気温もむくむく上昇し、運動するにもちょうど良い季節。今年も武蔵坂学園の運動会の季節がやってきた。
正統派なものから特殊なものまで様々な競技があるのは例年通り。今年も組連合ごとに力を合わせて、優勝目指して頑張ろう!
決戦の日は――6月5日!
「運動会、もうすぐですね~」
運動会の種目案内のプリントを眺めながら榛名・真秀(中学生魔法使い・dn0222)が呟く。
「今年は本当にいろいろあったから、運動会ぐらいはみんなで学生らしく楽しみたいね」
日々めまぐるしく情勢は変わっていくが、それでも灼滅者達は全員学生でもあるのだ。橘・創良(大学生エクスブレイン・dn0219)は、みんなが少しでも学生らしく楽しい時間が送れるようにと願わずにはいられないようだった。
「だったら、選抜競技も出ますか? んーと……あ、これおもしろそう!」
真秀が指差したのは、おんぶ徒競走。100mの距離を二人一組がどちらかをおんぶした状態で走るのだ。
「おんぶだけじゃなくて、だっこでもいいみたいですね。お姫様だっことか乙女の憧れですよ! カップルだったら女の子きゅんきゅんしちゃいますね!」
いろいろと妄想に忙しいらしく、真秀はうっとりして頬を染めたり、ため息をついたり、ころころ表情を変えている。
「サーヴァントとのペアでもいいんだね。日頃の絆の見せ所かもね」
「応援するのも楽しそう! 創良先輩出るなら応援しますよ」
「いや、僕はあんまり体力に自信ないし……」
「担がれる方で出ますか? 創良先輩くらいなら、わたしおんぶできるかも……」
「それはそれで、なんか複雑な気分になるから……」
年に一度の運動会。MVPを狙うもよし。大切な仲間と、大好きなあの人と、仲良しのあの子と、かけがえのないパートナーと……素敵な思い出作りませんか?
●背中を預ける
おんぶ徒競走の競技への参加は二人一組。どちらかがもう一人をおんぶかだっこして100mを走り、その速さを競う。5~6組ごとが同時に走り、勝敗とMVPが決まる。
最初のレースはおんぶで挑むペアが集められた。その勝負の行方は?
スタートラインについた影道・惡人と久瑠瀬・撫子だが、なぜか撫子が惡人をおんぶしている。
「これが適正ってやつさ」
「やるからには全力でいきますが」
こうしたことには慣れているのか撫子は冷静だ。
「ほら、ちゃんとくっ付いて下さいね……って何処を掴んで居るのでしょうか?」
「ん、どこって乳だ。そりゃそーと、少し左斜めに向かって切り込め」
惡人が的確な指示を出し、無駄のないルートを選び出す。なんとかバランスをとりつつゴールを駆け抜けていく。
「ほぃお疲れさん。帰りは俺がお姫様だっこしてやらぁ」
労うように、惡人がひょいと撫子を抱き上げた。
「びゃくえんさま。よろしくお願いするのですよ!」
綾町・鈴乃が御神・白焔におんぶしてもらうため、白焔の首に腕を回し、身体を密着させる。
「落ちないようにしっかり捕まっててくれ」
そう声を掛けつつも、鈴乃が落ちないようしっかり支える。
おんぶの状態では走りにくいが、それでも手を抜くのは白焔の性に合わない。
「わわ、白焔さま速いのです」
前傾姿勢で走り抜けていく背中に揺られ、スリルと楽しさに声を上げる。
学園にきてから三年ほど一緒に過ごしてきた七六名・鞠音と色射・緋頼。
「なるほど、こう来たか」
鞠音は緋頼を米俵のように肩に担いだ。持ちやすいようにお尻を鷲掴みに。お返しとばかりに、緋頼が鞠音のお尻を撫で返して腰にキス。
「……くすぐったいです」
信頼で結ばれた二人はその後全力でコースを駆け抜ける。
走り終えると、隣で走っていた鈴乃と白焔に声を掛ける。
「2人はどうだった? こっちは楽しかったよ」
「こちらもすごく楽しかったのですよっ!」
「い、えーい。です」
三年を共に過ごした仲間同士、4人は笑顔で頷き合うのだった。
「この運動会終わったらスイーツ食べに行きましょうね!」
羽柴・陽桜の言葉に大きく頷く榛名・真秀。せっかくだからと応援だけでなく参加することにしたスイーツ友達の二人。ご褒美をぶらさげて、いざスタート!
「あたし、頑張って真秀さん背負いますよぅ!」
「重いのにごめんね! 昨日もパフェとか食べちゃったし」
身長は大差ないが、小柄な陽桜が真秀をよいしょと背負う。
「だいじょーぶです、がんばりますっ」
少し足元をふらつかせながらも走り出す陽桜。
「ありがと陽桜ちゃん。今日はわたしがおごっちゃうからね♪」
船勝宮・亜綾は、相方のすーぱー万能霊犬、烈光さんを定位置である頭の上に乗っけて挑む。烈光さんがくわえた釣竿の先にはドーナツが。
烈光さんは器用に竿を操り、亜綾をサポート。お互いの性質を理解しているからこそできる作戦なのだ。
そしていざとなれば相方をぶん投げ――ようとして、亜綾の手が止まる。
「え、投げるのはなしですかぁ?」
「やー、雪緒ちゃんをおんぶするのって何年ぶりだろう?」
坂東・太郎が白川・雪緒をおんぶしては、しみじみと呟く。親戚同士の二人は幼いときからの長い付き合いになる。
「……それにしても、雪緒ちゃん、重くなったねえ」
赤ん坊の頃から見ているからこその発言には、言葉以上の重みと温かさがある。
「これからもどんどん背が伸びて、綺麗になってくんだろうねえ」
その言葉に雪緒はわたくしだけではないですよと首を振る。
「ここから見える景色が違いますもの。以前より、少し目線の位置が高くなったように思えます」
太郎の背が伸びたこと。それだけでなく、手も身体も大きくなっていることを雪緒は知っている。
ずっと一緒にいたからこそ、こんな機会に気づくことが出来るのかも知れない。
お互いに昔のことを思い出しながら、急がずのんびりとゴールを目指す。
「私の事はただのお荷物と思って全力で走ってくださいねー!」
守御・斬夜の背中におぶさった片霧・シェリカが明るく声を掛ける。
「落ちないようにつかまっててねー」
シェリカが全力でしがみついているのを感じながら、斬夜も応えるように全力で走る。ひとつに結んだシェリカの髪が揺れる。
「お疲れ様、重かったですか?」
1位でゴールを駆け抜けたが、ちょっと意地悪く問いかけるシェリカ。
「重い? いや軽いぞシェリカ」
その言葉を証明するように、不意打ちで斬夜はシェリカを抱き上げた。
●嬉し恥ずかしお姫様だっこ
「それじゃ、しっかり掴まっててね」
綾峰・錬が姫君に接するように恭しく水無瀬・陽菜を抱えると、お互い照れながらも距離の近さにドキドキする。
陽菜が錬の首に手を回し身を寄せると、錬もぎゅっと抱き寄せ「傍に居てよ」と耳元に囁く。付き合って一年の時間が相手との距離を縮め、もっと知りたいと思わせる。
体力はある方ではないけれど、錬が懸命に走る。
「僕の太陽が傍にいるんだもの、負けてなるものか、ってね!」
「ちゃんと見てるよ、応援してるよ。がんばれ錬くんって!」
照れつつもそう励ます陽菜。
結果よりもこの瞬間が何よりも幸せで。離れたくないと思うのだった。
(「とんでもない競技に参加してしまった……!」)
花宮・括があわあわしていると、日差しを気にした見崎・遊太郎にジャージを着せられ、問答無用でお姫様だっこ。
「おんぶのほうが走りやすいんじゃないのかしらっ」
抗議の声にはちょっとした意地悪で返す。
「括、ちょっと太った?」
「いやぁぁおろしてーっ!」
じたばたと暴れる括をよしよしと撫でながら。
「まあまあ、とりあえず安心して掴まっててよ」
少し迷ったあと、おずおずと首に腕を回す。体温や匂いに包まれて、遊太郎が括のために安全に走る様子を見て、抱きしめる腕に力を込めた。
「き、昨日は筋トレし過ぎちゃったので、今日は高明さんにおんぶ役をお願いしようかしら……?」
阿剛・桜花が顔を赤らめながら柳瀬・高明にお願いする。もちろん、と答えた高明は軽々と桜花を抱え上げる。
「ちょいと荒いからしっかり掴まってるんだぜ、お姫様?」
おんぶだと思っていた桜花は驚き恥ずかしそうにおとなしくしている。そんな反応が初々しくも可愛らしく高明も内心ドキドキしてしまう。
(「高明さんの腕……頼りがいがあって温かい……」)
周囲の目を気にしていたが、その頼もしさに桜花もうっとり。
ゴールしてもしばらくそのままで。この瞬間がとても愛おしくて。
「では……姫君、失礼します」
「お、重かったらすぐ言うてね……」
この日のためにダイエットをした臨んだ篠村・希沙の言葉に、抱き上げ「重くないですよ」と囁く鹿野・小太郎。
顔の近さと抱えられていることに恥ずかしさを覚えて身体は熱くなる。
走っていれば恥ずかしさも薄れ――お互いの熱は鼓動と共に高まるばかり。こうしていたいと思う気持ちはどちらも同じで。
「……もう少し、オレだけの姫君で居てください」
「まだ離さんで。きさだけの王子様」
囁く声は二人だけの秘め事のようで。顔を見合わせ、小さく微笑むのだった。
「昔は悠君の方が小さかったのに……男の子ってずるいわ」
鷹取・眞白が自分が抱えられる側だと悟り、恨めしそうに不入斗・悠を見上げる。昔は悠が小さく、眞白に手を引かれる側だった。
「確かに私じゃ悠くん担げないけど! おんぶの方が良いと思うの!」
「話は後でな。今は抱っこされてて下さい、俺のお姫様」
じたばたと暴れる眞白を楽々抱きかかえると、普段は恥ずかしさでできないようなことをこの機会にするべくお姫様扱いにも念を入れる。
眞白は恥ずかしいかもしれないが悠はすっかりこのだっこを気に入ってしまった。
「……眞白姫、次はプライベートで抱っこしても?」
「よ、よろしくお願いします」
恋人になったばかりの月影・黒とライ・リュシエルはお互い顔を真っ赤にしながら走る前に挨拶を交わす。
緊張しながらも黒がライをお姫様だっこ。
「黒、信じてるから。……だから勝ってね……」
「まかせて、俺も信じてるから頑張るね」
最後の言葉とともに走り出す。ライを気遣いながらも素晴らしい速さでゴールする黒。
「大好きだよ……僕の王子様」
抱き上げられたまま、ライから黒の頬にキスの祝福を。初めてのキスに、一瞬動きが止まる黒。けれど大好きなライからのキスに、いつもはクールな黒が幸せそうに笑う。
そして1位で駆け抜けた勝利を祝って二人でハイタッチ!
●密着と温もり
「……えへへ。女の子の憧れですよね」
水無月・カティアのお姫様だっこに嬉しそうに微笑む神御名・詩音。小柄なカティアだが、しっかりと詩音を支える。
「しっかり掴まってください!」
言葉通りぎゅっとしがみついた詩音の豊かな胸が感じられ、スタート早々にカティアは動揺のあまり、躓いてしまう。
とっさに地面と詩音の間に自分の身体を滑り込ませ、事なきを得るが、なぜか詩音が馬乗り状態に。
あとで手当てしますから、と声をかける詩音の体操着が捲れていて、思わず手で顔を隠すカティア。
「最後まで頑張りましょう」
詩音がにっこりと微笑んだ。
公衆の面前で合法的にだっこできるとあって、新城・七波は燃えていた。
「えと、お、お願いします」
少し恥ずかしがりながら、夕凪・真琴がおずおずとお姫様だっこされる。
スタートと同時に猛然とダッシュしようとして、七波ははたと気づく。このままではすぐにだっこが終わってしまう。スローペースに落とし、照れている真琴をぎゅっと抱きしめる。
ゆっくりとゴールを切ったところで、七波が優しく微笑みかける。
「レースはこれで終了だけど、これからもずっと一緒だよ」
「もちろん、いつまでも一緒です」
自分だけの王子様に向かって、真琴も愛らしく微笑んだ。
首に腕を回してもらい、大神・狼煙は七夕・紅音を抱き上げた。スタミナはない方だが、愛する人に応援されれば走るしかない!
揺らさないように気をつけながら走っていた狼煙だが、途中紅音の狼耳が気になりだす。
(「モフモフしたい……」)
両手がふさがっているため、抱きしめながら身体を持ち上げ、なんとか頬ずりを敢行。紅音もすかさず更にぎゅうっとすがりつく。
ゴールしても、くるくる回ったりと、なかなか降ろしてくれない狼煙に仕返しのように紅音が頬にキス。
「ふぇい!?」
驚いた声を上げた狼煙が、今度は反撃のモフモフに打って出るのだった。
「えーと、だっこかおんぶとか特に決めてなかったけどだっこでいいか。んじゃこっちに……」
佐久間・嶺滋が手招きすると、そこに蓬栄・智優利のだいしゅきほーるどが炸裂!
「ちょっとちうり、当たってないか……っていうか当ててるぅ!?」
豊満な智優利のあれやこれやが嶺滋に押しつけられ、これは全力で駆け抜けるしかないと悟る嶺滋。
「一番にゴールして皆に私達の愛も押し付けるのよ!!」
観客の皆様、こんなノリの彼女ですと心の中で謝罪し、ひたすら必死に駆け抜ける。
いろいろな歓声を背に受け、必死に走った嶺滋だったが、ゴール後に頭から湯気を出しまくるほど赤面したのだった。
「珍しい徒競走もあるもノだ……オーダーはお姫様抱っこかな。任せて欲シい、俺の姫君」
御手洗・七狼が軽々と婚約者のシェリー・ゲーンズボロを抱き上げる。
「わ、七狼すごい、力持ち!」
首に腕を回して掴まると、たくましくも温かい腕の温もりが心地良い。一番近くで走る大好きな彼に、声援を送っていればあっという間にゴールを迎える。
お疲れ様と、1位でゴールした七狼の頬にキスのご褒美を。
「格好良く君を攫って往けたダろうか」
「素敵な王子様に攫ってもらえて幸せ。また一緒に走ろうね!」
「あァ、また走ろう」
――こうして君を抱きしめながら。
●絆は想いとともに
椎葉・武流がメイニーヒルト・グラオグランツを抱き上げスタートの位置につく。
「大丈夫か? メイニー。痛くないか?」
勝負にはこだわりたいが、恋人への気配りも忘れない。
「この方がお互い痛くないよ」
そう応えながらメイニーヒルトはそっと武流の首に手を回し、しがみつく。
「ゴールしてしまったら、この時も終わってしまうんだなぁ……」
温もりを感じ合うひとときが終わるのを惜しむようにメイニーヒルトが呟くと、
「この後のフォークダンスも、一緒してくれるよな?」
ゴール後に、武流がそっとキスで応えた。
「さあ、一番を目指すよ♪」
「うん、がんばろーね♪」
タージ・マハルが榊・くるみをお姫様だっこしようと屈んだとき、寂しそうにこちらを見つめる瞳が。
二人は思わず目を合わせる。
「クルルンも一緒に……いいかな?」
「くるみの大切なクルルンは、僕にとっても大切だよ。一緒にゴールしよう」
くるみのナノナノを優しく迎え入れるマハル。そして一緒にだっこして走り出す。
「がんばれマハルさん……えへへっ♪」
くるみとクルルンの応援を受け、力強くマハルはゴールを駆け抜けた。
「藍ちゃん、寛子をお姫様抱っこしてくれるの?」
村本・寛子の問いかけに、海老塚・藍が決意を込めて頷く。
2年半前のクリスマスイヴに婚約を誓い合った二人。その日は初めて藍が寛子を姫抱きした日。その思い出を抱きしめ、もう一度。
そっと寛子を抱き上げては、一歩一歩かみしめるように歩き出す藍。それはまるで二人の未来に向かっているようで――。
小さな身体の藍を心配しながらも、決意を込めた表情と男らしさに寛子の胸はドキドキと高まり、安心してその身を委ねる。
ゴールを切っても藍は寛子を抱えたまま、耳元にそっと囁く。
「もうしばらくこのままでいようか」
「恥ずかしがることはないさ。俺にとっては自慢したいくらい可愛い樹だもの」
毎日のように抱き上げているから無常・拓馬にとっては慣れたもの。それでも人前ということで少し恥ずかしそうな各務・樹に向け拓馬が優しく囁く。
細身の樹だが、できるだけ負担を掛けないように、拓馬が走りやすいようにと気を配りながら首に手を回す。
いつもと違う距離感でお互いの顔を見つめ、微笑み合う。
「しっかり捕まっててね、俺のお姫様」
あっという間の時間。頑張ってくれた王子様の頬にキスのプレゼント。
「ありがとう」
今度は拓馬が恥ずかしそうに微笑みと感謝を返した。
「智きゅんにお姫様抱っこしてもらう~♪」
「お姫様だっこ? マジか」
そう言いながら、快く引き受ける一橋・智巳。小柄な姉一橋・聖をひょいとだっこする。
スタートすると、聖が智巳にちょっかいをかける。胸筋を触ったり、耳をはんでみたり……そんなじゃれつきに耐えながら、軽々と走っていく。
「智クンは楽しんでる? 日々の日常」
「そりゃ、退屈はさせてくれなさそうさ」
もう少し穏やかでもと智巳は思うが、それは無理かと思い直す。それでも、大切な人たちがいる日常はかけがえのないもので。
それは良かったと思いながら、聖はエイティーンで大人びた姿になると、逆に智巳をだっこして微笑みかけるのだった。
「よーし! 美智もアヤも準備はいいか!」
蒼上・空が声を掛け、榎・美智をお姫様だっこ、美智の霊犬アヤをおんぶする。
「空さん格好いい! 頑張れ!」
頼もしげに空の顔を見上げる美智だが、少し心配も。
「お、重くないですか……!?」
昨日ステーキバイキングに行ってしまったことを正直に告白する。
「お、重くは無いが……バランス取るの結構大変なんで……」
「……あ、空さんこんなとこにホクロあったんですね」
首筋を指でツンとする美智。不意打ちだったのか、空はバランスを崩しそうになるが、愛する者たちを守るため万が一にも備える。
「お姫様に怪我させるわけにゃあいかねぇからな」
「しっかりつかまってて、僕のお姫様!」
準備運動を済ませ、識守・理央が廿楽・燈を抱きかかえる。
「がんばれ王子さま!」
「燈、覚えてるかな。何年か前の運動会でさ、一緒に二人三脚したよね。実をいうと、僕はあのときすっごい緊張してたんだ」
「友人から恋人に変わって……毎日ドキドキして、しあわせで」
二人は同じ気持ちでいることを確認し、微笑み合う。
1位でゴールを切った理央に、燈は心からの祝辞をキスと共に贈る。
「理央くん、だいすき!」
●駆け引きと作戦
どちらが抱きかかえるかのじゃんけんに勝利し、ガッツポーズの千喜良・史明。お姫様だっこに恥ずかしさを覚え、戸惑う陰条路・朔之助に向け、一言。
「勝つ為には朔の協力が不可欠なんだけど、協力してくれるよね?」
「当然!」
負けず嫌い心に火をつけられ、あっさり史明の首に両腕を回して抱き付く。勝利に向け一心に走る横顔は真剣で。目を離すことができない。
けれどゴールした瞬間、史明に一気に照れがやってきている様子をみて、朔之助もにやり。
「史が抱えて走れるなんて思わなかった!」
「失礼じゃない!?」
いつも主導権握られっぱなしの黒瀬・夏樹は、男らしいところを見せるチャンスと競技に参加。
八絡・リコも憧れのお姫様だっこが嬉しくて、夏樹の首に腕を回す。
スタートして少し遅れがちになると、リコはうまく片足を移動させ、夏樹の胴を両足でがっちりホールド。上半身もきつくしがみつき直す。
「さー夏樹、しっかり安定して走りやすくなったでしょ? 全力でラストスパートだよー」
そんな悪戯にも、夏樹の顔はにやけっぱなし。こんなに密着する幸せな機会はなかなかないのだから仕方ない。
「ファルケさん、目隠しするんですか? えっ、ボクが誘導するの?!」
ファルケ・リフライヤが目隠しを始めたので、夢前・柚澄が驚き問いかける。恋人を信頼しているからこそできるやり方だ。
ファルケは目隠し状態で柚澄を抱え、走り出す。
「も、もっと右に! そのまま真っ直……と、隣の人にぶつかりますっ!」
歓声の中、恋人の声を聞き分け、その指示通り走る。転ぶようなことがあれば、自分が下になるように心づもりをしている。
二人の心が繋がるような、かけがえのない時間。
「頑張ってくれてありがとう、ファルケさん♪」
労いの気持ちを込め、柚澄がファルケの頬にキスの祝福を。
「えっ!? そちらは参加者さんが向かう方向ですよ?」
妻である北條・薫に内緒でエントリーした熊谷・翔也は、時間になるとさりげなく薫をスタート地点まで誘導する。
「それでは走りますか」
「ひゃあああ!?」
有無を言わせずお姫様だっこされ、薫は顔を真っ赤にし、あわあわしている。そんな風に恥ずかしがる様子がとても可愛らしい。
「楽しかったですか?」
かなりのスピードで走ったにも関わらず爽やかに微笑み問いかける。
「楽しかったも何も、何が起こったのかわからないのですが……」
きょとんとする薫に、また愛しさが込み上げる翔也なのだった。
彩瑠・さくらえに誘われて、いい機会とばかりに参加することにしたエリノア・テルメッツ。けれど、どんな競技かは当日初めて知って――。
「おんぶ徒競走? 私と、さくらえのペアで?」
「まさか競技内容全く知らずに参加したとかないよねぇ?」
面白そうにエリノアの様子を見つめつつ、そのリアクションにやはり愛らしさを感じるさくらえ。
「まぁ悪いようにはしないから?」
スタート位置につくなり、エリノアをお姫様だっこ。
「こ、この際文句は後回しにするわ! でも、こんな公開処刑するぐらいなんだから絶対に勝ちなさいよ!」
顔を真っ赤にしながらも、しっかりとさくらえに抱きつきつつせめてもの強がりを見せる。
そんな様子も愛らしいと思いながら、さくえらはお望み通り軽やかに1位でゴールを走り抜けた。
競技を終えたペアの顔はみな晴れやかだ。
そして注目のMVPは――坂東太郎と白川雪緒に贈られた。
作者:湊ゆうき |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年6月5日
難度:簡単
参加:58人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 9
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