立て、ぬか漬けよ!

    作者:聖山葵

    「知らない方に説明しよう。システマサイエンスとは何の変哲もない瓶に教祖様をホルマリンと一緒に詰め込んで無慈悲に敵へ叩き付ける教団奥義である」
     天城・理緒(黄金補正・d13652)はこの日も解説マッスィーンとしての自分に余念がなかった。たまたま足を止めたカーブミラーに自分を映しつつポーズを決め、服の鍍金を増量させた姿で、ちらりと傍らのビハインドを振り返り。
    「どう思う、なつくん? 僕はやっぱりこのシステマサイエンスより、教祖様ミルフィーユ、システマ――」
     何だか新たに作り上げたっぽい教団奥義の名を挙げようとしたところで、動きを止める。視線の先は路地裏に向いており。
    「我々はぬか漬けである。漬け物、それはご飯に欠かせぬ友であり、その友をはぐくむぬか床は、我らがこの世界を席巻するに必要不可避なモノと言える……」
     何故かそこで、糠の入った桶を胴体に、顔の付いた漬け物と手足を生やしたいろんな意味で妖しい怪人が、皿に盛られ自分を囲むように配置された漬け物達に何やら演説を始めていたのだ。思わず硬直してしまっても、仕方ないと言ったものだろう。
    「よって私は放置されるぬか床を救うべく、今、ここで、ここから行動に移る。漬け物諸兄よ照覧あれ。このぬか漬け怪人がことを起こすからにはぬか漬け以外の有象無象などしょせんは雑魚、負ける道理など無いのだ! うおーっ、ぬか漬けステキー! ぬか漬けサイコーッ! ぬかっづけ、ぬっかづけ!」
     しかもどや顔で語り終えるなり、セルフ賞賛とかぬか漬けコールまでやり始める始末。
    「……何というか、人間、ああはなりたくないですね。闇堕ちしたとしても」
     テンションを一気に最低値まで引き下げられたはポツリと洩らすと、この事件を仲間達に知らせるべく回れ右下のだった。


    「……と言うことがあって、皆さんをお呼びしたそうです」
     聞いただけでめまいを覚えそうなご当地怪人の目撃報告を聞く場にたまたま居合わせた倉槌・緋那(大学生ダンピール・dn0005)は、視線だけで理緒へと話をふり直した。
    「明らかに何かを企んでいるようでしたので、放置する訳にもいきませんからね」
     件のご当地怪人が事件を起こす前にサーチアンドデストロイして頂戴な、と言う訳だ。
    「聴衆役に使った漬け物の片づけもありますから、今行けばあの付近にいる筈」
     そして、もし仮に居なかったとしてもおびき出す方法はある。
    「ぬか床、ですね?」
    「はい、あの怪人は放置されたぬか床を救うと言ってました、だから」
     目撃現場にぬか床を置いて暫く待てばノコノコ現れる可能性もある。
    「ご当地怪人なら、おそらく戦闘になればご当地ヒーローのサイキックに似た攻撃をしてくるでしょうね」
     目撃現場におびき出した場合、人気のない路地である為、一般人がふらりと現れる可能性は低く、またまだ日も沈んでいない時刻であるが故に明かりもおそらくは必要ない。
    「いかにも残念なご当地怪人でしたが、何か被害が出てからでは遅いですから」
     どうぞよろしくお願いしますと理緒は君達に頭を下げたのだった。


    参加者
    ジュラル・ニート(風か光か・d02576)
    ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)
    ヴィントミューレ・シュトウルム(ジーザスシュラウド・d09689)
    ワルゼー・マシュヴァンテ(松芝悪子は夢を見ている・d11167)
    天城・理緒(黄金補正・d13652)
    須野元・参三(絶対完全気品力・d13687)
    御影・ユキト(幻想語り・d15528)
    倉丈・姫月(白兎の騎士・d24431)

    ■リプレイ

    ●ぬか漬け神計画
    「……ふぅ」
     額の汗を拭うと、鼻に詰め物をした倉丈・姫月(白兎の騎士・d24431)は一息ついて顔を上げた。
    「ここまでは順調……じゃな。教祖様のお入りになられるもの、立派なものに仕上げねば……!」
     視界に入る注連縄が巻かれた大きな樽を見つめながらぐっと拳を握ると作業を再開し。
    「久しぶりの布教活動ですし、頑張りますか」
     ポツリと呟いた御影・ユキト(幻想語り・d15528)もポツリと呟くと大樽へ近づいて行く。
    「ふふふ、気品にはレモンが似合う」
     そんな樽の上では、須野元・参三(絶対完全気品力・d13687)が樽一杯のぬか床へレモンの実を埋め込む作業の真っ最中だった。
    「まぁ、こんなところか……ふっ、教祖様たるワルゼーが糠漬けの樽に潜むのなら、ご当地怪人をおびき出すためにも崇め称えてやろうじゃないか! この糠漬け気品がな!!」
     謎の行為にようやく満足したのか、あちこちに糠を付けたまま参三は宣言し。
    「その意気です。ぬか漬けに対抗するにはぬか漬けしかない! なのでぬか漬け教を広めましょう」
     賞賛した天城・理緒(黄金補正・d13652)が実はそんな糠漬け好きじゃないことを隠し、握っていた野菜を、糠の中に差し込めば。
    「教団奥義システマテンペスト!」
     何故か決めポーズでジュラル・ニート(風か光か・d02576)が叫ぶ。誰がとは言わないが、やりたい放題だった、のっけからカオスだった。そんな中でワルゼー・マシュヴァンテ(松芝悪子は夢を見ている・d11167)は樽の中ツッコミもせず、じっと耐え。
    「……ま、配線はこんなとこだろう」
     アンプやスピーカーをセットしつつ先程から歩き回っていたのは、メイド服に何故か樽を背負ったファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)。
    「どうやらプリティデュオの方も準備は出来ているようね」
    「ぷ、ぷりてぃでゅお? いや今回和馬殿はおらぬし……」
     準備の様子を見守りながら、原稿とマイクを抱えて満足そうに呟いたヴィントミューレ・シュトウルム(ジーザスシュラウド・d09689)へどうするのじゃと姫月が視線で問い。
    「あら、適任者がそこにいるじゃない?」
     動じることなくヴィントミューレはメイド服姿のファルケを示した。
    「ファルケ殿が相方じゃと……!?」
    「なんだか既視感を覚える的な流れだよね、軍師殿。英語とかフランス語でいうとデジャヴってやつ」
     驚愕し約一名が劇画調の顔で固まる中、ジュラルはナノナノの軍師殿に語りかけていた。
    「デジャヴ……つまり、この状況に既視感を覚えたと言うことなのですね」
    「ええ。……倉鎚先輩、これが教団の日常です」
     姫月の提供した巫女服へ身を包む倉槌・緋那(大学生ダンピール・dn0005)へ、ユキトは微かに苦笑して見せた。ちなみに、提供者との体格差のせいで胸元や腰回りはピチピチ、丈も短めで若干際どい格好になった緋那を見て提供者が一度鼻血を出して倒れたことは敢えて記しておく。
    「あ、じゃぁ今回我歌わなくて良いのじゃよな! じゃよな!?」
     復活した緋那が敢えての方を見ず、ヴィントミューレの袖を捕まえ問うていたのは、それだけの理由ではないだろうが。

    ●降臨
    「なんということか。ぬか床が放置されているではないか」
     それを予想通りと言うべきか、少しは怪しめとツッコむべきか。大きな樽を見つけて近寄ってきたのは、果たして理緒の見たご当地怪人であった。ただ、いつの間にか蓋をされた巨大ぬか漬けの樽は沈黙したままそこにあり。
    「急ぎ救わ」
     おそらくは、「救わねば」とでも続けようとした瞬間であった。
    「なっ」
    「「ぬっ、ぬっ、ぬっ、ぬっ、ぬっ、ぬぬ、かづけーっ」」
     内側から跳ね開いた蓋の下からせり出したワルゼーが名乗りを上げると共にどこからともなくコーラスが聞こえ始め。
    「我こそは……糠漬けの神、ゴッドヌカヅケである!」
    「おぉ、神々しき教祖さ……ゴッドヌカヅケ様! その神威、輝いて目に見えるようでございます!」
    「教祖様輝いてらっしゃいます。ゴッドヌカヅケ様、万歳?」
     名乗りに呼応していつの間にかスタンバイしていた姫月が賞賛すればこれへいつの間にかカードの封印を解き、教団服へと身を包んだユキトが倣えば。
    「こ、これはいったい……」
    「なんかよくわからんけど、教組様が入ってる糠漬けっぽい樽にジャムとたくあんとセミの抜け殻を入れてかき混ぜておけばいいんじゃよね?」
     まだ状況にぬか漬け怪人の理解が追いつかないこの時、どさくさに紛れジュラルが懐から取り出した何かを糠に混入、かき混ぜ始めれた。
    「ひぃっ」
     あまりの凶行に思わず声を上げた参三。高邁な風貌は見る影もないが、ぬか漬けを後に皆で食べようと炊いたご飯まで持ち込んでいたのだから、無理もない気はする。
    「止めなくて良いのですか?」
    「ええ……倉鎚先輩、これが教団の日常です」
     ユキトに問う緋那へ返る言葉はまるでコピペ。
    「そういうものなのですね、では……」
     納得したのか、こうして緋那はそれっぽく弊を振る作業へ戻り。
    「――と、ぬか漬け神様は神で有られるというのに、これまで地道な活動を続けていらしたのよ。あれをご覧なさい。今も感謝の祈りを捧げに来た信者の人が居るわ」
     ヴィントミューレはぬか漬け神の偉業や経歴を実況を交えて語りつつ、樽の側を示す。
    「ゴッドヌカヅケ様の恩恵で、我は嫌いであったキュウリの糠漬けが食べられるようになりました!」
     告白しつつ食べかけのキュウリを見せた姫月はすんごい涙目であった。
    「何だか凄く涙」
    「こ、これは感激の涙、感謝の涙なのじゃ!」
    「神が漬かった糠床は周辺環境に負けず適切な発酵をし、そこに漬けられたものは至上の味になるのです。このぬか漬けがその証」
     だからか、ちょっと納得がいっていない様子のぬか漬け怪人へ姫月は反論し、更に矛先を逸らすべく理緒が事前に糠へ仕込んでおいた高級特製ぬか漬けを引き抜くと、食べてみろとばかりにご当地怪人へ突きつける、ただ。
    「このぬか漬けが……何やら蝉の抜け殻らしきモノがくっついてるのだが」
     ぬか漬け怪人の視線が止まる先にあったのは、ジュラルによる逆アシストの一部。
    「知らない方に説明しよう。それは飾りなので外して食べて貰いたい」
    「そ、そうなのか」
     人によっては何してくれてんのと叫びたくなる場面を理緒は今ハマってる解説キャラで乗り切った。
    「おし、俺達もそろそろ行くぜ?」
    「ファルケ殿が歌う? ふむ、何かを忘れているような……って、我は歌わん、歌わ――」
     好機と見た悪い意味での音響兵器もといファルケが神を称え歌い始めたのはこの直後だった。
    「表記不可能」
    「「ぎゃああああっ」」
    「ナノォ~」
     歌詞の意味さえ把握できないほどの、歌と形容するのが侮辱っぽいそれにご当地怪人や参三、それから軍師殿他がのたうち回る。
    「これは酷い歌、いえ、これもぬか漬け神への信仰を試す試練よ! 耐えなさい!」
     ヘッドホンをしつつ解説するヴィントミューレは樽に近寄ると掬った糠を周囲の面々に掛け。
    「これが……こちらの日常なのですか?」
    「はい。……倉鎚先輩、これが教団の日常です」
     耳を押さえてポツリと漏らした緋那へ、ハーフフィンガーグローブを着用した手でやはり耳を塞ぐユキトは頷いた。

    ●やりたい放題の果てに
    「其の方、糠漬けを救わんとする心意気は実に見事! さらなる力を与えるため、糠漬け界に伝わる洗礼を施してやろう。とりあえずそこに跪くが良い」
     カオスと音響地獄が過ぎ去った後、ワルゼーはご当地怪人へ言い放つ。何か目の焦点が合っていないような気がしたのはきっと気のせいだろう。糠から頭だけ出す格好なので耳が塞げなかったからとかではきっとない。
    「は……ははーっ? ありがたき、幸……せ?」
     一方で怪人の方も形容しがたき地獄のような音に思考力が鈍っていたのか、言われるままに跪き。
    「殊勝なり、そしてこれがっ、糠漬け界の洗礼じゃー!!」
    「は? はべらっ」
     続くワルゼーの声に顔を上げようとしたぬか漬け怪人は、糠の中から飛び出した手に握られていた妖の槍で地に縫い止められた。
    「さーて、入信儀式開始といくぜ!」
     情熱の篭った振り付けのダンスを舞いつつご当地怪人へ肉迫するのは、ファルケ。
    「今こそ気品を魅せる時っ! 行くぞ、ヴィネグ――」
    「ぎゃあああっ」
    「う゛ぃ、ヴィネグレット?!」
     立ち直った参三が指示を出そうとした時、既にライドキャリバーのヴィネグレットは機銃を掃射し、撃たれた怪人が悲鳴をあげていた。
    「くっ、負けては居られんっ」
     何故なら、チャンスなのだ。
    「ぬぐっ、おの」
    「おう、動いたらこのぬか床君が――」
     それでも立ち上がろうとしたぬか漬け怪人へ、ジュラルは持参したぬか床を見せつけ、人質ならぬ糠質をとって動きを封じようとしていたし。
    「説明、いや攻撃しよう」
    「ちょっ、待、ぐわーっ」
     理緒は解説キャンセルレーヴァテインを見舞い、ご当地怪人を焼きぬか漬け怪人たらしめていた。所謂絶賛フルボッコ中である。
    「確かに、好機ね」
    「じゃのぅ」
     瞳にバベルの鎖を集中させたヴィントミューレや魔力を宿した霧を展開する姫月から見てもそれは変わらず。
    「おのれ、卑怯な!」
    「卑怯? これも教団奥義っすよ」
    「ぬぬぬ」
    「では、こちらも行きましょうか」
     何やらジュラルと怪人がやりとりしているのにも構わず、ユキトは氷柱を撃ち出した。
    「がっ、ぎゃああっ」
     一方的にご当地怪人が攻撃され続ける中、ビハインドのなつくんも霊障波をたたき込み。
    「こう、何か本当に一方的じゃのぅ……」
     戦いは続いていた、ただ殆どご当地怪人が一方的にしばかれる形で。
    「ふ、私の気品に恐れをな」
    「ぬか漬け質がなければこうはなっていないわっ!」
    「ひぃっ、ごめんなさいぃっ!」
     自賛しようとした参三が満身創痍のぬか漬け怪人から殺気のこもった目で睨まれて土下座する。
    「ところで、軍師殿」
    「ナノ?」
    「闇堕ちしてもああはなりたくないと言いつつも、あの怪人の方がうちの教団よりはまともなんやないかとも思える今日この頃なんだが」
     ここまでのやりたい放題を省みたのか、ぼそりと漏らすジュラルへ。
    「ナノナノ」
     軍師殿は羽扇で口元を隠したまま鳴き。
    「いずれにしても、そろそろ頃合いね」
    「である、か……各員所定の位置に――」
     ヴィントミューレから視線を送られたワルゼーの声で教団員達が動き出す。
    「知らない方に説明しよう! ぬか漬けはりけー……もとい、教団奥義システマハリケーンとは適当な樽に教祖様をぶち込み敵に叩き付ける必殺技である。……今回使う樽は当然教祖様が入ってた糠床樽」
     説明は、おなじみ理緒。
    「みんな、あの技を使うわった?!」
     自分から樽に入ろうとしたワルゼーをファルケが強引に樽へ叩き入れ。
    「いいわね? それじゃあ、そろそろショータイムよっ」
     ヴィントミューレがそこに糠を投入。
    「気品っ」
     参三がレモンを投げ込み。
    「あ、いつものですね」
     ユキトは見守った。
    「そらっ」
     まずはファルケのパスで蹴飛ばされる樽。
    「無辜のぬか漬けを怪人は見捨てることができるのか! 注目の瞬間です」
    「うぐっ、また糠質をっ」
     ちゃっかり二度目の糠質で理緒がぬか漬け怪人を牽制する中。
    「教祖さ……ゴッドヌカヅケ様! 今空翔ける時!! その神威存分におふるい下さい!」
     背中に炎の翼を広げた姫月は樽の落下地点へ飛び出し。
    「いざ!」
     樽を上空へ打ち上げた。
    「最終座標を特定、標的はそこよ!」
     牽制の魔法光線と共に発せられた声で、お膳立ては終了した。
    「ヴィネグレットっ」
     ライドキャリバーに呼びかけた参三はその背に颯爽と飛び乗ると、疾駆し大きく飛ぶ。
    「見せてやろう幻のオーバーヘッドシステマハリケーン!!」
     参三の視界で空と大地が逆転し、それでも目は樽を捉えたまま。
    「行けぇぇぇっ」
     振るった足が樽を撃ち出す。
    「べっ」
     はずみで噴き出した糠が顔に直撃し、視界を塞がれ真っ逆さまに落ちて行く参三。バスタービームが有らぬ方に飛んだ。
    「これぞ教団奥っぶ、糠が口に、ええい、ままよ!」
    「な」
    「でやあっ」
    「そべっ?!」
     驚き立ちつくす怪人の前で爆ぜた樽から出てきた糠まみれのワルゼーは、着地した足を摩擦で炎に包みながらも滑り込むことで更に距離を詰め、炎を纏う蹴撃で怪人を吹っ飛ばす。
    「さて、仕上げと行きますか、軍師殿」
    「ナノ」
    「やっぱ怪人は最終的に爆発じゃね」
     軍師殿に呼びかけたジュラルは、怪人の落下予想値点目掛けて爆炎の魔力を込めた大量の弾丸を撃ち込む。
    「ちょ、待、我はぎゃーっ」
     破裂した弾丸の余波がワルゼーにも及んだ気はするが、きっと気のせいだろう、ブレイジングバーストは単体攻撃っぽいし。
    「ともあれ、これで一件落着ですね」
    「その様ですね」
     頷き合う、ユキトと緋那。
    「ぐ……無念。ぬか漬けを救」
     視界の先にあったのは今にも爆散しようとするぬか漬け怪人が居たのだが。
    「後で掃除が大変そうねぇ、なので戯れはこの位にしましょう。今こそ、これまでの行動に裁きを下すとき。受けなさい、これがあなたに対する洗礼の光よっ」
    「歌エネルギーチャージ完了! 聴かせても心に響かないというなら直接叩きこむのみっ! 刻み込め、魂のビートっ! 時のかなたまで刻み込みな?」
    「ぬがんびゃっ?!」
     容赦ない死体蹴りもとい二名分のオーバーキル攻撃によってお約束の爆散すら許されず消滅する。えーっと、そんなこんなで戦いは終わったのであった。

    ●おつかれさま
    「全く、しばらく漬物は見たくないわね、ほんと」
     ぼそりと零すヴィントミューレの視界には糠が散乱していた。
    「ぬかくっせぇ」
    「ナノナノ」
     ESPのクリーニングを行使しつつジュラルも零した。まぁ、糠を詰め込んだ樽をどつき回したのだから、当然と言えば当然である。
    「まぁ、丁度メイド服を着てる人がいるから、掃除はファルケさんにお任せするとして」
    「へ?」
     それをまさかの流れと見るべきか、妥当だなと納得すべきか。
    「よし、みんなで風呂に入りに行くか!」
     自分の身体から漂う臭いに顔をしかめたワルゼーは周囲を見回して同意を求める。その頭には蝉の抜け殻がくっついていたが、当人は気づかず。
    「まぁ、待て! 折角なんで米炊いて持って来た。まずは皆で糠漬けを食べよう」
     先程の醜態など全くなかったかのような態度で保温容器を取り出しつつ参三も提案し。
    「ふーむ、じゃが食べてからすぐ風呂に入るのは消化に良くないと聞いたような……」
    「だったら、教団に戻ってから食べますか?」
    「だから暫く漬物は見たくないのだけど?」
     糠の臭いの中、議論は始まる。
    「……倉鎚先輩、これが教団の日常です」
    「大変なのですね」
     本日数回目のユキトによる同じ台詞にはポツリと呟いた。


    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2016年6月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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