玄関脇に堂々と掲げられたモノに饗庭・樹斉(沈黙の黄雪晃・d28385)が言葉を詰まらせる。
     『定礎』。
     朝、この家の主人がドヤ顔でしたためた等身大サイズのサインだ。
     サイン。そう表現するのが良いだろう。
    「もうすっかり内側から定礎の思想で汚染してるよね。でもいくらなんでもコレはないでしょ……!?」
    「ないな」
    「ないわね」
     本物の定礎板に失礼極まりなかった。
    「それにしても、定礎怪人だけではソウルボードに入る事はできないはずだけど、どうなんだろう」
     気になっていた事をふと呟く武月・叶流(夜藍に浮かぶ孤月・d04454)。
    「アガメムノンみたいなシャドウが協力している?」
    「そうね。そう考えるのが妥当だけれど……」
     月子も同じ事を考えていたようで、首を捻るが。
    「何がしたいのかさっぱりね。とりあえずは怪人達の殲滅を優先しましょう」
    「直接会ったり、倒せば何か掴めるかもしれないしね」
     とにかく対峙しない事にははじまらない。
     灼滅者たちは慎重に玄関扉へと手を伸ばし、施錠を確認しようと――。
    「っ!」
     その瞬間、玄関が内側から開いた。
     一瞬肝を冷やす灼滅者たちだが。
    「おっ、もうここまで着いてたんか」
     ひょっこりと顔だけ出してきたのは花衆・七音(デモンズソード・d23621)。
     七音は日中、まだバリケードに穴がある内に旅人の外套を駆使して家の中に潜り込んでいたのだ。
     その間夫婦を観察していた七音は、バリケードを建築以外は異常はなかったと報告する。
    「奥さんの方、諦めかけてた言うても、あとで一発どついたるって顔はしてたで」
    「傍から見れば急におかしな事をし始めたわけですし、それは仕方がありませんね」
    「僕たちから見ても十分変だけどね」
     優雨と樹斉は夫に同情の念を抱く他なかった。
     全員が揃い、簡単な状況確認も終えた灼滅者たちは七音の案内で家に上がり込む。
     ダークネスから救うためとはいえ、他者の家に無断で立ち入る事に若干の気まずさを感じた叶流は足を止め目を閉じ、心の中で謝罪する。
     そして同時に約束する。
     必ず救い出す。
    (「わたしの地元をこれ以上めちゃくちゃになんて、させない」)
     胸の中の静かな熱い炎を感じながら叶流は目を開き、落ち着いた表情で仲間たちの後を追った。

    ●ようこそマイフォートへ!
     ソウルボードへと侵入を果たした灼滅者たちが見たのは、広大で巨大なオフィス。
     そう、文字通りの『巨大な』世界。
     机や椅子がまるで高層ビルかのような大きさでそびえ立ち、さながら自分たちの体が小さくなってしまったかのような不思議な空間。
    「うーん、定礎怪人はどう見てもあそこにいるよね」
     近くに落ちていた――それすらも人の身長よりもかなり大きな――ファイルの上に登った美甘は、誰がどう見ても不審な構造物を指差す。
     それは数ブロック先。
     通常ならばそこも机や椅子、様々なオフィス用品が並んでいたであろう場所は、何という事だろう。
     床に堀が穿たれ、石垣が築かれ、門がそびえ、そしてその奥には堅牢そうな城のようなものが確認できる。
    「世界観もなにもあったもんじゃないな……」
    「職場にお城のプラモデルを組むとこうなるのかしらね」
     個性的で独創的な光景に和弥たちは頭を抱えそうになる。
     そんな中、時折何かを叩くような金属音がソウルボード全体に響いている。
    「まだ完成はしていないようですね。完成したら定礎怪人に変わってしまうのでしょうか」
    「そっか、その可能性があったねー」
    「作業中は他への意識も薄れているはず。急ぎましょう」
     優雨と樹斉は互いに首肯すると、慎重に不思議なオフィスを進む事にした。
    「現実世界のバリケードとは、これといった類似点はなさそうだな」
     進みながら防衛設備を調べる和弥だが、ソウルボード内のバリケードが現実世界に再現されているわけではないように見える。
     そして堀に架かった橋を渡り門を抜けた先、城のような砦のような建造物に近付いた時だった。
    「……声が聞こえます」
     優雨が足を止め注意を促す。
     身を隠せる場所が無数に存在するバリケード要塞の恩恵を遠慮無く使わせてもらい、灼滅者たちは先の様子を窺う事にした。
     すると。
    「フン! フン! いやぁ捗る捗る!」
    「労働の汗とは気持ちの良いものだな、相棒よ!」
    「応よ!」
     定礎頭の定礎怪人2人が額に汗を浮かべ、爽やかに作業を進めていた。
     額? 汗?
     そもそも何爽やかしてんの?
     思うところはあるだろう。
    「そこまでだ、怪人! ソウルボードに身を隠してもお前達の悪行はお見通しだぞ!」
    「ぬう!」
    「何事!」
     オリヴィエが正面に腕を突き付けながら叫ぶ。
     思うところがあるのならばぶつけようではないか。直接!
    「それはこっちが聞きたいんだけどな!」
     樹斉もオリヴィエにならい、思わずポーズを決めながらツッコミを入れておく。
     男の子の憧れだよね、こういうの。
    「……それにさ、隠れるつもりならペンキで署名はどうかと思うんだ」
    「ペンキ?」
    「このソウルボードの人にそう仕向けたのはお前達じゃ?」
     かい摘んで説明するオリヴィエ。
    「ほう、それは将来有望な若造よ!」
    「ええっと……?」
     とぼけている、のだろうか。
    「とにかく悪影響が及んでいるのには違いないから。ソウルボードはあなたたちが好き勝手する場所じゃないんだよ!」
    「そうだそうだー! そこは建築現場じゃないよ!」
     叶流と美甘も抗議の声をあげる。
    「建設現場で働いている姿は妙に板に付いているけどな……」
     ぽそりと率直な感想を漏らす和弥。
     肉体労働により引き締まった細身の筋肉の上にタンクトップ、だぼついたズボン姿とくればそりゃもう現場の兄ちゃんにしか見えまい。
     この際頭部は無視しよう。
    「板に付いているとはいえ、ここは勝手に建物を建てていい場所ではない」
    「先程から否定ばかりしてからに。ん? ひょっとしてお前たち……」
     ハンマーを持った定礎怪人が何かに気が付いたようだ。
    「建設反対デモという奴か、相棒よ!」
    「さもありなん!」
    「ちゃうわ! あ、普通にツッコんでしまったやないか。ペース狂う相手やな!」
    「はっ、もしかしてそういう作戦なのかな!?」
     油断を誘う策士ではないかと美甘の推理が光る。
    「そんな理知的な怪人とは思えませんけどね」
     とは、優雨の一言。
    「理由はよい。我らの邪魔をするのであれば強制的に叩き出してやろう!」
    「ただし、この立派な城か砦かの建設を手伝うのであれば快くお前たちを受け入れよう!」
    「「さあ!! どうす」」
    「えい」
     樹斉のこうげき!
    「「ぐあああああああ!!」」
     定礎怪人は、スレイヤーカードを展開しもふもふ状態になった樹斉の無敵斬艦刀によりばっさりやられていた。
    「ごめんなさい、なんだか体が勝手に!」
    「樹斉君グッジョブ! あたしもそろそろぶっとばそうかと思ってたところだったよ!」
     いい笑顔で親指を立てる美甘。
    「というわけで、翔力発現! すぐに解体……の前にぶっとばーす!」
    「そうね、そろそろ暑苦しいお2人にはご退場願いましょうか。さあ、溺れる夜を始めましょう?」
     美甘と月子も殲術道具を開放し、各々の得物を構える。
    「さっきのがわたしたちの答え。解ってもらえた?」
     叶流がガンナイフの銃口を向けながら怪人に問う。
    「……フフ、そう来る事は知っていたぞ!」
    「思いっきり油断してたよね!?」
     オリヴィエの声は聞こえないフリをしつつ、怪人もまた戦闘準備を整える。
    「この城、いや砦か? ただでは明け渡さんぞ!」
    「何でさっきからそこ曖昧なの?」
    「……それに破壊しに来たのだから渡されてもな……」
     ツッコみ切れないので、後は刃を交えて語るしかないだろう。
     肉体労働で鍛えられた筋肉を収縮させ、「往くぞ!」と駈ける定礎怪人たち。
     ハンマーを持った怪人の一撃を、二振りの刃を交差させて受け止める和弥。
     重い金属音と火花が散り、睨み合う和弥と怪人。
    「ほう、地を砕き鉄を屠る我がハンマーを受け止めるか!」
    「受け止めた褒美に、少し話を聞かせてもらえないか?」
    「よかろう!」
     無駄に尊大な怪人に、和弥は力を緩めないまま訊く。
    「何故ソウルボード内を城砦化しようとしているんだ?」
    「それこそ我が使命!」
    「……誰かに命令されて?」
    「知らんな!」
    「城砦が完成するとどうなる?」
    「嬉しい!」
    「…………口も無いのにどうやって声を出しているんだ……?」
    「おお、それについては一説によると――」
     重要そうな情報は知らないのか、知っていて隠しているのか。
     今、この方法では真相を知る事は不可能だろう。
    「良くわかった」
     拮抗していた力と力は、しかし敢えて和弥が力を緩めた事により崩れる。
     前に転びそうになる怪人を軽い刀でいなし左手に持つクルセイドソードでその剣が冠する名の通り、背中目掛けて閃きの一太刀を見舞う。
    「ぐうッ!」
    「相棒よ! おのれ!」
     もう1体、オーラを纏った怪人が背後から和弥に迫る。
     だが。
    「そう焦らないで。アナタの相手はこっちよ」
     白刃が連なったウロボロスブレイドでその進路を阻害する月子。
    「アナタは攻撃に専念して、防御は任せてくれて大丈夫」
    「助かる、海堂」
     背中を合わせ、数瞬のやり取りを交わす。
    「面妖な!」
     オーラ怪人の一撃は、なかなか月子を捉えられない。
     幻でも見ているような流れるステップから変幻自在の攻撃が飛んでくる。
    「ハンマーが厄介だし先にあちらから片付けましょう。あら、何処を見ているの?」
    「ぐ、ぐぬう!」
     オーラ怪人は月子が引き付けている。彼女の進言通りに各個撃破がし易い形となった。
    「回復や支援はオリヴィエくんに任せるで!」
    「任せてください! これ以上被害を長引かせないためにも、全力で援護します!」
     遮蔽物に身を隠しながら、傷を癒やし仲間の守りを堅めるサイキックを行使するオリヴィエ。
    「んじゃ、元気よく定礎怪人ぶっ飛ばすで!」
     黒色の嵐となり派手に暴れまわる七音に気を取られるハンマー怪人は、優雨にとって格好の獲物そのものだった。
     悟られず放たれた妖冷弾は、怪人の体に次々と命中していく。
    「ぐ、お……体が、凍る!?」
    「その氷の花は、手向けの花。氷華に包まれて――」
     妖冷弾は蕾。それが花開く時。
    「永久に眠れ」
     哀れな犠牲者は冷たい花の園に飲み込まれ、全てを閉ざすのだ。
    「……小鳥遊センパイ、どう思う?」
    「この場所以外の異常を感じないのが不気味ではありますが、しかしそれならば早めに終わらせた方がよさそうですね」
     戦いながら周囲を観察していた樹斉と優雨。
     ソウルボードに異変はない。
    「ハンマー、まだ健在です!」
     オリヴィエの報告に、「しぶといなー」と美甘が駆け寄ると。
    「御崎流・奈落墜とし! てい、やあ!」
    「なんッ、ぐおおお!!」
     投げっぱなしジャーマン状態の地獄投げを叩き込んだ。
     飛ばされた怪人は城砦の壁をブチ抜きその先で爆散し、
    「え、あんな重厚そうな壁を?」
     叶流が目を丸くするのも無理はない。
     鉄板や強固な木材、その他土や砂利などを混ぜたような壁を安々と抜いたのだ。
    「待って、あれは」
     そして樹斉は知る。
    「わりと薄い壁!」
     結構手抜き工事だなーという事を。
    「見せかけの大防壁とがらんどうでワンフロアな城を取り敢えず造って後から設備を強化しようとした事実がバレてしまっては生かしてはおけん!」
    「長い言い訳はもういいよ。お遊戯なら別の場所でやってくれないかな?」
    「こんなお城、どうやって解体しようか結構考えていたのに!」
     叶流と樹斉からちくちくと殴られたり斬られたりして、
    「内装はまだないそうですって事やね。うんうん、この業界ではよくある事や……って、あるかーい!」
    「ガワから完成させると何か素敵ああああ!」
     七音のツッコミにより最期を迎えた定礎怪人だった。

    ●夢は、大城砦
    「あ~、一緒に消えてくれればよかったのに~」
     怪人の消滅と共に砦も消えないかと期待していた美甘だが、今の所その兆候はない。
    「時間経過で消えるかもしれないけど」
    「そう待ってはいられない、か」
     そうだね、と叶流は和弥に頷く。
     叶流は念の為にバリケードの様子等を記録しながら確認する。
    「破壊して帰るって事でいいかな?」
    「そうね。怪我人もなく皆無事みたいだし、そうしていきましょう」
     月子をはじめとして皆、提案に異論はなかった。
    「外のバリケードも夫婦が目覚める前に除去しないといけませんね」
    「そうだねー。もしかしたらさっきの戦闘より大変かもだけど、がんばろー♪」
     優雨の言葉に同意し、鼓舞する樹斉。
    「あの怪人達、やっぱり名古屋戦の残党だったんでしょうか」
    「ふーむ。もしや名古屋から逃げたグレート定礎、ソウルボードにいるんかな」
    「となれば、ソウルボードに入れた仲間が名古屋内に潜んでいる……?」
     作業しながら思案するオリヴィエと七音。
     城砦やその周辺にも手掛かりはなさそうで、少し肩を落とす。
     着々と解体は進み、朝日が覗く直前までには全ての作業が終了した。
     家の主人も正気に戻っている事だろう。
     夫婦仲も元に戻るといいのだが。
     そう祈りながら、灼滅者たちはマイホームからお暇するのだった。

    作者:黒柴好人 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年5月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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