彷徨えるあべかわモッチアに救済を

    作者:聖山葵

    「えーっと、これで全員かな?」
     集まった君達を見回した、矢矧・小笠(蒼穹翔ける天狗少女・d28354)は少しだけ緊張に強張った顔をすると、闇堕ちしかけている女の子を助けて欲しいんですっと告げた。
    「……詳しくお話を聞かせて貰えますか?」
    「は、はい。あれは確か――」
     倉槌・緋那(大学生ダンピール・dn0005)に促され語り始めた小笠曰く、一般人が闇堕ちしてダークネスになろうとしてるところを目撃したと言うことらしい。
    「お餅のご当地怪人と言うことは……以前はるひさんが言ってらした闇もちぃというものかもしれませんね」
     餅はあべかわ餅。自分がダークネスの外見となったことも分からないのか、不思議そうな顔で目撃した小笠の前から去っていったのだとか。
    「まだ遠くには行ってないと思いますし」
     いまだ人の意識を残しているように見受けられるフシがあった為、闇もちぃから救出出来る可能性は残されてると思われる。
    「では、目撃地点から件の少女が去った方角を捜索。発見した場合、説得もしくは説得しつつ戦闘という流れですね?」
    「そうですねっ、ちゃんとお話しすればきっと――」
     闇もちぃした一般人と接触した時、人の意識に呼びかけることで説得が成功すれば弱体化させることが出来る。闇もちぃ一般人を救出するには戦ってKOする必要がある為、戦闘事態は避けられない。小笠の見た少女を救う為にも、試してみる価値はあるだろう。
    「それで、他に情報はありますか?」
    「んー……さすがにどんな攻撃をしてくるかは分からないけど、ご当地ヒーローのサイキックに似たものは使えるかも」
     緋那が問えば少し唸った小笠はそう答え。
    「あとは、きな粉?」
    「きな粉?」
    「服も何も着てなくて、ただ身体にきな粉を振りかけただけみたいな格好だったから……」
     最後に投げたのは、とんでもない爆弾だった。
    「それは……早く助けないと行けませんね」
     ついでに着替えとかも用意して行くべきなのかも知れない。いろんな意味で放置しておけない状況の為、君達は準備を整えるとすぐさま現地へ向かうのだった。


    参加者
    ミルドレッド・ウェルズ(吸血殲姫・d01019)
    崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)
    水無月・詩乃(汎用決戦型大和撫子・d25132)
    百合ヶ丘・リィザ(水面の月に手を伸ばし・d27789)
    矢矧・小笠(蒼穹翔ける天狗少女・d28354)
    朝臣・姫華(姫番長・d30695)
    庭・瞳子(フレイムドッグ・d31577)
    新堂・アンジェラ(業火の魔法つかい・d35803)

    ■リプレイ

    ●そりゃ、ね
    「まずはあべかわモッチアを探さなきゃね」
     目撃地点まで辿り着き、最初に口を開いた新堂・アンジェラ(業火の魔法つかい・d35803)の言葉にそうだねと頷いたのは、ミルドレッド・ウェルズ(吸血殲姫・d01019)だった。
    「モッチアかー。桜餅の人とか良く知ってるけど、やっぱりあんな感じなのかなぁ……」
     パンツ丸出しで悲鳴をあげる誰かのイメージを空に浮かべたのは、きっと持たざる者の僻みとかではない、きっと、おそらくは。
    「ねえ、姫様。安倍川もちってどんなおもちか、知ってますか?」
    「あべかわ餅……? 小笠よ、妾の為に詳しく説明してくれてもよいぞ」
     問う矢矧・小笠(蒼穹翔ける天狗少女・d28354)へ首をこてんと横に傾げた朝臣・姫華(姫番長・d30695)は答えを促し。
    「もともとは、時の将軍様に『金な粉もち』として献上された、それはそれは縁起の良いお餅なんですよ。食べたらいいこと、あるかもしれませんねっ」
    「ふむふむ、縁起が良いのか。何やら良いことがあるといいがの」
     説明に感心しつつポツリと漏らした姫華がどことなく偉そうにしつつも約一名を避けるのは、その一名が掌へ爪が食い込んで血が滲みそうな程強く握りしめつつ、ぐぎぎと呻いているからか。
    「餅だからって、そんなぷるぷる揺らして……」
    「ミルドレッド様、その、落ち着いて?」
    「え? あ、ごめん。んと、そろそろ行こっか?」
     宥められ、正気に返ったミルドレッドは百合ヶ丘・リィザ(水面の月に手を伸ばし・d27789)へと頭を下げると周囲を見回し。
    「そうね。色々大変なのは聞いてるし」
     同意した庭・瞳子(フレイムドッグ・d31577)は眼光鋭い目を微かに伏せてまだ見ぬ闇もちぃ少女へ同情を示して見せた。
    「では、百合ちゃん。わたくし達も」
    「ええ、水無ちゃん。参りましょう」
     頷き合った水無月・詩乃(汎用決戦型大和撫子・d25132)とリィザも歩き出し。
    「いよいよ、ですね」
    「まぁ予知が効いてないから、まずは目撃証言を集めるところから始めるしかないのだけれど」
     倉槌・緋那(大学生ダンピール・dn0005)の言葉へ何とかなるんじゃないかしらと楽観的に応じたアンジェラは周囲を見回し。
    「あ、とりあえず、あの人に聞いてみない?」
     視界に入った通行人を示して仲間に聞き。
    「見つけたぞ! おぬしじゃな?」
    「……もちぃ?」
    「割とあっさり見つかりましたね」
     発見に至ったのはそれから数分後。聞き込み人数は片手の指にも満たなかった。
    「う、うん、何というか……モッチアの格好の酷さは知ってるつもりだったけど。今回の場合は特に、うん」
    「……何か御用もちぃ?」
     思わず崇田・來鯉(ニシキゴイキッド・d16213)が視線を逸らしてしまう中、全裸にきな粉をまぶしただけのご当地怪人は不思議そうに一行を見つめる。それが、一同とご当地怪人あべかわモッチアの出会いだった。

    ●話をしよう
    「一緒に食べない?」
    「いただきますもちぃ!」
     首から下は出来るだけ見ないようにしつつ來鯉があべかわ餅と水出し緑茶を差し出せば、脊髄反射かと疑う程の早さで餅は受け取られた。
    「餅だからって、そんなぷるぷる揺らして……ぐぎぎ」
     その躍動感溢れる反応で大きく揺れたあべかわ餅(比喩表現)を見て血の涙さえ流さんとするのは、ミルドレッド。
    「ミルドレッド様……」
    「そっとしておきましょう、百合ちゃん」
    「……そうですわね、水無ちゃん。でしたら……」
     明らかに普通でないお友達の姿を見て声をかけようとしたリィザは、頭を振る詩乃の言葉に同意すると、視線をあべかわモッチアへと向けた。
    「安倍川餅、お好きですか?」
    「大ふひもちぃ! 大好物もひぃっ!」
     先に声をかけたのは、詩乃。既に口に餅を入れつつご当地怪人はこれに応え。
    「今の内ね」
     すかさずアンジェラはESPのサウンドシャッターを行使する。これ、戦場内の音を遮断するESPなので、戦いが始まらないとなんの効果もなかったりするが、それはそれ。教育上よろしくない声などを遮断するというわけではないらしいので、きっと大丈夫なのだろう。
    「よければ色々教えていただきたいですね。闇に堕ちてしまうほどに焦がれる魅力、如何程のものなのでしょう?」
    「ふぁふぃひほひふ?」
     そのまま話を本題へとが持っていこうとすれば、あべかわもっちあは口をもごもごさせたまま、おそらくオウム返しに問い。
    「きなこさん、落ち着いてください。私たちは味方です! それに、慌てなくても誰もとりませんから!」
    「んく、本当もちぃ? さっきそこの人、涎を啜ってたもちぃよ?」
     小笠が宥める中、あべかわモッチアはアンジェラを示す。
    「大丈夫、あべかわ餅は持参してるわ」
    「そう、もちぃ? ならいいもちぃね。それで、御用時は何だったもちぃ?」
     だが、指摘されたアンジェラは動じず持っていたお餅を見せ、すんなり納得したご当地怪人が尋ねる。まさにそれは渡りに船だった。
    「それを話すにもまず、こちらの説明を聞いて貰う必要があるのじゃ」
    「あなたは今、欲望とかの人間の闇に飲み込まれそうになっているわ。それを闇堕ちと言うのだけど――」
     姫華の言葉を継ぎ、瞳子がご当地怪人の現在置かれている状況を説明しだし。
    「闇もちぃ、もちか」
    「ええ。何が不満だったのやら存じませんが……」
    「そもそも、何故闇もちぃしたのかな?」
     自らの身に起こっている現象の名を反芻するあべかわモッチアへリィザが首を縦に振りつつ、説得を続けようとすれば、ミルドレッドは演算と言うバックアップがないが故に不明だった理由に触れ。
    「そう。其れにしても何で堕ちたり、きな粉餅と混同されて同じだろとか言われたとか?」
    「何か悩みはある? 悩みがあれば相談に乗れるかもしれないし」
     來鯉が便乗すれば、アンジェラも加わり、増えた問いを前にご当地怪人は言った、覚えてないもちぃ、と。
    「覚えてない?」
    「何か、凄く悲しいことがあったような気がするもちぃ、けど、はっきりと思い出せないもちぃ」
    「思ったより重症ですね……」
     あまりにも酷い出来事であったが故に、記憶からシャットアウトされたのか。思わぬ展開に誰かがポツリと漏らし。
    「ともあれ、闇もちぃじゃったか? それは色んな意味で危険なのじゃ。のぅ、小笠、部長殿?」
    「はいっ! そんな黄な粉まみれだと、べたべたして大変ですよっ!」
    「そうですね。闇落ちは――」
     姫華が話を振れば、小笠はコクコクとリィザは頷いた後、何かを思い出すように少し遠い目をし、両者揃って姫華の主張を肯定する。
    「ふぅん、危険もちぃか」
    「ええ、そのままだと、自我を完全に失い、人に迷惑をかけるだけの存在になるわ」
    「ただ、助けるには戦って、ね……」
     一度はKOしなくてはいけないことも瞳子の言葉に続いたアンジェラが伝え。
    「……ナゼ、邪魔ヲスルモチィ」
     今までとは違うトーンの声がご当地怪人の口から漏れたのは、その直後。
    「百合ちゃん、ご注意を」
     いつの間にか俯き、髪に隠れ敵意に光るあべかわモッチアの目に気づいた詩乃がリィザに警告し。
    「ロゥ、ルゥ、狩りの時間よ」
     瞳子がスレイヤーカードの封印を解けば、霊犬のロゥが現れると同時に瞳子の影の端が犬の尾のように振れる。
    「話が纏まるより早くダークネスの方が出てくる何てね」
    「コレ以上、邪魔ハサセナイモチィ! キナコハ何モ思イ出セズ、コノママ消エテユクモチィィッ!」
    「へぇ……」
     ご当地怪人の言動よりも無駄に揺れたもっちあ(名詞)に咎人の大鎌を構えたミルドレッドのこめかみがヒクヒクし。
    「モチャアアアアッ」
     次の瞬間、悲鳴と一緒に結構な量のきな粉が散った。まぁ、仕方ないのかも知れない、ティアーズリッパーだもの。

    ●修羅一名入りまーす
    「服破りで胸を狙うのはわざとじゃないよ?」
     そんな事を言われて誰が信じると即座にツッコミが入りそうな程、容赦なく剥がされたのは胸部のきな粉だった。
    「ミ、ミルドレッドさ」
    「ただ、バランスは良くしないとね?」
    「モッチャアアアアアアッー」
     しかも、リィザが声をかけようとしたところで、ミルドレッドはもう一度大鎌を振るった。こう、憎しみが何かを超越して再行動へ至らせたのだろう。情け容赦ない光景が繰り広げられ。
    「百合ちゃん?」
    「あ、そうでしたね。参りましょう」
     和傘持つ手に雷を宿した詩乃の声で我に返ったリィザは、拳を握り締めると惨劇の犠牲者目掛けて地を蹴る。
    「グギギ、酷モケミョ」
     鍛え抜かれた拳が呻き声を漏らしつつ起きあがろうとしていたあべかわモッチアへめり込み。
    「水無ちゃん」
    「少々、きな粉が飛び散り過ぎですね」
     読んで振り向けば、和傘を開いて器用にきな粉を弾いた詩乃の姿は、リィザのすぐ後ろ。
    「モチョモ゛ッ」
    「小笠様っ」
    「攻撃は……任せたわ」
     形容しがたい悲鳴と共に雷が爆ぜ、名を呼ばれた小笠が動き出すよりも早く、瞳子が自分の魂の奥底へ眠るダークネスの力を流し込んだ。
    「はいっ、お任せ下されっ!」
    「モヂャアアアッ」
     振り上げた偽・天狗の錫杖が落ちかかり、殴られたあべかわモッチアへ掃射されるは、ライドキャリバーのブラスに備え付けられた機銃。
    「小笠よご苦労。満を持して妾の出番じゃな、行けぃっ!」
     フルボッコにされ始めているご当地怪人を見据え、姫華は紅白帯を射出する。
    「ガウッ」
     帯に併走するは斬魔刀をくわえたロゥ。
    「アンジェラも続くべきよね」
     仲間達の攻勢を見て龍砕斧を手にアンジェラも走り出し。
    「これで切り裂いてやるわ!」
    「モヂャアアア゛ッ」
    「あら、意外と美味しいわね」
     上がる悲鳴の中、手にした殲術道具で龍の骨をも叩き斬る強烈な斧の一撃を繰り出したアンジェラは顔に散ったきな粉を舐めると、そう評した。とは言っても、見舞った一撃が龍骨斬りだったのは、単に威力を考えてのこと、お腹が減ったから意図して服破りしたなんて事は無いだろう。
    「ヒイッ、ヤメルモチィ、ク、クルナーッ」
     もっとも、ご当地怪人はきな粉の剥がれた場所を隠しつつ誰の目にも明らかな程怯えていたが。
    「うん、相手がモッチアだってことは分かっていたつもりだけど……うん」
     格好の酷さは理解していたが、犯罪臭しかしない戦いが起こることになるというのは、予想外だったのか、それとも予想したより酷かったのか。
    「一緒に食べながら安倍川もちは確かに美味しいけど、一番美味しいのはさっきみたいに皆でワイワイ楽しく食べる時じゃないか? 闇堕ちしきってしまったら、こうして食べたりする事は出来なくなるんだよ?」
     どことなく申し訳なさそうな表情で説得の言葉をかけた來鯉はだから戻ってこようと続けつつ、軍刀と錨を模した槍を握り締め、距離を詰める。
    「ア、モヂャアア゛ッー」
    「わうっ」
     捻りをくわえて突き出された穂先はご当地怪人の体躯を貫き、百舌の早贄の如く縫い止められたあべかわもっちあ目掛け霊犬のミッキーが六文銭を射出する。そして存在を思い出させるかのように出現した緋那の逆十字がご当地怪人を引き裂く。
    「モヂャバッ」
     追加の悲鳴が漏れた。
    「ウクッ、モチィ……ヨクモ、ヨクモヤッテクレタモチィナ」
     更に戦闘は続き、傷をあちこちに増やしながらよたよたと身を起こしたご当地怪人は、何故かとミルドレッドとアンジェラから視線を外しつつ灼滅者達を睨む。尚、描写が省略されたのはとても見せられないような光景だったからではないと信じたい。
    「ちゃんとお洋服着て、普通の生活に戻るのであるっ! 一緒に楽しく学生生活を送った方が、ずっとずっと楽しいのであるぞっ!」
     だが、睨まれつつも天狗の演技をする小笠は動じず声をかけ。
    「そうですわ。……お餅好きの同士なら、うちに来ればたくさんいるみたいですよ。気の合う皆様とお話しするのは……とても、楽しいです」
     友人の言葉を肯定し、苦笑しながら回りを見て話すリィザの言葉へ短い沈黙がサンドイッチされていたようなな気もするが、きっと気のせいだろう。
    「ともあれ、そろそろきなこさんを返して頂きます」
    「ヤレルモノナラ、ヤッテミルモチィィィ!」
     言葉に激昂したのか袋叩きにされて鬱憤がたまっていたのか、叫ぶなりご当地怪人が駆け出せば、リィザもまたエアシューズを駆る。
    「たあっ」
    「喰ラ――」
    「百合ちゃん」
     両者が共に地を蹴り、跳び蹴りの姿勢で交差しようとする寸前、高速で回り込んでいた詩乃がご当地怪人の出現する。
    「モッチャバビャッ」
     言葉を発する間はなかった、だが意図は互いに理解した。空中で斬撃と蹴撃に挟み打ちされたあべかわモッチアは悲鳴を残してたたき落とされ。
    「ロゥ、ルゥ、行って!」
    「ガウウウッ」
    「ヒ、ガッ、ヤメ、モチャ、バ」
    「小笠様、いまっ!」
     何か落ちたところを嗾けられた瞳子の犬達に集られて酷い有様になってることはスルーし、リィザが振り返る。
    「はいっ!」
     お膳立てはされたのだ。
    「必ず決めてくるのだぞ、小笠よ!」
     姫華も声援を送って見守る中、ご当地キックはモザイクが必要そうなご当地怪人へ炸裂し。
    「モウ、イヤ……モチィ」
     ポテッと倒れたあべかわモッチアは少女の姿へと戻り始めたのだった。

    ●夢というか、なんというか
    「きなこ、何だか怖い夢を見ていたっぽい」
     意識を取り戻した少女の第一声に、誰かがさっと顔を背けた。アンジェラはもうこの時点で余ったあべかわ餅を食べ出していた。
    「ま、まぁ。夢なら覚めたので良かろう? それよりも、じゃ……その格好では出歩けまい。きなこまみれになった着物の上一枚、着て行ってもよいぞ。……普通の上着やマントも用意してある。まあ、好きなモノを選ぶと良いぞ」
    「わぁ、素敵な着物」
     もっとも、姫華の努力のお陰で少女の興味は衣服に逸れ。
    「ねぇ、もういい?」
     紳士ならば見ないですよねと問うた詩乃に頷き背を向けていた來鯉が少女に振る舞うつもりの温かいお茶を手にしたまま尋ねる。
    「ぐぎぎ、きな粉がないと更に大きく見えるなんて」
     ただ、答えが返るよりも早く漏れ出た誰かの呟きは、着替え中であることを雄弁に物語り。
    「……ミルドレッド様?」
    「……はっ、つい本音が」
     何とも言えない顔で見られた何かを持たざる本日の修羅は赤面する。
    「とりあえず、これを使って下さい」
    「ありがとう」
     ただ、詩乃もまさか少女のために用意した濡れタオルが修羅の顔を拭くために使うことになるとは思わなかっただろう。尚、少女のきな粉は救出と同時に跡形もなく消滅している。
    「お待たせしましたー。着替え終了っぽい」
     そうこうしてるうちに少女も姫華のお下がりに身を包み、元気に声を上げ。
    「後は、学園への勧誘ですね。それと――」
    「なんだか、見てたら甘いものが食べたくなっちゃいました。皆でお茶でもしませんか?」
     ちらりと向けられた視線に付き合いの深さから、詩乃の言わんとすることを察したのか、リィザは周囲を見回して問えば。
    「お茶? きなこも参加していいっぽい?」
     來鯉から受け取ったお茶を啜っていた少女はがばっと顔を上げて振り返り。
    「おお、部長殿の奢りで食べに行って良いのじゃな。早速縁起のいい餅の効果じゃのう」
    「部長のおごり? わーい♪」
    「みんなでお茶ですかっ! わーい、行きたいっ! 行きたいですっ!」
    「もちろん参加させて頂くけど、ロゥの食べられるものもあるかしら?」
    「大丈夫、アンジェラはまだ食べられるわ」
     更に、あちこちで上がる、声、声、声。
    「えっ奢りって姫様……待っ、この人数、あのあのっ……」
     思わぬ反応というか、何故か自分の奢りしまったことにリィザはテンパるが、どう見ても今更撤回出来そうな雰囲気ではない。まさか最後の最後にこんな窮地が待ち受けていると誰が予想しようか。
    「部長とは大変なものなのですね」
     もう部長の奢りでお茶しに寄り道が確定した空気の中、殆ど空気だった緋那は呆然と佇む本日の犠牲者その二を見て、呟いた。

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年6月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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