6月5日は、武蔵坂学園の運動会。
組連合ごとに力を合わせて優勝を目指す戦いの火蓋が切って落とされる――!
お馴染みのクラス連合で力を合わせて戦い、思い出を作り上げようではないか。
競技一覧が書かれたプリントに視線を落とし、不破・真鶴(高校生エクスブレイン・dn0213)はカラフルな装飾がなされたハンドガン型の水鉄砲を二丁ゆっりと握りしめる。
「――時は来た、なの!」
すこ、と軽い音を立てた引き鉄。中身の入らないハンドガンを確かめながらプリントの『水鉄砲バトル』という言葉に着目した真鶴はゆっくりと顔を上げる。
「分かってるの……これは過酷な戦いになるのだと……」
組体操や騎馬戦、そしてMUSASHI。毎年盛況な運動会の種目を眺めながら彼女は海島・汐(潮騒・dn0214)へと水鉄砲を手渡した。
「さあ、時は来たなり! 水鉄砲バトルなの!」
言いたかっただけなのだろうか。すっきりしたという顔で、真鶴は「これがハンドガンなの」とにんまりと微笑み手渡した。
紙で作成されたゼッケンを付け、水鉄砲でそれを破り合う競技――水鉄砲バトル。
「ルールを説明するの! よーく聞いて欲しいのよ!」
各連合毎に色の違うゼッケンは水に当たる事で『水が当たったこと』を示す様に大きく濡れが出来、破れる。ゼッケンを付けている人間が『生存』している事となる簡単なルールの元、このバトルは行われる。
「武器は数種類あるのよ。ハンドガンと、ライフルと、バズーカ、それから水風船なの」
真鶴が机の上に並べたのは三種類と一つの『爆弾』だ。
ハンドガンはその小型のフォルムから二挺を持つ事が出来る。引き金を引けば飛び出ると言う安易な操作と手早くできる補給力から放つ連射は大きなメリットとなる――デメリットはその短い射程だろう。
ライフル型はその名の通り、両手で保持し放つ銃の形をしている。射程は長く連射も可能だ。ポンプの操作により圧力を掛けなければ放つ事ができない事がデメリットとなることだろう。
そして、バズーカはその名の通り強力な射程『範囲』が武器となる。射程距離を持つライフルと比べればその距離は短いが、範囲で言えばピカイチとなる。正し、どのタイプと比較しても弾数が少なくなる事が欠点と言えるだろう。
「水風船は?」
「爆弾なのよ。注意してほしいの!」
水風船は手榴弾だ。紐が付いており結んで携帯する事も可能だが、自爆の可能性もある非常に扱いの難しい武器だろう。使用者のポテンシャルにもよるが、コントロールが難しい――しかし、当たれば何者にも変えられない一撃必殺の武器となることだろう。
「戦略が物言うの。最後に立って居た人が勝者なのよ」
「なるほどな……。
優勝に近付く為、ここで勝負を落とす訳にはいかねェな!
作戦が物言う競技だぜ、水鉄砲バトル! がんばろーな!」
水鉄砲を高く掲げ汐は大きく言い放つ。
決戦の幕が切って落とされた―――!
●
ユーモア溢れるお題に定評のある武蔵坂学園だが――今日はどの様な塩梅であろうか。
九つの連合に分かれた『Le jardin secret』の面々はヤる気を漲らせ其々の武器を手にしている。
「組連合が違うとなれば、クラブ内バトルロワイヤルするしか!」
花園を束ねる魔王様――りんごの一声で苦楽を共にするクラブ員達が一斉に狙いを定める。
水鉄砲バトルは盛者必衰、愛らしい女性達にとっては『キケン』な競技なのだ。
「容赦は……しません、よ」
りんごの背後からひょこりと顔を出しライフル型の水鉄砲を手に一撃を放つ扶桑は障害物を壁にし、ライフルで狙いを定める。
「あ……あれ……?」
ポンプの圧が重要とされるライフルの操作に戸惑った様に扶桑の視線が下がってゆく。
その隙へと靱やかに滑り込む璃耶は銀の髪をなびかせ「隙あり、ですよ?」と柔らかに声を発した。
「ぷぁっ!?」
「りんごさん、ご容赦ください……!」
見事に狙い撃ちされた扶桑の前に立って居たりんごから視線を外した璃耶は『組連合』という大きな壁に言葉を喪う。そのハンドガン捌きも圧巻だが、魔王様(女帝と読む)の威厳も素晴らしい。
「お姉様、大丈夫ですか? ここはわたしにお任せを」
するりと懐に入り込む緋頼――実際は璃耶と同じ4D椿連合だ――は心の拠り所たるりんごへと柔らかに笑みを零す。ウェーブかかった黒髪を揺らした緋頼は唇に薄ら笑みを浮かべゆっくりと振り返った。
「……――と、みせかけて」
魔王覚悟――!
「そう簡単に濡れ透けにはなりませんよ?」
ふわりと交わすりんごは何たることか、扶桑を盾に使い回避する。見事に濡れ鼠になった扶桑は「ぜ、全身……びしょびしょ、に……」と落胆し、視線が集まっている事に気付いた。
「体操服……濡れて……透け、て……!?」
「濡れ透けは眼福よね♪ ふふ、ガン見しちゃうわよ」
にやりと唇を歪めたタシュラフェル。りんごや緋頼の胸の形は綺麗だとか、セカイはましゅまろだとか、『おっぱい』論を展開させる彼女も実は『濡れ透け』になるのは避けたいところ。
(「……ブラ、つけ忘れて来たわ」)
真顔になるタシュラフェル。そんな彼女をちらりと見遣った琴弓は不敵な笑みを形の良い唇に浮かべている。濡れ透け対策は指定水着を体操服の下に着る事で見事にクリアしている。
「――今、厚みがないから有利とか言った人いなかった!?」
「ひゃっ、言ってませんよ!」
『祭り』の正装、サラシと白褌、緋袴という格好のセカイは慌てて手をひらりと振る。ライフルを手に参戦する彼女は、どうしてだろうか――ましゅまろぱいの所為か、狙われ易い。
「セカイさん、油断しましたね!?」
「ひゃっ!?」
サラシが水に濡れ透け出して、首をブンブンと振りながら撤退するセカイの手から放たれた水風船がぺしゃりと当たりりんごは悔しげに息を吐いた。
「無論、参加するからには手加減はしません、全力で相手になりますよ」
両手にはハンドガン。小さな木乃葉はやる気を漲らせてMachinery'sの面々を見回した。
7G蘭連合の彼には敵が多い。じりじりと周囲を取り囲む和弥は仲間である陽和や耀、残暑にSOSを求めるように視線を送った。
(「共同戦線、と行きたいけど巻き添えは困るし固まり過ぎないように――死角を狙う!」)
バズーカから放った水砲に慌てて体を逸らしたシャオは初めての水鉄砲の使い方に苦難する。ひょいと飛び上がり、体を捻りながら放った反撃に和弥が小さな息を漏らした。
「うおー、全員びしょ濡れにしますわー!」
作戦なんて何もないと堂々と胸を張った残暑は『ワーッと飛び出してワーッとやられる』と全力で水鉄砲を乱射する。味方も敵も関係なく、周囲へと放つ彼女に「怖いですー!?」と美智が慌てた様に水を避ける。
「ピンクのゾウさん水鉄砲の攻撃ですー!」
「美智……!」
狙い――かけて、可愛い恋人の懇願する視線に断れないと空が肩を竦める。
優勝狙いだ、容赦はしない、容赦はしないが、共闘がしたいし一緒に楽しみたいと言う美智を無碍にはできない空はライフルで蓮の援護をしながらちらりと楽しげな美智を見遣る。
(「空の危機管理能力は不安だな……信用してねぇわけじゃねぇが」)
勿論、共闘するのは『同じ連合』だけではない。こっそりと手を組んだ木乃葉は陽司やニコへと視線を送る。
「やるからにはクラブで一番っす! ――って、危ない!」
共闘を楽しむ陽司は蓮の放った攻撃から慌てて木乃葉を庇わんと身を呈す。濡れないようにと避ける彼の頬へと掛かった水に思わず蒼褪めた頬が可愛らしい。
「勝負の世界は厳しいという事を知るがいい!」
陽司の後ろから顔を出したニコが水風船を放り、続けて木乃葉が追撃。見事に巻き込まれた残暑は肩を落とし、水鉄砲に慣れないシャオが泣き出しそうな表情を浮かべ――容赦しない恋人の追撃でノックダウン。
「ニコさんは厄介なんですよ……!」
先に狙うべきだと空凛はしっかりとニコを狙い穿つ。三人の共闘を崩さんとする空凛の考えは十分に当たっている。「後ろからだと」と非難の声を上げたニコを狙い、続いて攻撃するのは――陽和。
「ッ――!?」
「危ない!」
狙われた陽和を援護する様に耀が小柄な体を生かして、フィールド上を移動する。こっそりと放ったハンドガンの一撃に空凛が「きゃ」と声を上げる。
(「強襲、そして逃げる――! 大切なのは、ヒットアンドアウェイ、です」)
同じ連合の仲間達を喪う訳にはいかないと身を投じる耀へと「4D椿にいいところを持ってかれる訳にはいきません!」と空凛からの非難が降り注ぐ。
「空さん! 助けてくださいー!」
悲しいけど、これって戦争なのよね――そう言わんばかりに白熱するMachinery'sの面々の勝者は誰だ!?
●
「暑い……死ぬ……太陽の下で運動とか死刑宣告ですよ……」
ぐったりとした雨月は連雀通り2年2組のクラスメイト達を見遣る。太陽の下、ハイテンションでは居られない雨月を励ますなつみはふと、思い当った事をぽつりと口にする。
「MVP狙うと最終的には敵同士なんですかね?」
「――!?」
は、とした様な雨月の心配を余所に連携プレーを見せ始めた桃夜とクリスは阿鼻叫喚となった部活参加の面々を狙い撃つ。
「いっぱい倒して連合に貢献しなくっちゃね~♪」
「わわっ!」
水手風船爆弾を投げ、バックアタックを警戒するクリスは飛んでくる水をさりげなく他人の身体を持って回避する。
「ごめんね、まぁこれも戦法のひとつってことで★」
バズーカーを手に狙う千李の姿に警戒する2-2の面々はバズーカという獲物へ視線を向ける。
守って、と言わんばかりに背後に隠れた雨月に目をぱちくりとさせたなつみが「一発ぶちかますよ!」の言葉と共に水鉄砲を放つ千李へと痛み分けの一撃。
濡れ透けであっても堂々とした態度の千李は密集する2-2の面々へと範囲攻撃を放ち――クリス、桃夜が偶然居合わせた創太の身体を盾に使用する。
「ちょっ!?」
ハンドガンで飛び込み、退場覚悟の戦法をとっていた創太にしても驚きの対応だっただろう。
敵が、己を盾にする――しかも、見事に隠れているではないか。バズーカの攻撃を正面から受け止めて、危なかったと笑う桃夜を見遣った後に「おお!?」と息を吐いた。
「やられちゃったー、あとよろしくねー!」
へらりと笑ったクリスにからからと笑った創太はタオルをとりに一度休憩席へと走ってゆく。
混乱する戦線で千李が濡れ、退場した所へと愛梨が決死の覚悟で挑む。
(「――周りがどう出るか、状況は見た! ガラ空きだよ!」)
ハンドガンで放った水がぴしゃりと雨月の背中へとかかる美しい太陽の下、水による攻撃に背を凍らせた雨月が倒れ、「やったねっ」と愛梨がやる気を漲らせた。
「負けてられませんね……!」
水風船を投げ、広範囲への牽制と共に一撃の攻撃で離脱しようとした愛梨のゼッケンを狙う。
「おっ」と嬉しそうな声を上げた高明は女子の濡れ透けに目を奪われたように唇を歪めた――が、気の所為だと視線を逸らす。
獲物はライフル一つだけ。冷静に周囲を見回し、フィールドの地形をしっかりと叩きこんだ高明はなつみを撃墜し、次の獲物を狙うべしと虎視眈々に標的を探し続ける。
「たくさん頑張ったらきっと……お弁当も美味しくなる、よ」
器用じゃないからとライフルとハンドガンの射程を確かめた与四郎はライフルを手に、障害物から離れないようにと恐る恐る動き出す。
高鳴る胸を押さえ、混乱の中で乱戦状態となった相手を狙いながら障害物に身を隠す流希を狙う。
出て来て貰う為だと、策を練った与四郎に流希はサバイバルにはよくある『誘導』だと息を飲んだ。
障害物の中で息を潜める流希が頃合いを見計らい、次の地点へと走り出す。その瞬間を見逃さないと高明がスナイパーの意地で放った一撃が見事にゼッケンを水に溶かして消してゆく。
「こうも乱戦なら『狙い易い』ってなー」
バズーカで周囲を皆殺しにせんとアヅマが狙う。安全圏から一歩踏み出し、直ぐに走り逃げ出す彼は、障害物の影から顔を出し攻撃を華麗に放った。
アヅマの攻撃に被弾して小さな舌打ちを漏らした高明は同じく被弾する女子群へと視線をちらりと向ける。ほっと胸を撫で下ろした彼の背へと回りこんだ刑は『死角』からするりと忍び寄った。
「バズーカは放つと無防備になるからな」
ぱしゃり、と音を立て、顔を狙った水風船に体が自然に避ける。咄嗟の追撃は避けられない。
被った水の冷たさに眉を顰めたアヅマの前で、物陰へと走り去る刑の背中が見えた。
●
ぜえぜえと息をして「大きな仲間が居て助かったー」と朔之助が息を吐く。
生き残るのは盾(ではなく、仲間の援護と朔之助は云う)役ではなく、利口な人間で良い。
「特攻隊長はガンガン行くわ。杠だろうが櫂だろうが、前に立つ敵は退治してやる」
なァ、小鳥遊――その言葉にびくりと体を揺らした葵が「やばい」と本能的に察知する。
嵐達も冬崖を『危険因子』と認識しているのだろう。狙いを決め、囮役の冬崖と攻撃手の朔之助を打倒せんと虎視眈々に狙いを定める。
「俺の犠牲を無駄にしやがったら陰条路、タダじゃおかねぇ……」
「こ、怖いんだが!?」
敵も味方も恐怖しかない。ひょこりと顔を出せば、柔らかな笑みを浮かべた櫂が戦意を滾らせる冬崖を見た後に目を伏せる。
「クラブの仲間だろうと彼氏だろうと今は敵よ」
囮として派遣された葵のヒエラルキーの低さも悲しいが、冬崖の戦意も恐怖そのもの。
隠れ、そして動き続ける朔之助を探す葵の行動を十分に把握しているのだろう――くるりと体を逸らした葵へと猪突猛進する冬崖の姿。
ぱしゃり、と音を立て、水を被った葵の屍を踏みこめて「くっ、葵の仇……!」と嵐が声を上げた。
水風船を握りしめ、芝居がかった言葉とと共に冬崖をノックダウンせんと狙う嵐は、第二の囮となった櫂の背を追い掛ける。
「ふふ、逃がさないわよ……? 私は白い死神、伝説のスナイパーという所かしらね?」
盛大にぶちまけられた水風船。雨の様に降り注ぐ其れに冬崖が倒れ、その身を曝した朔之助へと二人の悪魔(おんな)は襲い掛かったのだった。
(「一発必中一撃必殺……決めの一撃は外さないが矜持……」)
普段の戦闘態度と何の代わりもない、砲撃手は井の頭キャンパス中学3年I組の面々と共闘する。
対するのはノイン隊長が率いる武蔵坂キャンパス2年E組の面々だ。
銃撃戦には変わりないと小柄な体を生かし、障害物へと隠れながら狙うアリスから避ける様に華織が息を潜める。
「本来このようなゲリラ作戦は本意ではないが、寡兵にて頂点に立つには必要な戦略!」
乃麻とアリスがノインの声にこくりと頷く。銃撃戦には慣れたノインでも混乱する戦線は脅威だ。
二人の援護を信頼し、攻撃を集めながら避けるというノインの戦術に負けてはいられないと七波が地面を蹴った。
「射程距離が短い? 接近するまで当たらなければどうという事はありませんよ!」
「ん、逃がさないよ」
流石は双子。抜群のコンビネーションで華織や星流をサポートする。前線を爆撃する星流に続き、こまめな攻撃を繰り出す華織は乃麻へと狙いを絞る。
「隊長! やるからには勝ちに行くでー!」
水風船での爆撃で、「きゃ」と悲鳴を上げた華織を援護するように星流が飛び出してゆく。
友達と一緒なら楽しいと微笑む乃麻の陽動に、ここだとばかりにノインが一撃を放つ。
「……ノイン……乃麻……勝つともっと楽しいから……油断せずにいくの……」
アリスの一声に隊長はやる気を出し、飛び交う水を走り抜ける。
強敵の双子により、隊長の命の灯火が消えた事に、アリスと乃麻は負けじと応戦する。
水風船を使用して、陽動し、その隙に死角へと回り込む――そう、此処には負けられない闘いがある!
●
映画に出てくる暗殺者気分で、ターゲットへと狙いを絞った春陽の肩にぽん、と手を乗せた月人はこっそりと「春陽が囮になってる内に範囲攻撃で撃墜する」と告げた。
暫くして、水も切れた。囮、ならば!
「きゃ~~~っ、いっけな~~い。補給しなきゃ☆」
離れた位置から見つめていた月人にとって春陽のそれは異様な光景だった。
終盤に差し掛かればもはや脚が棒になる。へろへろだよ、と月人へと手を伸ばし甘える春陽に月人は無性に恥ずかしいと小さなため息をついた。
「月人さーん、おんぶして」
一方で、思い出屋さん『夢の里』の夢の収集の為にペア参加をしている聖也とカーリーも窮地に陥っていた。
二人で背中を護り連携をする――が、「わわ! 前から相手がきたです!」と聖也が慌てた声を上げる。
グラウンドの土が泥濘だし、障害物へと滑りこもうと全力疾走する聖也にカーリーは続く。
「仮夢乃さん、がんばろー!」
たわわな胸を揺らすカーリーは『目指すは一位』を掲げている。ハンドガンを両の手に握りしめ、周囲を相手取るカーリーの背にとすんとぶつかった聖也が「ひええ」と怯えた様に声を上げた。
「ビショビショになってしまったのです……」
相対して「ラッキーですね」と唇に弧を描く悠花はバズーカで兎に角相手を蹴散らす戦法に立って居た。
死なばもろとも、全員を道連れにする様に雨の様に水が降り注ぐ。
爆弾を投げ込む悠花の隙を付かんとライフルを手に佐祐理が滑り込んでゆく。
長い髪を揺らし、給水と爆弾の隙を狙った彼女が地面を蹴り、障害物から顔を出して長距離で狙う。
ぴしゃりと音を立て悠花を撃墜した後、逃げ出さんと両の脚へと力を込めた。
「逃がさないのです!」
朋恵の声にびくりと佐祐理が肩を揺らす。連合フィールドからひょこりと顔を出し、相対する彼女を狙わんとする朋恵は背後から真鶴の応援と『報告』を受けている。
「真鶴さん、背後は任せました!」
重たい水鉄砲を所持している為か、攻撃一つを打つにも一苦労。全力でバラまく水に、ゼッケンを狙う為に近寄る相手にはお見舞いする様に水風船を投げ入れた。
水風船がぱしゃりと障害物に当たる。慌てて息を潜めた詩織は、見慣れた背中を見つけ、地面を強く蹴る。
「ゼッケン狙ってないだろ!?」
降り注ぐ水に慌てる明浩の声にくつくつと笑った詩織が走り出す。遠慮せずにと笑った声を振り払い、走る明浩へと自分さえも巻き込んで詩織が水風船を投げた。
「下着が透けてしまうのはご一興ってことですねぃ」
その様子を眺め、水の恐怖を感じた千川キャンパス高校3年3組の面々も連携しつつ、その数を減らしてしまっていた。
残りの弾に気を使いながら美冬は「敵が居なくても続く、ばとるとわいやるです?」と首を傾いだ。
中々に、敵の数も減り続ける。味方も敵になりうる戦場なのだ。
背中を護る為に決死の覚悟で挑んでいた美優は応援席から「がんばってください! 千川キャンパスさんのさーん!!」とクラス名を叫んでいる。
体を盾にし、得意では無い運動でも友人を護るべく戦った彼女の勇士に背中を押されながら菖蒲が混戦状態の中央にライフルを放つ。
「……僕の屍を越えていけ……」
「ゆきのしたの屍を越えながら!」
物理的にぎゅむぎゅむとし、死亡フラグを立てるれん夏は「この闘いが終わったら結婚する予定だったんだぞ」と非難の声を上げ続ける。
「ちょっ、な、仲間攻撃しちゃダメー!?」
慌てる小唄の声を振り払い「俺の後ろに立つな!」とれん夏がスタンドプレーを開始する。
非難の声をあげた小唄から視線を逸らし藍凛は、敵を討ち取るれん夏の護衛役の様に首を振った。
ライフルを手に菖蒲がれん夏から逃げなくてはいけなくなったのは、此処だけの話しだ。
武器は小回りの良さと、息を潜めるファムは障害物を乗り越え『元寺子屋』の面々へと視線を送る。
「いっくよー! チノリはアタシにアリー!」
年上だから、ファムには負けないと誓うサンディを狙う強襲。
その隙にリュータも水風船を手に走り込む。上から降るシャワー日本朗されないようにハンドガンから水を打つ。
「水を掛ければいいんだな?」
へらりと笑うリュータの声に二人が揃って振り向く。力いっぱい水風船を放り投げ、自分さえも巻き込む勢いで破裂する風船に「きゃー!?」とサンディが慌てる。
「うぅ、ぐやじー!」
「んぁ? あれ? 当たったらダメなのか?」
首を傾げたリュータにぷくりと頬を膨らめたファムとサンディは拗ねた顔で小さく息をついた。
あんまり見ちゃ駄目、と濡れた服を見せないようにリュータに水鉄砲をぐいぐいと押しつけるお年頃なサンディなのであった。
周囲の連携も崩れ始め、混戦状態では仲間が何処にいるのかも検討が付かない。
悠仁は出来得る限り安全地帯へ向かおうとハンドガンを手に走り出した。
相手の水が不足すれば隙が出来る。それを狙う様に、周辺のクラス連合を狙う悠仁を襲う影が一つ。
大学進学を目前にし、この面子は最後だろうかと小さく唇に笑みを浮かべる武流とダンスアクションを繰り広げる奏音は「芸術発表会みたいに、アゲていくわよ!」と笑みを零す。
奏音の個性的な水鉄砲さばきに合わせて武流は善戦した。悔いが残らぬ様に遊ぶよ、と笑みを零し、二人のコンビネーションをちらりと見つめたあるなはスナイパーとして、彼らを狙う悠仁を狙撃する。
「MVP狙っちゃうよ☆」
勿論、MVPを狙うのは当たり前だ。あるなも奏音も武流もMVPを狙い、善戦する。
相手を逃さずきっちりと狙う吉祥寺3-4の面々は個性的なパフォーマンスで相手を倒す事により尽力していた。
一方で、凄まじい勢いで蹴散らす二人が吉祥寺3-4の面々と相対する事となる。
悠がコロナにスペック確認と題して打ち出した水に彼女は柔らかに笑みを浮かべていた。
的がいると反撃され、競技前から水に濡れていた二人は、そこから決死の戦いを見せた。
「命拾いしたな! お前を倒すのは最後にしてやるぜ!」
その言葉の通り、二人はどうしたものか『手を組んでいた』。コロナの死角から顔を出し、狙われぬ様にと相手を撃つ。
悠のプレースタイルに合わせて、バズーカのリロード中に小回りの利くコロナが攻撃を続ける。
しかし、それも長くは続かない。勝負が決しそうにない、最後になればガチバトルをしようと悠はコロナへと告げた。
「最後に倒すと言ったな? あれは嘘だよ」
ぴゅー、と音を立ててその機会を無くしたコロナは意地の悪い笑みを浮かべていた。
地面を蹴り、最初に武流と奏音を狙ったコロナは最後に残ったスナイパーあるなを狙う。
慌ててライフルの位置を変えようと障害物に隠れようとした隙をついて、コロナは唇に笑みを浮かべた。
「隙あり!」
――そして、最後に残ったのは身内を討ち取ったコロナなのだった。
作者:菖蒲 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年6月5日
難度:簡単
参加:67人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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