運動会2016~燃えよ魂! 皆に届け、この声援!

    作者:長野聖夜

    ●6月5日は運動会!
    「と言うわけで、運動会ですよ、優希斗さん!」
    「……ラブリンさん、急にどうしたんだ……?」
     目の前に現れたラブリンスター・ローレライ(高校生エクスブレイン・dn0244)の言葉に、偶々散歩をしながらチラシを眺めていた北条・優希斗(思索するエクスブレイン・dn0230)が顔を上げる。
    「だから、運動会ですよ、運動会! 6月5日は、運動会なんですよね!?」
    「……そう言えば、ラブリンさんは初めてなのか……」
     弾んだラブリンスターの声に優希斗が思い出したように空を仰いだ。
    「はい! 初めてなんです!」
    「なるほど。じゃあ、簡単にルールを説明しておこうか」
     チラシを片手に話を続ける優希斗に、ラブリンスターが頷いた。
     
    ●皆頑張れ、応援合戦!
     運動会は、組連合ごとに力を合わせて優勝を目指す毎年恒例のイベントだ。
    「まあ、俺達は何らかの協力は出来ても中心にはなれないけど」
    「あっ、そうなんですね……。折角皆さんと一緒に歌って踊って楽しもうと思ったんですけれど」
     少しだけしょんぼりするラブリンスターに軽く頷き返す優希斗。
    「まあ、でもラブリンさんなら応援合戦は見ているだけでも面白いと思うよ」
    「応援合戦……! 聞くだけでワクワクします!」
     朗らかなラブリンスターに優希斗がチラシを片手に説明を続ける。 
     応援合戦は、その名の通り、応援を競い合う競技である。
     審査によって最も良いパフォーマンスをしたと選ばれた人がMVPとなり、結果、そのMVPになった人の所属する組連合に高得点が入る仕組みだ。
    「えっ? じゃあ、組連合でしか応援合戦に参加できないんですか?」
    「いや。自分が応援したい人を応援してもいいし、クラブの皆で参加するのも大丈夫。まあ、MVPになれるのは1人だけだけど」
     皆で純粋に応援を楽しみたいと言うのであれば、自分達のチームとして勝利した場合に、誰がMVPとして選ばれてもいい様に予め相談しておくのも一つの手だろう。
    「つまり応援のやり方は自由で、運動会で頑張っている皆さんを応援して頑張ればいいんですね! それで、一番応援を頑張っている人をMVPに選ぶということですね! じゃあ、私は、皆を応援しながら、一番応援するのを頑張っている人を探します!」
     はしゃぐラブリンスターに、優希斗が頑張って、と苦笑を一つ零した。

    「優勝も大事だけど、楽しむのはもっと大事ですよね! 皆さんが一所懸命応援する姿、私、ずっと見てますから! ……ところで、優希斗さんは?」
     ワクワクしているラブリンスターの呟きに、優希斗が軽く目を細める。
    「まあ、誰かに誘われたら手伝うつもりだけど、それ以外だったら皆のことを応援しているよ」
    「そうですか! それじゃあ、その時は皆さんを一緒に応援しましょうね!」
     
     ――さあ、『応援合戦』と言う名の戦場へ、いざ、参らん!


    ■リプレイ

    ●さぁ、合戦の始まりだ! 
     ――6月5日
     燦々と輝く太陽が、じりじりとグラウンドを焼いている。
     周囲に響き渡るは歓声。
     今、此処で行われるは、合戦。
     合戦。そう……それは、戦争。
     すなわち……!
    「あたしの声援を聞けー!」
     これはESPか!? と勘違いされかねない程の男気全開の良く通る声!
     そう、この『応援合戦』と言う名の、戦場に……。
     サラシ!
     学ラン!
     そして、学帽!
     人によっては何となくジェネレーション・ギャップと思わずツッコミを入れたくなる様な男気溢れる姿をした、日向・千李(フィーバーメール・d36723)が現れる!
     ――目的は、一つ!
    「オッセ! オッセ! む・さ・し・ざ・か!」
     かの戦……応援合戦に勝利するためだ!
    「フレー! フレー! む・さ・し・ざ・か!」
     全身全霊を籠めてのパフォーマンス!
     背後に巨大なむ・さ・し・さ・かと書かれた大漁旗が踊る姿を誰もが幻視。
     シンプル・イズ・ザ・ベスト!
     明治時代より連綿と続いて来た、伝統的な応援行動が人々に受けなかったことはない!
    「フレー! フレー! む・さ・し・ざ・か!」
    『フレー! フレー! む・さ・し・ざ・か!』
     スタイルの良い千李が『漢』100%を感じさせる大音量で応援をするその姿は、応援合戦の掴みとしては、完璧だった。
     湧き上る歓声を断ち切る様に、大きな、大きな声が辺り一帯に轟く。
    「全武蔵坂学園のーっ!」
     それは、園観・遥香(天響のラピスラズリ・d14061)だ!
    「眼鏡キャラのみなさんっ!」
     遥香の大声は奇妙に辺り一帯に響き渡り!
     全国の眼鏡キャラと呼ばれる武蔵坂学園の生徒がそちらを見れば!
     そこには負けず劣らずの!
     学ランに身を包み、その手に達筆で『眼鏡』と書かれた巨大な大漁旗を豪快に掲げた遥香がまるで巌の様に聳え立っていた!
    「みなさんはーっ! 運動は苦手だとっ、思われがちですねーっ?」
    『おーう!』
     遥香の声に観客席の眼鏡学生たちが、パッ、とそちらを注視する。
    「逆にっ、得意だったりするとーっ、むしろがっかりされたり、しませんかーっ!?」
    『しま~すっ!』
     沢山の眼鏡キャラに呼びかける遥香に昂揚する気分と共に、一斉に応じる、眼鏡キャラの諸君っ!
    「しかーしっ!」
     遥香がドンッ、と大漁旗を地面に叩きつける。
    『しか~しっ?!』
    「園観ちゃんは、ここで声を大にして言いたいー!」
     高々と大漁旗を掲げて、『眼鏡』と書かれた文字を指差し。
     ――何故かキラリ、と太陽の光を反射する大漁旗。
    「眼鏡キャラは一つ、ただそれだけで素晴らしいーっ!」
    『ウォォォォォッ!』
     高まる熱気。
     初夏の暑さなんぞなんのその。
     人々の熱狂と言う名の嵐が、武蔵坂学園を包み込んだ。
     それに頷く遥香。
    「世のイメージに左右されることなく一つ、得意な人も、苦手な人もーっ!」
    『得意な人も、苦手な人もーっ!』
     荒ぶる観客席に、大漁旗を向けて。
    「全力でーっ、頑張れーっ!」
    『ウォォォォォォォ!』
     雄たけびを上げる多くの眼鏡属性キャラの目を奪いながら、遥香が大仰に大漁旗を振るう。
    「フレーッ、フレーッ!」
    『フレーッ、フレーッ!』
    「メッ!」
    『ガッ!』
    「ネーーー!」
    『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
     観客の雄叫びを全身に受け、旗を振るう遥香。
     今! 正に! 
     多くの者達が遥香の虜となろうとしていた……!
    「おぅ、全員気張ってけよなぁ!」
    「勿論っすよ!」
     千李や、遥香に魅了されていく数多くの武蔵坂学園の生徒達を見ていて絶対に負けられぬ! と闘志をその身に宿した羅刹・百鬼(一人ぼっちの百鬼夜行・d27920)の意気込みに後ろに控える文堤・大地(餅米農家ばんだい餅派・d30083)が力強く首を縦に振り、其の目にメラメラと闘志の炎を燃やす。
    「あ、あの……す、スカート、私……大丈夫……ですか?」
     へそ出しミニスカートに、水色のぼんぼんを持った少女、八草・渚(氷雨・d32101)は少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめ、マフラーに顔を埋めていたが。
    「似合っているっすよ、渚ちゃん!」
    「すーすー、して、やっぱり……は、恥ずかしいです……」
    「ガンガン盛り上げてくぜ! 行け、行け、5E連合! 気張れ! 気張れ!5E連合!」
     黒のぼんぼんを振り回し、まるでボールの様にピョンピョン飛んでは跳ね、飛んでは跳ねを繰り返し!
     其れに合わせてくるりと左に一回転、左手を腰に当て、しゃかしゃかしゃかと、黄色のぼんぼんを振り回す大地。
     恥ずかしがりながらも、水色のぼんぼんを振って、右に一回転、右手に腰を当て、百鬼達に合わせて踊る渚!
     三位一体のミニスカへそ出しルックチアガール姿の舞は其々の個性を際立たせ、『応援』と言う名の美しい華を咲かせている。
     それは、確実に無数の武蔵坂学園の生徒……特に男子生徒……達の注目を集めていた。
    「今年も魅せ場は頂きよ!」
     熱気が満ち満ちつつあるこの世界で。
     一気に魅せ場を奪取すべく、2人のチャイナドレス姿の娘が舞う。
     アイドルの色に相応しいピンクのワンピース型チャイナドレスに身を包んだ美波・奏音(エルフェンリッターカノン・d07244)が目配せをすれば。
    「いっくよ~、奏音ちゃん!」
     太陽を連想させるお揃いの黄色のワンピース型チャイナドレスに身を包んだ卵月・あるな(ファーストフェアリー・d15875)が小さく首を縦に振った。
     そして、お揃いの羽飾りのついた扇子をバサリと広げ、そのままくるりとバク転を行う。
     ピンクと黄色の煽情的な着姿で、情熱的なその踊りを軽やかに舞う2人の姿は、さながら中国に伝わっている舞術を思わせて。
     しっかりとスパッツを穿いて見えなくしているその姿に、ある者は見事だ、と感嘆した様子で両手を叩き、極一部の男子たちが肩を落とした……かどうかは定かではない。
     あるなと奏音の呼吸を合わせた躍動感あふれるその踊りは、蝶の様に舞い、蜂のように刺すという諺を思い起こさせる程に美しく。
     先程まで唸っていた人々が、今度は固唾を飲んで見守っている。
     まだまだこれからと思いつつも、目配せをしあい、頷き合う奏音とあるな。
     ――しかし、パフォーマンスは終わらない。
    「「Let’s go! Ready go! 4・D・椿!」」
     舞によって多くの人々を魅了して、自分達に注目を集めると同時に、絶対に勝ってほしいと言う想いを籠めて、自分達のチームを応援する、あるなと奏音。
     必勝の想いの籠められた情熱的なその踊りは、紛れもなく応援合戦の花形だった。

     ――その一方、武蔵坂学園の一角が、奇妙な盛り上がりを見せていた……!

    「わあい! くろさんとお揃いのチア服ですよー!」
    「そう! ハレの日だものミニスカチア衣装で元気よく! ってええぇぇぇぇ、ちょっと待って服間違えているよねこれ!?」
     歓声をあげるストレリチア・ミセリコルデ(白影疾駆の呑天狼・d04238)と、隣でお揃いのチアガール服を着るマダム(男)白依・くろ(ねがぽじ・d03609)。
     ツッコミを入れているくろのことはさておき、ストレリチアが密着してキツキツになっている胸元辺りを見る。
     まるでタイツの様に密着し、今にもダイナミックボディが溢れそうな其れに、ストレリチアがスカートをつまみながら首を傾げた。
    「……チア服、ちょっと小さすぎたでしょうか?」
     そんなぱっつんぱっつんな姿に青春真っ盛りな男子生徒の目が釘付けになるのもむべなるかな。
     口では盛大な突込みを入れつつ、ノリノリで踊っているくろが、ストレリチアの姿にむむっ、と眉根を寄せた。
    (「うん、見た目で既に破廉恥な相手に負けるわけには行かないのです」)
     ストレリチアに負けじと、ぽんぽんをわさわさ振りながら、フレー♪ フレー♪ と、音頭を取るくろ。
     その姿が、あまりにも、あまりにも可憐で……一部の人達の魂の奥底を強く、強く揺さぶった。
    『うお~! くろちゃ~ん!』
    『負けるな~! 頑張れ~!』
     まるで淑女の如く控え目に、お淑やかに踊るその姿は、この熱気渦巻く戦場の中で、借りて来た猫の如き穏やかさで。
     気が付いた時には、少し癒しが欲しい人々の和みたい心を刺激して、かなりの注目を集めていた。
    「大丈夫!? おっぱいもむー!?」
     気遣いであろうか、観客の様子を確認したくろの慰めに、一部男子たちは目を剥き、そそくさと視線を隣のストレリチアへと移していたが……。
    「……あれ? それってマダムではなく、単なる痴女、もとい痴男では……?」
     ――ヒュー、カラン、カラン……。
     何故か、冷たい風が吹く音と、空き缶が転がる音が、その耳に届いた気がしたが……くろ達のパフォーマンスは、確かに人々の心に響いていた。
     彼等に向けられた拍手が、何よりの証拠だ。
    「頑張れ! 頑張れ! みーなーさーんっ!」
     数多の歴戦の猛者たちが応援に精を出している一方で、彼女達の様な強烈な光を反射して、陰ながら光り輝いている者も確かに要る。
     陸・舞音(高校生ご当地ヒーロー・d35449)が、その典型だ。
     普段は人前に出ると、どうしても緊張して引っ込み思案になりがちな舞音ではあるが、チアガール衣装に身を包み、新体操で磨いた技術を取り込んで、滑らかに踊り、ボールの様にぽんぽんを扱い、ダンスを続けるその姿は、気が付けば多くの人々を魅了していた。
     人々の視線が自分の方へと集まってきていることを無意識に感じ取り、舞音の動きは益々大胆になっていく。
     その度に胸がプルンプルンと激しく揺れている様子があるのは……多くの男子生徒の目を釘づけにしていることだろう。
     千李や、舞音をはじめとした多くの参加者の活躍により、順調に盛り上がりを見せていく、運動会 in 応援合戦。
     しかし……真打ちは、ここぞとばかりに現れる、と言わんばかりに。
    「皆さん、今日もこの時間がやって来ました♪ 皆でこの日を、自分を、友達を、恋人を、学園の皆を! 一緒に応援しましょう♪」
     『星空芸能館』の面子と共に。
     星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)のマイクパフォーマンスが学園全体に響き渡った。

    ●さあ、第2ステージの始まりだ!
     応援席で、目を輝かせているラブリンスターに、えりなが軽く手を振るう。
     彼女がそれに応じてチラリと手を振り返してくれたのに笑顔を浮かべ、えりなはそっとマイクを構える。
     その両翼に立つのは、椎那・紗里亜(言の葉の森・d02051)と、榊・くるみ(がんばる女の子・d02009)。
     その後ろにはDJ機材を持ち込んだ村本・寛子(可憐なる桜の舞姫・d12998)と、ウクレレを携えた紅羽・流希(挑戦者・d10975)。
     ……流希の根性で『天ノ川聖歌隊』の制服を着こんでいるその姿は……メイド服を着用して女装した経験故か、ギリギリではあるが、何とか様になっている。
     お揃いの制服と『がんばれ がんばる 武蔵坂!』のフリップを掲げて統一されたえりな達のその姿は、其れだけで見る者達を十分引き付け……観客席の生徒達の視線が一斉に集まって来たところにすかさず、寛子がDJ機材威を起動させた。
     録音されている自作の音楽『がんばれ がんばる 武蔵坂!』の軽快な音楽が流れ出すと同時に、流希がウクレレの速弾きによるセッション。
     出発までにリハーサルをする時間もあまり取れなかったにも関わらず、流れ始めるメロディに組み込まれ、絡み付いていくその音楽は、前奏からして、皆の応援をしているラブリンスター達の注目を集めている。
     音楽の流れに乗りながら、えりながパン、パンと大きく頭上で手拍子を始めた。
    「皆さんも、一緒にお願いします♪」
     えりなの言葉に促され、師走崎・徒(流星ランナー・d25006)が先手を切って手拍子を叩いたのに何かを察したか、北条・優希斗がそれに合わせて手拍子を叩き今度は其れが、隣の観客に伝わってと、漣の様に伝播していく。
     ひとしきり、会場中に手拍子が広がってきた頃合を見て。
     くるみと、紗里亜、そしてえりなのトリオが美しく清らかに歌を歌い始めた。
    『がんばれ がんばる 武蔵坂!
     がんばれ がんばる 武蔵坂……♪』
     くるみの溌溂な歌声と、紗里亜の落ち着きを感じさせる穏やかな歌声、そしてえりなの透明感のある美しい声。
     三者三様の声が一丸となって波を生み出し、流希のウクレレと、寛子のDJのメロディとも絡み合い、生まれ落ちた絶妙なハーモニーが、舞台を飲み込んでいく。
    「Say Ho~~~~~!! Say Ho,Ho!!」
    「さぁ、皆さんもご一緒に……!」
     DJを奏でながらの寛子とウクレレを弾きながらの流希の促しえりなのマイクを差し出す姿に乗る様に。
    『ファイト ファイト ファイトオー! ファイト ファイトオー!』
     毎年恒例のこの歌詞を覚えている者達が一緒に歌う。
     そんな風に皆が歌っている姿を、ラブリンスターが優希斗と共に応援している姿を目撃して、徒がさりげなくカメラを向けた。
    「ラブリンも、がんばれ!」
     チラリと此方へと顔を向けて、笑顔で頷くラブリンスター。
     其の間にも、歌はテンポよく進んでいく。
     人々の歌声を先導するのは、くるみの溌溂な声であり、その歌声に華を添えるのは、紗里亜の歌声だ。
    『今日は 晴れやか 運動会
     皆集って 賑やか
     全力尽くして 勝利を目指す』
    「ささ、くろさんも私と一緒に踊りましょう?」
     歌の勢いに押される様に。
     ストレリチアがくろを促し、くろが其れに同意してボンボンを手に踊り始める。
     歌による一大パフォーマンスに乗って、踊り始めた者達の姿は、観客たちの熱狂を益々高めていくことに相違なかった。
    「う、運動……苦手で……な、何とか……ついて行く、ギリギリ……です、けど……皆、一緒……最後、まで、がんばら、ないと……!」
     歌に負けじと踊って自分達のパフォーマンスを強化する百鬼や大地たちに合わせる様に、息を切らしながらも、ぼんぼん振って、頑張って踊る渚。
     各チームが其々に、負けてたまるかと言わんばかりに、更なるパフォーマンスを繰り出していくのにくるみが心を籠めて、イキイキ歌う。
    「小学生も♪」
    『がんばれ!』
     くるみの歌に合わせてクルクルとえりなが回って大きく手を振って、元気よくポーズを決めて。
    「中学生も♪」
    『がんばれ!』
     紗里亜の歌詞の入ったフリップを掲げながらの掛け声が、更にくるみの歌に活気を与える。
    『高校生も
     大学生も 
     みんな が~ん~ば~れ~♪』
     沢山の、沢山の伝えたい思いを込めたその歌に、自然と観客達も歌い出し始める。
    (「これを見逃すのは無いわよね……!」)
     奏音があいなに目配せし、歌に合わせて可憐に舞う。
     情熱的で活気のあるその踊りが観客達の熱気を更に高めた。
    「「Sally Go! Movi’n go! 4・d・椿!」」
     自分達のチームを応援するその声さえも、武蔵坂全体の熱気を更に高める材料となり。
     最高潮に達していくその熱気の中で、センターのえりなが明るく美しく歌い続ける。
    「がんばれ がんばる 武蔵坂!」
    『がんばれ がんばる 武蔵坂!』
     えりなの声に合わせる様に、【星空芸能館】のパフォーマンスに釘付けになっている人々が声を張り上げ。
    「がんばれ がんばる 武蔵坂!」
    『がんばれ がんばる 武蔵坂!』
     既に最高潮に達しかけている観客達を後押しする様に、流希がウクレレの速弾きを最高速にまで引き上げて更に煽り。
     寛子のDJも更なる加速を続けていく。
    「ファイト ファイト ファイトオー!」
    『ファイト ファイト ファイトオー!』
     観客の盛り上げ役として最大限の貢献を果たした徒が向けたカメラのレンズには、共に歌っている人々が、映っていた。
     ラブリンスターもそんな皆を応援している。
    「大地ちゃん! 渚ちゃん!」
    「任せろっす!」
    「最後……フィニッシュ……!」
     大地と渚が両側から百鬼を掴み。
     そして……。
    「5E蓮連合……!」
    「ファイト ファイトオー!」
     歌のラストに合わせる様に声を張り上げ、ぽ~んと高らかに百鬼を投げ上げた。
     天空の高みへと上がった百鬼の姿が、観客達の目を奪うと同時に。
     くるり、と素早くバク転を繰り出す。
     決して合わせるつもりがあった訳ではなかったが、このノリに合わせて行われたそのパフォーマンスは、結果として今まで以上に人々の注意を引き付け。
     そして……大歓声が会場一体から上がるのだった。
    「きゃ、きゃっち……わ、わ……!」
    「おっ……オーっす!」
     そのまま重力に従って落下してくる百鬼を大地と渚が両側から見事にキャッチして、そのまま縺れる様にして倒れ込む。
     それと同時に、溢れ出す、拍手の群れ。
     笑顔で一礼するえりなと【星空芸能館】、そしてこの応援合戦に参加した数多くの選抜者達全てに対して向けられた、其れは、何よりの報酬だった。

     ――かくて、応援合戦は終了した。
     
     今回のMVPは、多くの者達を巻き込み、沢山の人達を楽しませた【星空芸能館】へと送られ。
     他の仲間達の推薦もあり、最終的なMVPは、星野・えりなに決定するのだった。

    作者:長野聖夜 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年6月5日
    難度:簡単
    参加:16人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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