海中散歩とイルカショー! 光と水が煌めく水族館へ

    作者:春風わかな

     窓から吹き込む5月の爽やかな風が頬を撫でる。
    「來未ちゃーん!」
     パタパタと響く軽やかな足音と聞き慣れた声。
     久椚・來未(高校生エクスブレイン・dn0054)は足を止め、声の主――星咲・夢羽(小学生シャドウハンター・dn0134)に向かってひらひらと小さく手を振った。
    「あのね、ユメね、今年はいつもとちがう場所に行きたいと思うの!」
     何を言い出すのかと、來未は表情を変えることなくじっと目の前の少女を見つめる。
    「來未ちゃん、いろんなお庭に行ったけど、『海のお庭』はまだ行ってないでしょ?」
     不思議そうな表情を浮かべる來未の様子に気付いた夢羽は「あ!」と小さく叫ぶとごそごそと何やらパンフレットのようなものを取り出した。
    「だからね、いっしょに水族館に行こう!」

     夢羽が行こうと誘うのは都会の真ん中にある水族館。
     館内へ一歩足を踏み入れれば、そこは照明が落とされ幻想的な世界が待っている。
     この水族館で有名なのは、マンタやサメ、エイたちが泳ぐ姿を頭上に眺めることができる海中トンネルや、ゆらゆらと水中を漂う幻想的なクラゲの世界。
    「海の底、歩いてる気分、なれるの、ね」
     きらきら輝く水中を、まるで空を飛んでるいるかのようにゆったりと泳ぐマンタの姿は見てみたい気がするし、ふわふわと海中を漂うクラゲは見ているだけで癒されそうだ。
    「他にもね、お魚さんたちいるし、あとね、ペンギンさんやアシカさん、オットセイさんたちもいるよ!」
     その他、ブラックライトに照らされた発光サンゴが放つ光によって創り出される幻想的な雰囲気のカフェでゆったりとした時間を過ごすのも良いだろう。
    「でもね、ユメ、やっぱりイルカショーは外せないと思うの!」
     一番のみどころとしてあがるのはダイナミックなイルカのパフォーマンスショー。豪快に水飛沫をあげるイルカショーは見る場所によっては濡れてしまうかも。それくらい迫力のあるパフォーマンスが見れるのだと夢羽は熱弁を奮う。ショーの他にイルカと触れ合うイベント等も特別に用意されているようだ。
    「楽しそう、ね」
     手元のパンフレットに視線を落としていた來未がぽそりと呟くと、夢羽はえへん、と得意気に胸を張って口を開く。
    「ね、いいでしょ? ユメね、來未ちゃんぜったい好きだと思ったの!」
     きっと、みんなも好きだよね~とニコニコと笑顔を浮かべた夢羽は他の仲間たちを誘ってくると駆けて行った。

    「……と、いうわけなの」
     夢羽は教室に集まった仲間たちに向かって、一緒に水族館へ行こうと改めて誘いかける。
    「來未ちゃん、おたんじょうびだから。みんなといっしょにお出かけするの、楽しみにしてると思うんだ~」

     都会の真ん中で楽しむ幻想的な青の世界。
     こんな誕生日も、いいかもしれない――。


    ■リプレイ

    ●飛び跳ねるクラゲとジャングルのカピバラ
     エントランスを抜けた正面では桜色の小さな鯛と美しい菖蒲の花が皆を出迎える。
     タッチパネル水槽でひとしきり魚と遊んだ後に待っているのは、ライトアップされた水槽で泳ぐクラゲたちが誘う神秘的な世界。
    「うわぁ……」
     心桜はうっとりとした表情を浮かべ、引寄せられるようにクラゲたちへ近づいて行った。
    「明莉先輩の言うとおりじゃった……」
     ふわふわと泳ぐクラゲを彩り豊かな光が照らす。
     宝石箱みたいなクラゲに見惚れる心桜はいつもよりも大人っぽく、思わず明莉の心の声が漏れた。
    「……心桜ももう16なんだな」
    「ん? 先輩、何か言ったかえ?」
     何も? と明莉はひょいと肩をすくめると、代わりに手を差し出す。
     心桜は嬉しそうに明莉の手をぎゅっと握ると、彼の肩にちょこんと頭を寄せてクラゲたちに視線を向けた。
     ゆらゆらと泳ぐ小さなクラゲを厳かな光が照らす。
    「ねぇ、括。知ってる? 不老不死のクラゲ」
     問いかける遊太郎を見上げ、括はきょとんとした顔で首を傾げた。
     このコだよ、と遊太郎が指差すクラゲは透明な身体に紅い内臓が透けている。
    「ベニクラゲ、っていうんだって」
    「わぁ、足ふわふわ! ちっちゃい……」
     ぺたりと硝子に張り付いてクラゲを見つめる括に遊太郎はベニクラゲが不老不死と言われる理由を説明した。
    「あら、ゆうちゃんは羨ましいんだ?」
     ふふっと笑う括の肩をくいと抱き寄せ、遊太郎は水槽を背景にシャッターを切る。
     不意打ちの写真に慌てる括に遊太郎は笑顔を浮かべて口を開いた。
    「ふふっ、写真の中は永遠、だよね」

     世界のジャングルシーンを凝縮したエリアの一番奥へと紅詩は七葉を連れて行く。
    「カピバラ……」
     一番会いたかった生き物を見つけ、七葉は嬉しそうに水槽へと駆け寄った。
     乾いた毛並は見た目ふんわりとしていそうで、さぞかし触り心地が良さそうだ。
    「撫でたいな……」
     ポツリと漏らした七葉の呟きに、紅詩はにこりと笑顔を浮かべて口を開く。
    「では、今度カピバラを触れるところにデートに行きましょうか」
    「本当っ? わぁ、楽しみ……っ」
     きらきらと瞳を輝かせる七葉の前に差し出された紅詩の小指。2人は仲良く約束の指切りを交わした。

    ●煌めく光と海中トンネル
     キラキラと光る太陽の光を浴びながら、目の前を魚の大群が横切る。
    「わ~、おサカナさんがいっぱい♪」
     くるみは嬉しそうに水槽に駆け寄り、紗里亜はシャッターを切る手を止め、光が降り注ぐ水槽を眩しそうに見つめた。
    「ここは、本当に海の中にいるみたいですね」
    「まるで一匹の魚になった気分ですねぇ……」
     うんうん、と頷く流希の頭上をエイがゆったりと泳ぎ、縦横無尽に泳ぎ回る魚たちを見つめ、えりなはふわりと笑みを浮かべる。
    「海底を歩く気分ってこんな感じなんでしょうか♪」
    「ふふふっ、おサカナさんと一緒に泳いでる気分~」
     お気に入りの魚と並んで歩くくるみを見て、そういえばと紗里亜が口を開いた。
    「修学旅行でダイビングしたら、こんな光景が見れるのかな」
     えりなにも一緒に潜ろうと紗里亜は誘うが、泳げないえりなは断固拒否。
    「そんな……ダイビングなんて怖いです!」
     カメラを手に楽しそうに海中トンネルを歩く彼女たちを見つめ、流希がポンと手を叩く。
    「一句浮かびました。『初夏の陽に 人魚揺蕩う 海の道』」
     どうでしょう? と問うも、気づけば少女たちの姿は見えず、流希は慌てて走り出した。
     多様な魚たちがすいすいと気持ちよさそうにチューブの中を自由に泳ぎ回っている。
    「水中トンネルって綺麗ですね」
     緋頼の言葉に頷き、桐香も頭上を見上げた。水に揺れる光がキラキラと輝く様が美しい。
    「水の中を『飛ぶ』魚という人もいるみたいですわよ?」
     何気ない桐香の台詞に緋頼は怪訝そうな表情を浮かべる。
     水中を飛ぶ? 泳ぐのとは何が違うのだろう?
     緋頼は不思議そうに頭上を泳ぐ魚を見つめていたが、ふと桐香の名を呼んだ。
    「今日はありがとうございます。……次は桐香さんの好きなことに付き合いますよ」
    「では……動物園はいかがでしょう?」
     二人は次のお出かけを楽しみに笑顔を交わす。
     手を伸ばせば今にも届きそうなほど想希の近くを泳ぐ魚たち。
     うまそー! とはしゃぐ悟の目の前をマンタが悠々と横切った。
    「マンタや!」
     悟に手招きされ、想希も水槽を見上げる。
    「あいつ沖縄の海で会った奴かな?」
     わくわくしながら悟はマンタに背を見せろと念を送るが、特徴のハートが見当たらない。
    「違うようですね……」
     残念そうに想希も肩を落とすが、「折角ですし」と写真を撮ろうとカメラを出した。
    「そうや、ハートの魔法かけよや」
     二人は指でハートの形を作りマンタの背中に当たる様に掲げて、パチリ。
     いつか、一緒に沖縄のあのコに逢えるようにと願いを込めて。
     面白い顔の魚が頭上を泳いで行く。世界でここにしか展示されていないドワーフソーフィッシュという魚らしい。
     案内板を見ていた朔楽の袖を引っ張り、花音は嬉しそうに魚たちを指さした。
    「朔楽さん、見てくださいっ。お魚さん、いっぱいいますっ」
     夢中で魚のことを語る花音の話に引き込まれ、朔楽も一緒に水槽を眺めていれば。
    「「あっ……」」
     顔が近かったことに気付いて二人同時に頬を染めた。
     朔楽はそっと花音の手を取り、彼女に告げる。
    「……もっと花音さんから教えてほしいな」
    「いいですよ、もっともっと教えてあげます。そのかわり……」
     手、離さないでくださいね。
     花音の言葉に応えるように、朔楽は繋いだ手をぎゅっと握りしめた。
     水の底から空を見上げる、日常では見ることのできない景色が眼前に広がっている。
     郁は飽きることなく、水中をひらひらと泳ぐ魚たちの動きを目で追い続けた。
    「海中トンネル、いいね」
     囁くように郁は言葉を漏らす。
     修太郎も笑顔で頷くが、彼が見つめているのは魚ではなく……。
    「あのさ」
     耳元で囁く修太郎に郁はゆっくりと視線を向けた。
    「恋人繋ぎっていうのをやってみてもいいですか?」
     ほんのり頬を染めた郁がこくんと頷くと、修太郎はするりと指を絡めぎゅっと手を握る。
     ――このトンネルにいる間だけなんて、勿体ない。
    「……ずっとここにいたい」
     そう、告げる郁が愛おしくて。修太郎も満面の笑みを浮かべて頷いた。
     きらきらと輝く日差しを浴びながら、魚たちが群れをなしてさっと泳ぐ。
     ひよりは煌めく青の世界に瞳を輝かせながら、姉のひなたの腕にぎゅっとしがみついた。
    「あら、どうしたの? 今日は随分と甘えたさんね」
     くすりと笑みを零すひなたは妹が望むようにさせてやる。
     二人を包むように泳ぐ魚たちを静かに見つめ、2人は想いを言葉に乗せた。
    「……好きよ、姉様」
    「いつもありがとう、私の可愛い妹」
     ずっと続いて欲しいと願う幸せな時間。
     今はまだ口に出せぬ言葉も。いつか言える日が来るだろうか――。
     ぼんやりと頭上を見上げる來未の視線の先では、エイが大きなヒレを上下に動かして羽ばたくように水中を泳ぐ。
    「水族館、楽しんでますか?」
     陽桜に声をかけられ、來未はこくりと小さく頷いた。
    「あ、おっきなサメさんですよ!」
     陽桜が指差す方に視線を向けると茶色いサメがゆったりと目の前を通り過ぎてゆく。
    「海の中、お散歩してる、気分」
     ぽそりと呟く來未に陽桜が「どうぞ」と差し出したのはペンギンのぬいぐるみ。
    「來未さん、お誕生日おめでとうございます♪」
    「ありがと……」
     ペンギンの頭を撫でる來未を見つめ、陽桜は嬉しそうに微笑んだ。

    ●飛沫輝くイルカショー
     和楽器の音色に合わせてイルカたちが勢いよく跳ね上がる。
     イルカたちのパフォーマンスショーはバンドウイルカの大ジャンプで幕を開けた。
     おぉー、とはしゃぐ百花(d02633)の姿が新鮮で、隣に座る侑二郎の頬も自然と緩む。
     カマイルカたちが美しい三日月形の弧を描いて連続ジャンプを披露すると、同時に白い水飛沫が跳ね上がった。
    「だ、大丈夫ですか、先輩。きっと、ふっ、すぐ乾きますよ」
     濡れて張り付く髪に眉を寄せ、百花は侑二郎が差し出したタオルに手を伸ばす。
    「どーも……何で笑ってるのよ」
     同じ濡れ鼠のクセに、と口を尖らせる百花だったが、何だかタオルが冷たい。
     「え?」と侑二郎は慌てて鞄を漁るが、残念ながら中身は全滅。
     そんな彼の様子が可笑しくて。彼を見つめる百花の顔に笑みが浮かんだ。
     イルカたちから大量の水飛沫のプレゼントがあります――。
     場内のアナウンスが告げた通り、イルカたちはわざと水面に身体を打ち付け、ばしゃんばしゃんと客席に大量の水を降らす。
    「わわっ、つめたっ」
     前方の席に座っていた悠樹と薫子も避けることはできず、頭から水を被ってしまった。
    「びしょびしょですの……あら、ら?」
     困ったように薫子が腕を動かすと、濡れた服に肌が透ける。
    「わ、あの、お姉ちゃん……」
    「ふふっ、見ちゃダメですのよ?」
     薫子は悪戯っぽい笑みを浮かべ、頬を赤く染めちらちらと視線を送る悠樹の頭を撫でた。
     プール中央に吊るされたボールに向かって、イルカたちが一斉に大ジャンプ!
    「すごい! あんなに高く飛べるんだね!」
     興奮気味にカーリーは傍らの聖也に語りかける。
     聖也は嬉しそうに手を叩き、器用にボールを運ぶイルカに歓声をあげた。
    「こっちにおいでー!」
     聖也の声に引き寄せられたかのように、カマイルカが目の前でジャンプを披露。少し遅れて水飛沫が降り注いだ。
     びっしょりと濡れた二人は顔を見合わせ笑い声をあげる。
    「あははは! 二人してびしょ濡れだ!」
    「でも、イルカさん凄いのです!」
     ダイナミックなイルカの演技を間近で見れたことに大満足の聖也とカーリーだった。

    ●イルカと握手!
     大迫力のイルカのパフォーマンスショーが終わった後に用意されていたのがイルカとの触れ合いイベント。
    「んん……イルカ、触って、怒ったりはしない?」
     心配そうなサズヤに【Cc】の仲間たちは大丈夫だと口々に告げる。
     イルカが嫌がるようなことはトレーナーがさせないだろうから心配はないが……。
    「でも、イルカからするとどんな気分なんだろうね」
     握手会、かな? と首を傾げるアイナーに篠介が言い得て妙じゃ、とけらりと笑った。
     まずはイルカに好物のアジをプレゼント。
    「イルカさん、ごはんどうぞ」
     昭子が差し出した餌をイルカがぱくりと嬉しそうに頬張った。
     そっと口元を撫でれば、きゅいきゅいと高い声で鳴く。
    「一体なんて喋ってるんだろう?」
    「遊ぼって言ってるのかもね」
     にこりと笑みを浮かべる依子の言葉に、可愛いなぁ、とイルカと握手した壱子も満足そうな笑みを浮かべた。
     トレーナーの指示に合わせ、依子がイルカに向かってポンとボールを投げると、イルカは素早くボールを鼻先でキャッチし、器用に投げ返す。
    「……おぉ」
     サズヤと昭子は思わず拍手を送り、壱子は感動を隠せない。
    「わ、イルカさん凄い! 賢い!」
     おいでおいでと言いたげにイルカが尾びれで手招きすれば、皆の後ろで見ていた篠介もやって来て、出された胸ビレをよしよしと撫でた。
    「何ぞ茄子っぽい手触りじゃな……!」
     篠介にカメラを渡し、アイナーもわくわくしながらイルカと握手を交わす。
     ひんやりと気持ちいい手触りは離れがたく、もう少し触っていたい。
     最後にサズヤが握手をしようと手を伸ばしたところで、イルカがくるんと回転しパシャンと小さな水飛沫をあげる。
    「……! 八握脛、見た? ……イルカも、悪戯する」
    「一緒に遊びたいのかもな」
     篠介からタオルを受け取り、サズヤは頭がいいと感心しきり。
     最後はみんなで仲良く記念にパチリ。
     可愛いイルカと一緒に皆の笑顔をカメラに収めれば、また、素敵な想い出が増えた。
     イルカに近づいた聡士がちらりと視線を向ければ、時兎がぷるぷると震えている。
     恐いんだろうな、と意地悪く笑いながら聡士はイルカにタッチ。
    「時兎も触ってみなよ」
     恐る恐る時兎が伸ばした指先がちょこんとイルカのヒレに触れ、安心したように時兎はほっと息を吐く。
    「……イルカ、いーこ。聡士とは大違い」
     時兎がぷくっと頬を膨らませて聡士の方を向いた瞬間、ちゅっとイルカが時兎の頬にキスをした。
    「よかったじゃん、時兎」
     笑う聡士に時兎は自分の頬にあてた指でぺたりと触る。
    「聡士にも……ちゅー」
     イルカの間接キスに聡士の顔が綻んだ。
     曜灯と手を繋ぎ、勇介はイルカたちが待つ小さなプールへと歩いて行く。
    「えっ、握手してもいいの?」
     どうぞ、とばかりにイルカが水面から差し出した胸ビレをそっと曜灯が撫でる。思ったよりも柔らかな感触に意外そうな表情を浮かべた。
     続いて握手した勇介も嬉しそうに顔を綻ばせる。
    「この子の手、気持ちいいねっ!」
    「それに嬉しそうな顔をしていて癒されるわ」
     ――でも、勇介にとって一番の癒しはイルカに負けじと嬉しそうな曜灯の顔であることは、彼だけの秘密。
     イルカたちへと近づき、雫はおいでおいでと優しく手を振る。呼ばれたのがわかったのか、すいすいと軽やかに泳いでバンドウイルカが近づいてきた。
    「近くからだと結構大きいんすね……」
     予想外の大きさに思わずびくりと手を引込めた狭霧に雫はくすりと笑みを零す。
     そっと差し出した雫の手にちょこんとイルカが鼻先でご挨拶。
    「ふふ、お見合いしてる気分です」
     狭霧もイルカが差し出した胸ビレを撫でると、つるつるでひんやりで心地よい感触。
    「やばい、滅茶苦茶可愛い」
     見ているだけで癒されるイルカたちにすっかりめろめろの狭霧と雫だった。
     仲良くイルカと握手を交わす百花(d14789)は、可愛いヒレをぎゅっと握ってご満悦。
    「もも、どんな感じ?」
    「つるんとしてて可愛い♪ えあんさんも、握手してみて?」
     横を向いた彼女の頬にイルカがちゅっとキスのサプライズ。
    「えあんさんっっ!!」
     テンションMAXの百花はお返しに、とイルカにキス。
     きょとんとした顔のイルカと握手をするエアンにも、百花はちゅっとキスを贈る。
    「もも、どうやらイルカに気に入られたみたいだね」
    「えへへ、嬉しいっ」
     優しくエアンに頭を撫でられ、百花は満面の笑みを浮かべて頷いた。
     迷子防止に手を繋ぎ、優志と美夜はイルカたちの傍へやってくる。
     つるっとしたイルカのヒレを撫で、美夜は嬉しそうに頬を緩める。
    「優志も握手しないの?」
    「もちろん、するよ」
     早く、と手招きされれば優志もイルカに向かって手を差し出した。
    「こんなに可愛いのに……さっきのショーの演舞とか凄かったよね」
     珍しくはしゃいだ様子の美夜が愛しくて。優志は目を細めて「そうだね」と頷く。
    「さぁ、仕上げはペンギンよ! ほら、早く!」
     え!? と驚く優志を横目に、美夜はさっさと歩き出した。
     楽しい1日はまだ終わらない。

    ●想い出を胸に
     出口の傍にあるミュージアムショップはお土産を買い求める客で賑わっている。
    「七波くん、見て」
     真琴にくいっと袖をひっぱられ、七波は彼女が指差す先に視線を向けた。そこにいたのは棚いっぱい並べられたペンギンのぬいぐるみたち。
    「ペンギンさんがいっぱい……!」
     さっき2人で見たペンギンに似た子はいないかな、ときょろきょろ探す真琴の頬に、七波はちゅっとペンギンのぬいぐるみを押し当てる。
    「これってさっきのに似てるよね?」
    「わぁ……確かに、私も似てるって思いました」
     真琴は「ありがとう」と満面の笑みを浮かべ、今にもよちよちと歩き出しそうなペンギンをぎゅっと抱きしめた。

     水族館の出口で來未と夢羽を待っていたのは【空色小箱】の恵理とみとわ。
     ふたりはせーの、と声を合わせて來未に「おめでとう」と告げる。
    「私からのプレゼントはこの丸い苔入りの水晶を」
    「ボクはカルトナージュの箱を贈るよ」
     思いがけない贈り物に來未はぱちぱちと瞬きをした後、嬉しそうに贈り物をぎゅっと抱きしめた。
    「水晶も、手作りの箱も、素敵。どうも、ありがとう」
    「よかったね、來未ちゃん!」
     にこにこと嬉しそうに頷く夢羽にも二人からサプライズのプレゼント。
     まさか自分の分があるとは思わず、夢羽はぴょこぴょこと嬉しそうに飛び跳ねて喜ぶ。
    「來未、17歳の誕生日は如何でしたか?」
     恵理の問いに來未は迷わず「楽しかった」と頷いた。
    「海中トンネル、綺麗、だったし。イルカ、迫力、凄かった……」
    「うん、クラゲも癒されたね~」
     來未の言葉に頷くみとわの横で、夢羽も身ぶり手ぶりで恵理に感動を伝える。
     今日の想い出を語るには、もう少し時間が必要なようだ――。

     キラキラ輝く幸せな誕生日
     素敵な想い出をくれた、今日という日を一緒に過ごした全ての人に。
     ――どうもありがとう。

    作者:春風わかな 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年6月4日
    難度:簡単
    参加:47人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 1
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