南アルプス壬生狼行~進撃のスサノオ

    作者:J九郎

     南アルプスの麓。新緑の薫る山中に、周囲を捜索する灼滅者達の姿があった。
    「敗走した、うずめ様がもつ刺青を狙って、依が動き出すと思うんだよね」
     三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)が、自らの推理を再確認するように口にする。
    「それに、うずめ様には予知能力があるから、それを狙って朱雀門やその他の勢力も仲間にしようとする……のかな?」
    「朱雀門がうずめ様を仲間にしようとすれば、派遣されるのは、同じ刺青羅刹の鞍馬天狗だろうな」
     一緒に南アルプスに来ている灼滅者の一人が、後を引き取って続ける。
    「鞍馬天狗とうずめ様が接触すれば、天海と外道丸の2つの刺青を持つ、刺青羅刹の依が黙ってはいないだろうね」
     そして、そのような考えをもった灼滅者は、他にも存在した。だから彼らは、他のチームとも連携して、ここ南アルプスの捜索をしていたのだった。
     やがて――、
    「どうやら、大当たりだったみたいだよ」
     渚緒が、仲間達を呼び寄せる。
     彼らの眼下、崖の下の山道を、狼頭の異形の軍勢が進軍していた。彼ら、スサノオ壬生狼組は、ざっと数えただけで100体近く!
     そして、その先頭を行くは、闇墜ちした元灼滅者にして刺青羅刹の依その人だった。
    「これは、自分達だけじゃ勝ち目がないね」
     依達に気付かれないように声を潜めながら、灼滅者の1人が仲間達に隠れるように促す。
    「彼らの目的は、おそらく、うずめ様の刺青だろう」
    「だけど、予知能力を持つうずめ様が、簡単に居場所を特定されるとは思えないけど」
    「なら、朱雀門高校の鞍馬天狗達がうずめ様に接触しようとしたのを、依が察知したという可能性の方が高いかもしれないね」
     幸い、依やスサノオ壬生狼組は灼滅者の存在に気付かなかったようだ。彼らが小声で意見交換をしている間に、山道の先へと進軍していく。
     なんとか依一行をやり過ごした一行は、一斉に携帯電話を取り出した。そして、南アルプスを捜索中の他のチームに連絡を入れていく。
     敵の数は確かに多いが、依の狙いがうずめ様や鞍馬天狗を襲撃し刺青を奪う事であるのならば。その戦いに乗じる事で、今南アルプスにいる灼滅者だけでも、充分対応は可能なはずだった。
     一通り連絡を追えた一同は、身を隠しつつ依達の追跡を開始した。ここで彼女達を見失っては元も子もない。
    「! あれを見て!」
     1人が、依達の進路を指さす。そこには大きな洞窟があり、その洞窟の前に、うずめ様とその配下の旧日本軍風の羅刹30体と、交渉にやってきていたらしい鞍馬天狗と本織識音、そしてその護衛のクロムナイト20体の姿があった。
     依はにこりと微笑むと、スサノオ壬生狼組に突撃を命じる。うずめ様と鞍馬天狗、本織識音は突然の奇襲に驚愕の表情を浮かべたが、それも一瞬。すぐにそれぞれの配下に迎撃を指示し、静かだった山中は、たちまち戦いの喧噪に包まれた。
     灼滅者達は再び携帯電話を取り出し、他のチームに状況を伝えていく。
     戦況は、見る限りスサノオ壬生狼組が優勢で、このままいけば、依は、うずめ様と鞍馬天狗の刺青を手に入れることになるだろう。
     戦闘中に乱入した場合、依の勝利は防げるかもしれないが、ダークネス達が灼滅者を脅威と考えれば、一時的に同盟を組んで、灼滅者を先に攻撃してくるという状況になる可能性もある。
    「どのタイミングで、どのような行動をするべきか、考える必要があるね」
     何より、今現場にいるのは自分達のチームだけなのだ。他のチームの到着を待つか、先に仕掛けるか。
     決断は、彼らに委ねられていた。


    参加者
    伝皇・雪華(冰雷獣・d01036)
    槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)
    アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)
    御神・白焔(死ヲ語ル双ツ月・d03806)
    三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)
    明鶴・一羽(朱に染めし鶴一羽・d25116)
    夏目・サキ(ぴょん・d31712)
    霞・闇子(小さき闇の竹の子・d33089)

    ■リプレイ

    ●開戦
     戦いが、始まっていた。
     刺青羅刹・依率いるは、スサノオ壬生狼組およそ100体。対する朱雀門・うずめ様配下の軍勢は、日本軍風羅刹とクロムナイトを合わせて50体。
     それはもはや、戦争といっていい規模の戦いだった。
    「さて、どうしようか。このまま皆の到着を待つか、すぐに仕掛けるか」
     三蔵・渚緒(天つ凪風・d17115)が、皆の意思を確認するように、全員の顔を見回す。
    「う~ん。他の班の到着を待った方が、安全ではあるんだけどね」
     霞・闇子(小さき闇の竹の子・d33089)が、最も無難な作戦を口にする。だがそれは、他の班よりも早くこの場にいるというメリットを捨てるということ。
    「私は、一度死んだ者から刺青を奪おうという依の考え方そのものが許せない。依を討つこの好機、逃すつもりはない」
     御神・白焔(死ヲ語ル双ツ月・d03806)はそう言って、今すぐ奇襲をかけるべきだという考えを明確にする。『死は最も尊ばれるべき世界の祝福』と、そう考える白焔にとって、依は許されざる存在なのだ。
    「なら、考えてる時間がもったいないぜ。今すぐあいつらをぶっ飛ばす! それでいいだろ?」
     槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877)が、結論は出たとばかりに拳を握り締める。それに対し、もはや異論を唱える者はいなかった。
    「ほな、いっちょいこかぁ」
     伝皇・雪華(冰雷獣・d01036)のマイペースな掛け声を合図にしたように、灼滅者達は一斉に駆け出した。
     狙うは背後からの奇襲。そして、ターゲットは依ただ1人。
    「何事です!?」
     軍勢の後方に布陣していた依は、敵が存在するはずのない背後からの襲撃に、驚愕の色を浮かべる。彼女にとっては、想定すらしていなかった奇襲だった。
    『さぁ、鮮血の結末を』
     明鶴・一羽(朱に染めし鶴一羽・d25116)が、眼鏡を外すと同時にスレイヤーカードを解放する。そして、
    「そろそろ幕引きの時間だ。再び闇の底に沈むがいい、依」
     縛霊手に内蔵された祭壇を展開し、発生した結界で依と彼女を守るスサノオ壬生狼組の動きを封じ込めた。
    「武蔵坂の灼滅者だと!? このような時に!」
    「とにかく、依様をお守りするのだ!」
     奇襲に気づいたスサノオ壬生狼組が、依を守るために動き出そうとする。だが、
    「ん、折角出来たチャンス、無駄にしない」
     夏目・サキ(ぴょん・d31712)が、「難しい事は皆に任せて、とにかく自分は戦うだけ」とばかり、突出してスサノオ壬生狼組に血桜を構えて切り込んでいった。さらに、
    「ボク達が壬生狼組は引き付けるから、みんなは思う存分依をやっちゃって!」
     闇子は仮面を被ると、スサノオ壬生狼組の機先を制するようにロングソードを振り回してその後に続く。
    「邪魔するってなら、みんなまとめてぶっ飛ばす!」
     続けて康也の放った狼を象った影が、後方で射撃を行おうとしていたスサノオを飲み込んでいき、
    「狼さんたちは引っこんでてくれへんかなぁ」
     雪華が雷を纏った拳で依のもっとも近くにいたスサノオを吹き飛ばす。
    「依さん……そこまでです……!」
     アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)が、サキ達の攻撃でスサノオ壬生狼組がひるんだ隙に、真紅に染まったヴォーパルソードで依に斬りつけ、
    「一番槍の務め、果たさせてもらうよ」
     渚緒は駆け寄り様にその場で体を回転させ、強烈な回し蹴りで依を護衛のスサノオもろとも蹴りつけた。
     そして、
    「死を食い散らす獣を殺す。ただそれだけだ」
     依が知覚することもできぬ程の速度で、白焔の斬撃が依の首元を切り裂いていた。
    「……予知とは、本当に厄介ですね。ですが、ここでうずめの刺青を得られれば、私も予知の力を得られる筈……」
     血のにじむ首筋を押さえつつ、依はよろよろと後退する。
    「反転せよ壬生狼組。敵は小勢、蹴散らしなさい」
     そしてスサノオ壬生狼組に転進を命じ、灼滅者達の迎撃を指示したのだった。
    「あかんな。これ、スサノオが邪魔でうずめはん達の所まで辿り着けへん」
     雪華が眉をしかめたのは、出来ればうずめ・朱雀門陣営に接触して、依灼滅までの共闘を申し込もうとしていたからだ。
    「聞こえるか、朱雀門! 私達の目的は依だ! 今なら、スサノオ壬生狼組を挟み撃ちにできる!」
     一羽が声を張り上げるが、その声は戦いの喧騒にかき消され、うずめ様や朱雀門の幹部達には届かない。両者の間には総勢150体もの軍勢がいるのだ。それも無理からぬ話ではあった。どうにかして声を届かせる手段を用意していれば、話はまた違っていたかもしれないが。
    「共闘できないとなると……少々厳しい戦いに……なりそうですね」
     アリスの言葉通り、窮地はすぐにやってきた。

    ●1分経過
    「壬生狼組各員は3人ずつ組を作り、灼滅者を迎撃せよ! 奴らを引き離し、連携を阻むのだ! 後衛の敵には、遠距離攻撃で対処せよ!!」
     幹部らしき1体の指示に従い、スサノオ壬生狼組は灼滅者1人に対し、3人が組になって向かってきた。
    「3対1とか、卑怯やろ~」
     雪華がそう挑発するが、スサノオ壬生狼組は鼻で笑う。
    「ふん。集団戦法は我らの最も得意とするところ。壬生の狼の戦い方を見せてやる!」
     1体でも灼滅者の能力を上回るスサノオ壬生狼組が、3体がかりで1人に襲い来るのだ。灼滅者側は、たちまち劣勢に陥っていった。
    「まずいな、これは」
     闇子が、WOKシールドを最大出力で展開し、自分だけでなく周囲の仲間達も含めて守りを固める。だが、このままでは遠からず数の暴力の前に屈することになるだろう。
    「カルラ! 僕はいいから、みんなを守ってくれ!」
     渚緒が、自身を包囲する3体のスサノオを結界で抑え込みつつ、自らのサーヴァントに指示を飛ばす。
    「依、逃がさん」
     白焔は、スサノオ達に護られるようにして後退していく依を追いかけんとするが、
    「逃がさんはこちらの台詞だ!」
     如何に常人離れした機動を誇る白焔でも、3体のスサノオを突破することはかなわない。
    「でも、これだけまとまってくれれば、外しようがない……纏めて吹っ飛べ」
     サキは、包囲されたことを逆手に取り、暴風を纏った蹴りでスサノオ達をまとめて蹴り飛ばした。だが、スサノオ達も即座に刀による連続攻撃で反撃してくる。
    「みなさん……何とか……耐えてください……」
     アリスが、スサノオの猛攻に傷ついた仲間達を癒すべく聖なる風を巻き起こす。だが、
    「射撃、放て!!」
     壬生狼組は冷静に、一斉射撃をアリス目掛けて撃ち放った。アリスの小さな体が銃弾に撃ち抜かれる、その寸前。彼女の前に立ちはだかっていたのは、闇子だった。
    「闇子、さん……!?」
     目を見開くアリスの前で、闇子は小さく微笑んで、
    「回復役が倒れたら、完全に終わるからな」
     言い終わると同時に、彼女の付けていた仮面が地に落ちた。続けて、闇子自身の体もぐらりと傾き、そのまま仰向けに倒れていく。
    「もはや、戦う力が完全に尽きたようですね」
     頭上から聞こえてきた声に、はっとアリスが顔を上げれば、そこにはいつの間にか接近してきていた依の姿があった。
    「仲間を殺されればあなた達は動揺して、本来の力を発揮できなくなるでしょう?」
    「依、貴様!」
     依の意図に気づいた一羽が吠える。だが、スサノオに包囲された現状では、依を阻止することも適わない。
    「さようなら、灼滅者さん。心配せずとも、他の皆様もすぐに後を追わせてさしあげます」
     依が異形化させた腕を、闇子の心臓目掛け突き下ろそうとした、その時。
    「これ以上やらせるか! てめぇは絶対にぶっ飛ばす!!」
     依の傍らで、炎が膨れ上がった。突如発生した超高熱に気付いた依が振り向いた時。
    「喰らえっ!!」
     獣と化した康也の拳が、依の頬に叩きつけられていた。
    「馬鹿な……、どうやって壬生狼組の包囲網を……」
     すぐさま向き直った依が目にしたのは、額から赤い角を生やした、炎を纏う半獣人の姿。
    「その姿は、スサノオ!? なるほど、追い詰められた灼滅者は闇堕ちすることもありましたね。迂闊でした」
     依のつぶやきに、康也だったスサノオは、ニッと凶悪な笑みを浮かべた。

    ●2分経過
    「ですが、闇堕ちを1人出したくらいで、状況が好転したなどとは思わぬことです」
     すかさず自らの身を壬生狼組に護らせながら、依が嘯く。
    「……残念だけど、その通りみたいだね」
     渚緒が無念そうに顔をしかめた。未だスサノオ壬生狼組は大半が健在で、対する自分達は既にボロボロだ。
    「依に多少でも手傷を負わせられただけでも、良しと考えるしかないかな」
     できれば刺青が集まることは防ぎたいと考えていた渚緒だったが、その役目は後続に託すしかないようだ。
    「口惜しいが撤退するしかないか……。スクトゥム、すまんがしんがりを頼む」
     一羽が、霊犬のスクトゥムに背後の守りを託しつつ、後退を開始する。
    「馬鹿め! 易々と逃がすと思うな!」
     だが、スサノオ壬生狼組がみすみす撤退を見逃すはずもなく、灼滅者達全体を取り囲むように包囲網を拡大させていった。
    「退路は、私が、切り開く」
     その包囲網に、真っ先に突っ込んでいったのはサキだった。サキが駆け抜けつつ放った鋼の糸が、行く手を阻むスサノオを絡みとっていく。
    「無理せず無茶するをモットーで行く気やったけど、ここは無理のしどころやね」
     そして、後に続いていた雪華が、動きを封じられたスサノオに鋼の如き重い拳の一撃をお見舞いした。
    「オラァッ! 邪魔する奴は、全員まとめてぶっ飛ばす!」
     さらに、気を失った闇子を肩に背負った康也が、ダークネスの力を惜しみなく発揮し、炎を周囲にばら撒き、包囲網を突き崩す。
    「くっ、怯むな! 数も戦力も、まだまだこちらの方が上なのだ!」
     幹部級のスサノオの指示を受け、スサノオ達も負けじとそれぞれの得意とする得物で攻撃を繰り出してきた。その猛攻の前に、まず味方をかばい続けてきたビハインドのカルラが消滅する。
    「回復が……追いつかない」
     アリスが再び聖なる風を吹かせるも、スサノオ達から受けるダメージの方が、回復量をはるかに上回っていた。もはや、灼滅者達の中に無傷でいられる者は一人も存在しない。特に、先陣を切るサキへのダメージは大きかった。
    「灼滅者、覚悟せよ!」
     そしてついに、スサノオ壬生狼組の1体が放った居合斬りが、サキを逆袈裟に切り裂いた。駆け続けていたサキの足が止まり、前のめりに倒れていく。
    「愚かな子達。本当に逃げ切れると思っていたのですか?」
     いつの間に回り込んでいたのか。気付けば灼滅者達の行く手に、依とその護衛達が立ちはだかっていた。
    「重傷者が2人……、これは本当にきっついなあ」
     雪華が行く手を切り開こうと拳を構えようとする。だが、もはや体に力が入らなかった。重傷とまではいかないが、これ以上の戦闘継続は困難そうだ。
    「いい加減に覚悟を決めることですね。そして死の運命を受け入れなさい」
     依に刻まれた蜘蛛の刺青が妖しく蠢き始める。それが、動けないサキと雪華を狙っていることは明白だった。
    「――そうだな。俺も覚悟を決めよう」
     その声は、依の背後から響いた。依が咄嗟に土蜘蛛の糸の標的を背後にいる何者かに変更し、解き放つ。だがその時にはもう、その場には誰もおらず、
    「遅い」
     再び響いた声は、彼女の足元から。そして黒づくめの人影が、地を這うように依の足の腱を切り裂いていた。
    「速すぎる……。灼滅者の限界を超えた動き、まさか」
     ようやく依が捉えたのは、黒づくめの白焔の姿。だが雰囲気が、気配が、明らかに先ほどまでの白焔とは異なっている。
    「またしても、闇堕ちですか。あなたたちも、いよいよ手段を選んでいられなくなったようですね」
     依が艶然と微笑んだ。だが、流石に依も闇堕ち者2人を相手取るつもりはないらしく、スサノオ壬生狼組の軍勢の中に後退していく。
    「逃がすか」
     依を追う素振りを見せた白焔だが、その時には依は既に、十重二十重にスサノオ達に護られていた。白焔は舌打ちすると、倒れていたサキを抱え起こす。
    「勝負は預けるぞ、依。だが、死を汚す貴様は、必ず殺す」
     幸い、灼滅者達を包囲していたスサノオの半数以上が依の護衛に回ったために、包囲網は大きく綻んでいた。これならば、闇堕ち者2人と灼滅者3人の力があれば、突破可能のはずだった。

    ●3分経過、そして
     闇子に肩を貸した康也と、サキを抱えた白焔が、前方に立ちはだかるスサノオ壬生狼組を蹴散らす。背後からの攻撃を渚緒と一羽がその身を盾として受け止める。そして傷ついた仲間達を、アリスがその都度癒していく。
     気づけば灼滅者達は、スサノオ壬生狼組の包囲を突破し、戦闘の喧騒も届かぬ渓流沿いの川原まで辿り着いていた。
    「仲間達の到着まで持ちこたえられなかったね。一番槍としては、失格かな」
     渚緒が、自嘲気味に呟く。
    「死者がでなかっただけでも、良しとしましょう」
     仕舞っていた眼鏡をかけ直しつつ、一羽がそう応じる。ずっと共にしんがりを守ってきた霊犬のスクトゥムは、撤退戦の中で消滅してしまっていた。
    「今……戦況は……どうなっているんでしょう」
     アリスが、心配そうに戦場となっている方角に目を向ける。今頃は、他の班の灼滅者達も戦場に辿り着いているはずだった。
    「さて、どうなるけか」
     雪華は全ての力を使い果たしたとばかり、川原に大の字になって倒れている。
     そんな時。
    「約束守れなくてごめん」
     そんな呟きが、皆の耳に届いた。目を向ければ、闇堕ちした康也が森の奥に歩み去っていくところだった。気付けば、既に白焔はサキを残し姿を消している。
    「君達も、絶対に助け出すよ。2人の帰りを待っている知り合いのためにも」
     届かないと知りながら、渚緒はそう声に出さずにはいられなかった。

    作者:J九郎 重傷:夏目・サキ(咲き誇る桜の夢・d31712) 霞・闇子(小さき闇の竹の子・d33089) 
    死亡:なし
    闇堕ち:槌屋・康也(荒野の獣は内に在り・d02877) 御神・白焔(死ヲ語ル双ツ月・d03806) 
    種類:
    公開:2016年6月1日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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