●狩りし鎌の刃を振るい
『キィー!! キィィ……』
そんな鳴き声を上げながら、山中を暴れ回るのは……はぐれ眷属、鎌鼬。
栃木県の山中、紅葉し始めた筈の森を無差別に切り裂きまくるその存在。
それが一体だけならばまだ幸いかもしれない。
しかしその数は……十匹。
次々と鎌鼬はその鎌を振い続け、暴れ続け……何の変哲も無い紅葉は、無残にも切り裂かれていったのである。
「皆さん、集まって頂けた様ですね? それでは早速ですが、説明を始めますね」
五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は、集まった灼滅者達へ、早速説明する。
「今回、皆さんにお願いしたいのは、とある山に出てきてしまったはぐれ眷属の鎌鼬を倒してきて欲しいのです。はぐれ眷属はどうやら栃木県某所の山に現われてしまった様で、その眷属の力を大いにふるってしまっているみたいなのです」
「数は10匹にはなりますが、10匹の内1匹がボス格みたいなのですがその力量差はあまりないみたいですが……とは言え鎌鼬という名前の通り、鎌はとても鋭い刃を持っているので、これで切りつけられれば大ダメージは避けられないでしょう」
「また、山中が彼らの戦闘エリアという事になりますから、足場は悪い様です。また、鎌鼬が暴れているのは深夜の丑三つ時……視界の悪い中で戦う事に成増から、ご注意下さいね」
そして、最後に姫子は。
「深夜の森の中という事で、結構危険な事になる可能性もありますが……皆さんなら出来ると信じています。だから頑張ってきて下さいね」
と微笑むのであった。
参加者 | |
---|---|
桂・棗(中学生ストリートファイター・d00541) |
我妻・七都(全力変化球・d00973) |
小碓・八雲(リスクブレイカー・d01991) |
倉木・真央(冥き魔王・d03708) |
六連・光(リヴォルヴァー・d04322) |
赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996) |
荒野・鉱(中学生ダンピール・d07630) |
クゥリエ・エクレール(アブストラクション・d09347) |
●山の狩人
姫子から野事件解決の依頼を受けた灼滅者達。
紅葉に包まれた栃木県の山中へと向かう能力者達は、宵闇の中、僅かな灯りを照らして周囲の紅葉を眺めながら歩いていた。
「うーん……ドキドキやわなぁ」
「ん……何故です?」
「いやぁ、そりゃ始めての依頼やからな。そりゃ緊張するわぁ……まぁ、何とかなるやろうな!」
「……そうでありますか、まぁ、確かに始めてだと緊張すづでありますしね」
桂・棗(中学生ストリートファイター・d00541)と、六連・光(リヴォルヴァー・d04322)が何気も無く会話を紡ぐ。
確かに初依頼となれば、緊張するのも仕方ない……そんな会話の一方で。
「しかしそろそろ紅葉の季節なんだな……」
「そうだねー。秋と言えば紅葉だよね!! 暗くて全然観れないけれど……」
「まぁ……時間的にも、余り紅葉が観れないのも仕方ないだろうけどな……」
小碓・八雲(リスクブレイカー・d01991)に、赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)と、荒野・鉱(中学生ダンピール・d07630)の会話。
その会話に、緋色は。
「ネットで調べたらさ、栃木の紅葉って10月半ばくらいのが多いんだってさ。9月下旬から観れる所もあるみたいなんだけど、ここもその一つなんだね。良かったなぁ」
と嬉しそうに言う。
とは言え紅葉を楽しみに来ている訳ではない……今回の事件は、この山中を暴れ回るはぐれ眷属、鎌鼬の退治依頼。
これをこのまま放置しておけば、登山客が被害に遭いかねない訳で。
「……まぁ登山客が被害に遭う前に片付けないとダメだろうな。まったく……ダークネスは次から次へと、面倒ばかり増やす……」
「うん……放っておくと……誰かが巻き込まれる……かも……だから、早めに……退治する……」
「そうだな……本当、面倒な奴らっすね……」
八雲に頷くクゥリエ・エクレール(アブストラクション・d09347)と鉱。
そして、その言葉に倉木・真央(冥き魔王・d03708)と、我妻・七都(全力変化球・d00973)は。
「くく……狩る者が狩られる側の立場に転じたと知った時の絶望は如何ほどじゃろうな? 今から愉しみで仕方ないわ」
「そうだね。まぁ何にせよ倒すしか対処手段が無いんだし、さっさと倒しちゃおうよ!」
と笑う二人に、他の仲間達も頷いて……そして山中に歩を進め始めるのであった。
そして山中を進む灼滅者達。
頭上をすっかり覆い尽くす程の木々は、鬱蒼とした感じを醸し出してくる。
「うーん……暗いねー。わたしが依頼に来るときは、いつも夜の気がするよー」
苦笑している緋色……まぁ夜に奇妙な縁があるというのも、多分あるかもしれないけど。
「とはいえ夜の森……なんやコワイもんやなぁ……?」
「ああ……何時襲われるか、分かったもんじゃないっすし」
棗と鉱も、恐怖ではないものの、そんな会話をしつつ歩く。
……ちなみに独り、真央だけはバスターライフルを箒代わりにして、空飛ぶ箒で低空飛行をしていて。
「うむ……確かに紅葉は綺麗じゃ。しかし夜中だと、その美しさが観れないのは残念な所じゃな」
と、独り紅葉を楽しんでいたりするわけで。
……そうした会話をしながら森の中を歩いていくと……発見するのは、すっぱり斜めに一刀両断された大木。
研ぎ澄まされた刃でなければ、ここまで美しい断面は出ないだろう……という程の斬れ味。
その切り倒された木を、ぺたぺた触りながら。
「……斬れ味……抜群……一家に……一匹……」
と呟くクゥリエ。
確かにその斬れ味のすさまじさは、一抹の恐怖を覚えざるを得ないが。
「ボク達が相手にするのは、こんなに鋭い斬れ味を持った眷属なんだね……気を引き締めていかないとね!」
笑う七都。
そして灼滅者達は、更なる森の奥へと進んでいった。
●宵の中の美しき血潮
そして灼滅者達が山中に分け入り、半刻程度が経過する。
キシャァ、キィィィ……と言う獣の鳴き声が森の中に響き渡る……そしてその声の主の方へと向かう。
……そして、程なくして。
「……いた……」
クゥリエが指差した所……傍らの大木を、想うが儘に切り刻み、切り倒し……暴れ回る鎌鼬の姿。
「おお、おったおった……ほな、はじめよか。皆準備はええか?」
「うん……さぁ狩りの時間だよ、奴らを地獄に送ってやろう」
棗の言葉に、バスターライフルにキスをして微笑む七都。
そしてタイミングを合わせ……先手の、七都のバスタービーム。
そのバスタービームに続け、すぐさま光、棗が。
「汝殺めよ……さらば開かれん」
「うっし、アーデルグランツ家使用人見習い、桂・棗、推して参ります!!」
と声を上げてスレイヤーカード解除。
そして解除するとともに、まずは棗が敵の至近に至る。
「捉えたッ……!! 殺意に捲かれろ……化け物……ッ!!」
そして八雲が鏖殺領域を使って牽制攻撃を加えると、併せて光が前線に立ち。
「まぁ辻斬り屋風情が粋がったものですね……では、絶やさせて貰います」
と言いながら、ティアーズリッパーの一閃を喰らわせる。
そんな前衛陣に立つ三人に加え、そこから数歩の中衛位置に鉱、クリエ、緋色。
「……起きて……」
「さーいけー影さん!!」
「……これでも喰らえ……!」
クゥリエの影業構えから続く影縛りを放ち、そして緋色の影喰らいと、鉱のバレットストーム。
更に後衛にいる、スナイパーの七都は。
「ベイブ、前衛と中衛の回復を頼むね?」
「ナノナノ!」
こくりと頷く七都のナノナノ、ベイブ。
そしてナノナノはメディックの位置に着きつつ、状況観察……そして真央が。
「どれ……さぁ愉しい愉しい鼬狩りの開幕じゃ」
笑みを浮かべながらも、自分に闇の契約で強化を施しておく。
そして、続く鎌鼬の行動。
『キィー!』
甲高い鳴き声を上げながら、その身に纏った鋭い刃で突撃してくる。
「その攻撃、ウチが庇ったる!」
と棗が前に立ちふさがるとともに、ディフェンダー効果で積極的に仲間達を庇う。
……そして、それら攻撃の中で、強力な攻撃力を持った個体を特定すると。
「……よし、先ずは左の……こいつを狙うぞ」
鉱がそのボス格の相手を懐中電灯で指示すると、続けての第二ターン。
「……零距離、手加減無用でたたき切るッ!」
「花と散れっ……!」
クラッシャーの八雲と光が、ティアーズリッパーと雲櫂剣で斬りかかる。
流石に強力な個体故に、その一撃二撃程度では余り聞いては居ない様でもある。
更に鉱、クゥリエのジャマー陣容がバレットストームとティアーズリッパーと影縛りによって、鎌鼬へのバッドステータスを次々と付与し、そして緋色も影喰らいにて続けて斬りかかることで、更なるダメージを付け加えていく。
『キシァァァ……!!』
そんな灼滅者達の攻撃に、悲鳴の如き言葉で叫ぶ鎌鼬……そんな鎌鼬の悲鳴に。
「ふふ、イイ声で鳴くじゃん」
「そうじゃのぅ……くふ、くふふ……良い、実に良い。苦痛にもがき苦しむ様はいつ見ても甘美じゃ。臓腑を裂かれた汝は更にどのような声で儂を魅せてくれるのか楽しみじゃ。ほぉれいくぞ、ギルティクロスじゃ」
何処か嬉しそうな七都と真央のデッドブラスターとギルティクロス。
そして回復は……ベイブがしっかりと頑張って、棗の体力を回復。
対しまた、鎌鼬の攻撃……出来る限り棗がそれら攻撃をまた受け止めるが、かなりダメージが蓄積。
「さすがにちと不味いか……ちと回復頼むな!」
「ん……分かった……手伝う」
「ん? そうじゃな、自ら手を下さず、主らが加虐する様を眺めるのもまた乙な物よのぅ? どれ、回復して進ぜよう。我が魂の闇に飲み込まれ、狂うでないぞ?」
と棗が声を上げると、それに頷くクゥリエと真央。
棗自身が祭霊光を使うと、クゥリエもリバイブメロディで、真央が闇の契約でそれぞれ回復。
そして八雲、光。
「反応が……遅いッ!」
と八雲が素早い居合い斬りで斬りかかると。
『キィィィ……!!』
今までとは違う、一層甲高い悲鳴が響き渡り、ボス格の鎌鼬が、血を吹き散らせる。
その血潮が頬に付着すると、光は。
「……これはこれは……綺麗な紅葉でありますね」
と、手で血を拭いながら軽く笑う。
その言葉に呼応するように。
「さぁどうじゃ? 苦しいか? 鳴いてわめくか? ふふふ……泣き喚いても許さぬがのぅ? ほーらほら、手加減はせぬぞ!」
真央もサディスティックな笑みを浮かべていく。
……戦好きの性質と言うか……彼女らの心は一人倒した事によって、更に加速していく訳で。
「よーし、それじゃ今度はこれだよっ。小江戸ビーム!!」
緋色がご当地ビームが敵陣の戦線を貫くと、ターゲットの切り替えを的確に鉱が指示。
そのターゲット指示に併せて、残る灼滅者達が攻撃。
更にまた一匹、七都が仕留めると。
「ふふ……ご機嫌だね、ロメオ!」
くすりと己のバスターライフルに微笑みつつ、鎌鼬へ。
「まぁ戦場では油断した方が死ぬんだよ? 当然でしょ」
と宣戦布告し、そして……灼滅者達は半ば嬉々としながら、彼らを殲滅していくのであった。
……そして、更に数ターンが経過。
鎌鼬の数は、最早一匹のみ。
「さて、と……後はこやつのみじゃな。どうする? 命乞いでもするかのぅ?」
クスクスと笑いながら真央が告げる……鎌鼬は、往生際悪く威嚇の声を上げるが。
「……これで、終わり……バイバイ……」
クゥリエが静かな宣告をして……影喰らいで喰らう。
脇腹から血潮が吹き出し、痛みにのたうちまわる鎌鼬に。
「ふふ……さて、と……それじゃ一思いにトドメ、さしてあげる。これ以上痛みはないからいいよね?」
ニッコリ笑う七都……そしてスナイパーの位置からの、渾身の一撃を叩き込み、鎌鼬は全て血潮の中に死すのであった。
●静寂
「……仕舞い、でありますか」
納刀し、息を吐いて気持ちを切り替える光。
「ああ、終わった様だな……もう、残ってないよな?」
「多分な。姫子さんの言ってたんは10匹って話やし、倒したのも10匹やしな」
「分かった……では一先ず安心、という事になるか。周りにその気配も無い様だしな」
「そやね。ああ、怪我したのは待っときー。ちゃんと回復したるからな!」
八雲に頷きながら、棗は一人一人の傷跡をしっかりと手当てしておく。
そして全ての治療を終えたところで。
「……ねぇ……おなか……すいた……帰ろ……?」
と、クゥリエがみんなを誘うように言うと。
「そうだねぇ……ちょっとわたしもお腹空いちゃった。あ、でもさぁ紅葉もみたいなー。だってせっかく此処まで来たんだし、朝焼けの中の紅葉っていうのも良いでしょ?」
「ふむ……確かにそういう風景も良いものじゃな。そういう風景を見て帰るのも良いのぅ」
「そうっすね……それじゃ、のんびりと山を下りながら、帰るっすよ」
緋色の提案に、真央、鉱もその提案に頷き……そして灼滅者達は、暴れし鎌鼬の亡骸に静かな冥福の祈りを捧げるのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2012年10月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 7
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