南アルプス壬生狼行~まつろわぬ者達

    作者:相原あきと

     愛知県から長野県へと入った山岳地帯――南アルプスの麓を、エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)と仲間達は探索していた。
     エリノアの予測は刺青羅刹「依」が同じく刺青羅刹の「うずめ様」と接触し、刺青を持つ鞍馬天狗を襲撃するのでは……と言うものだった。
     本当にそんな事が起こるのか? と、問うてくる仲間にエリノアは。
    「別に一緒に探して欲しいだなんて言ってないわ、帰りたければ帰ったら」
     とツンと言い放つ。
     しかしエリノアの言葉に何か嫌な予感を感じたからこそ、仲間達もこうやって同行しているのだ。それに杞憂で終わるならそれにこした事は無い。
     ふと、エリノアはポケットの携帯に目を向ける。
     ここに来るまでに自分と似たような推測をしたチームがいくつかあり、南アルプスの探索はそれらチームと連携して行っている。何か発見した際はお互い連絡する約束であるが……。
     南アルプスに逃げ込んだであろう「うずめ様」を見つけるのが先か、それとも嫌な予感が的中し「依」を見つけるのが先か……。とにかく、エリノアら灼滅者達は周囲に気を配りつつ南アルプスを登って行く。
     そして、その連絡は突如来た。

     他チームからの連絡を受けたエリノアが自分の仲間達へ言う。
    「他のチームがスサノオ壬生狼組の精鋭を連れた刺青羅刹『依』達を発見したみたい」
     嫌な予感が現実となり始めている事態に、灼滅者の皆がそれぞれ本気の顔つきへと変わっていく。
     『依』の引き連れた部隊に「うずめ様」はいなかったとの事から、未だ両社の接触は無いのだろう。もともと予知能力を持つ「うずめ様」だ、その居場所を特定するのは依にも難しかったのかもしれない。
    「場所は解った、急ぐわよ」
     エリノアの言葉に皆が頷き歩を早めた。

     連絡を受けた場所へと近づくに従って、刃を打ち合う戦闘の音が少しずつ聞こえてくる。
     もしかして依達に戦闘を仕掛けたのか!?
     さすがに1チームで突撃するのは無謀過ぎるとエリノア達が進むペースを上げようとした時だ、再び連絡用の携帯が鳴り――。
    「何!?」
     話によれば戦闘を行なっているのはダークネス同士だと言う。
     どうやら「うずめ様」と交渉を行なおうとしていた朱雀門高校の部隊と交渉の席にいたうずめ様の部隊の両方に、依達が襲いかかったらしい。
     うずめ様の部隊は旧日本軍風の羅刹30体、朱雀門高校の部隊は鞍馬天狗と本織識音、そして護衛のクロムナイト20体程だと言う。
     つまり、依の目的は単純明快……うずめ様や鞍馬天狗の刺青奪取。
     戦況は依達が優勢で、このままではうずめ様と鞍馬天狗の刺青は依が手に入れる事になるだろう。
     灼滅者達が戦場へ乱入すれば依の勝利は防げるかもしれないが、ダークネス達が灼滅者を最大の脅威と考え一時的な同盟を組み、まず最初に灼滅者を倒そうとする可能性は多分にある。
     問題は、どのタイミングでどのような行動を取るべきか……。
     灼滅者達の選択が、この先の運命を決めるのだろう。


    参加者
    外道院・悲鳴(千紅万紫・d00007)
    淳・周(赤き暴風・d05550)
    波織・志歩乃(夢と微睡み小夜啼鳥・d05812)
    エイジ・エルヴァリス(邪魔する者は愚か者・d10654)
    黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)
    八千草・保(蒼天輝緑・d26173)
    エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)
    アリス・ドール(断罪の人形姫・d32721)

    ■リプレイ


    「……これ以上……不幸をまき散らすなら……好きには……させないの……」
    「ええ、依さんにこれ以上力をつけさせたら琴さんが遠く……いえ、今の段階で琴さんに届くことができるのか解りません。今は依さんに刺青を渡さないことを……」
     アリス・ドール(断罪の人形姫・d32721)の言葉に頷きながら、自身の複雑な思いを作戦の為に押し隠して黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)が答える。
     灼滅者達は森の小道や怪力無双等のESPを使い山道を駆け、やがて戦場が見てくる。
    「刺青羅刹……か、ゆっくり話す機会があればな……」
     八千草・保(蒼天輝緑・d26173)が他班からの連絡と照らし合わせ、やはりあの戦場がそうだと確信する。
     しかし。
    「何とも酷い乱戦だな!」
     淳・周(赤き暴風・d05550)の言葉の通り戦場は酷い有様だった。そこは洞窟前の拓けた空間で、すでにうずめ様と朱雀門の勢力は洞窟に撤退したのか姿が見えず、そこで戦っているのはスサノオ壬生狼組と最初に連絡をくれた1班だけだ。
    「やばいな、壬生狼組に囲まれてやがる」
     周の言うように灼滅者の1班が依と壬生狼組に囲まれていた。なぜ1班だけで突貫したのかは不明だが絶対絶命だろう。と、そこで数チームが救援に向かうと保に連絡が入る……ならば――。
    「依達は気になるけど、此処は彼らに任せて私達はうずめを叩くわ」
     エリノア・テルメッツ(串刺し嬢・d26318)が言い。
    「だな、ダークネスも刺青も下手に逃がしたら厄介だ。ここで潰せるだけ潰さねえと」
     周が同意し皆も頷く。結果、そのまま戦場を迂回し洞窟を目指す一行。
    「(依、いや琴は友として連れ戻したいけど、それは他に任せるわ)」
     エリノアは戦場で戦う依の姿を見つけるも、しかし振り返らず洞窟へ進む。すると同じく洞窟を目指して来た2つの班と合流する。
    「洞窟内の敵は苛烈、単独で行くより3班同時に突入した方が良いでござる。くれぐれも逸れたりせぬよう」
     エイジ・エルヴァリス(邪魔する者は愚か者・d10654)が言えば、他班のシャノン・リュミエールが「そうですね」と同意し、他の全メンバーも異論なかった。
     今回の作戦は敵同士を戦わせて漁夫の利を得るはずだった。武蔵坂だけで依とスサノオ壬生狼組と戦えば洞窟内に撤退しているうずめ様達を倒す戦力は残らない。この合流した3つの班で洞窟内の敵に戦闘を仕掛け洞窟外に釣り出す事ができれば……再びダークネス同士の乱戦を狙うかもしれない。
    「とりあえず、洞窟内でどのダークネスと戦うことになるかわからないし、この先の戦闘は状況見て標的変えるよー」
     波織・志歩乃(夢と微睡み小夜啼鳥・d05812)が言い。
    「では行こうか。相手が神であろうと仏であろうと、妾には関係の無いことじゃ。長らく続いたこの因縁にけりを付けるとしようかの」
     外道院・悲鳴(千紅万紫・d00007)の言葉とともに灼滅者達は洞窟へと足を踏み入れるのだった。


     蛍光塗料を目印に残しつつ洞窟内を進んでいく一行。
     連絡係の保が洞窟外と連絡を取ろうと試みるも、戦闘中でそれどころで無いのか通じない。
    「(うぅ……。みんなの事しっかり見て、ちゃんと役立てるよう動かないとっ)」
     帽子をかぶり直し気合いを入れる志歩乃だったが、ふと前方に何かが見えて来た。
    「羅刹か?」
     エリノアが呟くも、すぐにそれが違うダークネスだと解る。
    「クロムナイトでござる」
     そこには20体ほどのクロムナイトを伴った本織識音が待ちかまえていた。
    「鞍馬天狗がいませんわ……」
     りんごの言う通り防衛線を築いているのはクロムナイト達と本織識音だけだ。鞍馬天狗が防衛に付いた場合、やってきた依に刺青を奪われパワーアップされる可能性を危惧し、鞍馬天狗を抜いた布陣で待ち構えていたのかもしれない。もちろん他に理由があるのかもしれないが……。
     即座に正面、左右と3方向に散って攻撃を開始する灼滅者達。
    「何故灼滅者が……」
     本織識音が驚きながらもクロムナイトをけしかけてくる。
     右手側にいたこちらに向かって来るクロムナイトは5体。
    「討ち取れそうなら、こっち優先かなー?」
     志歩乃が目的をぼやかせて皆に言う。
     それは『標的のダークネスたる本織識音の灼滅を狙うか』という意味だ。
    「もちろんよ、狙えるなら狙うべき」
     エリノアが槍を構えながら応えチームの皆も同意する。
    「雪解けの風、今一時は凍てつけー!」
     返事を聞き志歩乃は【黒き夢のステラ・マリス】を操作、空中で舞う指揮者がいるかのように前に出てきたクロムナイト4体を指し、瞬後、4体の騎士が氷に包まれ動きを止める。
     スッと凍った4体の前に音も無く立つはアリス。
     流れるような動きで腰の大太刀――絶刀「Alice the Ripper」へ手をかけると。
    「……まとめて……斬り裂く……」
     一閃。
     月の輝きのごとき衝撃波が4体を薙払いいっぺんに体勢を崩すクロムナイトたち、すると後ろに控えていた1体が腕を変異させた弓で矢を引き絞りこちらを狙っているのが丸見えとなる。即座に飛び込んだのはエリノアだ。紅蓮の輝きを槍の穂先に宿らせ一気に突き込む。
     ドガッ!
     吹き飛ぶ弓のクロムナイト。
     だが。
     ギ、ギギギ……。
     すぐに立ち上がり弓を構える。
     どうやら、簡単には倒されてくれないようだ。

     前衛のクロムナイト達が剣腕で一斉に襲いかかってくる。己が気を治癒力に変え悲鳴を癒していたエイジが、その中の1人の狙いが中衛だと気づき疾走、周の前に立ちオーラをまとった己が拳で刃を弾く。その衝撃でたたらを踏むクロムナイトへエイジが一喝。
    「狙うはうずめ様なり! 道を開けられよッ」
     そう叫ぶエイジだがダメージが無い訳では無い。目の前のクロムナイトがお返しとばかりにエイジを狙おうと――瞬間、霊犬のジョンが浄霊眼でエイジを見つめ、さらに賛美歌の如く透き通った保の歌声が響くと共にエイジの傷がダブルで回復する。
     傷だらけだった相手が全快したことに狙っていたクロムナイトが躊躇し、その隙を逃さず眼前に迫るは巨大な鬼の腕。
     ゴッ!
     鬼の腕が振り抜かれエイジの前から吹っ飛び壁に激突するクロムナイト。
     りんごは鬼の腕を元に戻す。
     りんごは着物の片袖を抜いたサラシ姿で、仲間を信じて自己回復は行わず、攻撃一点に集中し戦場を駆ける。
     そこを援護するは周だ、妨アップにて十数本に増えた影の手が敵をからめ取りその動きを着々と封じていく。
     だが……――。
     ドスッ。
     遠距離からの矢が悲鳴の横腹に突き刺さる。
     仲間を庇いつつ戦っていた事も有り、今ので体力の限界を迎えた。
     ゆっくりと倒れ――。
     ザッ。
     ぎりぎりで悲鳴が踏みとどまる。
     前衛の1体が倒れぬ悲鳴をおかしく思い、その剣腕を再度悲鳴に振り下ろそうとする。
     ズザンッ!――と大地に突き刺さった。
     ゆらりと剣を大地に刺したクロムナイトの背後に悲鳴はいた。それは古典舞踊の足運びのように美しく。
    「さあ、舞台の開幕じゃ! 妾の舞を見るが良い!」
     魂の力が肉体を凌駕した悲鳴のその台詞は、クロムナイト達ですら凄みを感じる程であった。


     闘いはじわじわと灼滅者側が押されていた。
     クロムナイト2体がアリスに向かうのをエイジが庇い、しかしダメージに耐えきれず膝をつく。
     心配そうに駆け寄ってくるジョンを待てと手で制し。
    「ジョン、拙者は大丈夫、他の仲間を助けるでござる」
     凌駕し再び立ち上がるエイジ。
     その時だ、エイジを心配そうに見つめていたジョンが、ピクリと耳を反応させ後ろ――洞窟の入口方向を振り返る。
     そこに現れたのは仲間の灼滅者達だった。数は3班、その誰もが無傷で後から洞窟へと入ってきた班のようだった。
     どうした、と聞いてくる援軍の灼滅者達に簡単に状況を説明。クロムナイト達の防衛線を突破する必要があると理解してくれた仲間達が即座に戦闘に加わる。
    「どうやら、風向きが変わったようでござるな」
     エイジがそう言いつつ、立ち上がる力をもたらす響きを奏で前衛の仲間達と自らをまとめて回復させる。
     援軍3班が合流した事で、クロムナイト達が彼らの足止めに数体ずつ移動。こちらのチームも戦っていた5体のうち2体がいなくなり目の前に残るは3体のみ。
    「簡単にはやられないんだからー!」
     志歩乃が非実体化した指揮杖たる黒き夢のステラ・マリスを投擲、剣腕のクロムナイトを串刺しにするが、しかし蒼い騎士はそのままぐるりと振り返り、その剣腕を志歩乃へ振るおうと振りかぶり――。
    「てめぇは終わっとけ!」
     いつの間にか眼前に周が詰めており、皐月――紅い闘気――をまとった拳がさらに炎に包まれ志歩乃の剣が刺さったクロムナイトの腹にクリーンヒット、騎士の背側の鎧が衝撃で弾けドサリと倒れる。
    「1体目!」
     周が拳を胸の前で打ち合わせて叫ぶ。
     クロムナイトの残りは遠近1体ずつの計2体。
     腕を剣にした前衛役のクロムナイトに振袖を翻し近接を挑むは悲鳴、敵の突き出してくる剣を捩じるように回避し、さらに剣を引きながら薙いで来る追撃をその敵の腕に鬼腕へと変化させた手を付けたまま足先で跳びクルリと一回転、敵の追撃を回避すると共にトスと着地すれば体勢を崩した相手の腕だけを死角から極めている状態となり。
    「外道院流裏舞踊――」
     クロムナイトが自身の攻撃の慣性でよろめく方向に悲鳴は極めていた腕を僅かな力で押しながら。
    「――畔放」
     急に力が解放されたかのようにクロムナイトが投げ飛ばされ、壁に激突し土煙が上がる。だが、その奥でキラリと光ったモノを悲鳴は見逃さない。
     弓のクロムナイト。狙っているのは後衛。
     このままだと――。
     ドスッと悲鳴の胸に矢が刺さる。咄嗟の判断は仲間を庇う事。
    「まったく……この着物は気に入っておったというに……後は皆に任せるとしようかの……」
     真っ赤な血に着物を染めつつ悲鳴が大地に横たわる。

     敵の数は減ったが、それでもずっと戦い続けている3班はどこも誰かしらが倒れる状況に陥っているようだった。
    「忍法縛霊撃!」
     エイジがりんごへと近づいてきていた近接のクロムナイトを殴り飛ばすと同時、矢が奥から飛んで来る。
     咄嗟に拳で叩き落とす――が、その横をすり抜けるように起き上がった剣腕のクロムナイトが後衛へ迫る。
    「させん!」
     敵の剣を抱くように自ら攻撃を受け味方を守るエイジ。意識が遠のくのが自分でも解る。
    「決着をこの目で見れぬとは……む、無念……!」
     どさりと倒れる。
     これでディフェンダーは誰一人いなくなった。
     保が手のひらや着物の袖に絡め舞うように風を導き、清らかな風を前衛達に送って回復させつつ戦場を見回す。この戦いの天秤を一気に自分たちへと傾かせる一手、それが無いとこのままでは……。
     と、その時だ。最初から中央で戦っていた班が一気に防衛線を突破し本織識音へと攻め入るのが見えた。だが、1班でだけで倒せるだろうか、せめてもう1班あれば……。
    「あそこはいかがでしょう」
     保の考えを読んだかのようにりんごが指差す。
     そこは誰も倒れず8人全員が戦っている班だった、それがクロムナイト1体に足止めされている。
    「皆、ボクの考え聞いてもらってええかな」
     それは一か八かの掛けだ。
     しかし保の考えに異を唱えるものはいない。
    「今回ディフェンダーじゃないんだけど、ヒーローとしちゃ前に出ないわけにはいかねーな!」
    「私も……」
     周とアリスが足止めのため残っているクロムナイト2体の前に立ち塞がる。
     そして前衛で戦っていた残り2人は――。
     りんごがサラシ状に巻いていたダイダロスベルトの一端を放ち『他班が戦っている1体のクロムナイト』を攻撃、不意を突いた奇襲は見事に命中する。
    「エリノアさん!」
     りんごの声と共に飛び出したエリノアが空中からクロムナイトにバベルインパクトを振りかぶり、密着した瞬間、全力でその杭をぶち込み串刺しにする。
     そのクロムナイトと戦っていた他班のメンバーがあっけにとられるも、エリノアが叫ぶ。
    「こいつは私達が相手をしておく!」
     さらに志歩乃がそのクロムナイトと他班8人の間に立ち、その班にいる友人――勇介へ向かって言う。
    「こっちはすでに2人倒れているからねー、本織の方は任せるよー」
     他班のクロムナイトを人数が減っている自分たちが引き受け、8人全員が無事な班に本織識音の方へ向かってもらう――それが志歩乃達の班が出した現状の最善策だった。
    「波織さん、ありがとっ」
     勇介が志歩乃にそう言い、他の仲間達も各々簡単な礼を告げ本織識音の方へと走って行く。
     その後ろ姿を見送り、やる事はやったと緊張の糸がほどけそうになった、その時――。
    「……すべてを……」
     アリスがそう呟き駆ける。その脚は洞窟の壁を蹴り天井を蹴り、一気に敵の視界から消えると同時に腕が獣のそれに代わる。
    「……引き裂く……」
     鋭い鉤爪で剣腕のクロムナイトを強引に両断。
    「……2体目……終わり……アリス達……負けない……」
     アリスの言葉に皆が再び心を、魂を震わせ武器を握る。
     自分たちの決断が果たして吉と出るか凶と出るか……。


     結論から言おう。
     2チームに追撃された結果、本織識音は灼滅された。
     だがその後――。
    「それほど親しかったわけでは無いが、仲間の仇は取らせてもらおう」
     旧日本軍風羅刹を率いた鞍馬天狗が現れたのだ。
     この状態での連戦は……。
    「こいつぁ、まずそうだな」
     周が冷静に呟く。と、保はそこである作戦を伝え聞く。
     ――鞍馬天狗勢を外に居る壬生狼組と戦わせるべく、戦闘を避けながら撤退を――。
     鞍馬天狗に聞きたかった問いを我慢し、保は悲鳴を、周はエイジを担ぎ離脱へ移る。りんごも追加で戦い始めたクロムナイトにやられ膝をついたエリノアに肩を貸し洞窟の入り口を目指す。敵は追撃してくるが殿を申し出た志歩乃や他班の者が上手く騙し騙しやり……そして。
     洞窟の外に出た時、そこではまさかの光景が広がっていた。
     すでに壬生狼組達は誰もおらず、洞窟外で戦っていたとみられる灼滅者達だけが取り残されていた。戦闘不能者も多数おりその場で座り込んでいる者もいる。
    「これは……無理ですわね」
     りんごが言う通り、この状態で鞍馬天狗とうずめ様相手に戦うのは不可能だろう。
    「……この事も……予知……してたのかな……」
     戦闘不能者を守りながら全員で撤退を開始する中アリスが呟く。
    「でも私達の咄嗟の判断までは予知できなかったんじゃないかしら」
     りんごに肩を貸してもらいつつエリノアが言う。
     そう、完全に予知していたなら本織識音を失うこの洞窟に逃げ込む事は無かっただろう。逆に言えばこの結果こそ自分たちが介入してもぎ取った未来だ。
     そして、うずめ様と鞍馬天狗と再戦する日を心に誓いながら灼滅者達はこの地を去ったのだった。

    作者:相原あきと 重傷:外道院・悲鳴(千紅万紫・d00007) エイジ・エルヴァリス(邪魔する者は愚か者・d10654) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年6月1日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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