南アルプス壬生狼行~交差する三つの鬼

    作者:緋月シン


     南アルプスの麓。愛知県から長野県に入った山岳地帯、その付近を複数の人影が動いていた。
     灼滅者達だ。
     その様子は周囲を見渡しつつも、油断はない。
     しかしそれは当然である。彼らはそこを探索しているのであり――。
    「うーん……見当たらないな。南アルプスに逃げ込んだうずめ様が持つ刺青を狙って、依が動き出してるもんだと思ったんだけど……」
    「いや、それはほぼ間違いないだろ。あの依がこの機会を逃すとも思えないしな」
    「そうですね。それにそれだけではなく、うずめ様の持つ予知能力を欲して、朱雀門高校が接触する可能性も高いでしょう。朱雀門高校には鞍馬天狗や、こういった交渉ごとが得意な本織識音などがいますし、この機会を逃がすとはやはり思えません」
    「そして鞍馬天狗とうずめ様が接触するようなことがあれば、依が黙ってるはずがないもんね」
     つまり、そういうことであった。
     だが単純に南アルプスと言っても、その範囲は広い。ほぼ接触するだろうことを確信しているとはいっても、その時間までが分かっているわけではないのだ。早々都合よく見つかるわけもない。
     しかし彼らは、その点に関してはあまり心配していなかった。
     確かに自分達だけであれば、見つけられるかは分からないが――。
    「ま、自分達以外にも、同じように考えた皆が捜索活動を進めているっすからね。そのうち何処かが――っと」
     そんなことを言っている、まさにその時、嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)の持っている携帯電話が、鳴り響いた。
     連絡用のそれが鳴ったということは、何処かで何らかの進展があったということだろう。
     皆の顔を見渡し、一つ頷くと、絹代はそれを耳にあてた。


    「どうやら、スサノオ壬生狼組の精鋭を連れた依を発見したらしいっす」
     連絡を受け終えた絹代の説明に、皆はやはりと頷いた。推測は正しかった、ということだ。
    「依達の目的は、やっぱりうずめ様の刺青かな?」
    「だろうな。問題は、予知能力を持つうずめ様がどうして居場所を特定されたのか、ってことだが……」
    「あっちの予測だと、うずめ様じゃなくて、朱雀門高校がうずめ様に接触しようとした動きが察知されたんじゃないか、とか言ってたっすね」
    「……確かに、それならば有り得そうです。ともあれ、依とスサノオ壬生狼組が向かっている場所に向かった方がよさそうですね」
    「そうっすね。まあ聞いた話によれば、敵の戦力はかなりの脅威っすけど、依の狙いが刺青を奪う事だと考えれば何とかなると思うっす」
    「まあ、うずめ様達を襲撃してるところに上手く乗じる事ができれば、今回ここに来てる皆だけでも何とかなるかな?」
     ともあれ、のんびりしてる暇はない。
     とりあえず情報の共有を終えたのを確認すると、絹代達はそのまま目的の場所へと走った。


     その音が聞こえてきたのは、目的の場所の近くまで来た、その時であった。
    「これは……戦闘の音?」
     その呟きに応えるように、再び携帯電話が鳴り響く。絹代がそれを耳にあて――。
    「どうやら、依とスサノオ壬生狼組100体の勢力が、旧日本軍風の羅刹30体、それと、交渉にやってきていたらしい、鞍馬天狗と本織識音、護衛のクロムナイト20体に襲い掛かったみたいっす」
    「これはその音か……戦況は?」
    「依が有利みたいっすね」
    「つまりこのままなら依がうずめ様と鞍馬天狗の刺青を手に入れることになるのか……」
    「とはいえ、このまま乱入してしまえば、こちらの方が脅威と捉えられてしまう可能性もあります」
    「その場合、依の勝利は防げるかもしれないけど、一時的に同盟を組んで、こちらに攻撃してくる、という可能性もあるわね」
    「どのタイミングで、どのような行動をするべきか……考える必要があるってことっすね」
     とはいえ、考えていられる時間は大してない。
     どうすべきか、早急にそれを決めるため、絹代達はその場で顔を見合わせるのであった。


    参加者
    シルフィーゼ・フォルトゥーナ(菫色の悪魔・d03461)
    木元・明莉(楽天日和・d14267)
    嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)
    鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)
    赤城・碧(強さを求むその根源は・d23118)
    シャノン・リュミエール(石英のアルラウネ・d28186)
    白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)
    リサ・ヴァニタス(アンバランスライブラ・d33782)

    ■リプレイ


     嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)達が動き出したのは、方針を纏めてすぐのことであった。最速での到着を方針とした以上、時間の浪費は避けなければならないからだ。
     先頭を行くのは、白石・明日香(教団広報室長補佐・d31470)である。
     正直に言ってしまえば、明日香としては刺青が揃ったら何が起こるか興味はあるのだが、さすがにさせるわけにもいかないだろう。そんなことを考えつつも、スーパーGPSを使用し、自分たちの位置と目標地点の最短距離を割り出しつつ、先を急ぐ。
     最短距離を急ぐということは、悪路であることも考慮しないということだが、その心配はあまりなかった。
     絹代がすぐ後に続き、隠された森の小路を使用することで進行を妨げる木々については問題なかったし――。
    「うふふ、邪魔ですからどかしますねぇ」
     途中に障害物がある場合は、リサ・ヴァニタス(アンバランスライブラ・d33782)が怪力無双でどかしたからだ。
    「それにしても、なかなかに厄介な状況よのぅ」
     そんな中、ふとした呟きが、シルフィーゼ・フォルトゥーナ(菫色の悪魔・d03461)の口から漏れた。
     その言葉に、誰からともなく頷きが返る。一人だけでも厄介だというのに、それが三人纏めてだ。厄介と言う他ないだろう。
    「結局、刺青に良し悪しとかあったりするんすかね? 有名どころばかり狙ったり狙われたりしてるように見えるけど」
     ついでとばかりに絹代が疑問を口にするが、誰からも返答はない。
     まあ、応えようのないものであるし、そもそもが半ば独り言だ。最初から期待もしておらず――不意に視界が開けたのは、そんな時のことであった。
     視線の先にあるのは、如何にもといった様子の洞窟。件のそれで、間違いないだろう。
     ここまでに要した時間は、三分といったところだろうか。考え得る限りの最速であり、だがそこで安堵している暇はなかった。
     聞こえ続けていた音から、戦闘が行われているのは分かっていたのだが――。
    「あれは……!?」
     依達と戦闘を行っていたのは、うずめ様達ではなく、灼滅者達だったのだ。
     しかもスサノオ達に包囲され、殲滅させられる寸前といった様子でさえある。既に闇堕ちをした者も出ているようであり――。
    「……ちっ」
    「待った、鈍」
     咄嗟に動こうとした鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)を、木元・明莉(楽天日和・d14267)が抑えた。
     即座に脇差より、睨み付けるような視線が向けられるが、明莉はそれに苦笑を浮かべると、別の方向へと視線を促す。そこでは、ちょうどここに現れた別のチームが、救援に向かおうとしているところであった。
    「三蔵も無事みたいだし、あれなら何とかなるだろうさ」
    「……誰かが助けに行くなら、それでいい。俺は予定通り、俺に出来ることを成すだけだ」
     すぐに洞窟の方に向き直った脇差に、明莉は再度苦笑を浮かべるが、実際その通りではある。
     自分達の決めた目的は、あくまでうずめ様だ。勿論最初の想定から状況は変わっているが、元々今回の作戦は、敵同士を戦わせて漁夫の利を得るものである。現状自分達だけで依達と戦ったところで、洞窟内に撤退しているうずめ様達を倒す戦力は残らないだろう。
     それをどうにかするためには、洞窟内部の敵に戦闘を仕掛けると共に、どうにか釣り出し、依達と戦うように仕向けるしかない。
     つまりは、結局やることに違いはないということである。
     そして皆に視線を向けてみれば、どうやら同じようなことを考えているらしかった。互いに頷き合うと、そのまま素早く洞窟の方へと向かう。
     当然自分達だけで突入したところで無謀だということは分かっていたが、他の仲間達を待つ必要はなかった。入り口に近付いたところで、同じ方向へと向かう二つのチームを発見したからだ。
     入り口に辿り着いたのは、ほぼ同時であり――。
    「洞窟内の敵は苛烈、単独で行くより3チーム同時に突入した方が良いでござる。くれぐれも逸れたりせぬよう」
    「そうですね。よろしくお願いします」
     他のチームのエイジの言葉に、シャノン・リュミエール(石英のアルラウネ・d28186)が頷く。
     皆もそれに異論などがあるはずもなく……そうして総勢二十四人の灼滅者達は、警戒しつつも洞窟の中へと突入したのであった。


     皆と共に洞窟の奥へと向かいながら、赤城・碧(強さを求むその根源は・d23118)はふと、この先に居る鞍馬天狗達のことを考えていた。
    (「仲間内で話が出た情報のリークの可能性………これが真実だったら、予兆の範囲とはいえ最近は会長と密にある本識の動きが気になるな……」)
     今回の状況は、あまりにも依に都合がよすぎる。
     そのことから、朱雀門の会長側から、依に向けて情報のリークがあったのではないか、という推測がなされたのだ。
     が……どうやら、それ以上の思考を進めることは出来ないようであった。
    「何故灼滅者が? まさか、依と同盟を結んだわけじゃないでしょうね」
     訝しげな様子でそう口にしたのは、進んだ先に居たそれ――本織識音だ。
     おそらくは、侵攻して来るであろうスサノオ達を迎撃する為に、待ち構えていたのだろう。二十体のクロムナイトもそこには居た。
     向こうとしては予想外、こっちとしても若干想定とは異なるものの……互いに引くことがないことだけは、確かなことだ。
     そしてそれだけあれば、十分である。
     それ以上の言葉はなく、直後に戦闘が開始された。

     状況が状況故に、全員が同じ場で一斉に戦うのは不可能である。
     だから、というわけでもないが、自然と組んでいたチームごとに分かれ、散ることになった。
     その中で絹代達が担当することとなったのは、左側だ。数でいえばこちらが上だが、戦力的には向こうが上。当然取れる手などは限られており――だが。
    「そんじゃまあ、ここいらで御陀仏になってもらいましょっか」
     そんなことは知ったことかとばかりに、絹代は一歩を前に踏み込んだ。
     とはいえ実際のところ、その行動は正しい。当初の目的としては、うずめ様灼滅を最優先に、鞍馬天狗が介入してきた場合はそれを迎え撃つ、といったものであったが、現状それは不可能だ。
     ここを抜けるためには、クロムナイト達を倒す以外になく、しかし中央のチームには半数以上の敵が向かっている。
     防戦に回れば少しはもつだろうが、ここを何とかするためには、右側のチームを含めた自分達が何とかするしかないのである。
     まあ絹代がそこまで考えて動いたのかはともかくとして、その行動が正解であることに違いはなく――また、皆も勿論そのことを理解していた。
    「カンナビス戦の様な無様は繰り返しません」
     絹代から放たれたどす黒い殺気が敵群を覆い尽くすのに合わせ、シャノンがその手の剣を高速で振り回す。嵐の如き斬撃と殺気によってクロムナイト達の身体が斬り裂かれ、しかしその歩みは緩まない。
     まるで効かないとでも言いたげな態度であり、だがその程度のことは想定通りだ。
     直後にその眼前へと、ロリータドレスのスカートを翻しながらシルフィーゼが飛び込む。
     瞬間、最前列に居たクロムナイトの腕がぶれるが、その軌跡上にシルフィーゼの身体はなかった。ほんの半歩分、流れる髪を添えるように動きながら、代わりとばかりに繰り出されるのは白光の斬撃。
     斬り裂き――ほぼ同時、後方のクロムナイトが攻撃の態勢に入っているのが見えるも、それより先に、視界の端には動く影があった。
    「それじゃリサのこと、ドキドキさせてくださいねぇ?」
     水晶により形作られた全身甲冑の騎士から放たれたのは、妖艶な声と熱っぽい視線、それと、その魂より変換された冷たい炎だ。解き放たれたそれが敵へと襲い掛かっている間に、シルフィーゼは悠々と距離を離し、入れ替わるように明莉が前に出る。
     構えるのは銀色の大刀――激震。振り上げ――敵から放たれた攻撃が自分を狙っているのは見えていたが、構うことはなかった。
     直後、視界に映ったのは、勿忘草色と白を織り交ぜた輝きに包まれた背中。代わりに攻撃を受けた背中に、言葉は必要ない。
     ただ、振り上げていたそれを、振り下ろし、同時に放たれたのは、どす黒い殺気。敵陣を纏めて斬り裂き――だがそれでもやはり、敵が止まることはなかった。
     そのままさらに攻撃が放たれ――咄嗟にその前に躍り出たのは、二つの影。
     碧とそのビハインドである月代だ。
     碧は受けた衝撃に一瞬顔を歪めるも、その時には既に帯を射出し終わっていた。同時に月代からは霊障波が放たれており、それはほんの数瞬だけ敵の足を止める。
     そしてそれだけあれば十分であった。
     その隙に死角に回りこんでいた明日香が振るうのは、不死者殺しクルースニク。斬り裂き――。
    「……っ!?」
     それに気付いた瞬間跳び去ったが、ほんの少しだけ遅かった。
     全方位に放たれた衝撃に巻き込まれ吹き飛ばされ、だが即座に体勢を整える。直後に飛んできたリサの癒しに視線だけで礼を述べ、すぐに敵へと戻した。
     今のは味方ごと巻き込む勢いであったはずだが――。
    「……まりゅで堪えておらにゅみたいじゃのぅ」
     ポツリと漏らされたシルフィーゼの呟きに、誰からともなく溜息が吐き出される。
     分かっていたことではあるが、どうやらかなり状況は悪いらしかった。
     だが他の仲間達が頑張っている以上は、引く分けにもいかない。
     一つ息を吐き、呼吸を整える。敵へと向け、地を蹴った。


     その音が聞こえてきたのは、戦闘開始から二分ほどが経った頃のことであった。
     たった二分のこととはいえ、こちらは既に肩で息をするほどだ。正直なところ、あとほんの少しでも遅ければ、誰かが倒れてしまっていたとしてもおかしくはなかっただろう。
     故に。
    「あ……っ!」
     複数の音と共に聞こえた、聞きなれた声に、明莉と脇差はつい小さく息を吐き出していた。
    「あかりん! 脇差! 無事っ!?」
     思わず、といった様子で口に出されたそれに、ちらりと視線を向け、軽く手を挙げる。生憎とそれ以上のことをする余裕はないが、それで十分だろう。
     そうしている間に、援軍の灼滅者達への簡単な状況説明は終わったようだ。すぐに現状を理解してくれたらしく、眼前のクロムナイト達を倒すため、同数の灼滅者達が一斉になだれ込んでくる。
     それは有り難いことであり、またチャンスでもあった。本音を言ってしまえば、こちらは大分厳しくなっていたが、弱音を吐いている場合でもない。
     その勢いに乗るようにして、自分達も眼前の敵へと飛び込んだ。

     敵の戦力の方が上なのにも関わらず、ここまで戦闘不能者が出ていなかったのは、指揮に徹していた本織識音が状況を理解していなかったためである。
     そしてそれは未だに続いているらしく、その隙を逃す理由はなかった。
     飛び込んだ勢いをそのままに、明莉が振り下ろした激震の刃が、クロムナイト達を纏めて巻き込み、薙ぎ払う。勿論敵が消極的だからといってその脅威が和らぐわけではなく、カウンター気味の一撃を受けてしまうが、構わない。
     リサから癒しを受けながら、さらに一歩を踏み込み、握り締める拳に纏うのは雷。脇差が構えた刀――月夜蛍火が振り下ろされるのに合わせ、そのまま叩き込んだ。
     敵が離れたことで、一つ小さく息を吐き……歓声が聞こえたのは、その時のことであった。どうやら他のチームがクロムナイトを撃破したらしい。
     それは明確に反撃が叶った瞬間であり、それに奮起しないわけがないだろう。
     そしてその歓声に背を押されたように、シャノンが敵の集まる中央へと飛び込んだ。
     瞬間放たれた、暴風を伴う回し蹴りによって敵が薙ぎ払われ、そのうちの一体へと絹代が狙いを定める。蒼い指輪から放たれたのは、制約を課す弾丸。
     貫くと同時、シルフィーゼが振り抜いた剣の刃がその身に沈み、逆側へとすり抜けた。霊魂を直接破壊された敵の身体が僅かに硬直し、そこを狙い違わず碧が振り下ろした漆黒の妖刀が捉える。
     月代の霊障波が叩き込まれ――上向いた視界に映るのは、断罪の刃。
     明日香が振り下ろした咎人の大鎌・絶命が、その名の通りに敵の命を刈り取った。
     これでようやくこちらも敵を倒し、他の仲間達も次々と撃退していく。勿論こちらの被害も小さくなく、ポツポツと戦闘不能者も出てきてしまっているようだが、怯んでなどいられないだろう。
     次の敵を見据え、挑み――しかし、どうやらそこで向こうも不利を悟ったようだ。
    「増援にスサノオが居ないという事は、どうやら依と組んだわけではなさそうね。ということは、洞窟の外で、別の灼滅者が依たちを攻撃している可能性が高い。洞窟内にこれだけの戦力を投入したという事は……。脱出するには、うずめ様の予知にすがるしかなさそうね」
     本織識音はそう捨て台詞を残すと、撤退を開始し始めたのである。
     だがそうはさせじと、即座にその後を二つのチームが追った。
     こちらも出来れば追いたかったものの、クロムナイト達はまだ残っている。それを抑える役目もまた、重要だ。
     向こうは向こうに任せ、こちらも自分達の役目を果たすために、見据えた先へと踏み込んだ。


     どうやら本織識音は戦闘能力は大したことがなかったらしく、割とあっさり灼滅に成功したようだ。
     だが。
    「それほど親しかったわけでは無いが、仲間の仇は取らせてもらおう」
     そう言って現れたのは、鞍馬天狗と、鞍馬天狗に率いられた旧日本軍風羅刹。
     当初の予定からすれば、鞍馬天狗と戦うのは望むところだ。
     しかしこちらはクロムナイト達との戦いにより激しく消耗しており、さらには既に明莉と碧が倒れ、月代が消滅してしまっている。
     ――鞍馬天狗勢を外に居るスサノオ壬生狼組と戦わせるべく、敵との戦闘を避けて距離を取りながら、洞窟から撤退を。
     仲間の一人から伝えられたその伝言に、否やはなかった。
     脇差が明莉を、リサが怪力無双で碧をそれぞれ抱え、素早く離脱を開始する。
     殿は絹代だ。敵との戦闘を避け、距離を取りながら、洞窟の外へと飛び出し――瞬間、先ほど立てた作戦の実現が不可能だということを悟った。
     スサノオ壬生狼達はそこにおらず、居たのは戦闘不能者を多数抱えた仲間達だったのだ。この状況で、鞍馬天狗とうずめ様を敵にまわして戦う事は不可能だろう。
     撤退が必要な状況だというのは、誰の目にも明らかだった。
    「ちっ、結局目的は果たせず、か」
    「厄介なうずめ様には、今度こそ消えていただきたかったのですが……」
    「まあ最低限の戦果はあげりゅことが出来たのじゃから、それでよしとすべきじゃの……」
     悔しいのは当然だ。
     しかし各々がその思いを胸に秘めつつ、撤退の準備を進める。唇を噛み締めながら、一度だけ後ろを振り返ると、足早にその場を後にするのであった。

    作者:緋月シン 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年6月1日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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