花のいろ

    作者:菖蒲

    ●集真藍
     雨が降る。
     湿気たにおいに、すんと鼻を鳴らした鳥辺野・祝(架空線・d23681)は下駄をからんと鳴らして街を往く。
     纏う衣に負けない鮮やかな番傘は雨をはじき、その存在をしかと示すかのようだった。
    「雨だな」
     周囲を見回した祝は誰に言うでもなく状況を鑑みる。
     透明のあめは、何色にも交わる事が無く空が流した無垢な涙と称される事もあった。
     彼女が耳にしたのは雨の季節に鮮やかな花を赤く染めるという殺人鬼。
     紫陽花の傍に現れるその人は『花を愛していた』のだそうだ。
    「紫陽花をあかく、あかく染めるらしい」
     紫陽花は土壌によって色合いを変化させる。酸性ならば青となりアルカリ性ならば赤となると言われているのだそうだ。
    「赤い紫陽花が欲しいって言われてさ、無理だったんだってさ」
     からりと下駄を鳴らして祝は噂話を口にする。

     ――真っ赤な紫陽花がみてみたいんだ。
     ――……なら、ぼくが咲かせてあげるよ。待って居てね。
     
     赤く染まる事のなかった青いはな。自分の手で咲かせたいと願った末路。
    「結局さ、花を赤く染められなかったから自分の手で染めようとしたらしい。
     ……無関係な人を巻きこんで手を掛けて赤く染めた花で誰が喜ぶんだ」
     嫌悪感を滲ませた祝はくるりと振り仰ぐ。
    『紫陽花の殺人鬼』は、死んだ幼馴染の為に妄執に取り憑かれ、誰かの血潮で赤く赤くはなを染め上げる――契約の指輪と昏い影を揺らしながら。
    「誰かを傷つけるなら止めなくちゃいけないよな。私は、そう思うんだ」
     赤く、赤く染め上げた紫陽花を見せたい人はもういないのに。
    「……そういえば、今日は雨なんだな」
     今日は雨が降る。血腥い妄執のはなを救う様に。


    参加者
    鹿野・小太郎(雪冤・d00795)
    椎葉・花色(グッデイトゥダイ・d03099)
    ヴェイグ・アインザッツ(幾千彩色・d10837)
    椋來々・らら(灰被りと論拠・d11316)
    白石・翌檜(持たざる者・d18573)
    大鷹・メロ(メロウビート・d21564)
    鳥辺野・祝(架空線・d23681)
    藤原・漣(とシエロ・d28511)

    ■リプレイ


     雨が降る。悔恨の雨が降り注ぐ。
     君に――君に見せたかった。ぐしゃりと掌で潰れた青いままの花は……。

     ぐちゃり、とぬかるんだ地面を踏み締めながら往く白石・翌檜(持たざる者・d18573)の表情は明るくない。思えば、鳥辺野・祝(架空線・d23681)から齎された『雨の殺人鬼』の情報は奇妙なデジャヴュを感じられずには居られなかった。

     おどりましょーう♪

     この事件へと同行する大鷹・メロ(メロウビート・d21564)が想像を巡らせて発見したレイニーガール。ラストダンスで歌声でなく、血泡を漏らした雨の日の小さないのち。
    「……あんまいい思い出は無いんだけどな」
     誰に言うでもなく零した翌檜を振り仰ぎ、メロは雨の道を踊る様に往く。柔らかな新緑の髪を靡かせ、ラララと唄う様にブーツを鳴らす。
    「相手は六六六人衆。気を付けておかなくっちゃ!」
     彼女の足元で尻尾を振ったフラムが主人のリズムに乗る様に靱やかに尻尾を振る。
     六六六人衆の殺しの定義は曖昧だ。メロの様に『殺しの美学』を持つ殺人鬼が居れば、私利私欲の為にセンスを問う事の無い存在も居る。
     それが悲恋の話しであろうとも、手段を違えた相手に同情は出来ないと椎葉・花色(グッデイトゥダイ・d03099)は曇天を仰いだ。
     作戦参謀(ちちのおおきさ)はDだと周囲に確認して回る祝の言葉に、警戒しながらも集中力を高めていた藤原・漣(とシエロ・d28511)は出鼻が挫かれたと頭を掻いた。
    「意見があります! オレとシエロはメディックで行くっすよ!?」
     漣の言葉に首を傾いだ数名。何とも言えない空気感にがくりと肩を落とさずには居られない。

    『そういえば、椎葉先輩との出会いは饅頭図書館……かな……』
    『そうですね。2014年1月17日の事でした! あの頃の“絶縁体質”は饅頭を頭で受け止めてましたよね』

     重苦しい空気を払拭するように、深夜の教室で交わした会話を繰り返す祝と花色――の音声。
    「どうして録音してるんだ!?」
    「キマシ……かなって……意味はないよ」
     淡々と返した鹿野・小太郎(雪冤・d00795)は小さく欠伸を漏らす。
     紫陽花の前で立つ殺人鬼の姿を認め、周囲との音を隔絶した彼は黒いパーカーをくい、と引いた。
    「……雨だよ」
    「だからどうしたよ? クソヤロウ」
     へらりと唇に笑みを乗せ、妖の槍の切っ先を雨の日の殺人鬼へと向けたヴェイグ・アインザッツ(幾千彩色・d10837)のポケットから『はいばーかわいいぽっけちゃん』という何とも言えぬ禍々しい存在が顔を出す。
    「うわ、どうしてそういうの持ってきちゃうのかな」
     別にいいけど、と椋來々・らら(灰被りと論拠・d11316)が呆れた様にひとつ零し、淡々と夢を大気に乗せてゆく。
    「雨が降るね。でも、何の感傷もないかな。君も私も噛み砕いてごっくんすれば熱さも忘れて目的も無くしてしまうよ」
     戯言でしかないと自嘲して、ららは瞬く。何も言う事はないのだと、紫陽花の隣に立つ青年を眺めながら。


     湿気た空気が孕んだ水滴は、蒼褪めた花へと潤いを齎した。
     紫陽花の殺人鬼は『罠』や『特殊な状況下』を作ること無く花を赤く染めることに傾斜していたのかもしれない。周囲をきょろりと見回して、小太郎が雲間を劈く様に鍔を鳴らす。
    「……オレはコレが得意。お前のポジションは?」
    「策も、ない。殺すだけ……」
     茫とした瞳を小太郎へと向けた青年に、守り全てを任せたと同胞へと背で告げた小太郎が泥濘を蹴る。背を追い掛けて、祝の周囲にきらめく星は、彼女の名と同じことばの帯。
     踊るメロのリズムに合わせて口ずさんだ童謡は弾んでいた。
    「蛇の目でお迎え――♪ 止めに来たよ、殺人鬼」
     先手を打たれぬ様にと警戒した小太郎と祝の合間を抜けるように『血のにおい』に誘われた殺人鬼が影をぐねりとくねらせた。
     標的になった事に感慨もなくららは小さく瞬いて、花色の「プランD発令!」の声音に小さく頷いた。
    「待て。プランDって何だ?」
    「またまたぁ。ヴェイグ君、知らないんですか?
     プランDとは、こう……わたしが……鳥辺野ちゃんの足場となって……」
     後方で周辺確認を怠らずに見回していたヴェイグには理解し難い作戦の発令。聞く耳持たずの六六六人衆もそうだが、素直に受け入れているららや祝の存在には度肝を抜かれる。
    「うん。プランDのDは椎葉先輩のDカップとダイレクトアタックのDだ」
    「そうだね。作戦に沿って行動するよ。椎葉ちゃんの言う事は絶対厳守。OK?」
     からりと鳴る事の無い下駄を救出する花色に祝が一つ付け加える。こくりと淡々と返した吸血種たるららは後方から助走を付けて走り込んだ。
     がん、と、パンプスの爪先が漣の背を蹴り飛ばす。ショールが湿気た空気を雨を孕み重たくなることも気にせずに灰被りは魔法を忘れて「ふぁいと、おー」と焔の蹴りを飛ばす。
    「っ、でっ!? オレはメディックっすよ!?」
    「藤原くん!? きみメディフェでしょ! 隊列乱さないで!」
     憐れな漣をびしりと指差した花色が口角を上げ笑う。六六六人衆の往く道を遮る様に体を滑り込ませ、射線を塞いだ彼女は焔の様に花開く拳で彼を受け止める。
     俄かに聞こえた屑のヒロシ(54)という電子音声を聞かなかったことにして翌檜は複雑な過去(あめのひ)を拭う様に空を仰いだ。
    「よう殺人鬼、いい天気だな。ぶち殺しに来てやったぜ」
    「――花を染めに来てくれてありがとう」
     焦点の合わぬ眸で、影を揺らした六六六人衆の様子に翌檜が気だるげに頭を掻いた。
     虚空を見据えるおとこの影を受け止めてシールドが静かに軋む。闇に傾倒した存在に飲み込まれる分けなど無いと口端は釣り上がった。
    「胸糞悪い事、思い出させやがって」
     ぼそりと呟くその声にメロは花瞼をゆっくりと下ろして息をする。
     仲間のかんばせに彩りを与える芸術家(さつじんき)――笑顔の素敵な殺人鬼の表情は苦痛にゆがむ事がなく、しゃなりしゃなりと動き続ける。
    「雨は憂鬱だねっ。その通りだと思う……! 折角の雨じゃ、お店も開けないし、踊りだって楽しめないよっ!」
     直向きに此方を殺すと言うなれば、メロは迷いなく美学に則り攻撃を受け止め続ける。
     ぞわりと粟立つ背筋に『殺意』を受け止めて、前線の仲間へと激励の如く与えた一つの加護。
    「メディフェなら、回復頼んだよっ!」
    「メディって認めてくれるだけで嬉しいっすよ……!」
     前線で守護の立ち回りをする翌檜とメロから任されたメディック。踏まれた際に「祝ちゃんじゃなくてゴメン」とららに言われ泥塗れだった漣は喜色を浮かべて立ち上がる。
     余りの汚れっぷりにシエロが心配そうに擦り寄る其れを視線で追ってららは嘆息した。
    「失うって怖い?」
    「……」
    「別に、聞いただけだよ」
     ――殺人鬼は、空っぽの心を潤す雨さえ拒絶する様に影と共に踊り狂った。


     凍て付く氷を放ちながらヴェイグは僅かな戦い難さを感じていた。
     相手は『ヒト』だ。年齢もそれほど離れていない――性根が腐っていようが危険因子だとして世間から隔絶された存在であろうが人間は人間だ。
     槍を握りしめた指先に力を込めて小さく舌打ちを漏らした彼はゆっくりと顔を上げた。
    「あーぁめんどくせぇな、人殺しなんてうんざりだぜ。そう思わねぇ?」
    「殺すなんてナンセンスだし……相手も喜ばない……」
     忌避感を隠す様に吐き出したヴェイグの言葉を小太郎が繋げる。
     泥濘に足をとられぬ様に気を配った彼がぐん、と殺人鬼へと接近した。
    『まちぼうけ』の名を持った右小指のミサンガは雨の日に現れた彼とおなじ気持なのだろうかと、淡々とした心の中で駆け巡った想いを唇へと乗せる。
    「花を愛していた。……過去形?」

    「――もう、いないんだ」

     花を愛せど、君を愛せど、届かぬ思いは狂気に変わる。虚空を見据えた瞳に感じた感情の色に赤いとの恋し君を思い返す様に小太郎は息をつく。
    「その人の顔、声、こころ……思い出してみろ」
    「思い、だせない」
     頭を抱え、尚も影と共に苛烈な攻撃を繰り出す殺人鬼の前へと滑りこみ、重い一撃を受け続ける花色は痛みに表情を歪めること無く快活に笑みを零す。
    「思い出せないってんなら、思い出させてやりますよ!
     それに、花を染めた言ってンなら私の炎(ち)を貸してあげましょう――燃えますよ?」
     に、と口角を上げる。バレーのトスを上げる様に前屈みになった花色の腕へと祝が飛び乗る。
     細い腕に力を込めてぐん、と『射出』してみせた花色が「鳥辺野ちゃん射出!」と白い歯を見せ笑みを浮かべた。
     上空から槍で劈かんと降る祝と花色の視線が交わる。きっと、自分が殺人鬼に傷つけられれば焔を流す先輩は起こる事だろうと小さく瞳を細めて祝は彼へと呟いた。
    「お前は、誰にその花を見せたかったの? 待っていたのは誰なんだ」
    「彼女は、」
     ――すきなひとだった。
     噂の中では極悪人の様な存在だった。それが事実かどうか、よく見極めようと翌檜は思案していたのだろう。傷を負えば回復をし、攻撃が来るならば受け止めると守護としての役割を果たして居た彼は僅かに黒い瞳に感情を乗せる。
    「覚えても居ない相手を待ちぼうけして、お前はまだ相手を好きだと言えるのか?」
     幼馴染が死んでしまったというのは気の毒だと彼とて思う。 
     それでも、薄れた記憶の中の幻想を追い求めて他者を巻きこむなど『クソヤロウ』だと僅かな感傷さえも拭ってしまった。
    「――染めれば、彼女が来てくれるんだ……!」
    「うーん、こういうの『狂ってる』っていうんすかねぇ」
     頬を掻き苦笑と共に癒しを与える漣の背後でシエロが怯えた様に震えている。
     六六六人衆を見遣って、メロはゆっくりと目を閉じる。息を整え、声を掛けずとも己の動きを理解する相棒を誘う様に指先を真っ直ぐに伸ばす。
    「恋のリズムはきっと、素敵なものだね。……でも、気紛れな殺人は芸術的じゃないんだよっ」
     誰かの為であれど、人の命は尊いものなのだから。
     爪先に力を込めて、腕を包んだ縛霊手が殺人鬼を殴りつける。殺人者と殺人鬼――メロは前者の人間なのだろう。おにとならない己を鼓舞する様に言葉を発する。
    「あたしに、聞かせてほしいなっ。そのリズム――カツカツ、コツコツ、リズムにあわせて!」


    「紫陽花の色ってのは土地が酸性かアルカリ性かで決まんだよ」
    「……」
    「へえ、花の色って結構移り変わるもんなんすねぇ」
     ヴェイグの言葉に合点が言ったと漣が頷く。彼の眼前にはシエロ。
     少し真面目な態度のシエロの鼓舞する様に小さく尻尾を振ったフラムが攻撃を受けとめる。
     後方で癒しを送った漣(背中は泥塗れ)の背を蹴り飛ばし、再度上空からの攻撃を行った祝に続き、ららももう一度だと蹴り飛ばす。
    「こういう作戦だもんね?」
    「ちょっとオレ、再起不能になりそうっすけど」
     ぶつぶつと呟く漣の様子に小さく笑った花色が我武者羅に攻撃を仕掛ける――分散したお陰で灼滅者の被害は大きくないが六六六人衆は傷だらけだ――男へと向き直る。
    「お綺麗な指輪ですね、それ」
     貰いものですか、と笑みを零し、花色が紫陽花へと気を配りながら焔を流す。
     鮮やかな赤よりもなお、赫い焔を拭って彼女が瞬くその合間に六六六人衆が飛び込んだ。
     タン――と。
     踊る様に受け止めてメロがスカートを持ち上げる。
    「大鷹ちゃんっフラムっ、ナイスガード!」
    「先生に怪我をされちゃ堪らないからっ!」
     冗句めかして笑ったメロは六六六人衆の消耗が大きい事に気がついた。
     彼は、一般人を殺し続けて摩耗したこころが壊れてしまったのだろう。鮮やかな赤い華を目指した事が『血に飢えた殺人』を起こしたというならば。
    「可哀想――とは言ってやれねぇな」
     ぼそりと呟いた翌檜の言葉にららは小さく頷いた。
     何の感情も生まれない。正義感も持ち合わせない。只、大切な人の敵だから。
     そう口にしたならば彼女は魔法が解けた事を厭でも感じる事だろう。
    「あかいね、とっても。その色も、すぐに黒に変わってしまうのにね。
     ねえ、見せたかった花はほんとうに其れだったの?」
     こてりと。面影が頭を擡げる。
     返り血と、彼の血で染まった紫陽花は酸素に触れて赤黒く染まってゆく。
     雨に流され消える物でも汚れた花は美しいとはいえないものだった。
     ららの言葉に殺人鬼は唇を噛み締める。そうしている事が彼の最期の砦だった――こころが崩れ去ると共にけたたましい笑みを零して青年は灼滅者へと襲い来る。
     翌檜が受け止めて、小太郎がそれに続き六六六人衆を殴りつける。
    「ひっひひ――」
    「思った通り、何の罪の意識にも囚われない相手だ」
     毒吐く翌檜の脳裏に過ぎった幼い少女。雨の幻影に囚われぬ様にと攻撃を受けとめて、赤い血がぱたりぱたりと散らばった。
    「花のいろの話しの続きだ。人間の血は弱アルカリ性だ。
     派手にぶちまけてくれ、そうすりゃ来年はここら一帯赤い紫陽花が咲くぜ」
     言葉とは裏腹に武器を握った掌は僅かな拒絶を見せていた。その手が、人を殺す事を拒絶しているのかもしれない。
     軽口に毒を乗せてヴェイグは槍の穂先を殺人鬼へと向ける。戦うだけならば何時もの通りだ。模擬戦だって幾度もこなしてきた筈だ――それなのに、足は竦みかける。
    「ヴェイグ先輩」
     ららの声に、はっと意識を戻したヴェイグの口角が上がる。
     回復手として奔走する漣がぽん、と彼の肩を叩き「お互い苦労するってことっすね!」と明朗に笑っている。
    「俺はメディフェじゃねぇからな」
    「っ!?」
     軽く返したヴェイグが小細工なしに真っ正面に蹴撃を放った彼と立ち替わる様に翌檜が前進する。
     六六六人衆――相手は、強敵だとよくよく理解していた。翌檜の頬へと散った赤い血液を拭い、彼は紫菫の花束をぐしゃりと握る。
     哀悼――藍を悼んだそれは泡沫の永遠だった。
     名も知らぬ『殺人鬼』が望んだ嘘に塗れた世界のつくり。
    「何しても許される訳じゃないんだぜ」
     青年の身体を後退させる。紫陽花を傷つけぬ様にと気配った小太郎は翌檜の背後からぬ、と顔を出して褪せた髪先を雨に濡らした。
    「お前の血で染めようなんて思うなよ。なにもかも洗い流して逝きな」
     強く、その胸を貫いた影の遺骸。彼は、もう動くことはないだろう。
     ひゅうと咽喉から漏れた息の音が微かないのちを感じさせる。
    「なぁ……名前は?」
    「あお、い……」
     ぽそりと呟かれた声にそうか、とだけ返して祝は降る雨に小さく震える。
    「風邪、引くっすよ。……帰り、皆でファミレスとどうっすかね」
     そっと漣から差し出された傘を受け取って、女性陣が身を寄せる。
     泡沫の様に消えていくだろうひとつのいのち。
     胸から引き抜いた影の刃。べしゃり、と花を赤く染め上げて。
     雨に流されてゆく花を見詰め小太郎はフードを指先で弄った。
    「……ちょっと、冷えますね……」
     今日は、雨が降る。

    作者:菖蒲 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年6月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ