運動会2016~大玉ころりん、障害物を切り抜けろ!

     今年もこの季節がやってきた。
     そう、学園生活の醍醐味のひとつ! 運動会の季節が到来だ!!
     思い切り体を動かして、組連合の仲間と思い出作りするも良し。
     ライバル達と競い合うも良し!
     つまるところは楽しんだ者勝ちなのである!

    ●教室にて
     運動会を間近に控えた、とある日の学級会。
     ルール説明を交え、誰がどの競技に出場するか決めるのが本日の議題。
    「じゃあ次は『大玉ころがし』に出るメンバーを決めよう。冬郷、ルール説明を頼む」
    「はいっ! それでは大玉ころがしのルール説明をしまふ。します!」
     担任の先生に代わって、冬郷・彩里(小学生ファイアブラッド・dn0205)が教壇に立った。
     
    「この競技は1~3人でチームを組んで行ないます。2人組や、ひとりでも参加OKなんだよ」

     気になるコースの内容はというと。
    「直線のコースに、次々と3つの障害物が待ち構えているんだよ。ひとつ目はーー」
     スタートを切り、まず目に飛び込んでくるのは、ジグザグに置かれたコーン。
    「上手く避けて進んでね、ここはチームワークの見せ所かも!」

     2つ目は、緩やかな坂道。
    「距離は短いけれど、ただでさえ扱いにくい大玉を押しながらの上り坂下り坂……。早く抜けるためには工夫が要りそうだね!」

     坂を下りきれば、3つ目の障害物。逆風ゾーンが襲い掛かる!
    「油断したら風に押し戻されちゃうよ! 押して押して押しまくるんだよ!」
     この3つを乗り切れば、晴れてゴールインだ。

    「これはもう出るしかないよ! 折角だし優勝めざそう、ねっ!」
     説明が進むうち、上昇し続けた彩里のテンションゲージはMAXに!
     なんかさらに熱く語り始めそうになった所で先生の一声。
    「冬郷、進行してくれー」
     どっとクラスメイト達の笑い声が湧く中、今更ながらすまし顔。
    「……こほん。では、大玉ころがしに出場希望者は挙手してください」
     ちなみに参加チームの中で、一番早くゴールしたチームにはMVPの称号が贈られる。
     さあさあ、貴方も奮ってご参加を!


    ■リプレイ

    ●本日、晴天なり!
     さわやかな初夏の風が吹く、武蔵坂学園のグラウンド。
     突き抜けるような青空の下、選抜競技『大玉ころがし』が始まろうとしている。
    「選手入場です。参加者の皆さん、頑張ってください」
     アナウンスが流れると共に、試合会場は歓喜に包まれた。

    ●激動! 第1レース!
     第1レースは個人参加のメンバー達。
    (「勝利は勝利は望めないかもだけど、力の限りがんばるの!」)
     そっと決意する古室・智以子(花笑う・d01029)を筆頭に、
     東海林・朱毘(機甲庄女ランキ・d07844)とフリル・インレアン(小学生人狼・d32564)がスタートラインに並ぶ。
     気合十分! 両手で抱えきれないほど巨大な大玉を構えた3人に、
    「位置について、よーい、ーーどん!!」
     轟くピストル音。栄光のゴールへ向かって、大玉がごろんごろんと転がり始める!

     早くも、ジグザグコーン地帯に突入だ。
    「コーンに当たらないように、慎重に慎重に……」
     大雑把に転がり進んでしまう大玉だからこそ、フリルは繊細な動きで確実にコーンを避けて進む。
     その表情は、真剣そのもの!
     智以子もちまちま丁寧に進んでゆく。その甲斐あって、危なげなく大玉をコントロール。
     折り返すうちにコツをつかんで、徐々にスピードを上げてゆく。
     そんな中、大玉の前に出た朱毘に観客達の注目が集まる。
     大玉を『押す』のではなく『引く』作戦、後ろ歩きですいすい舵取り進んでゆく。
     平行線かと思われた勝負、朱毘が頭一つ抜けた!

     坂コースへ一番乗りした朱毘。
    「ふむ、これなら行けそうですね」
     大玉の軌道をイメージしつつ、上り坂を発射台にして大玉をジャンプ!
     一位キープは確実と思われたが、助走をつけて駆け上って来たフリルが背後に迫る。
     坂の頂点に達し、下り坂にかかった途端ごろごろ転がり落ちてゆく大玉。
    「わっ勝手に行っちゃダメですよぅ……」
     戸惑いがだんだん笑顔に変わる。
     ジグザグコースで細やかな動きを要求された分、転がっていく大玉を追いかけるのが楽しくて。
     上り坂で押し戻されないよう勢いをつけ、自重で転がり落ちる大玉をさらに押し進める智以子も競る。
     拮抗した状況の中、ジャンプし宙を舞う朱毘の大玉の横を、智以子が勢いよく抜き去った。
    「うれしい、トップ通過なの」
     
     さぁ、最終試練は逆風ゾーン!
     大型のサーキュレータがフル稼働。容赦なく吹き荒れる逆風に、
     大玉だけでなく智以子自身も押し戻されそうだ。こんな時、体重の軽さが不利に働く……。
    「球に接する面積をできるだけおおきくして、一歩ずつ……」
     背中で押すように大玉を転がして。諦めず、一歩ずつゴールを目指す。
    「ここは気合いで乗り切るしかなさそうですね」
     腰を入れて、朱毘もじりじりと歩を進める。
    「ディフェンダーの気持ちになって耐え凌ぐまでです……」
     その美しい銀髪すら、逆風にばさばさと煽られる。
     ゴールは目前、風にかき消される観客の応援が途切れ途切れ聞こえてくる。
    「今です!」
     ふっ……と一瞬風が弱まるタイミングを見逃さなかった。
     接戦の中、ゴールテープを切ったのはフリル!

    ●チームワークで魅せます! 第2レース!
     続いて、グループ参加の面々がスタートラインに並ぶ。
     エントリー1組目は、楢原・ユウ(ちっぽけな勇気・d34706)と冬郷・彩里(小学生ファイアブラッド・dn0205)。
    「僕、運動は得意だから任せて……。ゆっくりでもいいから、ちゃんと楽しんでゴールまで……がんばろー……!」
     普段と変わらない物静かな振る舞いだが、ユウの優しさが伝わってくる。
    「ユウ君頼もしい♪ 頑張ろうねっ!」
     と、彩里も笑顔を返した。
     2組目は朝臣・姫華(姫番長・d30695)と矢矧・小笠(蒼穹翔ける天狗少女・d28354)。
    「こうみえて妾、玉送り世界チャンピオンじゃし手堅く優勝じゃな!」
     大見えというか大嘘切る姫華。
    「小笠! 妾達の力で優勝間違いなしじゃ」
    「もちろんですっ、姫様!」
     姫と家臣のような2人。
     そして3組目【シュテルスノウ】、クラブ参加の3人組だ。
     大玉に対して左から、シャオ・フィルナート(いらない子・d36107)、ライ・リュシエル(貫く想い・d35596)、楠木・晴翔(甘えたいお年頃・d36150)と並ぶ。
    「えっへへ。シャオお兄ちゃんとライくんと一緒の競技に出られて嬉しいな♪」
     ごきげんな晴翔の横で、
    「クラブで出るんだしシャオさん部長として気合い入れてよ」
     と、ライがシャオをせっついている。
     2人から任され、ここは部長としての頑張りの見せどころ。
    「真・シュテルスノウの本気を見せてやろう」
     やる気十分のライと晴翔に見守られながら、
    「……絶対勝つぞー、おー」
     叫ぶとまではいかないが、威勢良いシャオの掛け声に、
    「「おー!!」」 
     2人も元気よく応じた。
     
     観客達のエールで活気に満ちたグラウンド。
     パァンッ! と乾いたピストル音がスタートを告げ、すぐにジグザグ地帯へ突入だ。
    「外は大きく内は小さく動かしていこう……」
     ユウの指示で、一つずつ確実に。
    「こうかな?」
    「その調子だよ……」
     声掛けをしながらリズム良くコーンを曲がっていくユウと彩里。
    「ここは先を見通す眼力と、味方を巧みに操る指示力が必要となる」
     姫華は、さながら軍師のように
    「妾が大玉の上にのり、最短距離を指示するとしよう」
     と、言い放って大玉に乗った。
     当然のように小笠は大玉を押す体勢。
    「全部曲がれたら拍手を頂戴っ!」
     その頃の【シュテルスノウ】メンバー。
     先ずは右折、
    「ここ、曲がるよ。そっちペース緩めて」
     タイミングよいシャオの声掛け。
     左折は晴翔が指揮を執り、息の合った動きで効率よく進んでゆく。
    「今じゃ、小笠!」
    「はいっ! 姫様!」
     姫華の指示に合わせて曲がる小笠。器用なものである。
     とはいえ、阿吽の呼吸でスピードを増していく【シュテルスノウ】メンバーが首位通過!
     次点で姫華達が最後のコーンを曲がりきり、
    「いよっ、名采配っ! ですっ!」
     曲芸さながらのパフォーマンスで拍手喝采だ!
     
     上り坂に突入! 【シュテルスノウ】は3人間隔をあけて、大玉が左右に落ちないよう支えて登る
     競る姫華、小笠もそれに続き、
    「ここで一気に稼ぐぞ。押せ押せ!」
    「仰せのままにっ!」」
    「この勢いを利用し上り坂を駆け上がる……完璧な作戦じゃな!」
     グイグイ坂を駆け上る2人!
     ユウ、彩里も2組のすぐ後ろに迫る。
    「坂道は一気に押し登る……! 途中で止まると、大変だから一気に行こう……」
     彩里はこくんと頷いて、
    「せーのっ」
     2人同時に大玉を押し上げる。
     下り坂に差しかかかり、
     「シャオ、はる、前に回って」
     ライ自身はそのまま後ろから押し、大玉をサンドイッチする形。
    「もっとスピード出して大丈夫そう」
     大玉のスピードに合わせて遅いときは強く、速いときは弱く、ペースメイカーはライ。
     抜群のスピードコントロールで、大玉は勝手に転がることなく安定した速度で下ってゆく。
    「……下り坂は大玉が勝手に転がらないように、ゆっくり注意して進もう……」
    「う、うんっ!」
     ユウ、彩里も慎重に大玉をしっかり支えて降る。
     元気にふるまっても疲れの色が隠せない彩里へ、
    「僕も頑張るから……冬郷さんも頑張ろう……」
    「ありがとう、もうひと頑張りだね!」
     ユウの気配りで、降りきるまで大玉を支える事が出来た。
    「勢い良く進んじゃう……? 姫様、大丈夫ですか……?」
     上り坂での押せ押せな勢いのまま、下り坂に差し掛かる。
    「ええいままよ! ……って、キャーー!」
     姫華を乗せたまま、猛スピードで転がり落ちる大玉!
     結果的に逆風ゾーンへ一番乗りだ。

     容赦なく押し戻してくる強風で、3組のペースは横並び。 
    「僕らは小さいから誰よりも頑張らないとね……」
     小学生コンビにとっては最難関とも言える。
    「……力を合わせれば直ぐだよ」
    「すっごい風だけど諦めない!」
     張り切る彩里だが、逆風との力比べはやや負け気味。
    「……小さく大玉を押して……ゆっくり行こう」
     力を合わせて、すこしずつだが着実に進んでいく。
     油断すれば左右どちらかから大玉が戻って行ってしまうほどの風だが、
     【シュテルスノウ】は左からシャオ、右から晴翔がホールドし、押し戻されるのを許さない。
     バババババッと騒音じみた風音にかき消されまいとするように、
    「こんな風になんか負けない……。僕が……僕達が勝つんだ!!」
     晴翔の声に呼応するように、一層3人息の合った動きでペースを上げる!
    「あとちょっと! 頑張りましょうっ、姫様!」
     やや遅れをとった2人だが、
    「押して押して押しまくる! あやつらを風よけにつかおうかの。小笠、後ろににぴったりくっつくのじゃ!」
    「さす……が……姫様」
     逆風の中流石にしんどそうな小笠だが力の限り押し続ける。
     ゴールテープ目前、リードしていた【シュテルスノウ】をぎりぎりで抜き去り、1着は姫華と小笠!
    「あっぱれじゃな!」
    「姫様の名采配、お見事でしたっ!」
     間を置かず【シュテルスノウ】もゴールイン。
    「二人のおかげでゴール出来たよ。ありがとっ」
     満面の笑顔で、晴翔はシャオとライに抱き着いた!
    「ふえっ!? ちょっ、はる……!?」
     びっくり顔のシャオの表情が徐々に笑顔に変わっていった。
     ……まぁ、嬉しいもんね。と、笑顔で応じる。
     ライも照れくさそうな笑顔で、
    「ゴールできてよかった。皆お疲れ様」
     と労って、3人で達成感を分かち合うひとときだ。
     ユウ、彩里も最後まで乗り切ってゴール!
    「冬郷さん、楽しかった……? 今日は…一緒に出てくれてありがとね」
    「こちらこそありがとう! ユウ君のおかげでとっても楽しかったよ♪」
     同じクラスの2人は微笑みを交わした。共に汗を流した思い出は、まさに青春の一ページ!

     競技終了、和気藹々と雑談に花を咲かせて居る所、
    「『大玉ころがし』のMVPは」
     スピーカーからアナウンスの声が響き渡る。
    「朝臣・姫華さん――」
     ワッと盛り上がる観客達。だが、アナウンスは終わっていない!
    「を、見事一着でゴールさせた陰の立役者、矢矧・小笠さんです! おめでとうございます!」
    「な、なんじゃとー! 小笠がMVPじゃと!?」
     姫華にがくがく肩を揺さぶられながら、小笠が口を開く。
    「姫様の名采配あってこそです! 2人でとったMVPですよ!」
    「むぅ、そうか。まぁ妾達が優勝じゃ! 小笠よ、お手柄じゃ」 
     今度こそ沸き立つ生徒達。
     達成感に満ちた参加者達の表情が、良い試合だった事を物語る。
     これぞ運動会冥利に尽きるというもの。
     今年の大玉ころがしは、これにて終了!

    作者:koguma 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年6月5日
    難度:簡単
    参加:9人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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