とある喫茶店で、灼滅者たちと共に待機していた犬良・明(中学生人狼・d27428)。
事件は、すぐに起こった。
注文したショートケーキの、イチゴだけが一瞬で消えたのだ。
他の客も同じように、イチゴが消えたと騒いでいる。
一般人の目にもとまらぬスピードで、イチゴだけを食べて逃げてしまう、小さな動物。
その正体はハリネズミだ。
ただのハリネズミでは無く、都市伝説だということを説明する、明。
「ショートケーキの、イチゴだけ食べて逃げる都市伝説ですね。お客さんたちを逃がす為に、人払いはしておくべきです」
ハリネズミはつぶらな瞳を灼滅者たちに一瞬向けるが、イチゴが無いと分かると直ぐに興味を無くし、うろちょろしている。
この都市伝説は、イチゴを好んで食べる。
イチゴを持っていると、直ぐに食べられて逃げられてしまうが、何度か食べさせることを繰り返していれば、手の上で落ち着いて食べるようになる。
また、お腹の毛はふわふわで、撫でると幸せな気持ちになれるようだ。
ただし油断していると、都市伝説の能力で、巨大化したケーキが落下して来る。地味に痛い。
都市伝説が巨大化させられるのは、ケーキとイチゴだけだ。
巨大化したケーキは食べても、問題は無い。
「灼滅者ならまだしも、一般の方が巨大化したケーキの下敷きになったら、大変ですからね。放っておくわけには、いきません。……イチゴやケーキが巨大化したら、食べ放題ですね」
明のその言葉は、イチゴやケーキ好きの心を揺さぶるには充分だろう。
参加者 | |
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暴雨・サズヤ(逢魔時・d03349) |
檮木・櫂(緋蝶・d10945) |
犬良・明(中学生人狼・d27428) |
鳥飼・砂羽(サンクトゥス・d29667) |
白川・雪緒(白雪姫もとい市松人形・d33515) |
白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072) |
カーリー・エルミール(元気歌姫・d34266) |
斎藤・陽介(風と音の操り手・d36849) |
●
「ケーキ、たのむ、してから、人ばらい? さわは、いちごの、パフェ、食べたい、な。のみもの、たのむ。うんとね、オレンジ、ジュース、すき」
白い羽耳をぴょこんっと動かし、注文を済ませる鳥飼・砂羽(サンクトゥス・d29667)。
「コーヒーとケーキをお願いします」
白川・雪緒(白雪姫もとい市松人形・d33515)も落ち着いた態度で注文し、程なくして、注文した物がテーブルの上へ運ばれて来る。
「一般人にはご退場願いましょうか」
「そうだね、一般人には外に出るようにお願いしたいよ」
「店に動物が入ってしまったようなので、申し訳ありませんが、捕獲と店内の清掃の間、暫く外でお待ち下さい」
檮木・櫂(緋蝶・d10945)とカーリー・エルミール(元気歌姫・d34266)がラブフェロモンを、斎藤・陽介(風と音の操り手・d36849)はプラチナチケットをそれぞれ使い、上手く一般人たちを店の外へ誘導する。
「んん……此処には、小動物が紛れ込んでいる。衛生上良くないので、少し外で待っていてほしい」
暴雨・サズヤ(逢魔時・d03349)と、雪緒も、一般人を安全な場所へ避難させるのを手伝い、店の中に残る一般人は店員だけとなった。
「お店の、人、いたら、たましずめ。ここ、あぶない、すみっこ、ねむって、いてね」
砂羽は魂鎮めの風で、店員たちを眠らせた。
そうしている間に、パフェのイチゴが1個、既に無くなっている。
「イチゴを食べるイタズラネズミ! マギステック・カノンがモフって至福の時間を堪能するぜ! え? 成敗じゃない? ……いいんだよ! 今回は可愛いネズミのイタズラだし!」
白峰・歌音(嶺鳳のカノン・d34072)が元気良く声を上げた。
「できる限りのイチゴを準備してきました」
犬良・明(中学生人狼・d27428)は、持参したイチゴを取り出しながら、サウンドシャッターを展開する。
そのイチゴを目掛けて、素早い動きで駆けて来る動物。
都市伝説の、ハリネズミだ。
(「ショートケーキのイチゴだけ食べて逃げる都市伝説さんですか。ハリネズミの姿とは思ってもみませんでした」)
明は物珍しそうにハリネズミを眺め、試しにイチゴを1個だけ差し出す。
ハリネズミはフンフンと鼻を鳴らし、多少警戒しつつもイチゴを奪って逃げてゆく。
「歌音さん見ましたか? ケーキとイチゴの食べ放題ツアーwithモフモフだなんて最高ですね!!」
モフモフへの欲求に正直な雪緒は、モフりがいの有るハリネズミを見て、やや興奮気味だ。
●
「苺だけ食っていくなんて、変な都市伝説だなー。んじゃ試してみるか……って消えた!?」
持って来たイチゴを取り出した瞬間、陽介の手の中からイチゴが消える。
目にもとまらぬスピードとは、このことか。
「マジか……も、も一個……うわ、また消えたぁぁ!?」
驚く陽介は、ハリネズミの姿を探して、周囲に視線を走らせる。
しかし相手は小さい上に、すばしっこい都市伝説だ。
そしてここは喫茶店。
椅子や机の下、裏側など、ハリネズミが隠れられる場所はいくつも有る。
「避難誘導が終わったら、まずはモフりタイムだ!」
「歌音さんの目的は、モフモフですね」
イチゴを片手に、机の下からイスの裏など念入りに店舗内を探し回る歌音に、雪緒が微笑みながら話し掛ける。
「目標はもう1つ有るんだよな! ハリネズミをモフるのと……巨大ケーキを食べる!」
歌音が力強く主張し、屈んだところで、机の下に居たハリネズミと目が合う。
つぶらで愛らしい瞳が歌音に、いや、歌音が持っているイチゴに向けられている。
「スナイパーらしくじっと狙いを定めて……捕まえる!」
反対の手をぎりぎりまで近づけた歌音が、素早く捕獲しようとした。
ハリネズミはジャンプしてそれをかわし、歌音が持っていたイチゴを取って逃げてゆく。
「明兄ー! 逃げられたー!」
「少しずつイチゴを出してハリネズミさんに食べて貰い、何度か繰り返しましょうか」
悔し気な声を上げる歌音に、明がアドバイスをする。
「これ、タッパー、入れて、もって来た、いちご。いっぱい、ある。ハリネズミ、来るかな」
砂羽がタッパーの蓋を開け、たくさんのイチゴを披露する。
イチゴの香りに惹かれ、ハリネズミが鼻を鳴らしながら、ちょこちょこと近づいて来る。
「ハリネズミも、あまい、すき? さわの、いちご、あげる」
優しく声を掛ける砂羽の手から、イチゴを取るハリネズミだが、さきほどよりも随分スピードが落ちている。
「おいしそう、食べる、かわいい」
砂羽は満足そうに、ハリネズミを見て癒されている。
サズヤも大量に用意して来たイチゴを1つ、手の上に乗せてじっと待つ。
何度かイチゴを食べたハリネズミは、灼滅者たちを、どうやらイチゴをくれる存在だと認識し、警戒を解いて背中の針を寝かせた。
「……ん、痛そうなとげとげが? んん……ハリネズミ、小さくて可愛らしい」
サズヤの手のひらに乗ったハリネズミは、完全に落ち着いて、ゆっくりとイチゴを食べている。
「とても、ちいさい。友達にも、見せてあげたいが……触り心地だけでも、言葉で伝えよう」
決意するサズヤの手の中で、ハリネズミは仰向けになり、お腹を見せながらイチゴをひたすら食べている。
ハリネズミの背中の針は寝ている為、痛みを感じることも無い。
「こう、あわよくば……もふもふする」
お腹の毛を、モフり始めるサズヤ。
時折、額を撫でてみると、すっかりリラックスしたハリネズミは気持ちよさそうに欠伸をする。
「さわって、いい? もふもふ、かわいい」
慎重に、砂羽がゆっくりと手を近づけ、ふわふわしたお腹の毛を優しく撫でる。
「モフモフモフー♪」
「ハリネズミさんのお腹の毛、もふもふです」
サズヤに近づいた歌音と明が手を伸ばし、ハリネズミのお腹をモフる。
「ハリネズミのお腹をモフモフできて、ケーキも食べられるなんて素敵じゃない?」
櫂が手のひらにイチゴを乗せると、ハリネズミは反応し、ぴょんっとサズヤの手から櫂のもとに飛び移る。
「手の上であーん……ふふ、可愛すぎる。あれをやりたいのよ、顔を親指でむにーっとか、お腹に顔をスリスリだとか。最高の癒しよね」
すっかり慣れたハリネズミは、顔をむにむにされても、すりすりされても、無警戒だ。
「店とかお客さんには迷惑だし、早いとこ片付けちゃおうぜ! って思ってたけど、ハリネズミ人気だな……」
仲間たちの様子を眺めていた陽介が、もう少しこのままにしておこうと空気を読んだ。
●
「ところでハリネズミって、文化圏によっては食材になるそうですね」
雪緒の手のひらに移ったハリネズミを見て、雪緒が物騒なことを口にする。
言語が分かるのか、ハリネズミは少しだけ丸まり、警戒態勢を取る。
「ふふ、食べませんよ。捌きかたも分かりませんし」
雪緒が指先でそっと撫でると、ハリネズミは警戒を解く。
「大きいケーキが食べれると聞いて来たんだけどどうかな?」
カーリーが、ケーキはまだかな、とばかりにきょろきょろと周りを見回す。
「お、やっと落ち着いて食うようになったなー……こうしてると結構可愛いんだけどな……腹もふかふかで……」
ハリネズミは次々と灼滅者の手のひらに乗り、イチゴをゆっくり食べている。
陽介がハリネズミを眺め、これでもかと言うぐらい撫でまくって油断していた、その瞬間。
頭上から、大きなケーキが降って来た。
「って痛てぇぇぇぇ!! ほ、本当にでけぇケーキ降ってきた……! くっそこのやろー!」
痛がる陽介の手から、ハリネズミはぴょんっと跳ねて逃げてゆく。
「巨大なケーキはわざと当たるのも良さそうだけど、服が汚れそうよね……」
クールそうに見えて、実はノリが良い櫂は、皆がやっていたら釣られてしようと心に決める。
更に続いて、巨大なイチゴが乗ったショートケーキが降って来る。
「ケーキ、おっきく、なった。ぴゃっ、あぶない」
「全身で受け止める! でも潰れるかも」
砂羽が避けると、歌音は怪力無双を使ってケーキを受け止め、軽々と持ち上げてテーブルまで持ってゆく。
「お待たせしました。巨大ケーキ一つです♪ ……なあ、給仕らしいか?」
「歌音さん、ちゃんと給仕に見えますよ。でもケーキばっかりじゃ飽きません? 自前で味の調整が出来そうなものを持ってきました」
アイテムポケットに入れた物を次々と取り出して並べる、雪緒。
「ケーキ、おっきい。絵本、中、みたい。すごい、ね。ケーキ、ケーキ、いっぱい、たべたい」
巨大ケーキに感動している、砂羽。
「出現した巨大なイチゴやケーキは、食べます」
「犬良さんも食べるのですね。それでは皆さんで頂きましょう」
フォークを手にする明を見て、頷く雪緒。
「……折角なので、巨大化したケーキの味見もしてみる。ケーキは……ん……生クリーム。チョコやモンブランも食べたいが……ショートケーキのみ? とにかくきちんと最後まで、おいしくいただく」
サズヤは手を合わせ、食前の挨拶をしてから巨大化したケーキを食べ始める。
「ショートケーキ以外にも、チョコケーキなどないだろうか……んん、生クリームまみれは、あまり良い気はしないが」
ひたすらケーキをもぐもぐと食べている、サズヤの口元は生クリームまみれだ。
「ケーキ美味しいよね。ケーキのイチゴは一番主役といってもいいかな」
大食いのカーリーは、巨大ケーキもなんのその、美味しそうにどんどん食べてゆく。
「スポンジの間にあるクリームの間に入っているイチゴも、大きくなっているね。出来ればハリネズミ君も一緒に仲良く食べて幸せ~をしたいと思ってるよ」
カーリーがケーキを食べながら視線だけでハリネズミを探すと、ハリネズミはちゃっかり、巨大ケーキを必死に食べている。
やがてハリネズミは急に食べるのを止め、大人しくなった。どうやら満足したようだ。
「ハリネズミを倒すのは、忍びないが、一般人に、被害が及ばぬ、様に、しないと」
サズヤはケーキを頬張り、もぐもぐと食べながら喋る。
構えた『丑の刻』を足元に撃ち込み、発生させた振動波で敵を攻撃する。
「ハリネズミ、たくさん、イタイ、かわいそう。たたかう、早く、終わらせる、するね」
砂羽は激しく渦巻く風の刃で、敵を斬り裂く。
「鋼鉄の狼と一緒に、みなさんを庇える所に位置取りをします」
連携した明が前に出て無造作に敵を斬り刻み、ライドキャリバーの鋼鉄の狼は敵に突撃する。
「名残惜しいですが灼滅ですね。ケーキを食……おっと、隙を見てモフ……じゃなくて、命中率の高いサイキックで攻撃ですね」
コーヒーを飲み終えた雪緒が、伸ばした影で敵を覆い、飲みこむ。
「残念だけど灼滅の時間。出来るだけ穏便に灼滅だぜ」
歌音が続き、オーラを集束させた拳で、凄まじい連打を打ち込む。
「……残念だけど、灼滅しなきゃよね。まだまだ遊んでいたいけど。ごめんね?」
櫂は気乗りしない様子で、緋色のオーラを宿した武器で、敵を攻撃する。
「ボク、まだ食べ足りないな~」
物足りなさそうにカーリーが呟き、攻撃してダメージを重ねる。
「ちょこまか逃げられても嫌なので、彗星撃ちで一気に仕留める!」
首から下げているヘッドフォンを装着し、陽介は強烈な威力を誇る矢を放つ。
それがトドメとなり、丸くなった都市伝説は、完全に消滅した。
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「綺麗に後片付けをしてから帰りましょう」
都市伝説が消えてゆく際、手を合わせて黙祷していた明が、仲間たちに声を掛ける。
「……ん。ケーキで汚れたから、クリーニングで綺麗にする」
「服が汚れたから、助かるわ」
サズヤがクリーニングを使い、自分と仲間たちの汚れを取り除き、櫂は礼を言う。
「おいしかった、けぷー。ハリネズミ、おっきい、いちご、おなか、いっぱい、食べる、したかった?」
砂羽は注文したものもすべて平らげ、満足そうに羽を揺らす。
「心境としては逃がしてあげたかったけどなー」
「うーむ、都市伝説ですから難しいですね」
歌音の言葉に、雪緒が答える。
「終わったし、皆でケーキ食おうぜー!」
「何処かのケーキ食べ放題に行きたいかな~。みんな、行かない?」
陽介が仲間たちに声を掛け、食欲がブラックホール級のカーリーはまだ食べたい様子で、仲間たちを誘った。
作者:芦原クロ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2016年6月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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