●海辺の町
「ここは……一体……」
突然、復活してしまった大淫魔サイレーン配下の淫魔は、まったく状況が分からぬまま、海辺の町にいた。
そのため、仲間達と連絡を取ろうとしたのだが、相手側に何かあったのか反応はなく、命令も来ていないような状態だったため、とりあえず人間達を誘惑して居場所を得る事にした。
一般人達を誘惑する事はさほど難しい事ではなく、あっという間に美少年達を集めてハーレムを作る事が出来たものの、まだまだ情報不足であった。
●エクスブレインからの依頼
「サイキック・リベレイターを使用した事で、大淫魔サイレーンの配下の動きが活発化しているのが確認されています。皆さんには、復活した大淫魔サイレーン配下の淫魔の灼滅をお願いします。復活した淫魔達は、状況を把握しておらず命令なども出されていない為、淫魔の本能に従って行動しているようです。しかし、より上位の淫魔が復活すれば、その命令に従って軍団を作り上げる可能性があるので、今のうちに灼滅できるだけ灼滅しておく事が重要になるでしょう。また最近、復活したばかりのため、武蔵坂の存在も知らないようです。特に誰かの指示も無く、他の淫魔と連絡が取れていませんが、大淫魔配下である為、命令が来たら、すぐに集まる予定のようです。そのため、遠大な計画は行わないようです」
エクスブレインからの依頼はこうだった。
淫魔は裸に近い恰好をしており、海辺の町にある倉庫をハーレム化して、誘惑した美少年達の一部を強化一般人にした上で、自分の身を守らせているらしい。
強化一般人の数は3人ほどだが、元は罪のない一般人なので、なるべく殺さないで欲しいとの事だった。
「まだ淫魔は状況を理解しておらず、ハーレムを拡げつつ、情報収集に専念しているようです。そう言った意味で、灼滅するなら今がチャンスでしょう」
そう言ってエクスブレインが、灼滅者達に淫魔を依頼した。
参加者 | |
---|---|
イヴ・ハウディーン(怪盗ジョーカー・d30488) |
風上・鞠栗鼠(剣客小町・d34211) |
半澤・夜火(黒寝猫さん・d34686) |
華上・玲子(高校生ご当地ヒーロー・d36497) |
●海辺の町
「さて、久方ぶりの現場復帰だな。暫くは病院生活だったから、勘が鈍ってないか心配だな」
半澤・夜火(黒寝猫さん・d34686)は苦笑いを浮かべながら、仲間達と共に淫魔が確認された海辺の町にやってきた。
海辺の町自体は、平穏そのもの。
だが、実際には淫魔によって海辺の町にある倉庫に美少年達が集められており、大淫魔サイレーンの指示をあるまで力を蓄えているような状態だった。
しかも、淫魔は美少年達を集めてハーレムを作り、彼らを手足の如く操って情報収集をしている最中のようである。
いまのところ、表立った動きはないものの、大淫魔サイレーンの指示さえあれば、いつ行動を開始してもおかしくないような状況にあるため、早急に灼滅しておくべきだろう。
「私は待っていた! 正義を行うときをもっちぃ。校長先生が命を削り、発動したサイキック・リペレイターを無駄にしないため、頑張るもっちぃよ」
華上・玲子(高校生ご当地ヒーロー・d36497)が無駄に胸を張り、恰好よくポーズを決める。
だからこそ、失敗は許されない。
成功する事が大前提の依頼であった。
「よっしゃ、反撃の狼煙を上げる時♪ 頑張って依頼を解決するぜ」
イヴ・ハウディーン(怪盗ジョーカー・d30488)も、自分自身に気合を入れる。
まったく不安がないと言えば嘘になるが、頼りになる仲間達がいるため、心配する必要はないだろう。
「校長はんのサイキック・リペレイターが発動したし、こちらで出来ることは頑張らんとあかんな」
風上・鞠栗鼠(剣客小町・d34211)が、イヴの頭をグリグリする。
その途端、玲子が『仲間に入れて、もっちぃ』と言わんばかりに、鞠栗鼠とイチャついた。
「しかし、淫魔って美少年とか好きやな……。うちなんてモテようと思うてもフラれてばかりや……」
鞠栗鼠が黒いオーラを纏いながら、百物語で人払いをした後、淫魔が拠点にしている倉庫を睨む。
倉庫はしばらく前から使われていなかったらしく、淫魔の拠点になってからは毎日のように宴が行われているようである。
それは鞠栗鼠にとって許し難い事であり、また羨ましい事でもあった。
出来る事なら代わってほしいと思ったりもするが、先々の事まで考えると色々と大変そうである。
(「……おれも誘惑されたい」)
そんな中、イヴが淫魔の姿を想像しながら、悶々と妄想を膨らませた。
事前に配られた資料を見る限り、淫魔はエロス全開!
それに加えて、テクニシャン。
おそらく、今までに感じた事がないような快楽に包まれながら、身も心も虜にされてしまうのだろう。
実際に美少年達も淫魔によって骨抜き状態にされているらしく、彼女なしでは生きられないほど依存をしているようである。
それを考えただけでイケナイ気持ちが頭の中で膨らみ、やり場のない感情が爆発的に膨らんだ。
だからと言って、ここで発散するわけにもいかないため、淫魔に頼んでコッソリ……という邪な考えが脳裏を過ったものの、魅了されてしまうとシャレにならない事になってしまうため、激しく首を横に振り、ムクムクと芽生えた煩悩を頭の中から追い出した。
「この中に、淫魔が……もっちぃ」
玲子が緊張した様子で、ナノナノの白餅さんを抱きしめ、リーダーである夜火の合図を待つ。
イヴも『煩悩退散!』と言わんばかりに、白餅さんをムニムニと触る。
白餅さんもまんざらではない様子で、のんびりまったりダラダラモード。
「さて……、油断せぬように依頼に当たるか。メンバーが濃い後輩達が多いから、しっかりとしないとな……」
そして、夜火は夜霧隠れを展開すると、煙幕に隠れながら、仲間達に対して突撃の合図を出すのであった。
●倉庫内
「こ、これは一体……。何が起こっているの!? て、敵……? 敵なの!?」
突然の襲撃に驚いた淫魔が、警戒した様子で身構えた。
淫魔は裸に近い格好で、かろうじて局部を隠しているような状態だった。
そのまわりには、あられもない姿をした美少年達がおり、怯えた様子で体を震わせていた。
「目覚めたばかりですまないが、ここで眠って貰う」
夜火が霊犬のちび野良さんと一緒に、淫魔達の前に陣取った。
「あなた達は何者!? あたしの……いえ、あたし達の敵……なの!?」
淫魔が夜火達の正体を確かめるようにして、少しずつ間合いを取っていく。
おそらく、夜火達が何者なのか、未だに理解していないのだろう。
夜火達に関する情報を手に入れていないため、迂闊に攻撃を仕掛ける事が出来ないようだ。
「淫魔に恨みは無いけど、ここで決着を着けさせて貰うぜ」
イヴも一緒になってポーズを決め、淫魔の前に陣取った。
「どうやら、あたし達の事を知っているようね」
そこで淫魔は確信した。
目の前にいる相手が敵である事を……。
少なくとも、味方ではないだろう。
この状況で敵意を抱き、問答無用で攻撃を仕掛けようとしているのだから……!
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、鏡餅が呼ぶ! もっちぃあV参上」
それと同時に玲子がコンテナの上に立ち、自ら名乗りを上げて、白餅さんと一緒に胸を張り、思わせぶりにポーズを決めた。
白餅さんも何となくドヤ顔で、決めポーズ。
『きっ、決まった!』と言わんばかりのダンディフェイス。
「ひゃあ!?」
その途端、まわりにいた美少年達が酷く怯えた様子で、淫魔にしがみついていく。
淫魔も『大丈夫、怖くないから』と優しく囁き、怯えた様子で美少年達を落ち着かせようとした。
「それにしても、羨ましいシチュエーションだ」
イヴが淫魔達を見つめて、クスリと笑う。
もしも、美少年達が自分の意志で、淫魔と一緒にいるのであれば、放っておいたかも知れない。
だが、淫魔によって魅了され、虜になっているのだから、放っておく訳にはいかないだろう。
「う、うわあああ!」
そんな中、美少年達の恐怖が限界に達し、這うようにして倉庫から逃げ出した。
そのほとんどが服を着る事がないまま、倉庫を飛び出していったが、おそらく戻ってくる事はないだろう。
「ちょっ、ちょっと!」
これには淫魔も驚いたが、後を追う事も出来ないため、悔しそうな表情を浮かべて、拳を震わせた。
「まあ、一般人は放っておいても、ええやろ」
鞠栗鼠もまったく興味がない様子で、逃げ惑う美少年達から視線を逸らす。
その間に美少年達が倉庫から出ていき、残ったのは淫魔と強化一般人だけになった。
「……淫魔様は僕達すが守るっ!」
次の瞬間、淫魔達のまわりには強化一般人達が、鞠栗鼠達の行く手を阻むようにして、次々と襲い掛かってきた。
「ほな、捕縛しとこ」
それを迎え撃つようにして、鞠栗鼠がイカロスウィングで、強化一般人達を捕縛した。
「うぐっ! 負けて……たまるかあああああああああああああ」
金髪の強化一般人が絞り出すようにして声を出し、鞠栗鼠に殴りかかっていこうとした。
しかし、身体が思うように動かず、鞠栗鼠に対して敵意を向ける事しか出来なかった。
「それじゃ、しばらく寝ていてもらおう」
その間にイヴが一気に間合いを詰め、強化一般人達に攻撃を仕掛けていく。
それと同時に強化一般人達が呻き声を上げ、重なり合うようにして倒れていった。
●淫魔
「せっかく集めた美少年達を……。よ、よくも、やったわね!」
淫魔が悔しそうな表情を浮かべ、悔しそうな拳を震わせた。
彼女にとっては、予想外の事ばかり。
この日のために、ある程度の力を蓄えていたはずだが、その予想を上回るほどの強さを、灼滅者達は持っていた。
「……世の中不条理や」
そんな中、鞠栗鼠が黒いオーラを漂わせ、淫魔をジロリと睨みつけた。
ここまで美少年達に愛されていながら、それを道具のように扱っているため、淫魔に対する怒りが増した。
おそらく、淫魔は美少年達の有難みをまったく理解していないのだろう。
そうでなければ、美少年達が傷つけられているような状況で、涙ひとつ浮かべずに戦う事など出来ないはずだ。
「……正義執行!」
そう言って玲子が無駄に胸を張り、ビシィッとポーズを決めた後、鞠栗鼠と連携を取りつつ、除霊結界を発動させた。
「あなた達が正義……? 笑わせないで、何が正義よっ! それに、正義だからって、何をしても許されるわけじゃないのよっ! むしろ、逆! 正義を騙るような輩は、死あるのみ!」
淫魔が邪悪な笑みを浮かべて後ろに飛び退き、狂ったように衝撃波を飛ばす。
その衝撃波は刃物の如く鋭く、ほんの少し触れただけでも、危険なほどの破壊力を秘めていた。
「この程度の攻撃で私達を止められると思ったら、大間違いもっちぃ! 鏡餅ビーム!」
玲子が傷つく事も恐れず雄叫びを響かせ、淫魔にご当地ビームを撃ち込んだ。
「やっぱり、あたしの考えは間違っていなかったようね。あなた達は敵っ! 敵っ! 敵ィ!!!!」
それでも、淫魔は怯む事なく、再び衝撃波を飛ばしてきた。
先程よりも鋭く、破壊力を秘めた衝撃波を……!
「……相手は宿敵。ここで負けるわけにはいかない!」
だが、夜火は躊躇う事なく間合いを詰め、淫魔に閃光百烈拳を叩き込む。
「うぐっ……! ま、まだよっ! こんな事で……倒れるわけには……」
淫魔が悔しそうな表情を浮かべ、その場にガックリと膝をつく。
こんな事になるのであれば、もう少し力を蓄えておけばよかったと思ったものの、今となっては後の祭り。
いくら後悔したところで、時間を巻き戻す事は出来ない。
それでも、あの時、こうしていたら……。
あの時、こうしておけば……、という考えが脳裏に過り、悔しい気持ちでいっぱいになった。
「ここで見逃すわけにはいかねえ。それは覚悟をしていたはずだ」
次の瞬間、イヴが淫魔に狙いを定め、デッドブラスターを撃ち込んだ。
「うぐ……いやあああああああああああ」
その一撃を食らった淫魔が断末魔を響かせ、弾け飛ぶようにして消滅した。
「やっぱ、男はあかん……次からは美少女を狙おっと」
鞠栗鼠が何処か遠くを見つめ、しみじみとした表情を浮かべる。
そして、灼滅者達は夜火の誘いで、近所にあるファミレスに向かうのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年5月15日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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