立夏の渚と復活する淫魔

    作者:小茄

    「んんっ……ん? あら? ここは……どこかしらぁ?」
     暦の上では夏。
     とは言うものの、関東の海はまだ夏と言う雰囲気でも無く、平日の浜辺には人影もまばらである。
    「サイレーン様や他の皆は……?」
     そんな砂浜で身体を起こす、白いワンピースの女性。
     流れる青髪に白い肌、スラリと長い手足。10人に聞けば少なくとも8人は美しいと評する様な、うら若い女であった。
    「……おい、見ろよ。美人じゃね?」
    「だなぁ……撮影とか? にしてはカメラマンも居ないけど」
     そして彼ら――学校帰りに浜辺を歩いていた高校生2人組も、多数派に属する感想を抱いた。
    「あの、大丈夫っすか?」
    「え? うぅん、大丈夫じゃないかもぉ」
     歩み寄り、気遣わしげに尋ねる青年に対し女は、触れなば落ちんとばかりに儚げな様子で答える。
    「え、えっと、俺達で良かったら、なんつーか……力になりますけど」
    「ほんとぉ? じゃあ、お言葉に甘えちゃおっかなぁ?」
     女は人差し指を口元に宛てると、2人を上目遣いで見ながら、少し困ったように微笑む。あざとい。
     
    「淫魔ですわ。サイキック・リベレイターを使用した事で、大淫魔サイレーンの配下が活動を活発化させている様ですわね」
     今回の任務は、この配下淫魔1体を灼滅する事。
     復活した淫魔は現状を把握しておらず、命令なども届いていない為、現時点では淫魔の本能に従い、奔放に行動している様だ。
    「ですが、上位の淫魔が復活すれば、その命令に従い組織的な行動を始める危険がありますわ。今のうちに、可能な限りこれらを灼滅したい所ですわね」
     有朱・絵梨佳(中学生エクスブレイン・dn0043)は、一先ずそこまでの状況説明を終えてから、標的についての詳細な説明に移る。
    「彼女が復活したのは、神奈川県横須賀市の津久井浜という場所ですわ。海岸はオフシーズンなのでひとけは多くないですけれど、たまたま通りかかった男子高校生が、彼女の毒牙に掛かりつつある様ですわね」
     このまま時が経てば、彼女の配下となる人間が出始め、淫魔自身の力も増して行くだろうと絵梨佳は言う。
     
    「さほど人も居らず、視界や足場も比較的良好。戦うには好都合ですわね。また、淫魔は武蔵坂についての知識も無いはず。先手を取れそうですわね」
     戦いとなれば、淫魔はサウンドソルジャーのサイキックに似た力と、リングスラッシャーの様な光輪を使いこなすと言う。
    「それともう一つ。先述の通り、高校生2人が彼女に籠絡されつつある様ですわ。このままだと、強化一般人として手先にされてしまいそうなのだけれど、彼らに淫魔の誘惑を退けさせる事が出来れば、それに越した事は有りませんわね」
     例えば、彼女の言うなりになると危険である等、理性的に訴える。淫魔を超える魅力で誘惑し返す。
     逆に、そんな高校生より、俺の方が頼り甲斐が有るぜと淫魔にアピールする等々、方法は無限に有りそうだ。
    「仮に強化一般人になってしまっても、KOすれば彼らは元に戻りますので、こだわり過ぎる必要も有りませんわ」
     いずれにせよ淫魔を灼滅し、戦闘に勝利すれば任務は成功だ。
     
    「また新たな戦いの始まりという事になりますわね。幸先の良い報せをお待ちしておりますわ」
     そう言うと、絵梨佳は灼滅者達を送り出すのだった。


    参加者
    今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)
    近衛・朱海(煉驤・d04234)
    アレクサンダー・ガーシュウィン(カツヲライダータタキ・d07392)
    森沢・心太(二代目天魁星・d10363)
    月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)
    中川・唯(高校生炎血娘・d13688)
    エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)
    アルルーナ・テンタクル(小学生七不思議使い・d33299)

    ■リプレイ


     春の海は穏やかで、無風のこの日はウィンドサーファーの姿も殆ど見られない。
     そんなひとけもまばらな海岸で、白いワンピースの女性と制服姿の男子が二人、何やら訳ありな様子で話し込んでいた。
    「私ってぇ、本当にダメな女なのよねぇ。独りじゃ何も出来ないって言うかぁ」
     困り顔でため息を零しながら、胸の谷間を強調する女。ただでさえ身体のラインがハッキリと出る薄着だと言うのに。
    「……え、えっと……それで、どこに行きたいとかあるっすか?」
    「うんうん。それか、連絡したい所とか?」
     高校生達はどぎまぎしつつも、谷間から目を逸らして尋ねる。
    「うぅん、イきたい所ねぇ……君達なら連れていってくれそうかもぉ」
    「ど、どこっすか?」
     ゆっくりと立ち上がり、意味深な笑みを浮かべつつ二人に歩み寄る女。
    「ストップストップ。そこの男子諸君、ちょっとこっちの話を聞いてみてよ」
    「え?」
     と、そんなタイミングで掛かる声。
    「最近さ、美人局の被害が多いんだよ。ここに居る男子もその被害者でさ……ちょっと今調べてるんだ」
     月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)は、ワンピースの女と高校生の間に割り込む様にしつつ事情を説明する。
    「え、何の話ぃ? 私とは無関係だと思うけどぉ」
     予期せぬ横やりにポカンとしつつも、弁解しようとする淫魔。
    「このお姉ちゃん、うちのお兄ちゃんも騙されて、お金いっぱい搾取されたの! あんた達もきっとそうなる」
    「えぇ、わたしの友人の友人もですけど、だまされて心にひどい傷をおっちゃったんですよっ! 心に傷を負って引きこもりになっちゃうし、自分に自信が持てなくなっちゃうみたいだし、生活習慣がおかしくなるし、太っちゃうし」
     が、それさえも遮って畳みかけるのは、今井・紅葉(蜜色金糸雀・d01605)と中川・唯(高校生炎血娘・d13688)。
     小道具の目薬まで駆使して、熱演を繰り広げる。
    「ひ、人違いよぉ」
    「悪いことは言わない。現実を見よう。こんな美人に男がいないと思うのか? いいように使われた後で捨てられるのがオチだぞ」
    「うっ、まぁ……確かに」
     更には、同じ高校生とは思えない説得力で直接男子二人を諭すアレクサンダー・ガーシュウィン(カツヲライダータタキ・d07392)。
    「うんうん、君達も災難だったね。僕も君達と同じようにあの女性に親切にしようとして騙された事があるんだ」
    「そう、なんすか……?」
     そして被害者役を務めるのは、見るからに純朴そうな森沢・心太(二代目天魁星・d10363)。適役である。
     被害者の知人に加え、実際の被害者まで居るとなれば、ミステリアスな美女も、妖しい容疑者にしか見えなくなってくる。
    「ち、ちょっと待ってってばぁ。私はあなた達なんて一度も会った事ないしぃ」
    「道案内しようとしたら怖い人達が出てきてね。あっちは騙した人の顔なんか忘れているみたいだけど」
     濡れ衣を着せられつつ有る状況に、慌てて弁解を始める女。けれど、心太は先回りする様に言う。
    「あなた達、私の事助けてくれるって言ったじゃない。あれは嘘だったのぉ?」
    「い、いやでも……この人達が」
    「酷いわぁ。そんな根も葉もない濡れ衣で、こんなに困っている私を見捨てるだなんてぇ」
    「いやぁ、俺達は別にその……疑ってるとかではなく」
     グスンと涙を浮かべながら、男子にすがるような視線を向ける女。
    「あんな分かりやすい詐欺に引っかかるなんて本当に馬鹿ね」
    「うぐっ?!」
     女の涙に翻弄される男達に、醒めた視線を向けるのはエリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)。
    「まったく。こんな美人がうちのイケメンお兄ちゃんを捨てて、リアル彼女も作れない地味なガキを選ぶわけないんでしょ?」
    「ガーン」
     更には、紅葉の歯に衣着せぬ物言いに、衝撃を受けた様子の男子。
    「いや、俺達もその……変だなとは思って……」
    「そうそう、でも困ってる人を見過ごすのも……って言う」
     板挟み状態になって、困惑気味の男子二人。とは言え、この期に及んで、リスクを負ってまで美女と仲良くなろうと言う根性(?)も無い様だ。
    「いいように弄ばれて素寒貧にされて悪事の片棒担がされたうえ捨てられる人が続出、って警察で聞きました! このまま一緒にいると逮捕されちゃいますよ! 共犯者として捕まってもいいんですか?」
     イエスかノーか、ハッキリしろと言わんばかり、脅し気味に問うアルルーナ・テンタクル(小学生七不思議使い・d33299)。
    「……そ、そうだ。俺達用事があるんだった!」
    「お、おう! じゃあ、俺達はこの辺で」
     被害に遭うのみならず、加害者側に回る可能性まで示唆されては、選択の余地も無い。一目散に逃げ出す二人。
    「ちょっとぉ!? 待ちなさいってばぁ!」
     一方、折角目を付けた相手に逃げられてなるものかと、女は尚も二人を引き留めようとするが……
    「貴女が美人局じゃないとして、貧弱なお坊ちゃん達に何の用があるの? お役に立つ人材を探しているなら私達なんてどう? 結構鍛えているのよ?」
     漂着物だろうか、かなり大きな流木を片手で軽々と持ち上げて見せつつ、提案するのは近衛・朱海(煉驤・d04234)。
    「えっ? ……そ、それもそうねぇ」
     女も改めて目の前の朱海、そして七人を見回して考え込む。
    「えっとぉ、私ぃ、気付いたらここに倒れてたのぉ。それで凄く困ってるのぉ」
     先ほどの頼りがいの無さそうな男子二人より、目の前の男女を纏めて籠絡した方が良いと考えたのだろう。改めて事情を説明し始める。
    「あなた達はとっても正義感が強そうだしぃ、私の事を助けてくれるよねっ?」
     小首を傾げながらあざとく問う女は、ナギサと名乗った。


    「気付いたらここに居たって……あなた、いつから寝てたの?」
    「覚えてないわぁ。随分昔からと言う気がするけどぉ」
     玲の問いに、ナギサは首を傾げる。
     淫魔を上回る話術と演技力で、男子高校生達を退散させた灼滅者。自らの素性を知られていないアドバンテージを活かすべく、そのまま親切な若者達という役どころで相手の油断を誘う。
    「それにしても、良く見たら全然別人でした。貴女の方が断然お綺麗です」
    「うん。うちのお兄ちゃんの言ってた人も、もっと悪そうな人ね」
    「うふっ。誤解も解けて、そんな風に言って貰えるのは嬉しいわぁ」
     心太と紅葉が口々に言えば、ナギサはニコリと笑みを深くする。
    「お詫びの印と言ってはなんですが、わたし達に出来る事なら力になりますから!」
    「そう、本当に助かるわぁ。何しろ、右も左も解らない有様でぇ……ん? どうしたのぉ?」
     唯の言葉に、してやったりと言う表情を浮かべたナギサだが、ふと鋭い視線を感じてその主……アルルーナへ問い掛ける。
    「あぁいえ、なんもないで……す」
     ナギサの胸元から視線を逸らし、誤魔化す彼女。
     これから幾らでもと言う気はするが、胸が平坦気味なのを気にしているらしい。
    「何にしても、謝罪しなければな」
    「あぁ、それはもういいのよぉ。むしろ力になって貰えてラッキーなくらいだしぃ」
     アレクサンダーの言葉に、ヒラヒラと手を振りつつ鷹揚に応えるナギサ。
    「いや、色々嘘八百並べた事をだ」
    「……嘘八百?」
     ナギサは彼の言葉を、怪訝そうに聞き返す。
    「それって、どう言――ぐうっ?!」
     次の瞬間、彼女は目を見開き、くぐもった悲鳴を上げる。
    「サイレーンと一緒に封印されてたってことは普通の淫魔よりは強いのかしら? まぁ何にしても、遠慮なく灼滅させて貰うわ」
     エリノアはいつの間にか手にした槍を、ナギサの背に突き立てたのだ。
    「あ、アンタ達……!?」
    「起きたての所悪いですが、もう一度寝てもらいますよ。今度は永遠に」
     心太は祖母のお守り「金剛不壊・真」弐式にシールドを展開させ、何が起きたか把握仕切れていない様子の相手へと叩きつける。
    「ぐっ!?」
    「わけがわからないだろうけど、わからないままに死んでいきなさい」
     続けざまに言い放つのは、刀纏旭光の刀身に炎を纏わせた朱海。
     槍を引き抜き、立ち上がろうとするナギサ目掛けて斬撃を見舞う。
    「ぐうっ! こ、この力は……ぜ、全員? ……だとして、どうやって私の事を!?」
     とっさに腕でこれを受け止めるナギサ。
     人間の腕であれば容易く斬り落としたであろう一撃も、相手が淫魔となればそうもいかない。とは言え、強い衝撃と魔炎に肌を焼かれ、淫魔はその整った顔を歪める。
    「一気にいくぞ!」
     困惑する淫魔に考える隙も与えず、突撃を仕掛けるのはキャリバーを駆るアレクサンダー。
     キャリバーの速度に加え、バベルブレイカーのロケット噴射が圧倒的な加速をもたらし、勢いもそのままに淫魔の痩身を直撃する。
    「ぎゃあぁっ! くっ……うっ」
     吹き飛んで砂上を転がった淫魔だが、すぐさま跳ね起きる様に立ち上がる。
    「我が前に爆炎を」
     が、更なる追撃を仕掛けたのは玲。
     エアシューズに炎を纏い、連続的に鋭い蹴りを繰り出す。
    「スキュラとかとは知り合いかな? 彼女灼滅されたよ」
    「はぁ? 何を世迷い言をっ!」
     そのさなか、相手の動揺を誘うべくスキュラについて言及する。
     ナギサは蹴撃を必死に防ぎつつ、発言の意図を掴みかねた様に言い返す。
    「私たちがしたんだけどね」
    「はっ! この時代じゃ、そう言う冗談が流行ってるのかしらぁ?」
     彼女の常識では、にわかには信じがたい内容だと言う事だろうか。鼻先で笑い飛ばす様な反応を示す。
    「良くもまぁ、これだけ群れたものだけど……何匹集まろうと、駆除してあげるわぁ!」
     そして強烈な殺意とは不釣り合いな、魅惑的な旋律を紡ぎ始める。
    「こ、この程度ーっ!!」
     かぶりを振って、誘惑の歌声を振り払おうとする唯。
     同時に不死鳥の翼を顕現させ、戦意を高揚させる。
    「紅葉に任せて」
     リカバリー役を買って出たのは、人差し指のリングに口付けつつ言う紅葉。祝福の言葉を風に換え、仲間達に纏わり付く淫魔の歌声を払う。
    「全盛期のラブリンスターさんよりは弱いみたいですね。なら勝てない相手じゃないです」
    「っ……ら、らぶ? 私が弱いですってぇ? 調子に乗るなぁっ!」
     拳に纏う闘気を雷に換え、淫魔を殴りつける心太。相手は数歩よろめきつつ、激昂に髪を逆立たせる。
     それは比喩ではなく、ナギサの髪はまるでメデューサの様に、無数の蛇の群れと化してうねっているのだ。
    「サクッとやっちゃいましょう! いくで、私の七不思議其の一、蠢めくアルラウネ!」
     淫魔が本性を現したとて、憶する灼滅者では無い。アルルーナは七不思議の力を八百比丘尼に宿し、容赦無く叩きつける。
    「ぎゃあぁっ!? く、うっ……こ、これ程の力を……一体」
    「これからは貴方達は狩られる側。地獄の門の向こう側へ、『解放』してやるわ」
     霊犬の無銘が六文銭を放つのに合わせ、間合いを詰める朱海。
     砂上を滑走する髻清洸海が、炎の円弧を描いて淫魔の身体を打つ。
    「あぐっ!? だ、黙りなさい! アンタ達如きが……多少集まったからって、私に敵うわけが……」
     淫魔はぼろ切れ同然になったワンピースを苛立ち紛れに脱ぎ捨て、その裸身に蛇達を覆わせる。
     服に限った事ではなく、切れ目無い波状攻撃によって彼女の体力は着実に削り取られている筈だ。
    「年増(おばさん)はこっちを向けーっ!!」
     焦りの色を濃くする淫魔の傷口に、断斬鋏を突き立てる唯。
    「ぎぃっ! ぐぬううっ……認めないわぁ、こんなの……そうよ! こんなの、悪い夢に決まってるわぁ」
     頭髪――蛇を鞭のようにしならせて振り回し、間合いを取ろうとする淫魔。
    「逃がさないよ」
     紅葉は再び口付けを落とした契約の指輪から、淫魔の退路を断つべく魔法の矢を放つ。
    「くっ」
    「慄け咎人、今宵はお前が串刺しよ!」
    「ぐあぁーっ!」
     捻りを加えて繰り出されるエリノアの槍が、数匹の蛇を切断しながら再び淫魔の身体を貫く。
    「う……ぐふっ! ふ、ふふ……」
     口元から零れる鮮血を手の甲で拭いつつ、肩を震わせる淫魔。
    「わ、私が知らない間に、色々と状況が変わってるって事かしらねぇ……良く解ったわ」
     微笑を浮かべつつ呟いた彼女は、構えを解いて、穏やかな口調で切り出す。
    「ねぇ、私達って初対面なのに殺し合いなんてぇ、余りに艶が無いと思わない? もっと有意義な時間を過ごせると思うんだけどぉ?」
     と、しなを作って猫なで声で提案する淫魔。
     困ったら色仕掛けと言う方向性は、今も昔も変わらないのだろうか。
    「淫魔灼滅すべし、慈悲はない」
    「無駄な脂肪に掛ける情けは無いです。さっさとくたばれやー!」
    「ええっ!?」
    「鰹の一本釣りリフト!」
     怒りを篭めたアルルーナの標識が直撃するのに合わせ、淫魔の身体をホールドしたアレクサンダーは跳躍。
     そのまま地面へと叩きつける。
    「がふっ……こんな、はず……サイレーン……様……」
     ガクリと脱力し、突っ伏す淫魔。その身を覆う蛇たちもまた、程なくして動きを止めた。

    「一件落着かな。ここに限らず、あちこちで復活しているんだろうけど」
    「地道にいくしかないわね。リベレイターの効果を無駄にする訳にはいかないし」
     ふうっと息をつきつつ、足に着いた砂を払う玲。エリノアも頷きつつ、独り言のように小さく呟く。
    「ですね、被害が広がらないと良いんですが……あ、そう言えば彼らは?」
     相槌を打ちつつ、周囲を見回す心太。
    「あの男子達は……あのまま逃げたみたいだね。逃げ足だけは速いなぁ」
    「お陰で、説得(物理)と説得(サイキック)の手間が省けたけどね」
     唯の言葉に、穏やかに微笑みつつ応える紅葉。
    「胸に釣られる様な人達にも、ビシッと言ってやりたかったのに」
     一方此方は、憮然とした表情で呟くアルルーナ。
    「そうだね。簡単に女に引っかかるような人は、もてないと思うんだけどな」
     やれやれと、ため息交じりに同意する朱海。
    「さて、わしらも退散するか。たむろしていると、住民に怪しまれかねん」
     アレクサンダーの言葉に頷いた一行は、再び平穏を取り戻した浜辺を後にする。

     サイキック・リベレイターの解放による、新たな戦いに身を投じる灼滅者達。
     まずはその緒戦とも言うべき戦いに一つの勝利を収め、凱旋の途に就くのだった。

    作者:小茄 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年5月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ