南アルプスの麓付近。
山岳地帯にも拘らず、足取りを乱すことなく器用に進む学生たちは、何か――とある人物がこの山に逃げ込んだとの情報に基づいて探索を行っていた。
その、人物とは――予知能力を持つ『うずめ様』。
彼女の予知能力を欲して朱雀門高校が動き出せば、刺青を求めて羅刹の依も動き出すであろう。と、いうことは……。
「刺青羅刹の依に朱雀門高校の本織識音が接触する気がします」
南アルプスの麓で探索を行っていた手を止めず、草那岐・勇介(舞台風・d02601)は眉根を寄せる。
依がいるであろう場所に、本織識音はきっと来る――。
勇介は己の勘を信じ、この南アルプスへの探索にやってきたのだ。
周囲には自分たち以外にも、同じようなことを考えた仲間たちが捜索を行っている。
だが、探索すべき範囲は広く、なかなか成果をあげることができない。
(「ハズレだったのかな――?」)
いや、諦めるのはまだ早い、と勇介は首を一つ横に振り、再び探索に戻ろうとしたその時、彼のポケットの中で連絡用の携帯電話が着信を告げた。
「南アルプスで捜索中のとあるチームが、精鋭を引き連れた刺青羅刹の依たちを発見したそうです」
通話を終えた勇介はいつになく緊張した面持ちで仲間たちをぐるりと見回す。
「依の目的は、うずめ様の刺青ではないかと――」
だが、予知能力を持つうずめ様が簡単に居場所を特定されるとは思い難い。
首を傾げる仲間たちの疑問はもっともだ。では、なぜ――?
仲間たちと意見をぶつけ合う中で、やがて彼らは一つの推測を導き出す。
朱雀門高校の鞍馬天狗などがうずめ様に接触しようとしたのを、依が察知したという可能性が高いかもしれないということを。
もしも、この仮説が正しければ、今この南アルプスにいるのは、うずめ様、刺青羅刹の依、朱雀門高校、そして武蔵坂学園。
「まずは、依が向かっている場所に向かいましょう」
冷静に提案する勇介の言葉に仲間たちも間髪いれずに頷いた。
敵の戦力は脅威だが、依の狙いはうずめ様や鞍馬天狗を襲撃し刺青を奪うことだと推測される。
その戦いに乗じることができれば、今、南アルプスにいる灼滅者だけでも十分勝算はあるだろう。
慣れぬ山道とはいえ、灼滅者にとっては苦でもない。
連絡に基づいて道を進めば戦いの音が耳に届く。
敵に近づいたと察し、歩くスピードを緩めたところで再び勇介の携帯に着信が入った。
「思った通りです」
電話を切るや否や、勇介は仲間たちに状況を説明する。
予想通り、今、この南アルプスにいるのはうずめ様の他、刺青羅刹の依たちと朱雀門高校の鞍馬天狗、それから。
「本織識音もいるようです」
話によれば、うずめ様と交渉にやってきた鞍馬天狗と本織識音に依たちが襲い掛かり、羅刹たち優勢で戦況は進んでいるようだ。
このままいけば、依はうずめ様と鞍馬天狗の刺青を手中におさめることになるだろう。
もしも、ダークネスたちの戦闘中に乱入した場合、依の勝利は防げるかもしれない。
だが、彼らが灼滅者を脅威と考えれば、一時的に同盟を組んで、灼滅者を先に攻撃してくるという状況になる可能性もある。
「どのタイミングで、どのような行動をするべきか……よく考えないといけないですね」
この作戦を成功させるために取るべき行動、戦うべき相手。
刃がぶつかり合う音を聞きながら、灼滅者たちは逸る心を抑え、静かに考えていた――。
参加者 | |
---|---|
仙道・司(オウルバロン・d00813) |
草那岐・勇介(舞台風・d02601) |
ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125) |
近衛・一樹(創世のクリュエル・d10268) |
蓮条・優希(星の入東風・d17218) |
安楽・刻(ワースレスファンタジー・d18614) |
四刻・悠花(高校生ダンピール・d24781) |
玉城・曜灯(紅風纏う子花・d29034) |
●鬼の待つ場所
草木で覆われた山道を進む人の影。
『隠された森の小路』を使う安楽・刻(ワースレスファンタジー・d18614)を先頭に、灼滅者たち一行は南アルプスの山中を急ぎ駆けて行く。
(「……状況が一気に動きかねない、一戦……良くも悪くも、一気に」)
刻はひっそりと息を吐いた。この先、待ち受ける危険も相当なものだろう。だが、不思議ともう怖くはない。
そこへ、赤茶色の毛並みをなびかせ、小型のニホンオオカミが獣道を戻ってきた。
灰色の尻尾を一振りし、変身を解いたミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)は仲間たちにまだ敵の姿は見えないこと、戦場まで距離があるであろうことを伝える。
「方角は合っているはずなんですけどね」
草那岐・勇介(舞台風・d02601)が地図を広げ、『スーパーGPS』で正確な現在地を確認しようとした時、彼の携帯が着信を告げた。
電話は近くを進む紅羽・流希のチームからで、同じタイミングでの突入を目指すべく、戦場の前で合流をはかることで同意する。
程なくして月影・木乃葉からも連絡が届き、無事に彼ら2チームと合流を果たし、一行がさらに先を行くと激しい戦闘音が聞こえてきた。
「洞窟の外でも戦いが続いているようですね」
急ぎましょう、と近衛・一樹(創世のクリュエル・d10268)が仲間たちを促し足を速める。
その傍らで『DSKノーズ』を発動させていた蓮条・優希(星の入東風・d17218)は強まる業の匂いに思わず顔をしかめた。だが、この匂いは敵に近づいている証拠といえる。
「おい、見ろよ……!」
洞窟の前に到着した優希たちが見たのは、スサノオ壬生狼組と依に苦戦する仲間の姿。
乱戦を覚悟していた四刻・悠花(高校生ダンピール・d24781)だったが、この事態は正直想定外と言わざるを得なかった。
(「このままでは、依の軍勢と戦っているチームは、各個撃破されて敗北してしまいます」)
悠花は慌てて周囲を見回すが、本織識音たちの姿は確認できない。恐らく洞窟の中に逃げ込んだのだろう。ならば……。
「……スサノオ壬生狼組と戦っているチームの救援に行くか?」
ぽつりと漏らしたクラスメイトの無堂・理央の言葉に仙道・司(オウルバロン・d00813)は「でも」と慌てて口を挟む。
「スサノオ壬生狼組の数からいって、彼らは洞窟には侵入していないようですよ」
ほら、と彼女が指し示す先には大勢のスサノオ壬生狼組の姿が見えた。だが、洞窟内でも灯りがゆらめき、激しい音が響き渡っている。これは、そこでもまた戦闘が起きていることを示していた。
「先に到着した仲間の一部が洞窟内に攻め込んでいる、ということでしょうか」
「戦力を分散して二正面作戦を行っているのか!? 無謀だぜ!」
司の分析に赤槻・布都乃は思わず大声を上げる。他の仲間たちも皆驚きを隠せず目を見開いている。
「わからないですが、そうしなければいけない理由があったのかもしれません」
ダークネス同士が共闘せんと合流しようとしているところを仲間達が阻止しているという可能性。あるいは、洞窟の敵を釣り出して乱戦に巻き込もうとしているのかもしれない。
どうすべきかと彼らが迷っている間にも、刻々と戦況は変わる。
焦りの中、思案する灼滅者達の目に別チームの灼滅者の姿が飛び込んできた。彼らは依とスサノオ壬生狼組と対峙するチームの加勢に加わっていく。……ならば。
玉城・曜灯(紅風纏う子花・d29034)は大きく息を吸い込むとまっすぐに目指す先を見据えた。
「今よ、みんな、行くわよ!」
曜灯の言葉に頷くと8人の灼滅者たちは一斉に洞窟へと向かって駆けだす。
司がちらりと周囲を伺うと、理央や布都乃のチームも同じく洞窟内へと向かって走っている姿が見えた。
(「目指す敵はただ1人! ――いざ本織識音灼滅へ!」)
●行く手を阻む者
先導するミカエラと並んで走る曜灯と司を仲間たちが追随する。
「みんな、こっち、こっち!」
ミカエラたちが足早に駆けていくと、洞窟内部で聞こえていた戦闘音がどんどん近づいてきた。
「あ……っ!」
ミカエラと共に前方を走る司が見たのは、20体ほどのクロムナイトと戦う灼滅者たちの姿。
曜灯がぱっと周囲を見回したところ、倒れている者はいないように思える。だが、戦力は敵の方が勝っているのか、灼滅者たちが苦戦を強いられているように見えた。
「あかりん! 脇差! 無事っ!?」
戦場に親しい友の姿を見つけ、ミカエラは思わず声をかける。彼女の声に木元・明莉と、鈍・脇差はちらりと視線を向けると軽く手を挙げ無事だと応えた。
先に戦っていた仲間たちが伝えてくれた状況を整理すると、ここでは識音とクロムナイト達が防衛線を張っており、うずめ様や鞍馬天狗はさらに奥にいるようだ。
「まずはお前らを倒せっちゅーことやな」
一樹はトンっと軽く足を鳴らすと大きく息を吸うと同時に跳躍する。
眼鏡を外し好戦的な笑みを浮かべる一樹が纏う空気は先程までとはうってかわり、穏やかでのんびりとした雰囲気は微塵も感じられない。
「ええで、上等や! 邪魔するヤツは纏めて蹴散らしたる!」
一樹は朱のオーラを纏った両足で眼前の敵を引き裂くように逆十字を切った。
彼に続けと曜灯が【Win-G BloodyRose】に影を纏わせクロムナイトを蹴り飛ばしたところを、すかさず悠花が緋色のオーラを『棒』に宿して敵を打つ。
先の戦いでのダメージが蓄積していた相手にこの攻撃は効いたようで、よろめいたクロムナイトは思わず二歩、三歩と後ずさった。だが、クロムナイトも負けてはいない。己の利き腕を巨大な刀へと変え、司へと襲い掛かる。
その動きに刻のビハインドが素早く反応した。己の身を挺して司を庇い、代わって敵の攻撃を受ける。
手負いのクロムナイトと無傷の灼滅者たち。どちらが優勢かは結果を見るまでもなく明らかだった。
クロムナイトたちの攻撃は護り手である悠花や刻たちが積極的に引き受け、その傷を勇介が放った癒しのオーラを纏った矢で回復する。その間も灼滅者たちの攻撃は止まらない。
「これで、終わりだっ!」
優希は両手で握った『碧風』を繰り出し、眼前のクロムナイトを穿った。螺旋の様な捻じりを加えられた槍の強烈の一撃に耐えられるだけの体力は、もう相手には残っていない。
倒れ行くクロムナイトを見おろす優希が持つ『碧風』に結ばれた青い飾り紐がふわりと風になびく。
――まず、1体。
「皆さん、この調子で頑張りましょうねっ!」
明るい司の声が仲間たちを鼓舞すると同時、彼女が放った意思を持った帯が後衛のクロムナイトの右腕を貫いた。
司の声に応えるように、ミカエラは『新宿中央公園のバベルブレイカー』をクロムナイトの身体に全力で突き刺し、一樹が流星の如く煌めく強烈な蹴りをお見舞いする。
果敢に攻める灼滅者たちであったが、クロムナイトもしぶとかった。
「……くっ……」
自身の傷を厭わず、刻は敵の攻撃から仲間を庇い続ける。傷は深いがその痛みを表情に出すことなく戦いを続ける刻だったが、ハッと顔をあげた瞬間、矢をつがえたクロムナイトと目が合った。
かわせない――そう察した刻が見たのは、自分を庇うビハインドの姿だった。
「……ありがと、母さん……」
満足そうに黒いドレスの裾を揺らし、ゆっくりとビハインドが姿を消してゆく。
刻は素早く体勢を立て直すとクロスグレイブを構えた。聖歌とともに、放たれた光の砲弾がクロムナイトの身体を撃ち抜く。膝から崩れ落ちた敵にはもう立ち上がるだけの体力は残っていなかった。
「増援にスサノオが居ないということは、どうやら依と組んだわけではなさそうね」
次々と倒れ行くクロムナイトを横目に、識音は静かに戦況を分析しつつ、悔しそうにギリッと唇を噛む。
「ということは、洞窟の外で、別の灼滅者が依たちを攻撃している可能性が高い。その上で洞窟内にこれだけの戦力を投入したということは……」
――無事に脱出するには、うずめ様の予知にすがるしかない。
識音は大きく深呼吸を一つするとくるりと踵を返した。
●蝙蝠の末路
「本織識音が逃げますっ!」
洞窟の奥へと向かって走り出した識音を見つめる悠花の声に、灼滅者たちの顔が凍り付く。彼女の後を慌てて追いかけようとするが、その前に新たなクロムナイトが立ちはだかった。
「待てっ、本織……っ!」
先にこのクロムナイトを倒すしかないのか――。
逃げる識音を見失わないようにしながら、悔しそうに勇介が『青星光』に矢をつがえた、その時。
眼前のクロムナイトの身体を意志ある布と巨大な杭打機が貫く。
驚きを隠せぬ勇介の耳に届いたのは、机をならべて共に学ぶ友人の声だった。
「こっちはすでに2人倒れてるからー、本織の方は任せるよー」
普段通りゆったりと喋る、戦場には不似合いにも思える声の主は、波織・志歩乃。
志歩乃たちのチームの援護に勇介はもちろん、皆の顔が笑みが浮かぶ。
「波織さん、ありがとっ」
クラスメイトの申し出をありがたく受け、勇介たちは識音の後を追ってすぐさま走り出した。
逃げる識音を追うのは、自分たちの他にもう1チーム。
先を行く彼らの背を追う優希たちだったが、突如識音の足どりが緩んだ。この好機を見逃さない手はない。
「俺にとっては朱雀門には『貸しひとつ』だからな。此処で返して貰うぞ!」
この際、相手が忘れていようと、そもそも知らなかろうと関係ない。
優希の利き手が『碧風』を飲み込み、巨大な刀へと変化するや否や識音へと斬りかかった。優希に続けと友軍の仲間たちも容赦なく彼女に攻撃を仕掛ける。
「悪いがうずめをお前らに渡すわけにはいかんのよ」
一樹は『冷妖槍-氷茜-』をくるりと回し、ぐっと構え直した。
「……あんまりお前らと戦いたくはないんやけどな」
一樹の妖槍が生み出した冷気の礫が識音に向かって放たれる。
彼女が怯んだ隙を逃さず、異形巨大化した司の腕が勢いよく識音を殴り飛ばした。
「……クッ」
灼滅者たちの攻撃から素早く体勢を立て直し、識音はその手で握った大鎌を思い切り振るう。空間から生み出された無数の刃が前に立つ者たちへと一斉に襲い掛かった。
だが今は攻める時と判断したミカエラは、己の傷を顧みることなく手にした鋭い鋏で識音の髪を切り刻む。
刻もまた、足元から伸ばした黒い影の切っ先を鋭い刃物のように尖らせ、容赦なく彼女の身体を切り裂いた。
ポニーテールの赤いリボンを揺らし、悠花が6尺ほどの棒を思い切り識音の肩に打ち据え、静かに口を開く。
「あなた方の目的はなんですか?」
「…………」
識音はちらりと顔をあげて悠花を見つめた。だが、すぐさまフイッと視線を逸らす。そして、問いに答える代わりに再び大鎌を振るい上げた。
ブン……ッ!
識音の攻撃に素早く反応した刻と悠花が、後衛へと向かって放たれた虚空の刃から仲間たちを護る。
果敢に攻める友軍の攻撃もあり、識音はじわじわと追い詰められていくのが見て取れた。
「てめぇらが土足で踏み荒らした土地を愛する者として猛抗議すっぜ!」
怒りに満ちた眼差しを向け、勇介が炎を纏った激しい蹴りを放つ。
勇介の攻撃を受け止めることができず識音はぐらりと身体を傾けるも、立ち上がった彼女は三度大鎌を振るった。
よろよろと振られた大鎌の攻撃を曜灯は難なくかわし、軽い足取りでステップを踏む。
「覚悟なさい、本織識音」
まるで翼が生えているかの如く、くるりと軽やかに宙を舞った曜灯の靴先が識音の顎を捉え、勢いよく蹴り上げた。
咲き誇る薔薇のように艶やか軌跡を描く蹴りと同時に斬り込んだ月姫・舞が愛刀『濡れ燕』を振り下ろす。
「こ、こんな……ところ、で……」
2人の渾身の一撃には耐えられず、識音はゆっくりと崩れ落ちていった。
「やった……っ!」
倒れ伏した憎き相手を前に、勇介は大きく息を吐く。
そういえば、戦況はどうなっているのだろう。志歩乃たちは? 洞窟に一緒に入った仲間たちは?
慌てて勇介が周囲の状況を確認しようとした、その時。
「それほど親しかったわけでは無いが、仲間の仇は取らせてもらおう」
洞窟奥の暗がりから、聞き慣れぬ男の声が響いた。
そこに姿を現したのは、旧日本軍風羅刹と……。
「――鞍馬天狗」
一樹がチッと小さく舌を打つ。ここで、彼が出てくるとは……。
敵の動きから目を離さぬようにしつつ、一樹は連戦の疲れを押し隠し、再び愛槍を構えた。
●鬼の往く道
鞍馬天狗の錫杖が大きく空を薙ぐ。シャランと金属がぶつかる音が鳴ると同時に旋風が巻き起こり前衛に襲い掛かかった。
曜灯の前に立ち、旋風から彼女を護った刻がチラリと後ろに視線を向け、問いかける。
「……どう、します……?」
「私たちの目的は果たしたし、これ以上戦いを続けることは危険だわ」
でも、と曜灯は周囲の仲間たちの様子を素早く目で追う。もしも、他のチームが鞍馬天狗と戦うことを選択するのであれば、彼らを見捨てるわけにはいかない。
戦うか、否か――。
その時、別チームの蒼珈・瑠璃からの伝令が届いた。
「敵との戦闘を避けて距離を取りながら、洞窟から撤退を――」
鞍馬天狗勢を洞窟外にいるであろうスサノオ壬生狼組と戦わせるための策だと聞き、司は「なるほど!」とポンと手を叩く。
そうこうしている間にも、鞍馬天狗は灼滅者たちに攻撃を仕掛けんと距離を詰めてきた。
振り上げられた錫杖の攻撃に耐え、曜灯は早く撤退するように仲間に告げる。
「みんな、無事に帰るまでが作戦よ、ほら行くわよ」
曜灯に促され、灼滅者たちは洞窟外に向けて走り出した。
鞍馬天狗たちの攻撃をかわしながら洞窟を抜けた勇介たちの目に飛び込んできたのは、傷を負った多数の仲間たちの姿。
「大丈夫か?」
洞窟外で戦っていたと思われる別チームの仲間たちの元へ優希が駆け寄り、ふらつく身体を支えるために肩を貸してやる。
「……スサノオ壬生狼組の姿は見えませんね」
一樹はポツリと呟きを漏らした。眼鏡の奥の藍色の瞳が素早く周囲の状況を観察し、彼らはすでに撤退したのでしょうと仲間に伝える。
傷ついた者たちを抱えながら、うずめ様や鞍馬天狗と戦うことは難しいだろう――。
そう判断し、撤退を促す悠花は自身の感じていた嫌な予感が杞憂に終わったことに人知れず胸を撫で下ろした。
「うずめ様に会ってみたかったのになぁ」
残念そうに口を尖らせるミカエラではあったが、当初の目的通り識音を討ったこと、そして8人全員で戻ってきたという結果は誇れるものだといえるだろう。
負傷した仲間を守りながら、灼滅者たちは急ぎ南アルプスを後にする。
うずめ様や鞍馬天狗と再び刃を交わす日がそう遠くはないことを信じて――。
作者:春風わかな |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年6月1日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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