歌って、踊って、楽しもう!

    ●沖縄の海上・岩礁の上
    「みんな、ようこそ! 僕達のライブに! さあ、聞いて! 僕達の歌声を! さあ、見て! 僕達のダンスを!」
     十分にスペースがある岩礁の上で、美少年の姿をした淫魔達が、魅惑的な歌声を響かせ、淫靡なダンスを踊っていた。
    「キャアアアアアアア、淫魔サマァ!」
     巨乳の女性が大きな胸を揺らしながら、興奮した様子で叫ぶ。
    「サイコー! こっちを見てェ!」
     眼鏡を掛けた女性も、瞳をキラキラ輝かせ、淫魔にラブコールを送る。
     他の女性達も淫魔に夢中!
     それ以外の事を考える事が出来ないほど興奮しており、まわりがまったく見えていないようだった。
     しかも、女性達の姿が次々と半魚人に変わっていき、歓声はいつしか、ケモノの唸り声に変わっていた。

    ●依頼
    「サイキック・リベレイターを使用した事で、大淫魔サイレーンの力が活性化しているのが確認されています。その事件の一つとして、サイレーン配下の淫魔達が、一般人を集めて、半魚人のような不気味な姿をした配下に変えてしまうという事件が発生するようです。灼滅者が現場に到着した時点で、集まった一般人は変化を始めていません。しかし、淫魔を灼滅者が攻撃しようとすると、淫魔を守るため、半魚人のような姿に変化し、戦闘に加わってしまいます。これを阻止するには、淫魔に対抗して歌や踊りによって、一般人達に訴えかける必要があります。歌や踊りの分野で淫魔と対抗するのは難しいかもしれませんが、うまくすれば、一般人が配下となる事無く、有利に戦闘を行う事が出来るかもしれません。ただし、半魚人化した一般人は淫魔を灼滅しても救出する事は出来ません。残念ながら、半魚人化してしまえば、灼滅する以外に方法は無いでしょう」
     エクスブレインからの依頼はこうだった。
    「淫魔達の数は3体。リーダー格の淫魔は真っ赤な服を着た熱血タイプで、歌声によって女性達を魅了し、青い服を着たクール系眼鏡キャラ淫魔は、華麗なダンスによって、女性達を虜にしています。また黄色い服を着たショタ系お調子者淫魔は、可愛さ全開で、女性達のハートをキュンとさせているようです。魅了された女性達は彼らを命懸けで守ろうとするので注意しておきましょう」
     話を聞く限り、彼女達の戦闘力は低めのようだが、邪魔をされないようにするため、気絶させておく必要があるだろう。
    「ただし、半魚人化した一般人を救う事は出来ません。それだけは忘れず、覚悟を決めて依頼に参加してください」
     そう言ってエクスブレインが、灼滅者達に淫魔を依頼した。


    参加者
    伝皇・雪華(冰雷獣・d01036)
    峰・清香(高校生ファイアブラッド・d01705)
    戸森・若葉(のんびり戦巫女・d06049)
    竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)
    秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451)
    富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)
    ローラ・トニック(魔法少女ローライズ・d21365)
    宮中・紫那乃(グッドフェイス・d21880)

    ■リプレイ

    ●沖縄の海上
    「歌だけで人を眷属にするとは……。ひょっとして、サイレーンも同じ能力を持っているんでしょうか?」
     富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057)は仲間達と共にボートを借り、美少年の姿をした淫魔達がいる岩礁に向かっていた。
     淫魔達はアイドル風で歌とダンスで女性達を魅了し、異形の存在……半魚人に変えようとしているようだ。
    「……こういう能力をもった淫魔には覚えがあります……が……。明らかにその淫魔とは違うので……、女性としては今回の行動は許せませんっ!!」
     戸森・若葉(のんびり戦巫女・d06049)が、激しい怒りをあらわにする。
     淫魔達にとって、女性達は眷属であり、手駒のようなモノ。
     そう言った意味で、彼女達に愛情を注ぐ事はないだろう。
    「どちらにしても、恐ろしい能力ですね。何としても、救わないとです」
     秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451)が緑色のメイド風アイドル衣装で、自分自身に気合を入れる。
     淫魔達によって岩礁に連れてこられた女性達は、みんなアイドル好き。
     特にイケメンが大好きなので、彼らのファンクラブを作り、応援していたようである。
    「ちなみに、今日はガールズロックだヨ。大胆な水着に、お気に入りのナンバーで残念淫魔達をやっつけちゃうネ」
     そんな中、ローラ・トニック(魔法少女ローライズ・d21365)が、ハイテンションでポーズを決めた。
    「私も峰さんの歌に合わせてバックコーラスで盛り上げますね。これでも聖歌とかで鍛えてるんですよ」
     宮中・紫那乃(グッドフェイス・d21880)が、えっへんと胸を張る。
     自分達の歌が淫魔達に対して、どこまで通じるのか分からないが、やってみるだけの価値はあるだろう。
    「まさか、またこの格好をする事になるとは……」
     竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)がメイド風男の娘アイドル『いなづまちゃん』に扮し、何処か遠くを見つめる。
     どうして、こんな事になってしまったのか、自分でもよく分からないが、ここまで来た以上やるしかないだろう。
    「それじゃ、みんな覚悟はいいな」
     峰・清香(高校生ファイアブラッド・d01705)がボートから降り立ち、物陰に隠れて進んでいく。
    「さてと、ほな……いっちょいこかぁ」
     そう言って伝皇・雪華(冰雷獣・d01036)仲間達と共に、行動を開始するのであった。

    ●岩礁の上
    「みんな、俺達のライブにようこそォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
     一方、岩礁の上では真っ赤な服を着た熱血タイプの淫魔が、マイクを持って大声で目の前の観客達に声を掛ける。
    「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア、淫魔様ァァァァァァァァァァァ! 大キスよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
     それに応えるようにして、先頭にいた女性達が叫び声を響かせた。
    「騒ぐな、メス共っ!」
     青い服を着たクール系眼鏡キャラの淫魔が、蔑むような視線を女性達に送る。
    「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! もっと罵ってええええええええええええええええ!」
     それでも、女性達は淫魔達にメロメロ。
     身も心もトロけてしまうほど身体をクネらせ、幸せそうな表情を浮かべていた。
    「えーっ、ボクはみんなに甘えたいなァー!」
     その途端、黄色い服を着たショタ系お調子者の淫魔が、残念そうにしながら女性達に視線を送る。
    「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! アタシの胸に飛び込んでえええええええええええええ!」
     これには女性達もハイテンション!
     女性達が瞳をキラキラと輝かせ、ショタ系お調子者の淫魔を抱き締める勢いで両手を開く。
    「それじゃ、行っくぜええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
     それと同時に、熱血タイプの淫魔がマイク片手に歌を歌い、クール系眼鏡キャラの淫魔が流れるように華麗なダンスを踊り出す。
    「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! 最高ッ! 最高ッ!最高よぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
     女性達が鼻血を噴く勢いで、大興奮ッ!
     自らの命をガッツリ削る勢いで、喉の奥から叫び声を響かせた。
    「本業アイドルじゃないから、小細工を使うが……卑怯とは言うまい」
     すぐさま、清香が淫魔達の歌を邪魔するため、割り込みヴォイスを使う。
    「お、おや? ひょっとして、飛び入り参加? 邪魔をしてもらっちゃ困るな。ここはボク達の……いや、ボク達だけのステージだよっ!」
     ショタ系お調子者の淫魔が、小馬鹿にした様子で叫ぶ。
    「そっちが男性アイドルなら、こっちは女性アイドルで対決だよ! みんな、私達の歌も聴いて欲しいな!」
     登がキャハッと可愛らしく笑い、ポツプなアイドル曲を歌い出す。
    「皆さん、私達の歌とダンスも楽しんでいってください。一緒に盛り上がりましょう!」
     それに合わせて、清美もきゃぴっとポーズを決め、女性達に向かって声をかける。
    「……フッ! なるほどな。よほど僕達の邪魔をしたいようだねぇ!」
     クール系眼鏡キャラの淫魔が、不機嫌そうに眼鏡をクイッとやった。
    「ここにいると危ないので、下がってください」
     そんな中、良太が女性達を守るようにして前に立つ。
    「つーか、邪魔っ! 邪魔よっ! アタシ達は淫魔様にしか興味がないのォォォォォォォォォォォォォォ!」
     その途端、後ろにいた女性が殺気立った様子で、良太にスリーパーホールドを喰らわせる。
    「……今日は厄日やな」
     雪華がげんなりとした表情を浮かべ、乾いた笑いを響かせた。
     だからと言って、彼女達を放っておくわけにもいかないため、しばらく我慢をしておく必要があるだろう。
    「それに、ここで淫魔の奸計を打ち破らないと皆さんが半魚人になってしまいます。それは即ち死を意味します。それでも、いいんですかっ?」
     紫那乃が女性達を前にして、叫び声を響かせた。
    「だったら、望むところよっ! だって、アタシ達の心は淫魔様のモノ! 命を捧げるくらい安いものだわ」
     巨乳の女性が瞳孔の開いた目で、キッパリと言い放つ。
     おそらく、淫魔にすべてを捧げる覚悟なのだろう。
     それが感覚的にわかってしまうほど、女性達の殺気が紫那乃達に向けられていた。
     だが、そのおかげで淫魔達から興味を逸らす事が出来た。
    「おいおい、せっかくのライブを邪魔するなんて、随分と命知らずがいたものだなァ! いや、自殺志願者ってヤツか? だったら、遠慮をする必要もねぇよなアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
     熱血タイプ淫魔が、邪悪な笑みを浮かべる。
    「貴方達のように……心身ともに姿を変えてしまうような能力を持った淫魔が他にもいるのですか?」
     そう言って若葉が、熱血タイプの淫魔に問いかけた。
    「さあな。教える義理もねぇ! あの世に行く、お前達にはなァ!」
     熱血タイプの淫魔が、血に飢えたケモノの如く勢いでニヤリと笑う。
    「きゃあああああああああああああああ、ステキ! 恰好イイわぁん!」
     バブル世代の熟女が、恍惚とした表情を浮かべる。
    「はははっ、見たかい? これが彼女達の本音。つまり、身も心もボク達のモノって訳さ! 分かったら、帰ってくれるかな? 正直……、邪魔なんだけど……」
     ショタ系お調子者の淫魔がケラケラと笑いながら、いきなり衝撃波を飛ばしてきた。
    「サイレーンに見捨てられたインマーは哀れだネ」
     それと同時にローラが挑発的な言葉で、淫魔達の気を引くのであった。

    ●歌って、踊って、殺し合おう!
    「見捨てられた……か。やれやれ、私達も甘く見られたものだな。そんな挑発に乗る馬鹿が、ここに……」
     そう言ってクール系眼鏡キャラの淫魔が言葉に詰まる。
    「貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
     そんな中、熱血タイプの淫魔がブチ切れた様子で、ローラ達に突っ込んでいく。
    「……いたな、ここに……」
     クール系眼鏡キャラの淫魔が、呆れた様子で頭を抱える。
    「ヘタクソな歌に、見るに耐えない踊りに、容姿しか取り柄がない芸NO人とか、アイドルナメるナ! アイドルっていうのは歌って踊ってちょっとエッチなアピールもできなきゃいけないんだヨ! 魅せてあげるヨ、かの淫魔アイドル・ラブリンスターの最強のライバル、アイドル魔法少女ローライズのライブを!」
     ローラが際どい衣装から足を振り回し、熱血タイプの淫魔にスターゲイザーを放つ。
    「そんな攻撃で俺が止められると思っているのかあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
     だが、熱血タイプの淫魔は怯む事無く真正面から突っ込み、成す術もなく宙を舞う。
    「嫌ああああああああああああああああああああああああああ」
     それを目の当たりにした女性達が、信じられない様子で悲鳴を上げた。
    「所詮、上っ面だけの歌は、人の心を動かせませんよ」
     良太が女性達を押さえながら、熱血タイプの淫魔に冷たい視線を送る。
     熱血タイプの淫魔はそのまま海に落下し、ブクブクと音を立てて沈んでいった。
    「うわっ! 無理をしないで歌っていれば良かったのに……」
     ショタ系お調子者の淫魔が、ドン引きした様子で汗を流す。
    「まぁ、馬鹿に付ける薬はない。頭痛の種が無くなったと思えば気も楽だ」
     クール系眼鏡キャラの淫魔が、吐き捨てるようにして呟いた。
    「オレの名前は引導代わりだ。迷わす地獄に堕ちるがいい!」
     そう言って登がライドキャリバーのダルマ仮面と連携を取って、クール系眼鏡キャラの淫魔に攻撃を仕掛けていく。
    「ふっ……、私のダンスについてこれるかな……?」
     それに気づいたクール系眼鏡キャラの淫魔が、華麗なダンスで攻撃をかわしていった。
    「……神よ、私にお力をお貸しください」
     紫那乃も祈るような表情を浮かべ、クール系眼鏡キャラの淫魔に鬼神変を放つ。
    「そんな攻撃で、私を止められる訳がないだろ!」
     クール系眼鏡キャラの淫魔が、余裕な態度で後ろに下がっていく。
    「だから、わざと攻撃を喰らってくれたんですか……?」
     若葉が霊犬の蒼炎と一緒に行く手を阻み、クール系眼鏡キャラの淫魔に攻撃を仕掛けていった。
    「うぐっ……、ば、馬鹿なっ!」
     クール系眼鏡キャラ淫魔が、血反吐を吐いて倒れ込む。
    「や、やめてええええええええ! もう駄目! 見たくないっ!」
     眼鏡を掛けた女性が、ヒステリックに声を上げる。
    「それなら、しばらく眠ってください」
     清美が色々と察した様子で、ナノナノのサムワイズを連れ、女性達に当て身を放つ。
    「まぁ、しゃあないな」
     雪華が気絶した女性達に視線を送り、疲れた様子で溜息をもらす。
    「ククッ、無駄な事を……。まあ、いいや。後で起こせばいいんだし……。それよりも今は、君達を殺らないと、ね!」
     ショタ系お調子者淫魔が邪悪な笑みを浮かべ、一気に間合いを詰めていく。
    「ならば、先に逝っておけ。ただし、私達が行くのは、ずっと先になるが……」
     清香がショタ系お調子者淫魔に別れを告げ、ディーヴァズメロディを使う。
    「ハハッ、そんな攻撃でボクが……うぐっ! うわああああ!」
     次の瞬間、ショタ系お調子者淫魔が催眠状態に陥り、まるで吸い込まれるようにして海に飛び込み、もがき苦しみながら沈んでいった。
    「はてさて、サイレーン退治は、どないなるか。とにかく、一件落着……でええんかな?」
     雪華が気絶した女性達に視線を送り、苦笑いを浮かべる。
     おそらく……。いや、間違いなく、胸倉を掴まれ、怒鳴りつけられる事だろう。
     それも覚悟していたつもりだが、その事を考えるだけで気持ちがズッシリと重くなった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年6月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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