戦いのゴングはサッカー場に鳴る

    作者:るう

    ●とある小学校、グラウンド
    「みんな、あれを見て」
     ユメ・リントヴルム(竜胆の夢・d23700)が指差した先にあったのは、学校のグラウンドで練習をする、地域のサッカーチームの小学生たちの姿だった。
     けれどもしばらく見ていれば、すぐに、とある事に気がつくはずだ。
    「ほら、物凄いラフプレーをしてるでしょう?」
     タックルに、スライディングは当然のこと、時にはボールごと相手の足を蹴ったり、平気で肘打ちを繰り出したり。
    「……ひどいよね。誰がこんなサッカーをさせてると思う?」
     ユメが指先を滑らせると、その先で監督らしき男が仁王立ちし、子供たちに高圧的な指導を繰り返していた。
    「おい3番! もっと本気で当たっていけ!」
    「おい9番! フォワードがその程度で転ばされるな! サッカーは格闘技だと思え!」
     あんな指導を許していてはスポーツマンシップが育たないし、何より子供たちの体も心も壊れてしまう。
     だから……とユメは監督を睨みつける。
    「それがどんなによくないサッカーか、あの監督自身に教えてあげましょう」

     監督から放たれる異様なプレッシャーからも判る通り、監督の正体はアンブレイカブル。彼の戦闘スタイルは格闘技ではなく、実は『サッカーのラフプレー』なのだ。
     すなわち、単に彼に戦いを挑んだ場合、彼は強化一般人にされてしまった子供たちを10人呼び集め、連携して戦ってくるだろう、とユメは予想した。
    「でも、ボク達もサッカーをしている体で戦えば、子供たちをボールに引きつけて、がら空きになった本人だけを攻撃できるかもね」
     彼らに無法サッカー試合を申し込めば、一番強いアンブレイカブル自身が、守りの要たるゴールキーパーに入るはずだ。キーパーは他の選手と一緒にボールを追ったりしないので、ボールで子供たちを引きつけている間、監督は攻撃したい放題になる。
    「もちろん、普通に戦うのと比べれば攻撃機会は減るけれど、それは相手も同じだよ。前後半45分ずつ、合計90分の間に監督を『永久退場』させればボク達の勝利。ああ、ハーフタイムを取ると回復されてしまうから、前後半通しの試合にしておかないと」
    「ところで、サッカーのルールってどんなのだったっけ?」
     おずおずと手を挙げて訊いた姶良・幽花(高校生シャドウハンター・dn0128)に、ユメは優しく微笑んだ。
    「よく知らなくても大丈夫。『メンバーは11人以下』と『ゴールエリア内のキーパー以外は手を使ってはいけない』くらいしか、きっとあのアンブレイカブルは気にしないから」


    参加者
    夏雲・士元(雲烟過眼・d02206)
    采華・雛罌粟(モノクロム・d03800)
    東屋・紫王(風見の獣・d12878)
    シエラ・ザドルノフ(何時でも何処でも緊急抜刀・d19602)
    天城・ヒビキ(インディゴファイア・d23580)
    ユメ・リントヴルム(竜胆の夢・d23700)
    粟国・陽那(ブレイジングリトルガール・d28355)

    ■リプレイ

    ●キックオフ
    「歓迎しよう、挑戦者チーム……せいぜい他の軟弱者どもなんかと違う、骨のある戦いをする事だな」
     ボールの前に仁王立ちし、他の選手たちをその長身から見下ろすアンブレイカブルの言葉を、ユメ・リントヴルム(竜胆の夢・d23700)のクラブ『竜胆の窟』を中心とした灼滅者たちは――より正確には、ユメのいる場所こそが『竜胆の窟』で、そこに集まってくる者こそ『部員』なのだが――、思い思いに聞いていた。
     こうして試合を申し込み、同じフィールドに立った以上は、今更退く事なんてできやしない……否、端から退くつもりなど毛頭ない。
     面白い、と男は口元を邪悪に歪めた。それからコイントスして首を傾げると、先攻はやろうとだけ言い残し、悠々と自陣のゴールへと歩みを進める。
     今、男は背を向けている。ならばキーパーの東屋・紫王(風見の獣・d12878)の微笑みの意味に、どうして気付く事ができようか?
    「ルール無用のサッカーにした事、きっと後悔すると思うよ」
     そこに浮かべるのは一抹の寂しさ。何故なら灼滅者チームの中には……紫王のような、友達がいなくてサッカーなんてやった事ない奴もいるからだ! ルール? そんなもの誰からも教わってないね!
     ……というわけで。
    「さて……オウンゴールだ……」
    「それを言うならプレイボールじゃないかな」
     初っ端から紫王はユメに間違いをツッコまれてしまったワケだが……ユメよ、キミも、何故か野球ユニフォーム姿でバットを構えてるルフィア・エリアル(d23671)の姿に引き摺られちゃあいないかい?

    ●~前半1分
    「とにかく、いっくぜー!」
     キックオフのホイッスルの直後、ドリブルしながらセンターを突っ切る人影が一つ。止めようと敵フォワードが飛び込んでくるが、灼滅者チームにしては珍しくサッカーユニフォームに近い格好のアンゼリカ・アーベントロート(黄金少女・d28566)は、身軽にボールを操って、右へ左へと避けてゆく。
    「突っ込め! 怖気付くな!」
     敵キーパーの指示の元、さらに何人かが行く手を阻む。こうまで集まられては抜けられない……誰もが彼女の運命を諦めた直後!
    「それっ!」
     アンゼリカが後方に蹴り上げたボールは包囲を抜けて、真っ直ぐに采華・雛罌粟(モノクロム・d03800)の方へと飛んでいった。
    「よーし、そのままいっけー! でも手は使っちゃダメだからね!」
     ユメの念押しを耳にして、待ってましたとばかりににいっと笑う。
    「成る程なるほど、手を使ってはいけないとは、いやはやさっかぁとは何とも都合のいい遊びですなァ」
     それから無造作にポケットに両手を突っ込むと……雛罌粟の足蹴にした影が、ぐにゃりとあり得ぬ形に伸びた。
    「足技主体とは、自分が一番得意とする戦闘スタイルなんすよねェ!」
     雛罌粟から溢れた大量の影が、瞬く間にボールを呑み込んだ。影はそれでも飽き足らず、コート半分の距離を越え、敵キーパーをも呑み込んで、そのままゴールを貫いてゆく……。
     ホイッスル……1-0。
    「今の技……アニメで予習したのと似たような同じ……」
     粟国・陽那(ブレイジングリトルガール・d28355)がじっと見つめていたゴールの中で、キーパーは実に愉快そうに笑うのだった。
    「驚いた、僅か1分で俺からゴールを奪うとは……。だがその勢い、果たしていつまで続くかな?」

    ●~前半5分
     小学生たちの瞳が邪悪に燃えた。それがラフプレー開始の合図である事は、今更語るまでもない。
     守りに入る前衛を、彼らは強烈な肘打ちで排除していた。スポーツマンシップも何もない行為に対し、眉を顰めるシエラ・ザドルノフ(何時でも何処でも緊急抜刀・d19602)。
    (「あんなサッカー、許せないのですます」)
     愛読サッカー漫画のライバルキャラが、祖国を背負えと彼女に囁く。それに応えてシエラは叫ぶ、私は誰にも負けないと!
    「ゼルーヴァ! あのドリブルをカットするですます!」
     召喚したライドキャリバーに騎乗したまま、向かい来る少年の鼻先で交差! 勢い、ボールをクリアして、騎乗したまま球を追いかける。
     ……スポーツマンシップって何だったっけ? あと陽那は、サーヴァントを化身って呼ぶのをやめるんだ。
    「死んでも球を確保しろ!」
     キーパーの指示通り、敵は宙をふらつくボールに食らいつく。けれどもユメは焦らずに、夏雲・士元(雲烟過眼・d02206)の名を呼んだ。
    「始まったばかりの『キャプテン夢』が打ち切りにならないよう、お願いね!」
    「こんなとんでもない部長を主人公にして、大丈夫かな?」
     思わず首を傾げつつ。でもユメ作&主人公の漫画の連載は守れなくとも、ゴールと仲間を守るのが士元の使命。
    「早々に死ね……分裂シュート!」
    「オレは……それくらいのシュートなら止めてみせるよ」
     無数に分裂したボールを片っ端から蹴落としてから、士元は息を呑む敵チームへと、ちっちっちっと指を振ってみせた。
    「真の分裂シュートとは! 弾を一点に収束するんだ!」
    「何ッ!? 幾つもの光の矢が生まれただと!? しかも全部がキーパーに!」
    「でもあれじゃ、カントクが全部取っちまうぜ……?」
     その時、静かに天城・ヒビキ(インディゴファイア・d23580)が動いた事に気付いた者は、小学生たちの中にはいなかった。

    ●~前半23分
     サッカー。なんと懐かしい響きだろうか?
     ヒビキの色褪せた記憶の中に、かつての男の子たちの姿が浮かぶ。時にはボール目掛けて蹴り合って、時にはハンドがわざとか否かで言い争った、幼少の頃が。
     ……ハンド?
     策がヒビキの脳裏に浮かんだのはその時だ。
     角を生やして羅刹の姿へ。そして、士元のボールをマジックミサイルの『分裂シュート』ごと受け止めんとするキーパーを、後ろに回りゴールエリア外まで蹴り飛ばす!
    「まさか……無理矢理俺にハンドさせるとは!?」
     蹴り飛ばされた体勢からも、キーパーは本物のボールを受け止めた。が……そのファインプレーが行なわれた場所は……既にゴールエリア外!
    「小賢しい真似を……だが、その程度の小細工で、俺が倒せると思うなよ」
     男の瞳に悪意が満ちる。ペナルティーキックをパンチで返し、彼は嵐の如くに吼えた。
     灼滅者たちの放つシュートがことごとく、殺意の魔弾に変化し戻る。それを庇い、ボールをトラップするディフェンダーを、暴力的なセットプレーが突き飛ばす。シュートに篭もる暴力性が、二度三度、紫王をゴールネットに押し付ける!
     1-3……あまりにもあっさりとした逆転だった。
    「まだいける?」
    「自分の事だけならまだまだね」
     心配してなさそうなユメの問いに、紫王は何の気なく答えてみせた。けれど、その言葉の裏に隠されているのは……姶良・幽花(高校生シャドウハンター・dn0128)が怪我人を治療して回っていなければ、いつどう転ぶかは判らないという事。
    「……任せて」
     その時ボールを要求したのは、意外にも、今までじっと皆の様子を観察していただけの陽那だった。
    「手を使わなきゃいいんだよね……?」
     囁いて紫王から球を奪い取るや否や、それを両足の間に挟んだままで、一挙、ビルよりも高く跳び上がる!
    「あれは、まさか……アイツを止めろ!」
    「ダメだ高すぎる……うわっ、眩しっ!」
     邪魔できる者などいるはずもない! 空中で方向を変えた陽那の体ごと、ボールは真っ直ぐにゴールへと落ちてゆく!
    「ぐおおぉぉぉ……!」
     キーパーごとボールを押し込んだゴールの中で、陽那は褒めてとでも言いたげな顔で自陣を振り返った。
     現在……2-3。

    ●~前半終了
     一進一退の攻防が続く。1点を取れば1点を返され、2点を取られれば2点を返す。
    「サッカーはやはり、打撃戦が面白い……」
     一人で納得しながらバットで打撃戦(物理)を繰り広げるルフィアは、小学生並の喧嘩で敵選手を釘付けにしつつもボールをバットで打ち返しては毎回ハンドを取られてるので、役に立っているのかどうかは微妙。こちらには回復役の幽花がいる以上、長期的には多分有利になってるのだが。
     そんな際どい状況の中、急に、陽那のボールを追う動きが止まった。ユメが大声で陽那を呼ぶ。
    「まだまだ頑張って! 見せ場はこれから作るんだから!」
     けれども、陽那の様子がおかしい。唐突にふらふらとベンチに向かい……弁当やらお菓子やらを漁り始める。
     まずい……電池切れだ!
     ユメがその危機に気を取られた瞬間、その脇を一人の少年がすり抜けていった。
    (「しまった……!」)
     ユメを躱した少年の口元が、勝利を確信した笑みへと変わる。彼が、ゴール左上へと放った球が……。
    (「まさか……俺が跳んだのとは反対方向に曲がるなんてね」)
     やられたと紫王が苦笑いしたのと同時、シエラがゴールへと向かって跳んだ。ボールの吸い込まれてゆく右角に、ゼルーヴァから飛び出た弾丸のように躍り出る!
     なのに少年は、再び愉快そうにほくそ笑んだ。
    「でもねお姉さん……このボール、もう一度曲がるんだ」
     S字を描き始めるボール。が……それがネットに突き刺さる直前!
    「今のはまさか、ゴールポスト三角蹴り!?」
     驚愕する紫王の視界の隅で、シエラの軌道も変化する! クリアされたボールをアンゼリカが拾い、灼滅者チームはそのまま反撃へと移る!
     一気に変わった流れの中で、敵は浮き足立っていた。
    「守れ! もう一度流れを引き戻せ!」
     敵キーパーの一喝で、ようやく敵は戦意を取り戻し始める。そのうち一人がアンゼリカに向かったが……。
    「もんごりあん・きっく!」
     が、排除すれどもまた新たなる選手!
    「女が俺たちのボールに触るんじゃねえ!」
    「うるさーい! 私だってゴールしたいんだー!」
     ボコバキ。
     ケンカ中の二人から零れたボールを、ヒビキが低い姿勢で掠め取った。
    「抑えろ!」
    「無理ですよ……これが私の『ヘディング』ですから」
     猛回転と共に生まれた暴風が、押し寄せる敵選手をなぎ倒す。けれども、激しい風にもかかわらず、ボールはヒビキの頭から離れない!
    「ボールを……角で刺しているだと!?」
     ヒビキごとボールを抑え込まんと、キーパーが迎撃の構えを取った。けれどもヒビキは頭を振って。
    「パスはアタシが受け取るよ!」
     角から抜けたぺちゃんこの球が、ファム・フィーノ(d26999)に渡った直後、球は謎の薬品を注入されて行く先を変えた。
    「ひなげしさん……ふっきとべー!」
     仲間へのパスである以上、全てはこけおどしであろう。そう判断してボールを掴んだキーパーに……角の生んだ穴から噴き出したのは、orヒール毒!
    「小癪な……!」
     一瞬慄いたキーパーのこめかみに、雛罌粟の上段回し蹴りがクリーンヒットした。
    「さァ、さっかぁしやしょう……お前ぼぅるな!」
     さらに再びの横蹴りが炸裂し、意識の遠のいた敵の巨体ごと、ボールをゴールへと叩き込む!
     6-6、同点……前半終了の、僅か3分前の出来事であった。

    ●ハーフタイム
     短いコートチェンジの時間。
     アンブレイカブルチームとすれ違う灼滅者たちは、誰もが、彼らの強い憎しみの視線に気付かずにはいられなかった。
    「奴ら……思った以上にやるようだ」
     男は聞こえよがしに小学生たちに説く。
    「だが、死んでも必ず勝て。後半は、フィールドは文字通りの戦場と化すのだからな」

    ●~後半8分
     小学生たちの発する闘気の量が、さらに数段増していた。けれども彼らのテクニックとパワーは、増すどころか逆に低下している。休憩もなくサイキックサッカーを続ける彼らの心と体が、ハーフタイムの監督の指示に、萎縮し重圧を感じているためだ。
    「そこ、がら空き!」
     好機と飛び込んだアンゼリカ。けれどもその背へと牙を突き立てんと……光る気弾が迫っていた。
    「あ……あれは!」
    「何ィ!? 知っているのか士元!?」
     士元が驚愕の表情で敵キーパーを指す。両足の甲の上に新たなる光を溜めて、男は凄みのある笑みを浮かべてみせている!
    「球状の気弾を撃ち合う古代中国の決闘法……一説にはフットボールの語源になったともいう沸頭紡流! オレが使った技の源流に当たるものだ!」
     その言葉には偽りしかない。しかないが……敵が、完全に殺意を持って戦い始めた事だけは紛れもない事実!
    「やらせるかー!」
     気にせず突っ込むアンゼリカへと、本物と気弾、二つのシュートが襲いかかった。が……士元と二人肩を並べて、その双方を見事にブロック! 方向性を失ったボールは、シエラの前をふらふらと飛んできた。
    「ラインを上げよう!」
     ユメが号令をかけると同時、チームは超攻撃的フォーメーションへと変化する。キーパーのはずの紫王すらもが飛び出して、完全に短期決戦のポジションと化した灼滅者たち!
    「狙うは向こうのキーパー、ただ一人! 喰らえ監督! 名付けて……」
    「「「「「「「「「「「アルティメット・カウンター!」」」」」」」」」」」
    「兎に角ボールを取り返せ! あんなもの、攻めれば容易く打ち破れる!」
     男は大声で吼え猛た。シエラがそれに言い返す。
    「そう簡単になど行かせないのですます……必殺、マサムネブレード」
     ゼルーヴァの車輪の超回転が、ボールに強烈な縦向きスピンを与える。そのまま地面すれすれに、まるで這うような軌道のパス!
    「止めろ……いややはりいい、触らなければ線を割る! あんなパス、味方も取れない代物だ……何ッ!?」
    「こりゃまた、随分と黒い想念が溜まるぱすですなァ」
     急に自分の顔面目掛けてホップしたボールを寸前で躱して見上げ、雛罌粟はにいと口の端を吊り上げた。
    「この想念……そういやこんな風にも使えそうでやす」
     追って上空に跳び上がり……ボールを下方へ蹴り返すと同時、限界まで溜め撃つ闇の弾!
    「お返しっすよーーーッ!!!」
    「だが、まだまだ……弾くッ!」
     衝突し合う闇と光! 再び浮いた緩い球は……ユメの頭上へとやって来た。
    「いくよ紫王。合体、スカイラブリンドライヴルムシュート!」
    「合体? ……っていきなり他人を踏み台におわっ!」
    「あの人のああいう所、いつも圧倒されるよ」
     呆れ半分の驚嘆で空を見上げる士元の前で、ユメは伸び伸びと空中で舞った。その爪先が触れた球が……。
    「おっと、手が滑ってオーラキャノンが飛び出した」
     紫王が何だかんだで全身から放ったオーラの力を乗せて、勢いよくアンブレイカブルへと加速する!
    「触るなよ、触れたら子供でも容赦なく吹き飛ばすからね」
     思わず小学生たちの足も竦んだ中で、強烈なシュートに駆け寄れる者は、灼滅者たちだけに限られていた。
    「きっと……火の力も一緒にしたら、もっと強力な一撃になるよね」
     陽那のキックが後押しした途端、脚から炎が燃え上がり、ボールに纏わりついてゆく。これには無論、アンゼリカだって黙ってはいない。
    「私のシュートも一緒に混ぜろー!」
     無駄にポーズを取ったのが災いし、アンゼリカは必死で追いつき必殺・なんとかチャンネルシュー!
    「こ、これほどのサイキックを乗せたシュートなど……」
     さしものアンブレイカブル・キーパーの額にも、嫌な脂汗が滲み出た。だが、こんな凶悪なもの……別に律儀に受け止めてやらずとも、点をくれてやるだけでいいのだ。
     キーパーの本分を捨て去って、ボールを躱そうとした男の頭上に、一つの影が被さった。一体何かと見上げれば……そこには、天より降り来たるヒビキの姿!
    「逃しません」
     空中からの衝撃が、男をその場に縫い付けた。そして……。
    「こ……こんなものをまともに受けてしまっては……お、俺の体が……保たん……!」

    ●それから
     監督とキーパーを同時に失った小学生たちは、最早、灼滅者たちの敵になどなり得なかった。ユメが記念になどと気まぐれを言い出したお蔭で、彼女たちは『キーパーまで含めて』全員ハットトリック以上という実に大人気ない戦果を獲得していた。
     願わくば……小学生たちの自信と夢が、一連の出来事に打ち砕かれていない事を。未来の彼らの人生が、もっとスポーツマンシップに溢れている事を。
     そんな事を祈る者もいたけれど、灼滅者たちは帰り際の夕方の河川敷で、無邪気に勝利の胴上げをし続けるのであった。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年5月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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